インフィニット・ストラトス~竜の血を継ぐ者~   作:G大佐

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真が少し切れます。もしかしたら、シリアスな場面かもしれません。

ちなみに一夏たちは、原作通りのイベントになっていますw


25話 真、切れる。

 俺たちは、デカイ店こと『レゾナンス』に来ている。こう、建物の中に店があるってのは不思議な雰囲気だ。幻想郷では併設ってのはあまり無いからなぁ。

 上をチラッと見ると、なにやら英語とかで書かれた看板やら和食レストランの看板やらがぶら下がってる。うへぇ、迷子になるな。こりゃあ。俺と相棒は本音たちについて行き、レゾナンスの案内図を見る。

 

「んで、本音たちは水着を見に行きたいと・・・」

「うん~。東風やんの泳ぐ姿とかも見たいし~」

「はあ!? 俺の水着か!?」

「うん。東風やん、家に帰ってないんでしょ? 水着とか無いと思うし、買っておくべきだと思うんだ~」

「マジかよ・・・」

 

 水着、かぁ・・・。テレビで見たあのパンツみたいな奴だよな? 幻想郷にいた頃はフンドシだったから、どうにも実感が湧かねえ。

 ・・・あ、相棒のやろう、俺が悩んでることを笑ってやがるな? だが、笑ってられるのも今のうちだぜ?

 

「十六夜君の水着も・・・買うよ?」

「えぇ!?」

「だろうな。俺だけ泳いで相棒だけ泳がないなんて、おかしいもんなぁ?」

「で、ですが・・・何も私まで・・・」

「女子達はお前の水着姿を期待してるかもしれないんだぜ? 期待を裏切ることは出来ないんじゃないか?」

「ぐっ・・・! この野郎・・・・!」

 

 ふっふっふ。相棒。口が悪くなったって、俺とお前が水着を買うって運命は変わらないぜ。

 結局、相棒は頭をガックリと垂らして、買うことを決めた。と言うわけで、二階へレッツゴーだぜ。

 

 

 

 

 

 

「・・・簪、本音。俺たちは水着を買いに来たんだよな?」

「う、うん」

「そうだよ、東風やん?」

「そうか。だけどよぉ――――――――今の世の中は、男に女物の水着を買うように勧めてるのかい?」

 

 目の前にある水着売り場。ものの見事に、女物しかねぇ。ピンクやら黒やらカラフルな水着が盛りだくさんだ。きっと一部の男だったら、狂喜乱舞してこの売り場に突っ込んだことだろう。だが俺たちは、そこまで変態じゃねえ。だからこのように、一歩も入れないって訳だ。

 

「レ、レゾナンスにはちゃんと男物もあるよ・・・?」

「ですが、そのような場所なんてどこも・・・・」

「あったよ~!」

 

 見ると、売り場の端っこに、ちょこんと男物の水着が陳列されている場所があった。

 ・・・マジかよ。え、いくらなんでも目立ってないだろ! 俺と相棒は思わず顔を見合わせる。簪と本音にいたっては、ありえないという風な表情だ。

 すると、簪が口を開いた。

 

「多分、女尊男卑によるものだと思う」

「はぁ?」

「こう言ったらなんだけど・・・男物を売ることに、抵抗があるんじゃないかな?」

「「・・・・・・・・・」」

 

 相棒は眉間にシワが寄ってる。多分俺も、同じ表情をしてるだろう。

 女尊男卑。呼んで字の如く、女性が尊ばれ男性は疎まれるという、俺たちからすればクソッタレな思想。その理由が、「最強であるISを動かせるのは、女性だけだから」。

 そんな理由だけで、男という存在を全否定する奴だっているらしい。実にくだらない。ISを動かせるかどうかで強弱を決め付けるなんて、どれだけ浅はかなんだろうと思う。

 

「こ、東風やん。顔が怖いよ・・・」

「え? ・・・あぁ、悪い。やっぱり男である俺からすれば、こんな思想は嫌だからよ」

「私もです。そもそも、ISに乗ったことがない人が偉ぶってるのは、気に入らないんですよ」

「乗ってる人の中にも、いるんだけどね。女尊男卑の人・・・」

 

 本当、外の世界ってのは驚きのほかにも苛立ちなんかもあるんだな。そこは、ちょっと気に入らないところだ。

 

「ちょっと、アンタ達。そこ退きなさいよ」

「ん?」

「あんた等がそこに突っ立てるから、ワタシ達が店に入れないんですけどー」

 

 不機嫌そうな女の声がしたので振り返ると・・・・・・・なんつーか、すっげぇ気色悪い化粧をしてる女が3人ほどいた。そんな女3人衆は、俺と相棒に対して侮蔑の視線を送っていた。

 もしかしてこいつ等、女尊男卑の思想を持つ奴等じゃないよな?

