インフィニット・ストラトス~竜の血を継ぐ者~   作:G大佐

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この話で、臨海学校は終わりです! 今回は視点変更が多いため、第三者視点での話とさせていただきます。

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それでは、どうぞ!


37話 任務を終えて……

 星がはっきりと見える夜空の下。大海原を一望できる崖の近くに、千冬はいた。彼女の右手に握られている携帯には、『この場所まで来て』と書かれたメールが表示されていた。差出人は……束だ。

 いくら福音を稼働停止にさせたとはいえ、一夏や真たちが行なったのは無断出撃だった。千冬は彼らに説教をしたあと、身体検査などを真耶に任せてこの場にいる。

 

「メールで招いておいて隠れているとは、礼儀がなってないんじゃないか?」

「何言ってるのさ~。ドッキリ番組とかではよくあるでしょ~?」

 

 呆れたような、それでいて警戒しているような声で、背後に立つ束に声をかける。それに対して束は、いつも通りのテンションで答えていた。

 

「随分と珍しい文面だったな。いつもだったら顔文字とかを連発するようなメールだというのに」

「いやー、今回ちーちゃんに話したいことって言うのは、とても、とーっても大切なことだからね。流石の束さんも真剣になるよ」

 

 先ほどまでの間延びしたような話し方とはうって変わり、真面目な口調になる。その変貌に、千冬は思わず息を呑んだ。改めて見ると、その表情は真剣な目つきは今まで見たことが無かった。

 

「……お前がこうして話すという事は、よっぽどなのか?」

「うん。ちーちゃん……。君はもう一度、剣を取らないといけない」

「……なんだと?」

亡国機業(ファントムタスク)って言ったっけ? ちーちゃんなら聞いたことあるよね?」

 

 

「………………その亡国機業、壊滅したよ」

 

 

「何だと!?」

「それがどれだけヤバい事か分かるよね? この事を知ってるのはごく一部の奴らだけど、たぶんかなり混乱してると思うよ」

「……亡国機業を壊滅させるほどの組織が、IS学園を襲撃するかもしれんと? だから私に……『暮桜』にもう一度乗れと?」

「そういう事。これ、『暮桜』の解凍プログラム」

 

 素早く千冬に近寄り、それを握らせる。驚きと戸惑いの隙を突かれたため、嫌だと言って返すことも出来なかった。

 モンド・グロッソにて自分が乗っていた相棒。しかし千冬が持つ強さによって、それを恐れた者たちが弟と妹を奪おうとした。結果、妹を失った。だから決めたのだ、自らの牙を折ることを。だというのに……

 

「お前は……マドカに続いて一夏も失えと言うのか!?」

「ちーちゃん。亡国機業を壊滅させた奴らは、人を殺すことにためらいがないんだよ。それどころか喜んで殺すような連中だ。そんな連中に、いっくんを殺されても良いの?」

「…………もはや、逃げられないということか」

 

 千冬は、渡された解凍プログラムをポケットに突っ込んだ。

 

「ところで、お前の話し方はまるで敵のことを知ってるような口ぶりだな?」

「あは、分かっちゃう? そうだよ。私は『奴ら』のことを知ってる……いや、教えてもらったの方が正しいかな?」

「教えてもらった? 誰に?」

「……ごめん。それは()()言えないよ。私も命が惜しいからね」

「なっ……」

 

 亡国機業を壊滅させた存在すら驚きだというのに、その正体を知っていて且つ束ですら「命が惜しい」と言わせてしまう者がいるのだ。千冬にとって、それは大きすぎる衝撃だった。いつものふざけた態度だったなら、いつもの強気で問い詰めることが出来たかもしれないが、彼女のその申し訳なさそうな表情が、その気を失せさせた。

 

「私を呼んだ理由はそれだけか?」

「いや、もう一つあるよ。良いニュースと悪いニュースの2つがあったんだ」

「それなら、どちらから先に聞くか尋ねる流れだろうに……」

「それだと、大抵は悪いニュースからでしょ?」

「全く……。で? 良いニュースというのは?」

 

 額に手を当てて呆れる千冬。しかし、再び驚きの表情を束に晒すことになる。

 

「姉さん……」

「っ!? マド……カ?」

 

 束の後ろから、千冬を幼くしたような顔つきの少女……マドカが現れた。もう二度と会うことが無いと思っていた妹。そんな彼女が、目の前に居る。

 

「……マドカ!」

「姉さん……姉さん…………うぅ……」

 

 もはやこの場に、「凛とした織斑千冬」は居なかった。涙を流しながら抱きしめるその姿は、「妹との再会に涙する姉」の姿だった。

 そして、しばらく抱きしめた後、マドカを撫でながら束に尋ねる。

 

「束。マドカはあの後、今までどこに……?」

「イギリスの非合法な研究所。多分、あの時に誘拐した連中……亡国機業が売り渡したんだよ。研究目的は、高いBIT適性を効率よく付加させる方法らしいけど……」

「……VTシステムのような、人工のブリュンヒルデを作るのが本当の目的なんだろうな」

 

