インフィニット・ストラトス~竜の血を継ぐ者~   作:G大佐

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思ったよりもスイスイ書けました……。

今回は、前作の「東方竜人帳」のキャラが登場します! おそらく、サブタイトルで察した方もいるでしょう。なお、三人称の視点です。

それでは、どうぞ!


39話 影のごとき男

 駅前のデパートでラウラの私服を買ったシャルロット達は、オープンテラスのカフェで昼食をとっていた。

 寝るときはいつも全裸な上に、私服は軍服しかないというラウラ。そのことに頭を抱えたシャルロットは二人で服や小物を買うことにしたのである。だが、ラウラとシャルロットの容姿に目を付けた女性店長によって、ラウラは見事に着せ替え人形にされたのである。

 今でこそ普通にラザニアを食べているが、その前のラウラはまさに疲労困憊といった顔をしていた。

 

「(それにしても、何で突然、もっと可愛いのが良いとか言い出したんだろう?)」

 

 ラウラはドイツ軍の試験官ベイビーだ。生まれてから軍人として育ってきたせいか、オシャレといったものに疎かった。色々薦めてみても、「面倒くさい」「どうでもいい」といった言葉の繰り返しだった。

 それが、いざ試着室に入ってしばらくすると、「もっと可愛いのが良い」と言ったのだ。それも顔を赤らめて。

 

「(……ははーん? もしかして……)」

 

 あの顔は見たことがある。自分も好きな男子、一夏について語る箒や鈴の顔とそっくりなのだ。つまり……

 

「ラウラってさ、ミツルのこと好きなんでしょ?」

「っ!? ゲホッゲホッゲホッ!」

 

 突然の質問にむせるラウラ。その後に顔が赤くなったことが、答えを示していた。プルプルと震えながらシャルロットを見ると、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。

 

「と、突然何を言い出す!?」

「いやー、福音戦の時に二人ともいい雰囲気だったからさ? もしやと思ったんだよね~」

「えぇい、ニヤニヤするな!」

「で、どうなの? さっき『かわいい服が良い』って言ってたのって、ミツル絡み?」

「う……うむ……」

 

 恥ずかしそうに、小さく頷くラウラ。その小動物を思わせる仕草にキュンとしたが、何とか踏み止まって話を続ける。

 

「そっか~。でも、ミツル達から話されたことは驚きだったね」

「そうだな。だからこそ、あのような訓練も出来るのだな……」

「あのような訓練?」

「うむ。一度、真とミツルによる訓練を見せてもらったが……」

 

 思い出すのは、二人による組手。いや、あれはもはや喧嘩のようなものだった。真がミツルを殴れば、お返しにと言わんばかりにミツルが蹴り飛ばす。時に互いの拳がぶつかり合う時もあったが、あれは速すぎて見えなかった。知っている人が居れば、某奇妙な冒険のオラオラと無駄無駄のラッシュ比べに見えたことだろう。

 ラウラが話す内容に、シャルロットは顔が引きつる。

 

「た、確かに二人ともモンスターと戦ってるって言うなら、それくらいは出来そうな気もするけど……」

「あれは、それなりの長い経験を積まなければできないものだろうな」

 

 そんな感じで雑談をしていた二人だったが、ある女性に声をかけられた。

 

「ねぇ! あなた達、バイトしない!?」

「「…………え?」」

 

 

 

 

 

 

 

 @クルーズ。巷で人気の、メイド&執事喫茶である。そこの店長である女性によると、本社からの視察が来るという時に、バイトの二人が駆け落ちしたのだという。困ってる様子だったこともあって断ることも出来ず、結局手伝うことになったのである。

 

「でも意外だね? ラウラとかは断ると思ってたよ」

「これも一つの経験だ。ミツルもこの喫茶店と似たような事をしているのだろう? 私も体験してみたくてな」

「あはは、やっぱりミツル絡みなんだね……」

 

 フンスと胸を張るラウラ。そんな彼女に話しかけるシャルロットは複雑な気持ちだ。

 

「(確かに男装はしたけれどさぁ……。だからって執事服を着る運命になるなんて思わなかったよ……)」

 

 店長から「似合うから」という理由で渡された執事服。やはり自分は男っぽい部分があるのだろうかと、少しだけ思ってしまう。

 

「(でも……ラウラの言う通り、経験の一つかもね)」

 

 ラウラの言葉を思い出して、クスリと笑った。

 

 

「ふぅ、結構疲れるなぁ」

 

 注文の入ったテーブルに紅茶を配り終えた後、ほんの少しだけ一息つくシャルロット。その美しい容姿が注目の的となり、視線を大量に感じたのだ。主に同性から。

 

「真や一夏の気持ちが、今になって分かった気がするよ」

 

