またもや遅くなってしまって申し訳ありません。今年中に臨海学校を書けるかな?
目の前にいる相棒が纏うISは、一言で言うなら「黒」だった。見た感じは全身真っ黒なラファール・リヴァイブだが、よく見るとスラスターが少し大きかったり、非固定浮遊部位はナイフのように鋭くなっている。
なるほど・・・。確かに相棒らしい感じが漂う機体だな。
「随分と遅い登場だったな、相棒」
「スーツを着るのに手間取りましてね・・・。これからは下に常時着用ですかね?」
「ははっ、そうした方がいいと思うぜ」
俺と相棒で軽く喋っていると、ボーデヴィッヒがニヤリと笑みを浮かべながらレールカノンを構える。相棒のクラスメイトである鈴が、すぐに叫んだ。
「い、十六夜! 危ない!」
「消えろぉ!」
カノン砲が火を噴く。このままだと直撃するだろう。だが、俺はしっかりと見ていた。・・・相棒がニヤリと笑っているのを。
それはまさに一瞬だった。相棒の手が少し光ったかと思うと、その手にはセシリアが使っていたインターセプターに似たようなものが握られていた。その瞬間にそのブレードを投げつけて砲撃を相殺し、すぐにもう一本のブレードを出す。そして・・・
「き、消えた!?」
「見ろ。彼はボーデヴィッヒのところにいる。は、早すぎる!」
―――――ガギンッ!
そんな鈍い音が聞こえたかと思うと、カノン砲が切り裂かれて驚いているボーデヴィッヒと、ブレードを握る手を振り上げている相棒がいた。
よっぽど切れ味が良い武器なんだな。箒と鈴はあんぐりと口を開けている。俺がアリーナの上を見ると、黒い粒子がだいぶ取れたセシリアの機体が見えた。すぐに通信を繋ぐ。
「セシリア、もう大丈夫だ。すぐに来てくれ」
「ようやくですか? ふぅ・・・って、何ですのこの状況は!?」
「なぁに。相棒が奴の動きを止めてるだけだ」
すると、ボーデヴィッヒのやつが手を前にかざした。ニヤリと笑みを浮かべたかと思うと、相棒の周りがまるで水に油を混ぜたかのようにグニャリと歪んだ。それと同時に相棒の動きがピタリと止まってしまう。
「っ!?」
「喜べ。貴様はこの学園で初めて、AICの餌食になるのだ!」
「あ、あれがドイツの第三世代兵器・・・。あんな簡単に動きを止めてしまうんですの!?」
「驚いてる場合じゃないでしょうが! とっとと十六夜を助けるわよ!」
「私も加勢するぞ、鈴!」
鈴と箒が、相棒を助けるべくボーデヴィッヒへと突っ込む。・・・駄目だ。嫌な予感がする! こういうときに限って当たってしまうんだ!
俺はすぐに二人の後を追う。そしてグラビド・ヘッドを肩から外して浮遊させる。少しでも盾になれるようにだ。
「貴様らなら、そう来ると思っていたぞ」
「がっ!?」
「ぐうっ!?」
「ふっ、しょせん格闘戦しか能がない日本と中国。AICで止めるまでもない。ワイヤーブレードで十分だ」
ボーデヴィッヒに斬りかかろうとした二人はワイヤーのような物に絡まれる。そして思いっきり振り上げたかと思うと地面に叩きつけた。何度も、何度も。
俺はすぐにファイアテンペストを展開して、ボーデヴィッヒに斬りかかる。俺のほうに視線が行ったのでワイヤーの動きは止まるが、今度は俺の動きが変な歪みで止められた。
「なん・・・だよ、これっ!」
「ふふふ、凄い。凄いぞこれは! これなら織斑一夏を叩き潰す事ができる!」
「やらせませんわよ!」
横からレーザーと二基のミサイルが飛んできた。どうやらセシリアが全てのビットをボーデヴィッヒに向けて放ったようだ。その途端、変な歪みが消えて俺の動きが軽くなった。
・・・まさか。AICの欠点は―――――
「何やってんだよ!」
突然、大きな声が響く。そこにいたのは白式を纏った一夏と、ラファール・リヴァイブカスタムⅡを纏ったシャルロット。どうやらアリーナでのこの騒ぎを見て慌てて来たらしい。二人は俺たちをありえないようなもので見る目で見ていた。
「一人の人間に対して複数でやるって、恥ずかしくないのかよ!」
「違うんだ一夏! いきなり私達を撃ってきて・・・」
「だからってリンチをするのか!? それが専用機持ちのやることかよ!」
「お願い! 話を聞いて一夏!」
一夏は話を聞こうとしない。そうだよな。事の始まりを知らないで見たら、明らかに俺たちがリンチしているように見えるもんなぁ。箒や鈴たちが必死に説得してるものの、頭に血が昇ってる一夏は聞く耳を持とうとしない。
「これはどういうこと、真?」
「ボーデヴィッヒが、いきなり俺たちに撃ってきやがったんだ。セシリアはそれでエネルギーを減らされたし、箒と鈴はワイヤーブレードで叩きつけられてる。俺や相棒はまぁ大丈夫だが、第三世代兵器をみごと見せ付けられたね」
「それじゃあ、これは・・・?」
「あの雰囲気じゃあ、生身に戻ってもISでやられそうだったからな。それぞれで押さえてた」
もし一方的に攻撃をくらってたら、俺たちパイロットは殺されてたかもしれないだろう。そうならないように、ボーデヴィッヒの攻撃を受けてるやつを見かけたら、攻撃で気をそらしてやるという風に押さえてたんだ。
「その、ごめん。僕たち勝手に変な勘違いをして・・・」
「別に良いよ。一夏には、あとで説明しておいてくれ」
「うん。分かった」
さてと、誤解を早く解くためにもさっさと解散して一夏に説明を―――――
「死ねぇっ! 織斑一夏ぁ!」
いきなり、ボーデヴィッヒが手からブレードのような物を出して襲い掛かってきた。マズイ! これではさすがに間に合わない!