 

「すいません。すぐに退きますので。ほら、真さん。行きましょう」

「あ、相棒?」

「・・・私たちはIS学園の制服を着ているんですよ? 彼女達が私たちに変なあてつけでもしたら、学園に迷惑をかけてしまいます」

「・・・あぁそうかい」

 

 気に食わないが、相棒が小声で言った事はもっともだ。俺は苛立ちをグッと堪えて、黙ってその場から離れようとする。

 だがそれを、肌を痛々しいくらいに茶色くしている女が呼び止めた。

 

「ちょっと待ちなさいよ。アンタ、今不機嫌そうな顔したわよね? 何様のつもりよ?」

「・・・それってもしかしなくても俺のことか?」

「アンタをこうやって呼び止めてるんだから自覚しなさいよね。アンタ以外に誰がいるのよ」

「そうかい。んで? 俺が不機嫌そうな顔をして、アンタに不都合があるのか?」

「男の癖に、なにそんな顔してんのよ!」

 

 その瞬間、俺の頬に痛みが走った。つまりはビンタされた。俺の周りには、唖然とする者とクスクスと笑ってる者の二つの人間がいた。当然、簪たちは前者だ。

 

「素直に『すいませんでした』って言っていなくなればよかったのに、何よそのツラ? 男の癖にISを動かしちゃってさぁ、調子に乗ってるんじゃないの!?」

「・・・・・・・・・」

 

 俺は返事をすることも無く黙る。なぜか?

 ・・・・・・・無性に苛立ってるからだよぉ!

 もしビンタした相手が、俺のことが嫌いで且つ俺も顔を知っている奴だったら、ビンタされてもそこまでイラつかなかった。俺が調子に乗った覚えが無くても、相手にとってはそう見えたかもしれないからな。だが今回は、見ず知らずの奴にいきなりのビンタ攻撃を受けたのだ。しかも「男の癖に」という単語を繰り返して。

 この事に俺はかなり苛立ってるんだぜ? これで暴れてないのがまだ良いほう――――――

 

「そもそも男なんて育てるこいつの母親ってさぁ、ロクでもない奴なんじゃないの?」

「ありえるー! こいつのお父さんなんか、絶対にブサイクに決まってるって!」

「「「キャハハハハハハハハハハハハハ!!」」」

 

 

 

 

 

           あぁ? 今、なんつった?

 

 

 

 

 

 俺の中でブッツンという音が聞こえた気がするが、気のせいだろう。

 今こいつ等は何て言った? こいつ等・・・俺の父さんと母さんを馬鹿にしたか?

 

「こ、東風やん・・・」

「東風谷くん・・・?」

 

 俺の身体が、自然とブルブルと震える。それと同時に熱がこもっていくのが分かる。本音と簪が何か言っているような気がするが、気のせいだろう。

 

「真さん! 落ち着け!」

 

 あぁ駄目だ。もう我慢できねぇ。俺の大好きな父さんと母さんを、こいつ等は・・・! こいつ等は・・・!

 

「・・・黙れよ」

「は? 何を言っt「黙れっつってんだろうが!」ヒィッ!?」

「俺のことを何て言おうが関係ねえ。だがな・・・だがよぉ・・・俺の親を馬鹿にすることだけは、絶っっっ対に許さない!!」

「ア、アンタ、もしかしてファザコンとマザコンかよ。キモイわ!」

「あぁそうだろうな。周りから見れば気持ち悪いだろうなぁ。だが! それでも俺は、父さんと母さんが大好きなんだよ!」

 

 目の前の女は足をガクガクと震わせながら、俺に何かを言おうとしてくる。だが震えてるせいでまともに喋れていない。久しぶりだぜ。親を馬鹿にされてここまで切れたのはよぉ。

 いっそのこと能力を発動してこの女をぶっ飛ばそうかと考えた矢先に、凛とした声が聞こえた。

 

「一夏の次はお前達か・・・。何をしている」

「お、織斑先生・・・」

「ブ、ブリュンヒルデ!? なぜここに・・・」

「私がショッピングモールにいてはおかしいか? ・・・さて、これは一体何があったのだ?」

 

 声の正体は、俺や一夏の担任こと織斑先生だった。隣には、この状況にしどろもどろになっている山田先生もいる。いきなりの先生の登場に、俺の身体から熱が抜けていった。

 

「東風やん・・・」

「・・・悪い、本音。怖い思いをさせてしまった」

「・・・私は、東風やんのお母さんやお父さんを馬鹿にしないよ?」

「え?」

「逆に、私もムカーってなったもん。東風やんが楽しそうに教えてくれるような人、私は会ってみたいな~」

「本音・・・」

 