 聞けば、かなり厳しい訓練をさせられていたらしい。幼いというのに大人がやるような訓練メニューをやらされたり、BIT適性を無理やり高めるような処置もしていたという。この事を聞いた千冬は怒りに震えた。すぐにでも『暮桜』の封印を解いて、イギリスに殴り込みをかけそうなほどの怒りだった。

 そんな千冬を、束は「落ち着いて」と宥めた。

 

「その研究所から研究データを盗んで、政府に流しておいたからね♪ 今ごろ職員の連中は路頭に迷ってるさ」

「そうか……。しかし、こうして生きて再会できるとは思わなかった。これから、マドカはどうすれば良い?」

「私のラボで検査したり治療したりするよ。無理やり高められたBIT適性は戻せないかもしれないけど、体の傷を癒すことぐらいは出来るからね♪」

「……何から何まですまない」

「も~、ちーちゃん! マドちゃんとも再会出来たのに、『すまない』なんて言葉は辛気臭くなるからダメ!」

「し、しかし……」

「『ありがとう』だよ、ちーちゃん」

「っ! ……そうか、言い直そう。……ありがとう」

「ふふふっ、どういたしまして♪」

 

 千冬が礼を言うと、束も満面の笑みで返す。その光景はまさに、親友同士のかけ合いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。真たち専用機持ちチームは機体をそれぞれ片付け、自分のクラスのバスに乗っていた。一夏の隣に座る真は大きなあくびをする。

 

「ふわ~あ。眠い……」

「眠そうだな?」

「何でお前は平気なんだよ……。お前も俺や相棒と一緒に、反省文と自分の機体についての報告書を書いてただろうが……」

「それは、お前が何度も書き直しを食らってたからだろ? 『自分の中にある竜の力を反映させてます』って何だよ」

「本当の事なんだけどなぁ……」

 

 真、ミツル、一夏の三人は、反省文だけで解放してもらえなかった。一夏は第二移行をした為、その性能を報告する羽目になった。真とミツルも、最初に報告された以上のスペックを見せてしまったため、その説明を求められたのだ。

 しかし、やけに吹っ切れたような顔をした真とミツルの二人は、「自身の中にある竜の力を、機体にも反映させた」と説明。当然納得されることなく、報告書の書き直しをさせられたのだ。そのため寝不足なのである。今ごろ二組のバスでも、ミツルは大きなあくびをしているだろう。

 

「あなた達が、男性操縦者さん?」

 

 声がした方を見ると、そこには二十歳くらいの、青いカジュアルスーツに身を包んだ女性がいた。ちなみに胸元は開けている。

 最初こそ頭にハテナマークを浮かべる二人だったが、その長い金髪を見て思い出した。

 

「確か、銀の福音の……」

「ナターシャ・ファイルスよ。私の大切な子を助けてくれたお礼をしに来たの」

「お礼……!?」

 

 突然、ナターシャは一夏の頬にキスをする。突然の事に一夏はおろか、隣の真も周りの女子も固まった。

 

「ありがとう、白い騎士(ナイト)さん♪」

 

 そう言うと、今度は真に顔を向ける。思わず「うえっ!?」と声が出てしまった。そして……真の頬にもキスをする。

 

「友好の意味でのキスよ、初心なドラゴンさん? それと貴方のその拳……。とても効いたわ。イーリと仲良くなれそうね」

 

 バーイと言うと、バスから降りて行ってしまった。二人ともまだ固まっている。そんな中、真に対して視線を向けている人物が二人いた。

 

「(む~。何で~? 何で東風やんがキスされたのを見ると、イラってしちゃったの~?)」

 

 一人は、真のルームメイトの本音だった。少しだけ頬を膨らませて怒っている。ナターシャにキスされたのを見てから、やけにムカムカするのだ。

 だが、この気持ちを理解することは出来なかった。

 

 二人目は、意外なことに箒だった。しかし、その目は本音のような嫉妬によるものではない。彼女の真を見る目は……怯えていた。

 

「(何だ!? 真から……気というのか? あの()()()()()()はなんだ!?)」

 

 箒の目には異様な光景が映っていた。ラウラも、シャルロットも、セシリアも、そして一夏にも靄のようなものが見える。この場にいる生徒・教師全員から、靄が噴き出ているのだ。

 だが真の靄は違う。彼から噴き出ている靄の濃さは、周りよりも何倍も濃いのだ。それと共にプレッシャーのような重苦しさも若干感じる。

 

「顔色悪いけど大丈夫? 先生呼ぶ?」

「い、いや……。大丈夫だ」

「そう? もし辛いんだったら遠慮なく言ってね?」

「(何でみんなは平気なんだ!? 私が……私がどうかしてしまったのか!?)」

 

 隣に座っている女子は平然としていた。まるで自分がおかしくなってしまったかのような感覚に陥る。

 

「(きっと疲れているんだ……。寝ていれば見えなくなる……。見えなくなるはずだ……)」

 

 どうか、次に目を開けた時には見えなくなっていてほしい。そう願いながら目を瞑った。

 




はてさて、箒に何が起こったのでしょうか?  そしてナターシャに嫉妬する本音ちゃんです。

次回から、オリジナルルートに入ると思います。擬人化モンスターとの戦いを入れたいからです。できれば前作のキャラも登場させたいなぁ……。

では、次回もお楽しみに! 感想お待ちしております!


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