・・・だが、それは気鬱に終わった。箒が打鉄のブレードを展開して、ボーデヴィッヒの攻撃を防いからだ。
「ちっ! またしても邪魔をするか!」
「一夏! これでも私達を信じないのか!? このままじゃお前は確実に殺されるぞ!」
「ほ、箒・・・」
手刀と刀の鍔迫り合いが起こる。だが、相手は軍隊で過酷な訓練を受けてきたやつだ。剣道で鍛えている箒とはいえ、徐々に後ろへ押されていく。俺はすぐにブースターを噴かしてボーデヴィッヒを羽交い絞めにする。
「ぬぐぁっ! この打鉄もどきが!」
「へへっ、俺の力を舐めるなよ!」
「一夏さん。今のボーデヴィッヒさんはヤバいです!」
「十六夜の言うとおりよ! このままじゃアンタ、本当に殺される!」
「「「一夏っ!!」」」
その時、一つの影がアリーナに入ってきた。そして静かに一言。
「そこで何をしている、ガキ共」
それは、我らが担任織斑先生だった。
アリーナを出た後、俺たちは事情聴取をされてた。といっても、アリーナの監視カメラが始まりから終わりまで映していたので、俺たちは過剰防衛による厳重注意、ボーデヴィッヒはISの一時没収とアリーナの使用禁止の罰を受ける事になった。
取調べが終わった後、一夏が俺たちの前で謝罪をした。勝手に勘違いをして勝手に熱くなってしまったと、彼は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「だからさ、頭を上げてくれって。始まりを知らない奴が見たら、確かにあれはリンチの光景なんだからさ。お前が怒ってしまうのも無理はない」
「だけど・・・」
「それに、謝るなら私達ではなく、篠ノ之さん達でしょう?」
「あっ・・・」
「行って来い。一夏!」
俺が言ってやると、一夏は大急ぎで走っていった。さて、殆どいないな。よし。
「相棒。ボーデヴィッヒの機体だが・・・」
「間違いありませんね。彼女は狂竜ウイルスに侵されてます」
凶暴性を引き出し、見境なく襲い掛からせるウイルス。まだナナシさんも研究中のものだ。厄介なのは、感染個体からの攻撃を受けると、受けた者も感染していくということだ。セシリアが掛かっていたのはまだ初期症状だから何とかなった。身体の動きがどんどん鈍くなっていくのだが、敵を攻撃し続けたり、とにかく激しく動く事でそれを克服できる・・・らしい。
問題はボーデヴィッヒだ。彼女は、身体に大ダメージを与えなければならないくらいまで感染してしまっている。今はまだ大暴れしている段階だが、このままでは彼女の命すら危うくなる。いや、暴れてしまう時点でヤバイんだけどよ・・・。
「もしタッグトーナメントで彼女が出場したら、大変な事になりますね・・・」
「あぁ。それに、いつ一夏を殺すか分からないぞ、あいつ」
「厳重警戒、ですね」
「いつでも一夏を守れるようにしておこう。能力はあまり使わないように、な」
「了解です」
俺たちは頷くと、それぞれの部屋へ戻る事にした。・・・あれ? そういえば相棒って誰と同室なんだ?
「ただ今帰りました」
「・・・お帰りなさい」
ミツルが部屋に戻ると、水色髪の女子が振り返ってくれた。眼鏡をかけているが、その下から見える瞳は、どこか疲れているような感じがした。ミツルは少し溜め息をつくと、彼女の近くに腰掛ける。
「今日も専用機の組み立てですか? 簪さん」
「うん。こうでもしないと、お姉ちゃんに証明できないから・・・」
「証明?」
「・・・あなたには関係ない」
ミツルは肩を竦めて苦笑いするしかなかった。部屋が同室になってから、彼女・・・更識簪は徹夜をすることが多い。よく早めに寝るように声をかけているのだが、それでも疲労が消える感じがない。正直言って不安だ。姉を見返すらしいが、その前に倒れてしまうのがオチだ。
「(やれやれ・・・。問題が山積みですね)」
そう思いながら、ミツルは紅茶を淹れる準備を始めるのだった。
次回がトーナメント戦です。しかしボーデヴィッヒはISを一時的にですが没収されています。果たして戦いに出れるのでしょうか?
それでは、次回もお楽しみに!