 ふと、ラウラのことが気になった。何せ転入時に一夏にビンタをかましていたほどだ。さすがに見ず知らずの客にそのような事はしないだろうが、やっぱり心配だ。

 そこで、先ほどラウラが向かったテーブルへ目を向けると……

 

「お、お待たせしました。ホットケーキとコーヒーのセットと、こちらはチーズケーキと紅茶のセットです」

「はい、よく出来ました。奉仕するのであれば丁寧に。それを忘れてはいけませんよ?」

「は、はい!」

 

 何と、丁寧な接客をしていた。まだぎこちなさはあるが、それでも予想以上に良い出来だった。

 

「ミルクと砂糖はお入れになりますか?」

「いえ、こちらで調節するので大丈夫ですよ」

「かしこまりました。それでは、ごゆっくりどうぞ」

 

 そう告げてテーブルの元を去る。

 

「すごいよ、ラウラ! 結構上手いよ!」

「そ、そうか? 実は、先ほどあちらのお客様から注意を受けてな……」

「さっきのテーブルの人? ……って、えぇ!?」

 

 シャルロットは、そのテーブルに居る人物に驚きの声を上げる。何せその席にいる男は、仲間に瓜二つだったからだ。

 黒い髪に整った顔というその男は、右目を隠していればミツルと間違えてしまう程のそっくりさんだった。この店のものではない執事服を着ているのがとても目立っている。そんな男の目の前に座る女性は、赤い髪をしていて、まるでどこかのオフィスで働くOLのような服装をしていた。

 

「ふむ、美味しいですね。いつか、お嬢様にもコーヒーを出してみましょうか」

「少し苦いです……」

「それなら、砂糖とミルクを入れてみましょう。まろやかになるはずですよ」

 

 そんな二人は、仲良さげに談笑していた。窓から見える景色も相まって、とても絵になる光景だった。

 

「(あの話し方……。ますますミツルにそっくりだ)」

「(あれ? あの男の人の声、どこかで聞いたことあるような……)」」

 

「全員動くんじゃねぇ!」

 

 突然、大きな声と銃声が響く。三人の男たちは、ジャンパーにジーパンに黒覆面、手に持った銃に鞄から飛び出た紙幣と、漫画で見るような強盗の姿をしていた。

 

《犯人一味に告ぐ。君たちは完全に包囲されている。大人しく投降しなさい。繰り返す――――》

 

 外には、ライオットシールドを構えた警官たちが見える。しかし、このあまりにもテレビで見そうな光景に……

 

「警察の対応……」

「古……」

 

 そう呟かざるを得ない。しかしその態度が、追い詰められてピリピリしている強盗達を刺激してしまった。

 

「ぁんだとゴラァ!」

 

 バババババババババッ! 天井に無数の穴が開く。辺りに悲鳴が響く。そんな中、シャルロットとラウラはカウンターに身を隠しながら、様子をうかがっていた。

 

「(サブマシンガンにショットガンにハンドガンか……)」

「(敵は、警察が逃走用の車を用意するまで持久戦に入るつもりだろうが、あそこまで神経質となれば精神的疲労が起こるだろう。その隙を突いて……)」

 

 ISの代表候補生は、もしもの時に備えて訓練をしている。だからこそ冷静に状況把握を行っていた。しかし、ある席を見て二人はギョッとした。

 

「やれやれ……。せっかくのデートだというのに、何と殺風景になってしまったのでしょう。おまけに、硝煙の臭いで紅茶とコーヒーの香りが台無しです」

 

 ミツル似の男が、呆れたような顔をしていた。他の客が身を寄せ合っているのに対し、その男は女性を守るように立っていた。

 

「何だとテメェ!?」

「ここは飲食を楽しむ場です。射撃を楽しみたいのであれば、別の場所でなさい」

「偉そうなこと言ってんじゃねえぞ、兄ちゃんよぉ!」

「……やれやれ。聞く耳も持たないようですね。仕方ありません。お相手しましょう」

「影夜さん……」

「大丈夫だよ、こぁ。私は死なない」

 

 心配そうにしているこぁと呼ばれた女性の額に、影夜と呼ばれた男は軽くキスをする。

 その余裕そうな態度に、リーダーと思われる男がついにキレた。

 

「ふ、ふざけんじゃねえぇぇぇ!」

 

 ハンドガンを構えると、再び悲鳴が上がる。だが影夜は笑みを浮かべたままだ。

 

「皆さん、頭をお守りください」

 

 それと同時に数発の銃声がする。思わず目を瞑るシャルロットとラウラだが、強盗リーダーの声で目を開けることになる。

 

「な、な、な、な…………!?」

「どうしました? 威勢の割には呆気ないですねぇ」

 

 なんと、影夜は無傷だった。彼の右手にはいつの間にか、ケーキを切るためのナイフが握られている。さらにその足元には銃弾とおぼしきものが。

 

「じ、()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

「そのような物騒なものは、この場で使ってはいけませんよ?」

「ひ、ひぃっ!?」

 

 今度は、銃がバラバラに切り落とされる。高い金を払って買ったであろうハンドガンは、カランカランと音を立てて切り落とされた。

 

「この野郎!」

 

 別の男が、サブマシンガンを構えて引き金を引く。

 

 ガン! ギギン! ガン! ギン! ガン! ガガン!

