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それでは、どうぞ!
星がはっきりと見える夜空の下。大海原を一望できる崖の近くに、千冬はいた。彼女の右手に握られている携帯には、『この場所まで来て』と書かれたメールが表示されていた。差出人は……束だ。
いくら福音を稼働停止にさせたとはいえ、一夏や真たちが行なったのは無断出撃だった。千冬は彼らに説教をしたあと、身体検査などを真耶に任せてこの場にいる。
「メールで招いておいて隠れているとは、礼儀がなってないんじゃないか?」
「何言ってるのさ~。ドッキリ番組とかではよくあるでしょ~?」
呆れたような、それでいて警戒しているような声で、背後に立つ束に声をかける。それに対して束は、いつも通りのテンションで答えていた。
「随分と珍しい文面だったな。いつもだったら顔文字とかを連発するようなメールだというのに」
「いやー、今回ちーちゃんに話したいことって言うのは、とても、とーっても大切なことだからね。流石の束さんも真剣になるよ」
先ほどまでの間延びしたような話し方とはうって変わり、真面目な口調になる。その変貌に、千冬は思わず息を呑んだ。改めて見ると、その表情は真剣な目つきは今まで見たことが無かった。
「……お前がこうして話すという事は、よっぽどなのか?」
「うん。ちーちゃん……。君はもう一度、剣を取らないといけない」
「……なんだと?」
「
「………………その亡国機業、壊滅したよ」
「何だと!?」
「それがどれだけヤバい事か分かるよね? この事を知ってるのはごく一部の奴らだけど、たぶんかなり混乱してると思うよ」
「……亡国機業を壊滅させるほどの組織が、IS学園を襲撃するかもしれんと? だから私に……『暮桜』にもう一度乗れと?」
「そういう事。これ、『暮桜』の解凍プログラム」
素早く千冬に近寄り、それを握らせる。驚きと戸惑いの隙を突かれたため、嫌だと言って返すことも出来なかった。
モンド・グロッソにて自分が乗っていた相棒。しかし千冬が持つ強さによって、それを恐れた者たちが弟と妹を奪おうとした。結果、妹を失った。だから決めたのだ、自らの牙を折ることを。だというのに……
「お前は……マドカに続いて一夏も失えと言うのか!?」
「ちーちゃん。亡国機業を壊滅させた奴らは、人を殺すことにためらいがないんだよ。それどころか喜んで殺すような連中だ。そんな連中に、いっくんを殺されても良いの?」
「…………もはや、逃げられないということか」
千冬は、渡された解凍プログラムをポケットに突っ込んだ。
「ところで、お前の話し方はまるで敵のことを知ってるような口ぶりだな?」
「あは、分かっちゃう? そうだよ。私は『奴ら』のことを知ってる……いや、教えてもらったの方が正しいかな?」
「教えてもらった? 誰に?」
「……ごめん。それは
「なっ……」
亡国機業を壊滅させた存在すら驚きだというのに、その正体を知っていて且つ束ですら「命が惜しい」と言わせてしまう者がいるのだ。千冬にとって、それは大きすぎる衝撃だった。いつものふざけた態度だったなら、いつもの強気で問い詰めることが出来たかもしれないが、彼女のその申し訳なさそうな表情が、その気を失せさせた。
「私を呼んだ理由はそれだけか?」
「いや、もう一つあるよ。良いニュースと悪いニュースの2つがあったんだ」
「それなら、どちらから先に聞くか尋ねる流れだろうに……」
「それだと、大抵は悪いニュースからでしょ?」
「全く……。で? 良いニュースというのは?」
額に手を当てて呆れる千冬。しかし、再び驚きの表情を束に晒すことになる。
「姉さん……」
「っ!? マド……カ?」
束の後ろから、千冬を幼くしたような顔つきの少女……マドカが現れた。もう二度と会うことが無いと思っていた妹。そんな彼女が、目の前に居る。
「……マドカ!」
「姉さん……姉さん…………うぅ……」
もはやこの場に、「凛とした織斑千冬」は居なかった。涙を流しながら抱きしめるその姿は、「妹との再会に涙する姉」の姿だった。
そして、しばらく抱きしめた後、マドカを撫でながら束に尋ねる。
「束。マドカはあの後、今までどこに……?」
「イギリスの非合法な研究所。多分、あの時に誘拐した連中……亡国機業が売り渡したんだよ。研究目的は、高いBIT適性を効率よく付加させる方法らしいけど……」
「……VTシステムのような、人工のブリュンヒルデを作るのが本当の目的なんだろうな」
聞けば、かなり厳しい訓練をさせられていたらしい。幼いというのに大人がやるような訓練メニューをやらされたり、BIT適性を無理やり高めるような処置もしていたという。この事を聞いた千冬は怒りに震えた。すぐにでも『暮桜』の封印を解いて、イギリスに殴り込みをかけそうなほどの怒りだった。
