……ちなみに今回は、例の『白騎士事件』が出てきます。
これに関しては、完全に独自解釈です。というか、思いっきりご都合主義になってるかもしれません。
束は、目の前の光景が信じられなかった。変な空間を潜ったかと思えば、神社に来ていたからだ。紫と話している男二人は何かを喋っているし、巫女は頭に手を当てて「やれやれ」といった感じで呆れている。
「こ、こらー! 束さんを無視するなー!」
「あら、ごめんなさいね。護たちが思った以上に食いついてきてねぇ」
「そりゃそうでしょ。真の首飾りについて知ってる人間が現れたんですから」
「とりあえず、ここは一体どこ!?っていうか金髪のアンタは何者なのさ!?」
その時、僅かながら空気が凍りついた。紫が、妖怪としての威圧をほんの少しだけ放ったからだ。霊夢は目を少しだけ開いて驚き、護と真は足が震えた。
「自己紹介ね。私の名前は八雲紫。この世界の管理者みたいな存在と思ってちょうだい」
「(怖っ!絶対にちーちゃんよりも上の存在……。もしも政府の人間と同じように接したら、殺される!)」
束にとっては、久しぶりの恐怖だった。しかし、彼女は負けじと質問を続ける。
「紫、ね。改めて聞くよ。ここは一体どこ?紫はここに来るとき、『こっちの世界』と言っていた。異世界と見て良いのかな?」
「半分正解ね。ここは幻想郷。科学などによって存在を否定されたものたちが集う世界。だけど、ここは完全な異世界ではなく、世界の裏側にあるようなものよ」
「へぇ~。ということは、吸血鬼とか妖怪なんてのも居るのかな?」
「えぇ。当たり前よ」
「…………え?」
予想外の答えだった。冗談で聞いたのに、返ってきたのは「妖怪はいる」という答え。束は、思わずその答えを否定する。
「う、嘘だ! そんなの架空の存在でしょ!?」
「あら? じゃあ、ついさっき貴女が潜ったスキマはどうやって説明するのかしら? 何も無い空間から裂け目が現れるなんていうのは、科学で解明できるかしら?」
「うぅ~……。じゃあ、そこの巫女や親子はどうなのさ?」
「彼らは人間だけど……三人とも。見せてあげなさい」
霊夢と護、そして真は頷くと、自分の能力を発動した。
霊夢は空に浮かび上がり、護は鎧竜・グラビモスの甲殻を纏う。真も甲殻を纏うが、それはグラビモスの幼体であるバサルモスのものだった。
これには、さすがの束も否定しようが無い。機械無しで空を飛べたり、いきなり岩のようなものを纏うことが出来る技術は、見たことも聞いたことも無いからだ。
「どうかしら?幻想郷には、『ありえない』と呟いてしまいそうな能力を持つものがいるのよ」
「……参ったなぁ。降参だよ。まさか妖怪が実在するとは思わなかったなぁ」
「まず、束への説明は終了ね。次は貴女に説明してもらう番よ」
「どうして、真にもISを動かせるのかしら?」
束は始めに、真の首飾りを見せてもらうことにした。触れると、そのISが喜んでる感じがした。母親にあえて嬉しいのだろうか?彼女は思わず微笑んでしまう。
「可愛いね。私が触れた瞬間、『お母さん!』って言ってきた。これは間違いなくISだね」
「あの、何で俺が動かせてる事に、束さんは驚いていたんですか?」
真がISを起動させたと判った瞬間、束は思わず驚きの声を上げてしまった。それもそうだろう。本当に他の男が動かせていたのだから。
「それはね、ISは女性にしか動かせなかったからだよ」
「えっ!? まさか俺って……女!?」
「いやいや違うよ!? このISが、真くんに動かしてもらいたかったからだと思うなぁ~」
その時、真に疑問が生まれた。何故女性にしか反応しないのだろうか?