 

 金属の音が響く。そこに影夜の苦痛の声は無く、むしろ強盗の悲鳴のようなものが聞こえていた。

 弾切れになったところを、影夜は銃を切り落とすことで無力化させる。ショットガンを持つ男も、同様にして無力化された。

 

「ば、化け物だぁ!」

「何なんだ……何なんだよテメェはよぉ!?」

 

 強盗達は震える指で、影夜を指さす。そんな彼らに、影夜は答えた。

 

「私は、内に化け物を秘めている、しがない執事でございます」

 

 そして、外で構えていた警察隊も、中の状況が変わったことを察したのか突入態勢に入る。

 だが、リーダーの男はいきなり立ち上がった。

 

「ク、クソォ! 捕まってムショで暮らすくらいなら、化け物を道連れにして死んでやらぁ!」

 

 革ジャンを広げると、そこにはプラスチック爆弾が腹巻きのように巻かれていた。しかし……

 

「飲食の場には、爆弾もNGですよ?」

「なっ……ぐぇっ」

 

 かなり離れていたというのに、影夜はすでにリーダーの近くにいた。そして爆弾の導線を全て切り、最後は男の鳩尾に拳を打ち込んだ。そして、警察隊が突入する。

 辺りが騒がしくなる中、ラウラとシャルロットは唖然としていた。

 

「な、何て男だ……」

「あれ? さっきの人は……?」

 

 周りを見ても、影夜とこぁは居なかった。まるで、影のように消えてしまっていた……。

 

 

 

 

 

 IS学園の学生寮。そこにある談笑をするためのスペースで、ミツルは両親と話をしていた。

 

「……と、言うことがあってだな」

「父さん……。相変わらずチートだよ……」

「でも、その姿は本当に格好良かったんだよ~!」

「母さんは相変わらず惚気すぎ!」

 

 父親の規格外っぷりと、母親のデレデレっぷりに呆れてしまう。まぁ、そんな二人を敬愛している訳だが。

 

「紫さんに境界を弄ってもらって母さんが消滅しないようにしたのも、デートのため?」

「それもある。だが、お前のことも気になってな」

「俺の?」

「何でも、手ごわい敵と戦ったそうじゃないか。心配でな」

「父さん……」

「父さんはね、ミツルが幻想郷のことを話したりしたときは、本当にソワソワしてたんだよ?」

「だが、その心配は無用だったようだな。外の世界にも仲間が出来たようで、安心したよ」

 

 すると、遠くから足音が聞こえて来た。影夜と小悪魔は頷くと、立ち上がる。

 

「……もう、行っちゃうの?」

「今回は目立ち過ぎたからな。あんまり他の人に見られるとまずいことになる」

「大丈夫。あなたには頼れる相棒も、仲間もいるでしょ?」

「わぷっ、母さん……」

 

 小悪魔がミツルを抱きしめる。母の温もりと香り、鼓動が、寂しい気持ちを和らげていく。

 

「ミツル。今はまだ大きく動けないが、時が来たら……父さん達も駆けつけるからな。だから、強くなれ」

「……ありがとう、父さん」

 

 頭に手をのせ、ワシャワシャと息子の頭を撫でる影夜。ミツルは笑みを浮かべた。

 

「それじゃあな、ミツル」

「みんなと仲良く、ね?」

「うん。父さんと母さんも、元気で」

 

 開かれたスキマへと向かって、歩き始める二人。その背中を、ミツルは名残惜しそうに見送る。

 ふと、影夜が何かを思い出すように振り返った。

 

「好きな人との時間も、楽しく過ごすんだぞ?」

「な!?」

「お嬢様も妹さまも、みんな楽しみにしてるからね~」

 

 悪戯が成功したような笑みを浮かべると、二人はスキマの中へと消えていった。残されたミツルは、顔を赤くしたまましばらくそこに立っていた。

 




前作キャラは、この作品の中ではかなり強くなってます。

さて、おそらくこの話が今年最後の投稿になりそうです。皆様も良いクリスマスと年末、お正月をお過ごしください。

では、来年も「竜の血を継ぐ者」をお楽しみに!
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