さて、東方竜人帳で出てきたあの人たちが出ますよ!
~フランス、デュノア社~
デュノア社は、第二世代型IS「ラファール・リヴァイブ」の開発・量産化に成功した会社である。世界各国に訓練機として配備され、現在でも日本産の「打鉄」と共に並ぶ有名機である。
そんなISの開発に成功したデュノア社の社長は今、ある男によって痛めつけられていた。
「ガッ! ぐぅっ!」
「言ったはずだぜぇ? 『余計な事をしたらタダじゃおかない』ってよぉ。テメェの耳は飾りか? あぁ!?」
青い髪をした男が、社長の腹に蹴りを入れる。「イグニッション・プラン」からも除名され、政府からの援助も大幅にカットされた時に現れたこの男。髪の色は変わっているものの、「サメジマ」という名前から日本人のように感じられた。この男の提案は、社長の胃をさらに痛くするものだった。
「言ったはずだよな? 『娘をIS学園に潜入させて男性操縦者のデータを入手させろ』ってな」
「今でも覚えているぞ。我が社が無くなってシャルロット達と路頭に迷うか、娘に危ない橋を渡らせて成功するかという選択肢を与えた事をな!」
「その結果、お前さんは娘に犯罪を起こさせた最低な野郎に成り下がったんだなぁ?」
サメジマは、ニヤリと嘲笑った。彼の言っている事が事実なだけに何も言い返せないデュノア社社長・・・フィリップ・デュノア。
思えばあの時はどうかしていた。そう簡単に人を騙せるはずが無い。シャルロットは今まで女の子として育ってきたのだ。それなのにいきなり「男子として過ごせ」と言って送り出してしまった。それに気付いていたはずだ。スパイは重罪である。娘は裁かれてしまうということに・・・。だが、成功するかもしれないという可能性に目がくらんでしまった。まるで、勝てるかもしれないと思い込み全財産をつぎ込んで落ちぶれる、ギャンブラーのように。
だからこそ、せめてもの償いで、彼女に「学園長に頼んで、匿ってもらえ」と伝えようとした。もっとも、サメジマがすぐにフィリップを殴ったために最後まで伝える事はできなかったが。
「お前の娘さんは正体がバレた。要するにデータ盗りは失敗だ。倒産はもう決定だな。条件は覚えてるだろう?」
「・・・試験機として置いてある我が社のISを、全て回収する事だ」
「そういう事。安心しろ。ISは頂くが娘さんに手は出さねぇ。ブリュンヒルデが厄介だからなぁ。その代わり、お前さんを楽にしてやるよ」
サメジマは腕をまくる。その光景を見たフィリップは、目を見開いた。そこには、人間には無い筈の鱗があったのだ。
化け物。そういう単語が相応しかった。
「別荘に逃がした妻に言うことはあるかい?」
「・・・・・・・すまない」
「OK。そんじゃ、死ねよ」
開いた手のひらから球状の水が現れる。さっきから続く不可解な現象に、フィリップは尋ねた。
「・・・お前は何者なんだ?」
「モンスター、だよ」
サメジマはニヤリと笑うと、その水球を投げつけようとした。その時――――――
「まさか、外の世界で戦うとは思いませんでしたよ」
「久々に来たのが、観光じゃなくて戦闘だとは。今日はツいてねぇな」
そんな声がした。
八雲紫。俺や相棒が住んでいる幻想郷を創ったと言われていて、俺たちの大先輩である白斗さんを幻想入りさせた人でもある。弾幕ごっこなどの実力も凄くて、俺はおろか父さんだって勝てていない相手だ。そんな人がなぜここに?
