「竜の血を継ぐ者」のお気に入り登録者の人数が、第一部「東方竜人帳」よりも少しだけですが上回りました。お気に入り登録してくれた皆さん、ありがとうございます!
「ここは……?」
目を覚ますと、俺は海岸にいた。足の裏からは砂浜の熱さが、耳には波の音が響いている。さっきまで福音と戦って……そうだ、福音!
白式を展開しようとするけど、ふと見ると待機形態であるブレスレットが無い。
「何で……」
「お兄ちゃんは、何で強くなりたいの?」
「え?」
声のした方へ振り返ると、白いワンピースを着て大きな帽子をかぶった少女がいた。表情は帽子に隠れて見えない。
「君は……?」
「お兄ちゃんには、とーっても強いお姉ちゃんがいるよね? それなのに何故強くなりたいの?」
どうしてこの子は千冬姉のことを知ってるんだろうか。俺の疑問にも答えず、少女は尋ねる。いや、質問されてるのに質問しようとしてるからか。
俺が強くなりたい理由。それは……
「大切な人を、失いたくないんだ」
「大切な人?」
「俺が弱かったせいで……妹を失ったんだ。そして千冬姉も悲しむことになった。そんなのはもう、嫌なんだよ……!」
俺が弱かったせいで、マドカは行方不明になってしまった。だからもう……失いたくないんだ。大切な人を。
「……大切な人って、家族? それとも恋人?」
「な、何で恋人が……」
「お兄ちゃんは気づかないの? お兄ちゃんに恋をしている人に」
恋……俺を好きだと思ってる人が!?
「おい、これ以上は言うな。そこから先は本人が気づかなければ意味がない」
「あ、お姉ちゃん」
「……千冬姉?」
どこからか、騎士の格好をした女性が現れた。その雰囲気や口調は千冬姉そっくりだけど、何か違う感じもする。
騎士は、俺の正面に立つ。
「敵を倒さなければならない。誰かを失うことは嫌だ。それ故に、強くなりたいのか?」
「……あぁ」
「……お前は、強さを勘違いしている」
「え?」
勘違いをしている? 騎士の言ってる意味が分からなかった。
「求める理由は良い。だが、今のまま力を渡せば、お前は自ら死を選ぶだろう」
「死……」
「そうだ、死だ。死の先に何があるのか、お前は知っているのか?」
そんなの……分かるわけないじゃないか。死んでしまったら……そこでおしまいだ。
「分かるわけないだろ……。そもそも、死にたくない!」
「だが、お前の求める強さとは、自己犠牲の上に成り立ってしまっている。それは強さではない。自殺志願、あるいは無謀、蛮勇とも言う」
「で、でも、誰かが前に立たないと……」
「仲間を信じてよ!」
大きな声が聞こえた。その方を見ると、緑色の長い髪をしていて巫女服を着ている少女がいた。しかも、彼女の周りとその後ろは森が出来ており、今までいた海辺が一変して湖になっていた。
「お前は……そうか。コアネットワークを使って入ってきたのか」
「そうか~。あのお兄ちゃんは君の声が聞こえるからね~」
二人は納得してるけれど、巫女少女は怒りながら俺に近づいてくる。
「信じてくれる人たちを信じないで死んじゃったら、それこそ一番の裏切りだよ!」
「だからって、仲間たちを放置するなんて出来ないだろ!」
「それに、元々は入ってきた密漁船が悪いじゃん! 戦力を分散したからこうなったんだ! 分かる!? 君のせいで下手したら、待機してる生徒達が死んじゃってたんだよ!?」
っ! 言い方は厳しいが……冷静に考えたらそうだ。確かに、あのまま鈴たちと合流して福音に集中攻撃すれば撃墜できたかもしれないし、こうやって不思議な場所にいる間も、みんなが部屋で待機することは無かったかもしれない。
俺は心のどこかで、鈴たちが落とされるかもしれないって思ってたんだ。ミツルや真を除けば、みんな代表候補生だ。実力も彼女たちが上だ。それなのに……
「…………俺、どこかで浮ついてたんだな。千冬姉の弟だから、俺一人でも出来るって。そんな気持ちが、あったんだな……」
「一夏、お前に問おう。お前は何を望む?」
騎士が尋ねてくる。
……たぶん、俺の答えを聞いて、納得してくれないかもしれない。でも、言いたいことを言おう。
「俺は……弱いせいで誰かが泣くのを見たくない。せめて……みんなの足を引っ張らないような力が欲しい!」
「そうか……。それが、答えか」
「お兄ちゃんらしいね」
「強くなるのは茨の道。求める強さにたどり着けず、絶望するかもしれないぞ?」
「だったら、それも乗り越えてやる!」
「……そうか。そう言うのならば、使いこなして見せろ。新しい力を!」
「これまで以上に、攻撃の時にエネルギーを消費してしまうけど……乗り越えて見せてね!」
騎士と少女が、俺に微笑む。そういえば、あの巫女少女は……?
見ると、湖をパチャパチャと走りながら、俺のもとを去ろうとしていた。湖と森林がどんどん遠くなっていく。彼女の向かう先には、人影が見える。
「お兄ちゃんが目を覚ましそうだから、もう行くね」
「ま、待ってくれ! 君は……」
俺が言いかけた瞬間、目の前が眩しくなった。
それでも何とか目を開けたけれど、最後にハッキリ見えたのは、岩のようなものに覆われた男だった……。
一夏は一夏で、自分がどのように強くなるかを決意しました。次回は、福音へのリベンジの予定です。
それでは、次回もお楽しみに!