恐らくご都合主義になってしまってるかもしれません。ご了承ください。
ちなみに一夏は、まだシャルロットのことを「シャルル」と呼んでいます。
「連絡を受けて来たのですが、まさかシャルルさんが・・・」
俺は一夏の部屋に入ったあと、シャルルが女だった事を知った。そこで、少しでも理解者を増やそうと、相棒にも連絡をしてここに来てもらった。
今この部屋には、一夏、シャルル、俺、相棒がいる。結構広い部屋だから、全員が正座して話し合うことにした。
「それで、男装してた理由は何ですか? シャルロット・デュノアさん?」
シャルロット・デュノア。それがシャルルの本当の名前。相棒はあえて、本名のほうを強調した。今の相棒の目は、笑っているように見えて疑っている目だ。それもそうだろう。彼女はスパイ行為に近い物を行なってるのだから。狙いは恐らく、俺たち男性操縦者のデータだろう。
「・・・会社の人に言われたんだ。男性操縦者の一夏、真のデータを採取しろって」
「ま、そんなことだろうとは思ったぜ」
「なぁ、その会社の人ってもしかして・・・」
「一夏の予想は当たってるかもね。・・・僕のお父さんだよ」
「っ!」
「じ、実の娘にそんな事させるのかよ!」
「違うよ、真。僕は愛人の子・・・妾の子なんだ」
「え?」
話を聞くところによると、シャルロットの父親は一夫二妻だったそうだ。どうやら二人の女性が一人の男に恋して、男は二人を受け入れた。それが、デュノア社社長だ。
残念な事に、本妻の方は不妊症を患っていて、それでも子供が欲しかったそうだ。しばらくしてもう一人の妻が妊娠した。その子供がシャルロットだという。
もしマスコミがこれを嗅ぎ付けて報道すれば、デュノア社は危ぶまれる。そう感じたシャルロットの母親は、二人に相談した上で別の場所へと離れ、シャルロットを育てたそうな。だが、その母親はガンを患い、しばらくして静かに息を引き取った。その時に父親と本妻の二人も看取りに来たのは今でも鮮明に覚えていると、シャルロットは少し嬉しそうな顔で話していた。
しかし、彼女には更なる試練が訪れた。デュノア社はラファールの開発によってかなり有名な企業になれた。しかし一方で、「第三世代型を未だに作れない時代遅れ」という汚名も付けられているという。
ようするに・・・企業経営が駄目になってきたってことだ。そこでデュノア社社長はシャルロットに、男性操縦者のデータ取りを命令した。
「とまぁ、こんな感じかな。ごめんね。今まで騙しちゃって・・・」
「うーん・・・。相棒、一夏。この話、どう思う?」
「おかしい点がありますね」
「ミツルの言うとおりだ。変な部分があるな」
「え?」
相棒も一夏も、今のシャルロットの話におかしさを感じたようだ。彼女は分からない感じだから、話してあげましょうかねぇ?
「まず、お前の母親が亡くなったあと、義母のところに行ったんだろ?」
「うん。『本当に母親そっくりだわ~!』って、いきなり抱きしめてきた・・・」
「そこだよ。父親も義母さんも、抱きしめるほどシャルロットのことを大切にしている。なのに・・・一夏、続きを言いな」
「お、俺!? えっとな、そんなに大切にしているのに、どうしてスパイ行為をさせるのかってことだよ」
「そうですね。スパイをやったら重罪になることぐらい、両親は分かっているはず。それなのに何故・・・」
「・・・・嫌な予感がするぜ」
何つーか、シャルロットの家族にとんでもない危機が迫っている気がする。俺の勘がそう言っている。嫌な予感だけ当たるのが取り柄なんだよな。嬉しくないけど。
すると、シャルロットの机にあった携帯電話が鳴った。シャルロットの表情から察するに、父親からなんだろうな。俺たちは、電話に出ても良いという意味で頷く。シャルロットが電話に出た。
「・・・もしもし?」
「(シャルル、出来れば俺たちにも聞こえるようにしてくれ)」
一夏が、小声でシャルロットに合図する。彼女はコクンと頷くと、向こうの声も聞こえるように設定した。
《シャルロット。どうだね、調子は?》
「・・・・・・」
《シャルロット?》
「・・・男装していたことがバレました》
《なにっ!?》
「今この部屋には、織斑一夏と東風谷真、新しい男性操縦者の十六夜ミツルがいます」
《そうか・・・》
「(シャルロットさん。今回の理由を聞くようにしてください。それも、真実のほうを)」
相棒が小声で伝える。再びシャルロットは頷いて、その理由を尋ねた。
「お父さん。どうしても聞きたいことがあるの」
《・・・なんだ?》
「どうして、僕を男装させてここに編入させたの?」
《決まっているだろう。我が社の営業成績は日々低下している。それを乗り越える為にも、男性が乗ることの出来るISの開発のために―――――》
「そういう事じゃないでしょ!!」
《っ!》
「僕は覚えてるんだよ? お母さんが亡くなったときに、お
しばらくの間、電話からは声は聞こえなかった。ただずっと呼吸の音が聞こえるだけだ。
《・・・・・・・愛していないわけが無いだろう》
