IS学園のクモの巣騒動の犯人を見つけるため、二手に分かれた真とミツル。真が向かった先で出会ったのは、二人に対して警戒している生徒会長、更識楯無だった。
その後、臨海学校の時に戦った、ラギアクルスことヴァレッタと戦闘になる。楯無との共闘によって、見事倒したのだった。
その頃、ミツルの方は……。
さて、真さんと分かれた私ですが……
「答えろ十六夜。授業をサボって何をしている?」
よりによって最悪な人に捕まりました。真さんのクラスの担任、織斑先生……。この世界では『世界最強』とも呼ばれている人です。
そんな先生はISスーツらしきものに身を包み、腰にはいくつものブレードをさげ、髪型は箒さんのようなポニーテールにしています。見る人が見れば美しいと思うかもしれませんが、私はそれどころじゃないです。隠密行動のつもりがあっさりバレたということで、足が止まっています。
「どうした。やましい事でもあるのか?」
「ぐ……」
「警告だ。すぐに教室へ戻れ。でないと……お前を謹慎処分にしなければならない」
「随分とまぁ恐ろしいことを……。ですが、それは受け入れることはできませんね」
「……ほう?」
「私が教室へ戻れば、敵さんは私を追うでしょう。クラスのみんなを巻き込むわけにはいかない」
「つまり、お前はこの騒動の犯人を知っていると言いたいのか?」
「知ってるというよりは、察しがついてると言いますか」
しかしこうして見ると、ここら一帯のクモの巣の量が多くなってきてますね。しかも、粘度も高くなってるような気がします。これは……もしかしたら当たりを引いたかもしれませんね。こうなると、織斑先生にも私たちのことを話さないといけませんかね。
「織斑先生、気付いてますか? 他の場所に比べて、やけにクモの巣が多いことに……」
「薄々気付いてはいたがな。犯人がいる可能性が高いな……」
先生は私を追及しようとしません。どうやら私たちについて考えるよりも、潜んでいるであろう敵を倒すことを優先したようです。
「………………」
「………………」
二人同時に足が止まりました。間違いないですね……。居ます。
「はっ!」
「っ!?」
張り巡らされているクモの巣の隙間へナイフを投げると、その影は飛び出してきました。
相手の姿は、言うならば忍者でした。白い装束を着ていて、口元を隠しています。目の色は水色です。
「予想外。迅竜の力を持つだけのことはある…」
「私もかなり集中しなければ探れませんでしたがね」
「(敵は十六夜を知っている……。だがこの感じ……敵対関係にあるという事か?)」
「作戦は成功。後はお前たちを殺すだけだ」
「作戦、だと?」
なるほど。やはり、このクモの巣騒動は、私と真さんをおびき寄せるための作戦でしたか……。
相手が短刀を構えて来たので、私もナイフを構えます。すると、織斑先生もブレードを相手に向けました。
「生徒の安全を確保するためだ。その為なら……手を汚そう」
「気を付けてくださいね。相手は人の姿をしてますが、人外の能力を持ってますので」
「ふむ……了解した」
私が駆けると同時に、相手も突っ込んできました。ナイフと短刀がギリギリと音を立てます。
「名はシノビ……。影蜘蛛ネルスキュラ!」
「……お命、頂戴!」
腹を蹴ると、シノビの後ろから、織斑先生がブレードを振りかざします。……が、シノビの手から糸が放たれてブレードに絡みつき、その衝撃を吸収されました。
「ちっ! 和らげたか!」
「ふんっ!」
「チィッ!」
引き寄せられそうになるのを見た先生は、糸に絡まったブレードを離して予備の物に切り替えます。
「なるほど。ただ者ではない、か」
「お前の生徒にも、そのただ者ではない存在が2人もいるがな」
「東風谷と十六夜のことか? 悪いが、例えそうだとしても生徒を守る者に味方するぞ、私は」
後ろから斬ろうとしますが、足元までクモの糸でネバネバしてるため、スピードが思うように……!
「ぐ、お……!」
「十六夜!」
振り向いたシノビに、腕を刺されました。しかも目眩もします。これは……毒ですか………。クモはクモでも、毒グモか……。
「こいつもくれてやる」
「がっ、はぁ!?」
「っ! 馬鹿な、ISだと!?」
別方向から殴られ、壁に叩きつけられました。見ると奴の背中から、機械の腕……いや、クモの脚?みたいな物が生えています。さっきの先生の発言がその通りなら、あれはIS……?
「アメリカの第2世代IS『アラクネ』……! テロ組織に奪われたと聞いたが……」
「使えるものは、例え人間の道具だろうと利用する。そうでもしないと、東風谷真も十六夜ミツルも倒すことはできん。見ろ」
「……っ!? 十六夜、平気なのか!?」
痛む体を無理やり動かして立ち上がりますが、先生が驚愕の表情をしています。それもそうでしょう。
「体は痛みます……。平気では無いですね……」
「ちっ、ならこれはどうだ!」
アラクネの脚から砲弾が放たれますが、甘い!
「らぁ!」
私のISに収納されているブレードで弾きます。ISのブレードなので簡単でしたね。
「織斑先生。ISの部分展開の許可を」
「承認の前に武器を展開してるだろう……。まぁ、そうでなくとも承認してるつもりだ。緊急事態だからな」
「ちぃっ!」
シノビがバックステップしながら、糸の塊を放ってきました。ギリギリで避けるも、着弾したところには粘着質の糸が広がります。当たっても駄目、避けると足場が狭められる……。
いえ、何も床だけが足場ではありませんね。
「十六夜!」
「はい!」
2人同時に走り出すと、今度は壁を駆け上がります!