相棒と俺は少しだけ驚いたが、すぐに冷静になる。この人は、能力を知らない人を驚かせるのが好きだ。簡単に驚いたら、紫さんは悪戯を成功させたかのような笑みを浮かべるからだ。
「い、いつの間に!?」
「ついさっきですわ」
「あんた、誰だよ!?」
「あぁ、紫さん。お久しぶりです」
シャルロットと一夏は驚いている。あ~あ、やっぱり笑みを浮かべている。そんなに驚かせるのが好きか? まぁ俺たちの反応に対しては残念そうな笑みだけど。
「いや真、なんでそんなに冷静なんだよ!?」
「そうだよ! い、いきなり出てきたんだよこの人!」
「まぁまぁ落ち着いてください。この方は八雲紫さん。私達の故郷ではそれなりの地位を持ってるんです。今は来校者のカードも下げてますし、話を聞いてみましょう」
「・・・分かったよ」
二人は相棒の少し強引な説得に納得がいかない表情をしているが、渋々引き下がった。
俺は紫さんに、さっき言ったことを聞く。
「紫さん。デュノア社を救う方法があるんですか?」
「えぇ。と言うよりも、もう完了してるんだけどね」
『『え?』』
「デュノア社を脅していた奴は、私の仲間達が押さえつけてくれたわ。さて、シャルロット・・・だったかしら? お父さんに繋げてご覧なさい」
シャルロットは、言われるがままに父親へ電話をかける。「完了した」って言うのはどういうことなんだろうか? この人は本当に、何を考えているのか分からない。一夏は紫さんのことを教えてほしいような視線を向けるが、あいにく俺たちは詳しく教える事はできない。この世界では妖怪の存在を信じている人が少ないし、話したとしても、頭がおかしくなったと思われるだろう。俺たちは首を横に振った。
すると、携帯から声が聞こえてきた。
《・・・シャルロット?》
「と、父さん! 大丈夫!?」
《あぁ。私も死を覚悟したが、何故か他の者たちがサメジマを・・・》
サメジマってのは、きっと脅していた奴の事だろう。きっと幻想郷の誰かがソイツを取り押さえたんだな。でも一体誰が・・・?
すると、社長さんの近くに誰か居るのか、声が聞こえた。
《ったく。水を使う攻撃がきたとき、マジで死ぬと思ったぞ》
《それでも蒸発させるのが、護さんでしょうが》
《よく言うぜ影夜。お前が奴の攻撃を避けたおかげで、社長室がボロボロだ》
俺と相棒は、顔を見合わせた。相棒も口をあんぐりと開けている。一方で紫さんは笑いを必死に堪えている・・・! 紫さんのドッキリ作戦に嵌っちまった!
何でだ? 何で父さんと影夜さんがデュノア社にいるんだ? 相棒に視線を送るが、相棒は首を横に振っている。一夏は・・・あ、俺たちに説明を求めてるんですね。
「なぁ、真。何でそんなに驚いてるんだ?」
「・・・父さんだ」
「え?」
「第三者を潰したのは、俺の父さんと相棒の父さんなんだよ!」
「へぇー・・・・・・・って、えぇ!? マジかよ!?」
「本当だ。声が少しばかり聞こえた。な、相棒?」
「えぇ。紫さん、どういうことですか?」
俺と相棒、一夏が紫さんに視線を向ける。ちなみにシャルロットは社長さんと話し続けてる。
それにしても今回の騒ぎはおかしい。紫さんや父さんが動くほどだ。一体何が起きてるんだ?
【生徒の呼び出しをします。織斑一夏くん、シャルル・デュノアさん。学園長室まで来てください。繰り返します―――】
クソッ! 何でこんな時に! 俺は、全く付いていけてないこの状況にイライラしている。
一方、呼び出しをくらったシャルロットは、顔を青ざめていた。
「ま、まさか・・・」
「シャルロットちゃん、安心しなさい。正直に話せばいいだけ。父親の証言もあるし、きっと自由があるわ。それと、織斑一夏くん」
「は、はい」
「誰かを守ろうとするのは、一人では至難の業。誰かを頼る事は犯罪ではない。その事を覚えておきなさい」
「は、はい!」
「そろそろ行きなさい。客を待たせるのは良くないわよ?」
「そうだった! 行くぞ、シャルル!」
「えっ!? ま、待ってよぉ!」
一夏はシャルルの手を取って立ち上がると、部屋を出ようとする。だけど何かを思い出したのか、俺たちのほうへ顔を向けた。
「真、ミツル。ありがとう!」
そう言って、部屋を出て行ってしまった。彼女も何か言おうとしていたが、一夏に手を引かれてしまう。「ありがとぉぉぉぉ・・・・・」と言葉がどんどん小さくなっていくのは、初めて聞いたぜ。
さて、と。俺は紫さんへ向き直る。見ると紫さんは、一夏とシャルロットが部屋を出て行って安心しているようだ。これはすなわち・・・幻想郷が絡んでるんだな? だとすれば、二人が出て行ったのは丁度良かったかもしれない。
「では紫さん。今回の騒動・・・。紫さんは第三者の正体を知ってるんですね?」
「その通りよ、ミツル。下手をしたらあなた達にも動いてもらう事になるわ」
「・・・モンスター、ですね? 紫さん」
相棒と紫さんが驚いたような顔をしてこっちを見る。なんだよ。俺だって真剣に考えてるんだよ!
