魔皇、無限の蒼穹を翔る   作:とるべりあ

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お待たせしました!
今回よりIS世界での昴也の冒険が始まります。

ただ今回は若干、超展開と説明文が入る為、実際に物語が動くのは次回からになりますが……(汗


act.01 驚愕

 最初に感じたのは閃光。

 

 継いで轟音と熱風。

 

 そして――業火に包まれた瞬間、昴也(こうや)の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは――奇妙な場所であった。

 

 一時も安定せず、瞬きする間に周囲の様相が一変する。

 

 ある時は雲どころか大地すら視えない大空。

 

 ある時は大樹が天の彼方までそびえ立つ樹海。

 

 ある時は水面と底が何処にあるのかも分からない水中。

 

 ある時は見渡す限り生命の存在を一切感じさせない砂漠。

 

 ある時は形容する語彙どころか、人間の感性では到底理解できない混沌。

 

 それら数々の世界を寄る辺なく、ただ流されていく。

 

 濁流に流されているかの様に揉みくちゃにされている内に、段々と昴也の存在が希薄になっていった。

 

 

 

 そして、彼の魂までもが消えようとした時――最早存在しない筈の瞳は『それ』を視た。

 

 

 

 視界一杯――いや、有り得ない事に、彼を中心に360°の全周に拡がる星の海を。

 

 『それ』は正に光の饗宴であった。

 

 夜、何気なく空を見上げても疎らにしか見えない残念な星空ではない。

 

 恒星。惑星。衛星。彗星。星雲。超新星。そして――銀河。

 

 それらひとつひとつの光が集まり、密集し、巨大を通り越して莫大な光を放っていた。

 

 昴也の魂は――その光に照らされ、灼かれ、そして癒された。

 

 その激しくも優しい光に包まれ、嘗て昴也だったモノは――消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――風が肌を撫でる。

 

 ――木々の葉擦(はず)れの音が耳に囁く。

 

 ――草の香りが鼻腔をくすぐる。

 

 

 ふと、誰かに呼ばれた様な気がした昴也が目を開く。その視線の先にあったのは満天の星空。

 都会で見上げる夜空よりも沢山の星々が照らしていると云うのに――何故か、寂しい光だと漠然に思った。

 

 そこまで考えて――飛び起きる昴也。

 

「生きてる……のか?」

 

 あの大爆発の中で? どうやって? そもそもここは――

 

「……何処なんだ、ここは?」

 

 周りを見渡しながらそう呟く。どう見てもテンブルムのあった市街地とは思えない。恐らく何処かの山中であろう。

 しかし、仲間に救けられて避難したにしては誰一人として傍に居ないし、野営の用意もしていない。

 

 と、考えた所で――

 

「――(しずく)! おい雫、何処だ!?」

 

 意識が途切れるまで一緒だった相棒の少女の事を思い出し、その名を叫んで探す。

 

「ルヴィ! アレク! 敬輔(けいすけ)! レン! ヴィス! 誰か……誰か居ないのかっ!?」

 

 彼女だけでなく、仲間の名もひとりひとり呼ぶ。

 だが、どれだけ叫ぼうとも、誰からも返事は返って来なかった。ただ、虫と梟のものらしい鳴き声だけしか聞こえない。

 

 一瞬、自分以外全滅したのか、とも考えたがすぐさま否定した。理由は昴也自身に何も異常が起きていないからである。

 魔皇(まおう)とスピリットリンクで繋がっている逢魔(おうま)、その役目は魔皇に献身的に仕えるパートナー。殲騎(せんき)を召喚する鍵。

 

 そして――()()()()

 

 軽く舌打ちすると、兎に角現在地だけでもとスマホの地図情報を使おうとするも、圏外表示となっており確認できない。

 

「…しゃーねぇ、頂上近くまで登れば人里くらいは見付かるだろ」

 

 立ち上がり、一歩踏み出した所で――何かに足を取られて、正面から地面に倒れ込んだ。

 

「…………()ぅ、一体何が…」

 

 モロに打ち付けた顔面を押さえながら足元を見ると、そこにあったのは何時の間にか脱げていた昴也のズボンであった。

 不審に思いながらも穿こうとして、思わず「は?」と間抜けな声が出た。

 