「やあぁぁぁぁ!」
「っ! やられるかぁ!」
「ぐうぅっ!」
私が前から、先生が後ろから攻めようとします。しかし、私は短剣で防がれ、先生の方はアラクネの脚で反撃されました。ブレードが盾になったおかげで、何とか助かったみたいです。
「くそ! こうなったら……!」
体がどんどん熱くなります。まるで血管にお湯がながれてるような……そんな熱さです。
「ガアァァァ…………」
体中からベキベキと音が鳴り、制服が破ける音がしました。すると私の頬には黒い鱗が浮かび上がり、腕には刃のようなもの、そして……尻尾が生えました。
「姿を現したか、迅竜ナルガクルガ!」
「グギャアァオォォォォ!」
「(十六夜、お前は……)」
よっしゃあ! ちょいとばかし口が悪くなっちまうが、能力でぶちのめしてやる!
「らぁ!」
「ぐうっ!?」
尻尾を振るって奴の脇腹を殴りつける。そこへ先生が後ろから斬りかかるが、アラクネの脚で防がれちまう。
「甘いな」
だが、片手でブレードを取り出して脚の先端に突き刺しやがった! あれってISのブレードだよな? それを片手で振るうとか……。
銃口の中に突き刺したもんだから、脚の一本が暴発した。
「ゴオォッ!?」
「十六夜! アラクネの脚を潰すのが先だ! あれは連射も可能だぞ!」
「了解!」
やらせまいとシノビが襲ってくるが、俺も腕のブレードを構えて飛びかかる。
ガギィンッ!という音が鳴り、俺とシノビが同時に着地した。
「ぐ、がぁぁ!」
「これで……2本!」
最初に見たときは4本だったから、先生のも合わせて2本潰したことになる。
「いや、3本だ」
「ぎいぃっ!? お、女ぁ! キサマ本当に人間か!?」
「人間だ。鍛えればこれくらい、どうという事はない」
「父さん達と同じタイプか……」
俺がアラクネの脚を潰し、シノビが俺に集中したほんの一瞬を突いて、3本目を破壊した。にしても、鍛えれば強くなるって言うあたり、父さん達と同類かよ……。
だけど、むしろチャンス!
「はぁぁぁっ!」
「っ! させん!」
「しまっ……!」
俺が腕のブレードで斬りかかった瞬間、シノビは片腕で防いできた。そしてそこへ、今度は黄色い棘を俺の右腕に突き刺してくる。
「肉を切らせて骨を断つ、かよ!」
「ぐっ、うぅ……」
あいつも呻き声をあげてるが、俺の方はもっと不味い。刺さった部分から血は流れてるし、そもそも感覚が無い。次は神経毒で、俺の腕を麻痺させたって事か……。
だぁクソ! ISでやられたダメージと、二つの毒のダメージ、そして血も流し過ぎた! 目の前がグラグラしてやがる!
「大人しく……するんだな」
シノビから糸が放たれて、俺は呆気なくグルグル巻きにされる。もうちょっと緩く巻いてくれないかねぇ。
「これでトド……っ!?」
「…………」
「織斑……先生…………」
「十六夜、まだ意識はあるな?」
俺にトドメを刺そうとするシノビだが、先生が背中から突き刺したことで動きが止まる。俺には、シノビの腹から血濡れのブレードが生えてるよう生えてるように見える。そして俺のそばへ駆け寄り、糸を斬ってくれた。
「助かります……」
「出血が酷いな……。すぐに離脱するぞ」
「そうですね……。ですがっ!」
俺は自由になった右手にラファールのマシンガンを展開し、先生の脇をくぐるような姿勢で撃つ。
「ぐ、ぎ、が、あ、ぎゃあああああああ!」
「全弾持っていきやがれ……」
先生に飛びかかろうとしたシノビが、マシンガンの弾を受けてズタズタになっていく。いくら高い再生力を持つモンスターでも、これだけのダメージを与えれば。
「っ! まだ動けるというのか!?」
「さっきの神経毒といい、亜種の力も持ってると見た。なら、生命力もかなりのものだろうな」
「十六夜……ミツルぅぁぁぁぁ!」
「らああああああ!」
短剣で斬りかかろうとするシノビと、腕のブレードで走る俺。パキンッ!という音が鳴り、そして……
「俺の……勝ちだ」
俺のブレードは短剣を砕き、そのまま奴の頭を切り落とした。目の前には大量の血を流して絶命したシノビの姿があった。
…………ふぅ。
「十六夜!? しっかりしろ、十六夜!」
ダメージを受け過ぎた上に、少しはしゃぎ過ぎましたかね……。
織斑先生の声が聞こえますが、私は回復のためにゆっくりと目を閉じました。
今回なぜシノビが、原作ではオータムが使っている『アラクネ』を所持しているかを説明します。
オータムとスコールは、アラクネを奪う任務中に、アルセルタスの能力を持つ無人機に襲われ、束に拾われました(第8話)
その後、亡国機業が奪取しましたが、モンスター達によって亡国機業は壊滅。シノビにいき渡ったというわけです。
ISコアには自我があるという事で、モンスター達は自らの持つ威圧のようなものでコアを脅し、ISを使用しています。しかし、全ての擬人化モンスターが使えるわけではありません。機体が動きについて行けず、本来の力を発揮できないというやつです。
さて、「狙われる学園」はこれで終わりです。次回は、真とミツルの協力者が増える話になりそうです。
では、次回もお楽しみに!