それでは、どうぞ!
ある日の事だった。いつものように登校していたんだが、おかしいことがあったんだ。
「なんで、こんなにクモの巣が貼りつくんだよ!」
ここまでに来る途中で、何度も顔面にクモの巣が貼りついてきやがった! いや、一度や二度ならまだ分かるぜ? でも10回以上貼りつくなんておかしいだろ!
「クモが大量発生してるのかぁ……?」
虫や魚の大量発生っていうのはよくある事らしいからな。俺は、今度こそ貼りつかないことを祈りながら登校した。
……結局、教室に着くまでに4回ぐらい貼りついたけどな!
「え? お前らもか?」
「そうですの。もうあの粘ついた感触はウンザリですわ!」
「何度も制服にくっ付いて……。もう最悪だよ」
セシリアは「キィーッ!」と叫びそうなくらい怒ってるし、シャルは溜息をついている。聞けば、他の女子もクモの巣が貼りついたりして、不快感を味わったらしい。
何だ? 何というか……ヤバい予感がする。
そう思っていると、織斑先生と山田先生が入ってきた。全員席に戻り、静かになる。
「今回は重要な連絡がある。今日の3時間目に行なう予定だったISの実習だが、中止とする」
教室がざわざわと騒がしくなる。
「静かに! 学園にある訓練機全てに、クモの巣が大量に付着していた。これは整備課の教師による報告だ。訓練機の洗浄および点検のために、本日はISの実習を中止するようにとのことだ」
「また、アリーナでの訓練機の貸し出しも本日は禁止です。3時間目は自習にしますから、テスト勉強などに活かしてくださいね」
こうしてSHRは終わった。すると、この教室にいる専用機持ちが俺のところへ来る。
「なぁ、真。これはいくら何でも……」
「あぁ……。おかしいぜ。学園にあるIS全てにクモの巣だと?」
「織斑先生は洗浄と点検のためとは言ってますが、恐らく、機体の不具合による事故を防ぐためでしょう」
「もしかして、だけど……モンスターの仕業とか?」
一夏の言葉に、俺たちは固まってしまう。確かにモンスターだったら、ありえないような現象を引き起こすのは可能だが……。
「心当たりがあると言えば……あいつか」
「あいつ?」
「馬鹿でかいクモだよ。人よりもはるかに大きい。本で読んだことがある」
「私だったら、出会った瞬間に気を失いますわ……」
「だが、それならば探すことも可能ではないのか? なぜ今まで見つかってないんだ?」
「それはな……人に化けてるからだ」
「なっ……!?」
「モンスターの連中の一部には、凄いパワーを秘めた宝石を体内に宿していることがある。それが幻想郷へやって来た時に、空気中の魔力やら霊力やらと反応を起こして、人の姿になったんだとよ」
これは、紫さんを中心に、父さんやナナシ先生が言っていた事だ。あくまで仮説だと言っていたが、あり得そうな話だと思う。
「あと、長い年月を生きた生物が知能を持つって話もあるくらいだし、モンスターにも当てはまるらしいぜ」
「長い年月を……?」
「猫又とかが良い例さ。一夏も、猫又くらいは聞いたことがあるだろ?」
「あ、聞いたことある。なるほど……。猫又の原理で、モンスターも妖怪みたくなるって事か?」
猫又の原理とは、面白い言い方をするなぁ。
「まぁ、言っちまえば擬人化だな。今回は、その擬人化モンスターが侵入している可能性が高い」
「でも学園のセキュリティは、ずっと前のラウラの騒動とかをきっかけにかなり強化されてるはずだよ?」
「……そのデカいクモは、大型ながら隠密行動が得意なんだよ。そいつが擬人化したとなりゃあ…………」
「なんと……。それなら学園のセキュリティを掻いくぐる事も出来そうだな」
「ひとまず、俺と相棒で調査してみる」
相棒のことだ。きっと、このクモの巣現象について行動するはずだ。
「おそらく、ネルスキュラだと思うんだわ」
「でしょうねぇ。クモの巣を作るモンスターとなれば……」
3時間目。俺と相棒は教室を抜け出して、敵を探していた。一夏たちにはあらかじめ伝えているし、相棒が別クラスの鈴と簪にも伝えたらしい。
モンスターの攻撃は、たとえ擬人化していようとその一撃一撃が強力だ。下手すりゃ、パンチ一発でシールドエネルギーを持っていかれる可能性だってある。それに、ISを持ってない奴らに対してISで挑むと、小回りの差で向こうが有利になるしな。だから一夏たちには、もしもに備えて教室を守るように伝えておいた。連中が俺たちを狙ってるなら、教室にいない方が、本音たちを巻き込まなくて済む。
「しかし、これはまるで私たちを誘っているような……」
「何か言ったか?」
「なぜ私たちが不審に思うようなことをしたのかと、気になったんですよ。まるで誘われてるみたいで……」
「へっ。そんなら誘いに乗って、相手をボコボコにすれば良いだけだろ?」
「……はははっ、あなたならそう言うと思いましたよ」
相棒が苦笑いしながら、敵の気配を探る。
「どうだ?」
「……難しいですね」
「ふーむ……。なら、二手に分かれて探すか?」
「敵を見つけたら、ISの通信機能で連絡するって感じですか?」
「あぁ。こういう時って、ISは便利だよな」
それぞれのルートを伝えると、俺と相棒は軽く拳をぶつかり合う。
「それじゃあ……」
「あぁ。お互い死なないように」
こうして、二手に分かれることにした。
さて、こうして二手に分かれたものの、中々見つからないもんだ。
「気配みたいなのも感じないしなぁ……」
モンスターの中には、集中することでやっと探り当てることが可能な奴だっている。フルフルとか、今回のターゲットのネルスキュラとかのような奴だ。
幻想郷で大型モンスターを相手にすることは、滅多にない。俺がなぜモンスターの名前を知ってるかというと、ナナシ先生の本を読んだり、父さん達から話を聞いたからだ。俺が戦ったことがあるのはアオアシラとかドスファンゴ、アルセルタスとかがほとんどで、ディアブロスとかアグナコトルのような奴らは戦ったことない。
……まぁ、「あんな奴らが暴れ始めたらヤバい」って父さんたちは言ってたけど。
「やっぱり居ない……誰だ!」
近づいてきた気配を察知して、振り返る。
そこには、水色の髪に赤い瞳という、簪に似た生徒がいた。リボンの色からして二年生か?
「噂の男子生徒くん? 授業のサボりは関心しないわよ?」
「……そりゃ申し訳ないっス。ですが、どうしても抜け出さないといけない用事がありまして」
「それは、一般生徒が来ることの少ないこの場所に居ないといけないほどなのかしら?」
「てことは、先輩は特殊な生徒って訳っスか」
先輩は、俺を疑いのまなざしで見ている。あれだ。顔は笑ってるが目は笑ってねぇってやつだ。
「特殊……そうね。特殊な方だと思うわ」
先輩が、手に持っていた扇子を広げる。そこには「学園最強」と書いてあった。
「私の名前は更識楯無。IS学園の生徒会長よ」
……厄介な人に目をつけられた気がするぜ。
楯無の登場です。真は目をつけられたと言っていますが、実は臨海学校のあたりから既に目をつけられています。
さて、ネルスキュラに出会うのはミツルか、真か。次回をお楽しみに!