「…………何で……こんなにデカくなってんだ?」

 

 声が震えていた。

 それはそうだろう、今まで普通に穿けていたズボンが、足を通せば途中までしか通らず、ウエスト部分に至っては腹の辺りまで隠れるのである。

 いや、ズボンだけではない。慌てて自分の格好を見てみると、肘まで腕捲くりしていた為に気付かなかったが、上着も同様の状態だった。首周りのボタンを外していたシャツはずり落ち、肩まで露わになっている。

 

「……これ、何かのドッキリか?」

 

 半場(なかば)現実逃避しつつ、手で口を覆うと――そこでやっと気付いた。

 

 昴也は朝、作戦開始前に髭を剃っていた。周囲の様子からすると、少なくともそれから半日以上は経っている。ならば顔を撫でれば掌に感じる程度には新たに髭が伸びている――筈なのに、それが全然感じられない。寧ろ産毛すら感じない程スベスベしている。

 

「ちょっ……ちょっと待て」

 

 聞く相手も居ないのに待ったをかけると、上着のポケットから潜入工作で使う鏡を取り出し、自分の顔を映すと――

 

「何っっじゃあぁっ、こりゃあぁぁぁぁぁっっ!!!???」」

 

 ――昴也は、恐らくこの世に生を受けて、数える程しか出した覚えのない大声で絶叫していた。

 

 

 

 

 そこには――見た目、()()()()()()()()()()()昴也の、驚愕に染まった表情が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「……一体、何がどうしてこうなった」

 

 昴也は頭を抱えて呻いていた。それはそうである、てっきり死んだと思ったら、元の年齢の半分以下の姿になっていたなんて、オカルトを通り越して最早コメディの領域である。

 余談だが、声も変声期前の高さに戻っている事に叫んだ後で気付いた。

 

 しかし、幾ら深刻に悩もうとも、元の姿に戻る気配は微塵もない。それよりも差し当たっての問題は――

 

「……服、どうすっかねぇ」

 

 ――実に切実な問題であった。

 

 今の身体ではサイズが合わな過ぎて調節もできない。かと言って、全裸で動く訳にもいかない。

 もし運悪く誰かと鉢合わせして、相手がその手の趣味のイカレ女だったりしたら……いや、止そう。精神的安定の為にも。

 

 兎に角、何か代わりになる物はないかと、運良く残っていたウエストバッグの中を物色する。

 このバッグ、一見すると少し大きめのウエストバッグだが、実は逢魔の工房によって作られた特別製である。

 逢魔の工房とは、魔皇の依頼により彼らの活動を補助する道具などを製作する部署の事だ。

 

 ここで少し話を寄り道に逸らそう。

 魔皇のパートナーである逢魔には、ナイトノワール、凶骨(きょうこつ)、フェアリーテイル、セイレーン、シャンブロウ、インプ、ウインターフォーク、レプリカントの8種族が存在し、それぞれが6種類の特殊能力を有している。

 そして昴也のパートナー、雫の種族であるレプリカントの特殊能力に【こんな事もあろうかと】と云う……名前を聞いただけでは何の冗談だと思われかねないモノがある。

 ところがこの能力、そう馬鹿にしたものではない。無生物であれば、1種類だけだが一度に200kgまでの物体を、能力使用者の体内への出し入れが可能なのである。

 だが、取り出しには細かい指定ができない難点もある。例えば200kg分のリンゴを取り込んだとしよう。そして取り出す際、1個だけとか10kg分だとかの区別ができず、一度に200kg分全部出すしかないと使い勝手が良くなかった。

 

 と言う訳で、【こんな事もあろうかと】より取り込める量は大幅に減るものの、口の大きさに合うならば細かい取り出しができるバッグを作る様、工房に依頼して出来た物がこのウエストバッグで、昴也達は非常に重宝していた。

 

 ――さて、そうこうしている内に何とか着れそうな衣服を見つけたは良いが……それはこの場に居ない雫の着替えであった。

 ブラウスにベストそれとキュロットパンツと、動き易さを重視したと思われるチョイスである。

 

