それでは、どうぞ!
「熱っ! あっちぃ!」
砂浜に着くと、その熱さに思わず爪先立ちになってしまう。まるで地底にある砂風呂みたいだ。
「ふっふっふ。熱さに強い真さんでもこの熱さにはお手上げですか?」
「口角を引き攣らせながら言われても説得力ねえぜ、相棒? お前も熱いんだろ?」
「お前ら、なんで張り合ってんだよ・・・」
海パンを履いている一夏が、呆れた感じで額に手を当てる。ちなみに俺と相棒も同じようなタイプで、一夏が青、相棒が黒、俺は全体が緑だけど側面に白いラインが入っている。
熱い砂浜の上で火花を散らしていると、遠くから女子達の声が聞こえてきた。
「あっ、織斑くん達だ!」
「わぁ~。鍛えられてる~」
「っていうか、東風谷くんと十六夜くんも凄いって!」
「うそ・・・。十六夜くんって、意外とマッチョ?」
1組だけでなく他のクラスの奴らまで俺達の側まで寄って来る。一部の奴なんかは、腹筋を触ろうとして腕を伸ばしてくる。
「へぇ~。東風谷くんは身体にいっぱい傷跡があるって聞いたけど、本当だったんだね~」
「まあな。不快にさせちまったか?」
「ううん。むしろ、ワイルドって感じで格好良いかも!」
思えば、俺達のISスーツは胸の部分を隠してるから、身体の傷は一部しか見えてないんだよな。こうして全身を晒すのは初めてかもしれない。
っていうか、身体を触ろうとする腕が増えて、その光景はさながら蠢く触手だ。気持ち悪い!
「相棒、一夏。逃げるぜ!」
「は、はい!」
「おう!・・・って、海パンに手を伸ばすな!」
「いっち、にー、さん、しー」
「「ごー、ろく、しち、はち」」
俺たちは女子の大群から逃げた後、水泳競争をすることにした。だけどその前に準備体操。湖で泳ぐ前にも、欠かさずやっていたことだ。
ちなみに掛け声は、俺の後に相棒達が続く感じだ。
「い、ち、か~~~~~!」
「のわっ!?」
一夏の驚いた声を聞いて視線を戻すと、鈴の奴が一夏に飛び乗っていた。身軽な奴だなぁ。そしてそのままシュルリと駆け上って肩車の体勢に。
「ほら、体操が終わったんなら早速泳ぐわよ」
「お、おい! 準備体操しとけって!」
「大丈夫よ。アタシ、前世は人魚かもしれないし」
「しれない、かよ」
「つーか、こう堂々とくっ付くって勇気あるな、お前」
「ふっふっふ~。アタシは一夏と同じクラスじゃないからね。今日は目一杯イチャついてやるわ。と、いうわけで一夏! 海へレッツゴーよ!」
「あがっ! 頭をグリグリすんな!」
こうして一夏と鈴は海のほうへと行ってしまった。俺と相棒は、しばらく呆気に取られていた。
「あー要するに、だ。鈴はひたすらスキンシップを取って、一夏の好感を持たせる作戦に出たってことだな」
「そういうことですね」
「・・・とりあえず泳ぐか」
「・・・はい」
周りを見渡すと、日傘の下でゆったりとしているセシリアや、ちょっとオドオドしながらも友達と海へ向かっている簪など、かなり平和な光景が広がっていた。
こうしちゃいられねぇ。俺達も早く泳ぎたい! 目配せをすると、相棒も頷く。
「よし・・・行くぞオラァァァァァ!」
「あ~、待って~!」
「あらら!?」
走り出そうとした時に、待ったをかける声がして俺はそのままコケた。ついでに、砂浜に顔面から突っ込んだ。
「うおぉぉぉ! アッチィィィィ!」
「だ、大丈夫? 東風谷くん・・・」
ヒリヒリするような感じに涙が出そうになるが、何とか堪える。そして声のしたほうを見ると、そこにはいつも本音と行動している相川と、自称ウザキャラの岸原がいた。そしてその後ろには本音がいるんだが・・・
「本音、お前・・・暑くねえの?」
「ふっふっふ~。これはね~、着ぐるみタイプの水着なのだ~!」
「はあっ!?」
彼女が着ているのは、部屋で寝巻きとして着ているものと大差ない、狐(?)の着ぐるみだった。見るからに暑そうだな・・・。あれ? 確か俺達と一緒に水着買いに行ったよな? 買ってなかったのか?