「じゃあどうして!?」
《我が社は今、お前にとって危険な状態なのだ。男装がばれてしまったなら仕方がない。シャルロット。すぐにでも学園長に頼んで――――》
そのとたん、声が聞こえなくなった。シャルロットは通話を切っていない。社長さんは何かを伝えようとしていた。それなのに切れたってことは、第三者によって切られたことになる。
「お父さん? お父さん!!」
「真、これって・・・」
「どうやら、俺たちでは手出しできないところまでヤバイようだな」
本当のことを聞きだせずに呆然とするシャルロット。俺たちも悔しくて、爪が食い込むくらいまで拳を握り締めていた。
だが、悔しがってばかりでは前に進めない。相棒はシャルロットを慰める。
「シャルロットさん。とりあえず、織斑先生に相談しましょう。もう私達だけでは手に負えません!」
「そんな! そんなことをしたら父さんにまで迷惑をかけちゃう・・・」
「その心配は無いと思うぜ、シャルル」
一夏は腕を組んで、目を閉じた状態で口を開いた。俺と相棒とシャルロット、全員の視線が一夏に集まる。
「社長は電話で、『我が社はお前にとって危険な状態』と言っていた。これは俺の勝手な予想だけど、もしかしたら社長は、何か脅迫をかけられてると思うんだ」
「何でそう思うんだ?」
「デュノア社は、まだ第三世代のISの開発が出来てないって言っただろ? しかも経営困難になっている。もしデュノア社の所有している機体とかを狙ってる奴らがいたら、それにつけ込んで・・・」
確かに、デュノア社はIS学園ほどではないけど、実験用の機体とかがあるだろう。それを欲しいと思ってる奴等は、開発資金とかを引き換えに交渉するかもしれない。
交渉内容は察する事ができた。娘にスパイ行為をさせずに過ごせば、最悪、家族は路頭に迷う事になる。もしスパイを成功させれば・・・デュノア社は安泰だ。
きっと社長は、悩んだ末にこういう決断をしてしまったんだろうな。
「ど、どうしよう。もし父さんを利用してる人たちが今のを知ったら・・・・父さんが殺されちゃう!」
「よし! こうなったら千冬姉に相談しよう。この学園は特記事項の二十一によって、3年間は安心だ」
IS学園には、五十五個もの特記事項がある。その中に『ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は許可しない』というのがある。それが特記事項第二十一項だ。
簡単に言えば、国家・・・今の場合フランスから「シャルロットを返せ!」って言われても、「シャルロットが帰りたがってないので無理です」と言えるものだ。
だが、これには『在学中のみ』という条件付だ。俺は一夏に問いかける。
「だが、一夏。たったの三年だ。シャルロットが卒業したら、第三者の手がすぐに迫るぞ」
「その第三者が二度と手を出せないようにするのさ。『デュノア社は無理矢理スパイ行為をさせられた』って感じで。IS委員会なんかは、血眼でその第三者を特定させようとするだろう」
「・・・中々考えますね、一夏さん」
「いや、これでも結構慌ててる。成功するかどうかもわからないし・・・」
いや、中々良い考えだと思う。シャルロットは国家代表候補生であろうとも、国を代表している。そんな大切な存在に犯罪を起こさせようとしたんだから、二度と日の出は拝めなくなるかもな。
さて、あとはシャルロットの同意が必要だ。彼女の同意があれば3年間は何とかなる。その間に、デュノア社には無実を証明してもらわないとな。
「さて、どうする? このまま無理矢理下手な演技をやり続けるか、救えるかもしれないという可能性に賭けて本当の自分として過ごすか」
「僕は・・・」
俯いたまま迷ってる感じのシャルロット。
「・・・僕が正体を明かしても、父さんはきっと裁かれるよ。だったら――――」
「そうやって、自分を偽り続けるのかよ!?」
「一夏!?」
「一夏さん!?」
諦めたような発現に、一夏は立ち上がって叫んだ。俺たちは驚きのあまり声が出ない。
「もう・・・やめようぜ。無理をしようとするお前は、もう見てられねえよ」
「い、一夏・・・」
「頼ってくれよ、俺たちを、みんなを。そんなに信じられないのか?」
「う・・・うわああぁぁぁぁん!」
シャルロットは泣き崩れた。そして大きく叫ぶ。
「僕は、もう騙し続けるのは嫌だ! お願い! お父さんとお義母さんを助けて!」
「よく言いましたね、シャルロットさん!」
「これはお前だけ抱え込むには、あまりにも大き過ぎる問題だ。先生達にも協力を頼もう!」
「私たちも、ご協力いたしますわ」
いきなり聞こえた、別の声。それも女性。俺たちは思わず振り返るが、一夏とシャルロットはいきなりの声に、俺と相棒は聞いた事のある声に驚いて振り返った。
そのひとは金髪で、この世界で見たら奇妙と思わせるような服を着ていた。そして・・・胡散くさそうな笑みを浮かべている。
俺と相棒は思わず、その名を叫んだ。
「「ゆ、紫さん!?」」
次回は、紫の考えと、ラウラの話です。