「……メイド服じゃなかっただけマシか……聞かれたら機嫌悪くするだろうが、今この時だけはあいつの小柄さに感謝だ」

 

 自己嫌悪を感じつつも、背に腹は変えられないと渋々着替え、最後にローファーを履いて動きに支障がないか確認。

 ウエストバッグを肩から斜め掛けして、いざ出発しようとして丸腰だった事を思い出す。

 

「野良サーバントが居ないとも限らんからな。とは言え、このタッパじゃ長モノを振り回すのはキツいから…とりあえず、コレとコレか」

 

 そう呟くと、昴也の右手に短刀、左手に三本の短い爪が付いた手甲が召喚される。

 

 ――『魔皇殻(まおうかく)』。

 

 これが魔皇専用の武器である。普段は異空間に保管されているが、魔皇からの求めにより、同時に3個までの装備が可能。

 特徴として、それぞれに何かしらの付加能力と、魔皇に関する刻印が必ず2つ刻まれている。

 そして魔皇殻には、魔皇にとってある重大な用途があるのだが――今回は割愛しよう。

 

 尚、昴也が所持する魔皇殻だが、神帝軍との戦いの中で新たに発見された、真魔皇殻(しんまおうかく)と言うグレードアップ版で統一されている。

 その中から召喚したのが、『真雷神の短刀』と『真シューティングクロー』。その能力の詳細は、後に昴也の手により知る事となろう。

 

「さて――行くか」

 

 (ようや)く準備が完了して、頂上らしき先に向かって歩き出す昴也。LEDライトはあるのだが、星明りだけで充分許容範囲だし、何より灯りで余計な何かを引き寄せる可能性もあるのでこのまま進む。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 小一時間程進んだ所で、樹々が深くなってきた。

 まだ夜目が利かなくなった訳ではないが、そろそろライトを使おうかと考えた所で、この先に何かがある事に気付いた。

 

「山小屋か?」

 

 小さく古そうではあるが、建付はしっかりしてそうな山小屋がそこにあった。

 疲れた訳ではないが、一旦朝になるまで待ってそれから頂上を目指した方が良いかもと思い、とりあえず山小屋へと向かう。

 引き戸に鍵は無く、数回引っ掛かりはしたものの、支障なく扉は開いた。

 内部は幾つかの物入れと、(だん)と灯り用の囲炉裏、そして奥には横たわった人影――人影?

 

「――!」

 

 腰に差したままの真雷神の短刀に手をやり、即座に警戒態勢をとる。

 

「……?」

 

 暫くそのまま警戒していたが、相手がピクリとも動かない事に訝しみながらも小屋の中に入った昴也は、そのまま人影に近付いた。

 

「子供?」

 

 見た感じ、今の自分と同じ年頃の子供がそこに居た。華奢な体と、着ているピンク色のパジャマから少女だと思われる。

 

 何故、断言しないのか。

 

 答えは後ろ手に回された手首と足首を(いまし)めるロープ。そして頭部をすっぽりと覆った袋の所為である。

 

「……何か、面倒な事になってきたな」

 

 ピクリと少女が動く、昴也の声に反応したようだ。

 

「……あー、そのまんまなのも辛いだろうから袋を取るが、暴れたり騒いだりしないでくれよ? 俺は飽くまで只の通りすがりで、お前さんをここに連れて来た奴とは無関係だからな?」

 

 と、声を掛けてからロープを切り、静かに袋を取り去る。

 

 

 そして現れたのは――猿轡(さるぐつわ)を噛まされ、薄明かりでもはっきり分かる水色の髪と紅の瞳をした美少女であった――




以上です。

……謎の美少女、一体何無なんだ(ぉぃ

えーと、ちょっと補完しますが、本文で出て来た『逢魔の工房』ですが、WT版のアクスディアにおいてゲーム内コンテンツとして、実際にアイテム製作の依頼が可能でした。
とは言え、今回のウエストバッグみたいなアイテムは、まず間違いなく便利過ぎてボツになっていたでしょうがw

あと、幾つか説明が中途半端になっていますが、そこも今後適した場面で明かされる事となります。

では、また次回お会いしましょう!
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