すると、相川が呆れたような感じで、岸原はニヤニヤした感じの顔をしていた。
「もう、騙されちゃ駄目だよ、東風谷くん!」
「本音ってば、見せるのが恥ずかしいからって着ぐるみ着てるんだよー」
「わわぁ!? あっちーにリコリン、何言ってるのさ~!?」
「・・・え?」
「理子!」
「ふっふっふ・・・。後ろ取ったりー!!」
本音が何か慌てた様子で二人を止めようとするが、岸原が後ろへと回る。え? まさか・・・ファスナーを降ろす気か?
「えーい!」
「あうあ~~~~!?」
「さぁ、本音のナイスバディをごらんあれー!」
後ろへ対処する事も出来ずに、そのまま着ぐるみを脱がされる本音。
「あうぅぅ・・・。み、見ないでよぉ・・・・」
・・・・そこには、女神がいた。俺は水着に詳しくないからどういうタイプなのかは分からない。ただ、普段のISスーツとはまた違った・・・色気があった。
それに、いつもは笑っていることが多い本音が、今は恥ずかしがっている。普段は見られない表情に、自然と顔が熱くなってきた。
「ねぇ、もしかして東風谷くんと本音って・・・」ヒソヒソ
「うん。お互いのことが好きだよ。でも・・・」ヒソヒソ
「「自分の恋心に気がついてない!」」
どうしよう。本音はモジモジしながら俺のことをチラッと見ている。これって、水着のコメントをすればいいんだっけ?
で、でも何て言えばいいんだよ!? 『似合ってるな』だけではシンプルすぎるし・・・。ええい、もうどうにでもなれ。思ったことを言えば良いんだ!
「お、おう。結構似合ってるぜ。着ぐるみを着てるのが勿体無いくらいだな。うん・・・可愛いよ」
結局この一言しか思いつかなかったよ、チクショウ!
だが、本音は少しだけ目をぱちくりさせると、頬を赤らめながら微笑んで一言。
「えへへ・・・。ありがとう」
「~~~~っ! お、俺は泳いでくるぜ!」
か、可愛過ぎるだろう! 俺は顔が熱くなるのを感じながら、海へと走っていく。
顔が熱いのは、さっき砂浜に顔面からダイブしたからだ。そうに違いない、うん。
「ありゃりゃ~。東風谷くんは初心なのかな?」
「かもしれないねー。・・・本音?」
「可愛いって言われた・・・可愛いって言われた・・・可愛いって・・・・・・・」
「あー、これは思考が飛んでるね」
「早くくっ付いちゃえば良いのにねぇ」
「おおお・・・。マジでしょっぺえ。これが海の味か」
顔の熱さを冷ますために海へ飛び込んだが、少しだけ海水を飲んでしまった。そのしょっぱさに少しビックリする。
・・・うぅ。全然顔の熱が冷めねえ。最近の俺は、何か変だ。
「お? あれは相棒か?」
本音たちと話をしている間に何処かへ行った相棒は、まだ海に入らずに砂浜にいた。あいつの側にはシャルロットと、何かバスタオルお化けがいた。
・・・あ、シャルロットが何かニヤニヤしながらバスタオルお化けに話している。それに反応したのか、そいつがバスタオルを取った。その正体は、水着を着て髪型も少し変えたラウラだった。
「何だよ、ラウラじゃねえか。何だってあんな格好をしてたんだ?」
ラウラがモジモジしている。一方で相棒は、微笑みながら何かを言っている。
あ、ラウラが顔を赤くして走っていった。・・・すげえ。水面を走れる人間を見たのは初めて見たぞ。
「うし。一旦上がるか」
ちなみに砂浜へ戻ってきた瞬間、何故か女子が鼻血を噴出した。なぜに?
次は旅館での話を書いて、戦いですかね? 道のりは長い・・・。