 あぁ、本当に彼女は優しい。俺は、本音の笑顔をみて、心が温まるのを感じた。

 すると、相棒や簪から話を聞いていた織斑先生が、女3人衆を睨み付けた。

 

「話は聞かせてもらったぞ。彼らが貴様らの要求に応えてその場から去ろうとしたが、そこの一人が私の生徒の表情が気に入らないという理由で呼び止めた挙句、手を挙げたそうだな? 無抵抗の者にいきなり手を挙げるとは、たとえ女性優先法と言うものがあっても、警察は見逃す事は出来んぞ」

「ぐっ・・・!」

「おまけに、その家族まで馬鹿にするとは・・・。それは、相手が織斑一夏だったら、家族である私を馬鹿に出来るということだな? ん?」

「そ、そんな訳では・・・・」

「とっとと行け! 貴様らのような存在は、目障りだ!」

 

 そう言うと、女たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。それを冷めた目つきで見届けた先生は、今度は俺のほうへ向く。

 

「お前の気持ちは分かる。だが、あまり余計な騒ぎを起こすな。お前は感情的になる面がある。もっと抑えることが大切だという事を学べ」

「・・・・・・・・・・・・・すいませんでした」

 

 俺はただそう言うと、そのままトイレの方へ走って行った。

 

 

 

 

 

「ぐっ・・・・・ううっ・・・・・」

 

 トイレの鏡がが歪んで見える。理由は簡単だ。俺は今、泣いている。

 

「馬鹿にされた事に対して切れちゃあ、いけないのかよぉ・・・!」

 

 嫌なことを嫌と言ってはいけないのだろうか? あんな命令っぽい口調で言われたら、不機嫌になるだろうが。そんな顔をしただけでも駄目だなんて・・・。外の世界は窮屈過ぎる。

 

「あーあー。やっぱり泣いてましたか」

「・・・相棒か」

 

 どうやら俺の後を追ってきたらしい。相棒は、やれやれといった表情で俺を見ていた。正確には、鏡に映っている俺の顔を、だ。

 

「まあ、気持ちは分かりますよ。私だって実際は、能力を押さえ込むのに必死でした。下手したら私が暴れてたかもしれない」

「・・・この世界は、本当に女尊男卑なんだな。改めて実感しちまった」

「そうみたいですね」

「父さんや影夜さんのことといい、外の世界って、汚い世界なのかな・・・」

 

 俺はポツリと呟く。父さんが俺と同じ位の頃、能力のことを知った人たちは父さんを忌み嫌ったらしい。影夜さんに至っては母親と父親、すなわち相棒の祖父ちゃんと祖母ちゃんに当たる人を殺されている。

 その話を神奈子さまや文姉ちゃんに聞いたことがあるから、最初は外の世界は行きたくなかった。でも、本音や一夏、箒やセシリアに鈴、最近ではシャルルやラウラのような仲間達と出会えたことで、俺の中での外の世界の印象は変わりつつあったんだ。

 だけど今は、それが元の状態に戻りつつある。外の世界はやっぱり汚い世界。そういう思いが芽生え始めてしまった。それを言うと、相棒は否定した。

 

「例え話をしましょう。埃がたくさん積もってる部屋があると思ってください」

「え? ・・・まぁ、汚い部屋だよな」

「貴方はそれを嫌いながらも入ってしまいます。すると、紙などで被せられていたのか、埃が被ってない金細工を見つけました。・・・どうです?」

「・・・なるほどね」

 

 相棒の言いたい事は分かった気がする。埃だらけの部屋ってのは外の世界を指してるんだ。そして部屋で見つけた金細工ってのは、本音たちのこと。

 つまりこう言いたいんだ。「外の世界全体が汚いというわけではない」ってな。

 

「その金細工を見れるだけでも、幸せだと思いませんか? ・・・まだ外の世界を見限るのは早いですよ」

「へっ。相棒には励まされてばかりだ」

「まさか。真さんだって、私が挫けそうになったときに、熱い言葉をかけてくれるじゃないですか」

「ありゃあ父さんとかの受け売りだ」

「そういうことにしますよ。そろそろ出ましょう? 本音さんたちも付いて来てるので、待たせてるんですよ?」

「おっと、そりゃいけねえ。早く行こうぜ!」

 

 久しぶりに怒って、泣いて、心が軽くなったような気がする。

 見限るのはまだ早い・・・。そうか、そうだよなぁ。もう少しだけ、外の世界を見てみよう。そう思いつつ、俺は相棒の後を追った。

 




次回、真たちは海へ!
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