そんな千冬を、束は「落ち着いて」と宥めた。
「その研究所から研究データを盗んで、政府に流しておいたからね♪ 今ごろ職員の連中は路頭に迷ってるさ」
「そうか……。しかし、こうして生きて再会できるとは思わなかった。これから、マドカはどうすれば良い?」
「私のラボで検査したり治療したりするよ。無理やり高められたBIT適性は戻せないかもしれないけど、体の傷を癒すことぐらいは出来るからね♪」
「……何から何まですまない」
「も~、ちーちゃん! マドちゃんとも再会出来たのに、『すまない』なんて言葉は辛気臭くなるからダメ!」
「し、しかし……」
「『ありがとう』だよ、ちーちゃん」
「っ! ……そうか、言い直そう。……ありがとう」
「ふふふっ、どういたしまして♪」
千冬が礼を言うと、束も満面の笑みで返す。その光景はまさに、親友同士のかけ合いだった。
翌日。真たち専用機持ちチームは機体をそれぞれ片付け、自分のクラスのバスに乗っていた。一夏の隣に座る真は大きなあくびをする。
「ふわ~あ。眠い……」
「眠そうだな?」
「何でお前は平気なんだよ……。お前も俺や相棒と一緒に、反省文と自分の機体についての報告書を書いてただろうが……」
「それは、お前が何度も書き直しを食らってたからだろ? 『自分の中にある竜の力を反映させてます』って何だよ」
「本当の事なんだけどなぁ……」
真、ミツル、一夏の三人は、反省文だけで解放してもらえなかった。一夏は第二移行をした為、その性能を報告する羽目になった。真とミツルも、最初に報告された以上のスペックを見せてしまったため、その説明を求められたのだ。
しかし、やけに吹っ切れたような顔をした真とミツルの二人は、「自身の中にある竜の力を、機体にも反映させた」と説明。当然納得されることなく、報告書の書き直しをさせられたのだ。そのため寝不足なのである。今ごろ二組のバスでも、ミツルは大きなあくびをしているだろう。
「あなた達が、男性操縦者さん?」
声がした方を見ると、そこには二十歳くらいの、青いカジュアルスーツに身を包んだ女性がいた。ちなみに胸元は開けている。
最初こそ頭にハテナマークを浮かべる二人だったが、その長い金髪を見て思い出した。
「確か、銀の福音の……」
「ナターシャ・ファイルスよ。私の大切な子を助けてくれたお礼をしに来たの」
「お礼……!?」
突然、ナターシャは一夏の頬にキスをする。突然の事に一夏はおろか、隣の真も周りの女子も固まった。
「ありがとう、白い
そう言うと、今度は真に顔を向ける。思わず「うえっ!?」と声が出てしまった。そして……真の頬にもキスをする。
「友好の意味でのキスよ、初心なドラゴンさん? それと貴方のその拳……。とても効いたわ。イーリと仲良くなれそうね」
バーイと言うと、バスから降りて行ってしまった。二人ともまだ固まっている。そんな中、真に対して視線を向けている人物が二人いた。
「(む~。何で~? 何で東風やんがキスされたのを見ると、イラってしちゃったの~?)」
一人は、真のルームメイトの本音だった。少しだけ頬を膨らませて怒っている。ナターシャにキスされたのを見てから、やけにムカムカするのだ。
だが、この気持ちを理解することは出来なかった。
二人目は、意外なことに箒だった。しかし、その目は本音のような嫉妬によるものではない。彼女の真を見る目は……怯えていた。
「(何だ!? 真から……気というのか? あの
箒の目には異様な光景が映っていた。ラウラも、シャルロットも、セシリアも、そして一夏にも靄のようなものが見える。この場にいる生徒・教師全員から、靄が噴き出ているのだ。
だが真の靄は違う。彼から噴き出ている靄の濃さは、周りよりも何倍も濃いのだ。それと共にプレッシャーのような重苦しさも若干感じる。
「顔色悪いけど大丈夫? 先生呼ぶ?」
「い、いや……。大丈夫だ」
「そう? もし辛いんだったら遠慮なく言ってね?」
「(何でみんなは平気なんだ!? 私が……私がどうかしてしまったのか!?)」
隣に座っている女子は平然としていた。まるで自分がおかしくなってしまったかのような感覚に陥る。
「(きっと疲れているんだ……。寝ていれば見えなくなる……。見えなくなるはずだ……)」
どうか、次に目を開けた時には見えなくなっていてほしい。そう願いながら目を瞑った。
はてさて、箒に何が起こったのでしょうか? そしてナターシャに嫉妬する本音ちゃんです。
次回から、オリジナルルートに入ると思います。擬人化モンスターとの戦いを入れたいからです。できれば前作のキャラも登場させたいなぁ……。
では、次回もお楽しみに! 感想お待ちしております!