簡単なことだ。モンスターは、この外の世界とはまた別の世界からやって来た生き物のことだ。かつて父さんが戦ったモンスター達は、幻想郷にいる人間や妖怪などを滅ぼして、自分達の住みやすい世界を作ろうとしていたらしい。そのモンスターを束ねていた奴は、父さんを含めた8人の英雄達によって倒されたという。
だけど、もしそいつの部下達が生き残っていてこの世界に居たとしたら、そいつらはISを狙ってるんだろう。ISから技術を盗んでしまえば、人間を滅ぼせるだろう。人間の姿になっても、モンスターとしてのタフネスはそのままだし、コアは別の物で代用できるかもしれない。だからこそ、倒産寸前のデュノア社を狙ったんだな。成功しない作戦を成功できると偽って、最後は会社を潰す。そしてISを頂く、と・・・。
そんなことを説明すると、二人は目を丸くしていた。え? 紫さんも考えてたんじゃなかったのか?
「ま、真。あなた・・・・」
「意外と頭が回るんですね」
「意外とって何だよ! 意外とって!」
「でも、その可能性もありえるわ。真、ナイスよ」
「ど、どうも・・・」
えへへ、紫さんに褒められた・・・。すると、相棒がハッとした顔になる。・・・まさか。
「相棒。何か感じたのか?」
「目を閉じてみてください。恐らく庭園に、これは・・・モンスターです!」
「なっ!? ついに堂々と来やがったか!」
相棒は、モンスターの力を持つ人間である影夜さんと、紅魔館の図書館に勤める小悪魔さんの間に生まれた子供だ。要するに、人間と悪魔のハーフだ。悪魔の部分なのかどうか知らないが、気配に敏感になる時が多い。
俺も目を閉じると、ここから少し離れた所で禍々しい気配を感じた。俺はモンスター能力を使っているせいなのか、集中力を研ぎ澄ませると気配を感じることが出来る。ヤバイな。もし学園を襲撃してきたら・・・・。
「紫さん! 俺たちは・・・」
「分かったわ。私は霊夢たちに、このことを知らせてくるわ。幻想郷がまたピリピリしそうね」
相棒が俺を見て頷くと、すぐに気配のするほうへ走って行った。その時紫さんが何か言っていたようだけど、一体何なのか分からなかった。
「護、影夜。あなた達の子供も、モンスターとの戦いに巻き込まれる運命みたいよ・・・」
~ラウラ視点~
何故だ! 何故教官はドイツ軍に戻ってくださらないのだ! あんな、ISをファッションのような物と勘違いしている者達のところにいるべきではない!
必死に説得をしてみたものの、教官には「選ばれた人間気取りか」といわれる始末。このままでは、教官に私を見てもらえない・・・!
「どうすれば良いのだ・・・」
「力を見せれば良いのだ」
「っ!?」
この学園には少ないはずの男の声が聞こえ、私は後ろを振り向く。そこには、暑いというのに黒い外套に身を包む男が居た。顔までは見ることは出来ない。それなのに、こちらを嘲笑っているような気がした。
一体、どうやってこの学園に入ってきたのだ? 学園の警備は厳重だ。来校者のカードも提げていない。まさか・・・
「貴様、何者だ!?」
「あまり詳しくは言えないな。・・・おっと、そのナイフで私を殺せると思うなよ? 私を殺せるのは吸血鬼のような人間の力を超えるような者だ」
男から溢れるのは殺気。さっきも教官から、覇気とも呼べるようなものを浴びた。拒絶されるような恐怖に対して、今浴びているのは、食われるような恐怖に身を包まれている・・・!
ナイフを抜く手が動かない。それどころか足が震えて、声も出せない。なんなんだ、この男は?
「ふむ、無闇に抵抗しないのは良い事だ。さて、君は教官とやらに振り向いてもらいたいのだな?」
私はコクリと頷く。
「ならば、力を見せればよい。力と言うのは無限だ。君は無限の可能性があると思わせるんだ」
そう言うと、男はどこからか紫色のような宝石を取り出した。何か禍々しさを感じる・・・。
「これを君のISに着けなさい。そうすれば、普段よりも更に力を引き出せるだろう」
私は恐る恐るその宝石に触れる。
その時だ。何か得体の知れないものに身体を覆われる気がした。あらゆる物を破壊したい。そんな衝動に駆られる。
「っああぁぁぁぁぁああ!」
早く・・・・あの織斑イチ夏を倒シテ、教官ニ認メテモラウンダ・・・。
「ふっふっふ・・・。さぁ、その狂竜結晶を使って、君の憎む存在を叩きつぶs――――――」
「何してやがるんだ、テメェ!」
「ボーデヴィッヒさんに、何をした!」
アノ二人ハ確カ・・・。イヤ、今ハどうでも良イ。早ク奴ヲ・・・・
「すまん、ボーデヴィッヒ!」
「ガァッ!?」
あれ? 視界が・・・・・・。
さあ、最後に出てきた黒男。正体は・・・アイツです。
次回もお楽しみに!