真が尋ねると、束は悲しそうな顔をした。
「……本当はね、誰にでも乗れるように作ったんだよ」
「じゃあ何で?」
「……『白騎士事件』」
「?」
「ISが世界中に広まるきっかけとなった事件だよ。これで世界は変わってしまったんだ」
束は紫や護にも聞こえるように、わざと大きな独り言を始めた。
宇宙に興味を持った束は、ロケットのような大きな物ではなく、もっとコンパクトな物で宇宙へ行けないだろうかと考えた。そして、全身を覆う鎧のようなもの……すなわちISの設計図を、学会に発表した。
「え?ISって、元々は全身を覆うものだったんですか?」
「そうだよ。そうでないと、大気圏を突破する時に危険じゃん。その衝撃を少しでも軽減する為に、全身装甲にしたんだよ」
束の話は続く。学会は、束の設計図を嘲笑った。しかし一部のものが、資金を提供してくれた。
早速開発に取り掛かる束。しかしその時……テロリストによって、ミサイル2341発が一斉に日本へ向けて発射されるという事件が起きた。
政府は束に、ミサイルをISで迎撃するように命令。束は「まだ不完全だ」と言ったのだが、政府の人間は出撃を強制する。束は、親友の織斑千冬に搭乗を頼み、彼女は全て迎撃したのだった。
しかし、ミサイルの破片などにより、完全に被害を防ぐ事は出来なかった。この大きな事件について報道陣が殺到したのは言うまでも無いだろう。その時に政府はこう言ったのだ。
『ミサイルを日本に向けて発射させたのは、篠ノ之束である』と。
「そんな……。捨て駒にしたんですか!?」
「信じられないよね。私を犯人扱いしたんだよ? その後に各国から、白騎士が現れなければ日本はもっと大きな被害だったと言って、ISの必要性を指摘して、私がある程度ISコアを作ったら、今度は国際指名手配。……私は人間が信じられなくなってきたよ」
なお、彼女の説明によると、後に作ったISコアの殆どが、千冬に対して狂信的な愛があるという。女性にしか反応しないのは、千冬=女ということから、全ての女を千冬と勘違いしてるらしい。
「この子だけが、空を飛ぶことを求めてたんだろうね。……はい。ありがとう」
「どうもです。ところで、人間を信じられなくなった束さんは、どうして俺とかには接してくれるんですか?」
「いやいや。私が信じられないのは、政府の人間とかのようなお偉いさんさ」
クスリと笑う彼女はどこか、孤独のように見えた……。
「要するに、このISが俺に反応するのは、空を飛びたかったから?」
「そう。この子はきっと、『空を飛ぶことには、男も女も関係ない』という事が分かってたからだと思うな~」
真が納得していると、紫と護がやって来た。
二人とも、かなり真剣な顔をしている。
「真」
「父さん。どうしたの?そんな顔して」
「実はな……このISは、幻想郷にあるとマズイ物なんだ」
「これを妖怪か人間が手にしたら、互いを滅ぼしあう大戦争が起きてしまうかもしれないの」
「そんな……」
「だがお前は、そのISを空に飛ばしたいのだろう?…行ってみないか。IS学園に…………外の世界に!」
真は驚いた。まさか、父の故郷でもある外の世界へ行く事になるとは思わなかった。
確かに、ISを纏って幻想郷を飛ぶのは危ない。妖怪と人間のパワーバランスも崩れる可能性がある。
束も、大きく頷いている。
「IS学園は、この子を動かす為の訓練とかも受けられるんだ。来てくれないかな?」
「でも、一度出たら戻れないんじゃ……」
「あら? 私を忘れてないかしら?」
「え? 紫さん?」
「私に頼めば、いつでもスキマを開いて家に帰る事が出来るわよ。それに、色々なことを知る良いチャンスじゃない。……行ってらっしゃいな」
ここまで言われたのでは、断れない。真は静かに頭を下げた。
「……よろしくおねがいします」
「決まりね。束。貴女には真の保護者代理人になってもらうけど、良いかしら?」
「勿論OKさ!」
こうして、真のIS学園入学が決定したのだった。
その日の夜、屋根の上で月を眺めていると、誰かが上がってくる音がした。振り返ると、母である早苗が隣に座ってきた。
「……いよいよ明日、行っちゃうんだね」
「母さん。俺、本当は寂しいんだ。母さんや父さんだけでなく、こっちの仲間と別れることが……」
すると、真は早苗に抱きしめられた。早苗の良い匂いが、不思議と気持ちを安心させる。
「母さんだって寂しいよ。大切な……大切な息子なんだもの。でもね」
早苗は、真と目で向き合った。その目には少しだけ涙が溜まっている。
「また帰ってこれる。そう信じているんだから……真も頑張りなさい」
「……うん」
真は最後に、力強く早苗に抱きついて・・・そのまま静かに寝てしまった。
朝。守矢神社には東風谷家全員と、紫、そして束が居た。
「それじゃあ父さん、母さん、神奈子さまに諏訪子さま。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「鍛錬は怠らないようにな」
「頑張ってきなさい」
「…………」
護だけ腕組みをして黙っている。すると、いきなり大声を上げた。
「真!」
「は、はい!」
「……お前は俺たちの家族だ。その事を忘れるな!」
「はい!」
「行って来い!そして世界を知れ。真!」
父の力強い声援を受けながら、真はスキマへ入っていった。
こうして、外の世界と言う新たな場所で、新しい物語が始まったのだ!
この場合、束は白なのでしょうか?黒なのでしょうか?
とうとう真は外の世界へ!次回から原作へ突入です!