少し、ピンチな状態になります。
~真が戦っている頃~
「あれが……福音」
私は思わず呟いてしまいます。銀色の翼を広げるその姿は、言うならば機械仕掛けの天使、でしょうか。悪魔の血をひいてる私からすれば、少しばかり嫌悪感があります。
「ましてや敵ならば……尚更!」
「一夏! しっかり当てなさいよ!」
まずは私たちが気を引かせましょう。私は、名称もないごく普通のブレードを展開し、接近します。相手は超音速で移動するみたいですが、私からすれば今の奴の動きは止まって見えます。
「ミツル、近付き過ぎは……」
「心配いりませんよシャルロットさん」
『!?』
「…………え?」
福音は全身装甲のため表情は分かりませんが、驚いている雰囲気がします。それもそうでしょう。
福音ですら感知できない速さで、懐に飛び込んだのですから。
驚いている隙を作ってしまったのが命取りです。すぐさまブレードで斬りまくります。身体を、腕を、翼を……!
「は、速い……。タッグマッチの時よりも速くなってる……」
「鈴さん! 衝撃砲を!」
「! わ、分かってるわよ!」
鈴さんが見えない砲弾を当てる。その時、無機質な声が聞こえました。
『敵機A、Bを優先対象に設定。排除』
「やはり私と鈴さんに注意を向けましたか。ですが」
「僕も忘れないでほしいな!」
シャルロットさんが、アサルトライフルで牽制します。作戦はおおむね順調ですね。後は……
「真さん、敵の動きが鈍りました。行けますよ! 福音を混乱させてください!」
真さんからの射撃で福音を混乱させ、その隙に一夏さんの零落白夜でフィニッシュ! これが私たちの作戦です。
……しかし、いっこうに返事がありません。
「真さん? どうしたんですか?」
《……………………》
「……真さん? 真さん! 応答してください!」
「どうしたのよ?」
「おかしい……。真さんからの応答がない!」
「真が!?」
鈴さんもシャルロットさんも驚きます。それもそうでしょう。掛け声には必ず返してくれた真さんからの応答がないのですから。
しかも援護射撃がいっこうに無い……。まさか、何かあったのか?
《ミツル、鈴、シャル! 緊急事態だ!》
「どうしたの、一夏?」
《封鎖してるはずの海域に、密漁船がいるんだ! 下手すると、福音の攻撃に巻き込まれちまう!》
「っ! 何でこんな時に入ってくんのよ!」
「最悪だよ……」
私だって、鈴さんと同じ気持ちですよ。死んでまで金が欲しいか!? 封鎖してるって言ってんのによぉ!
……おっと、取り乱してしまいました。今は冷静になるべきです。
《みんな、大丈夫だ。福音はミツルたちに気を取られてるんだろう?》
「敵がわざわざ言ってくれましたが……まさか!?」
《あぁ。作戦は少し混乱があったけど、続けるよ。零落白夜を当てる》
「ま、待ちなさい、一夏!」
《セシリア、速度を上げてくれ。少しでも気づかれないうちに……速く!》
《り、了解しましたわ!》
「一夏さん!」
《みんなは密漁船を頼む!》
功を焦り過ぎだ。焦りは余計な隙を生んでしまう。止めようにも、一夏さんは福音に接触しようとしてる。……クソ!
「鈴さん、シャルロットさん。二人は密漁船の護衛および誘導をお願いします」
「ミツルはどうするの?」
「真さんのところへ向かいます。何かトラブルがあったかもしれません」」
「……あぁもう! 本当に一夏も真もミツルも、あんた達三人はバカよ! 自分から突っ込んで行ってさ!」
「鈴さん……」
「行くわよ、シャル! ミツルも、真を引きずってでも戻ってきなさいよ!」
「……了解です」
鈴さんの言い方には棘がありますが、それは私たちを心配してくれてるのでしょう。その心配を無駄にしないためにも、私は急いで、真さんの待機場所へ向かう。頼む……! 無事でいてくれ……!
ハイパーセンサーに映ったのは、ISを解除して謎の男と戦う真さんでした。
「能力を使って戦ってる……? まさか、モンスターか!」
私も援護しなければ……。
《皆さん、避けてください! 福音の攻撃が来ますわ!》
「何っ!?」
その瞬間見えたのは……………
《がぁぁぁぁぁぁッ!!》
「一夏ぁ!」
もう少しで零落白夜が届きそうだったのに避けきれず落ちていく一夏さんと、悲鳴を上げるシャルロットさん。そして
「っ! 真さん! 真さぁぁぁぁん!」
「真ぉぉぉぉぉ!」
攻撃に巻き込まれる真さんの姿でした……。
負傷した一夏さんと真さんを運んで何とか帰投しましたが、空気はとても重いです。シシャルロットさんと鈴さんは想い人が意識不明の状態になっているということに気を落とし、セシリアさんは作戦失敗には自分に責任があると抱え込み、そして私は……相棒がISの攻撃を受けたことにショックを受けています。
幸い、寸前に鎧化して身を守ってたからなのか命に別状はありませんでした。しかしそれで威力を無くすことが出来るかというと、そうではありません。あくまで軽減するだけなのです。
完全に油断していました。心のどこかで、ISに巻き込まれるような行動はしないだろうと思い込んでいました。ゆえにこのような結果になってしまった!
「クソ……クソォ!」
俺は悪くないと正当化する自分と、俺が悪いと責め立てる自分。その二つの気持ちがごちゃごちゃになってしまい、思わず近くのゴミ箱を蹴飛ばしてしまう。
「ミツル」
「……ラウラさんに、簪さん」
「お前のそういう顔は、初めて見た」
「うん。いつも、微笑んでることが多いから……」
「……すいません」
確かに、人前で激昂するというのは初めてかもしれませんね。だからなのか、ラウラさんは意外そうな、簪さんは少し怯えたような表情をしています。
「ミツル、少し聞きたいことがある」
「何でしょう?」
「真のことだ」
「…………真さんの?」
「あぁ。あの時、真は福音の広範囲攻撃に巻き込まれたんだな?」
「はい」
「……なぜ、真は五体満足なのだ?」
「……仰ってる意味が分かりませんが」
「ISは、現代兵器を凌駕するパワードスーツだ。そんな奴の攻撃に巻き込まれたならば、手足が失われててもおかしくない。それなのに、なぜ意識を失ってる程度で済んでいる? 長い間タッグを組んできたミツルならば、知っているのだろう?」
マズいですね……。彼が無事だったのは、能力で鎧化していたからだ。だが知らない人が見れば、ましてや異能や異形を恐れるこの外の世界なら、彼は恐れられ、最悪の場合、敵とみなされるかもしれない。
「運が良かったのでしょう。爆発の衝撃波で気を失ったのでは?」
「狭い足場にも着弾してるというのにか? それに、あれは運が良かった程度で済む話ではない」
「ミツル……。どうしてはぐらかすの?」
「…………………………」
言えるわけないでしょうが……! このような時どうすれば良いんですか、父さん……!
ミツルがラウラと簪に迫られている中、読者の皆さんの予想通り一夏は白式のコア人格と出会う。彼はなぜ、突っ走ってまで強くあろうとするのか? それは……
次回を、どうぞお楽しみに。