インフィニット・ストラトス~竜の血を継ぐ者~   作:G大佐

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簪とラウラの話ですが、簪の話がメインになりそうです。

また、ちょっとした独自解釈やご都合主義な展開があります。ご了承ください。


45話 ぶつかる姉と妹

 箒が、俺や相棒のように霊力を扱えるようになって数日。俺は本音と一緒に食堂へ向かっていた。確かにモンスターに警戒するのは大事だが、警戒しすぎて体も頭もガチガチになっちまったら意味がない。息抜きって奴だ。

 

「そう言えば、しののんって不思議パワーが使えるんだよね~?」

「ん? あぁ、箒のことか。まぁまだ制御とかは難しいけどな」

 

 箒の力はヤバいものだった。アリーナで特訓するときに、彼女自身の霊力を手加減せず思いっきり放ってもらったら、火傷するんじゃないかと思う程の炎が噴き出たからなぁ。制御するのはもう少し時間がかかりそうだ。

 

「しばらくは、霊力の出し過ぎで疲れることが多いだろうな」

「ほえぇ~!? それって大丈夫なの~?」

「大丈夫だ。終わった後のサポートとかは、一夏に任せてる」

「おりむーに?」

「あぁ。ほれ、箒って一夏のことが……な?」

「なるほど~。二人っきりと言うわけですなぁ~」

「そういう事でござんすよ……ってな」

 

 二人して時代劇っぽいやり取りをしてると、食堂に着いた。ここって定食とかラーメンとかの他にも、ケーキとかパフェとかスイーツ系もあるみたいだ。俺にとって外国のお菓子ってのは珍しいものだから、何にしようか迷ってしまう。

 

「あれれ? かんちゃんとみっちーだぁ~」

「んお? 本当だ。どうしたんだ?」

 

 本音が指さした先には、困った顔をしている相棒と、何やら真剣な顔つきになっている簪の姿があった。

 

「よっす、相棒に簪」

「おや、真さんに本音さん」

「あっ……。良いところに」

「どうしたの~?」

 

 俺たちも座り、話を聞くことにした。

 

「実は、簪さんがですね……」

「真くん!」

「うおっ!?」

 

 突然大きな声を上げて立ち上がる簪。俺と本音が驚いてると、頭を思いっきり下げた。

 

「私を弟子にしてくださ――――――――――」

「か、かんちゃん!?」

 

 ゴンッ!という鈍い音が聞こえた。そりゃあ、あんだけ勢いよく頭を下げたら、テーブルにぶつかるわな。

 

 

 

 

 

「……で、俺たちの弟子になりたいって?」

「う、うん……」

 

 ヒリヒリという音が聞こえそうなくらい額が赤くなってるが、簪は涙目のままで話し続けた。ちなみに、本音は彼女のメイドさんだけあって、心配そうに見ている、

 

「何でいきなり?」

「それは……」

 

 福音戦の時は専用機のなかった簪だが、この間ようやく届いたという。なぜ到着が遅れたかというと、一夏の専用機を作るために人員を割く話があったそうだ。だが、束さんが白式を作ることになった事で、簪の機体に人を回せるようになった。……のは良いものの、武装を作り上げるのに時間がかかったと言う。

 なぜ俺たちの弟子になりたいかというと、負傷した相棒を見て、「自分も早く戦えるようになりたい」と思ったからなんだとか。

 

「それに……私は無能なんかじゃないって、証明したい」

「あ? 誰かに言われたのかよ?」

「………………お姉ちゃんに」

「お姉ちゃん?」

「真さん。簪さんのお姉さんは、楯無さんです」

「おいおいマジかよ……。んな事言う感じじゃないけどなぁ」

 

 確かに、敵には容赦しないって雰囲気を見せてたけど、妹を無能扱いするのか?

 俺が首を傾げていると、意外な声が出た。

 

「う~ん、それってかんちゃんの勘違いじゃない~?」

「本音?」

「確かにかいちょーは、『貴女は貴女のままでいなさい』って言ったよ~。でも、それは悪口じゃないと思うな~」

「で、でも……」

「聞いてきたらどうですか?」

「……え?」

「分からないことがあったら聞く。これは姉も妹も関係ないだろ?」

「でも……怖いよ……。また何か言われるんじゃないかって……」

 

 …………しゃあねえ。少し話してやるか。

 

「……あれは、俺がこの世界で言うところの中学生にあたる時だった」

「……?」

「俺は強くなりたかった。とにかく誰よりも強くなりたかった。だから俺は、『禁忌』に手を出そうとした」

「禁忌……?」

「あぁそうさ。それを察知した父さんと母さんが駆けつけたから、大きな事態にはならなかったけどな。その時に、俺は父さんと殴り合った」

 

 俺は目を閉じ、思い出す。

 

 懐かしい。父さんにやられた記憶だってのに、不思議と嫌な気分じゃない。

 

 

『お前は何しようとしてるのか分かってるのか!』

 

『分かってないのは父さんだろうが! 俺は強くなりたいんだ! 何で分からないんだよ!』

 

『ならば教えろ! なぜ強くなりたいんだ!』

 

『俺は…………!』

 

 

 きっとあの時、殴り合いながらも父さんに気持ちをぶちまけたから、吐き出したいもの全部吐き出してスッキリしたから、嫌な気分じゃないんだろうな。

 

「お前には、近いところに家族がいるじゃねえか。それなのに言いたいこと言えないなんて、もったいな過ぎるぜ?」

「言いたいことを……言う……」

「自分に打ち勝ちなさい、簪さん。強い武器があっても、恐怖で手が震えては意味が無いのですよ」

「かんちゃん!」

 

 簪は俯く。うーむ、やっぱり俺のような過去をおくってる訳じゃないから、意味が無かったか……。

 

「……ヒーローも、怖い真実に立ち向かった。頑張るのは……自分」

「ん?」

「……頑張る!」

 

 何かを言った後、簪は顔を上げて、決意してくれた。小さく握りこぶしを作って。

 

「わ~い!」

「ふふ、スッキリしたような顔じゃないですか」

「まだまだ。お姉ちゃんに聞きたい事聞いて、本当の意味を知ってからだから」

「その意気だぜ、簪! こりゃあ、トレーニングに付き合うのもアリかもしれねえな」

「……え?」

 

 不思議そうな顔で俺を見る簪。おいおい、もう忘れちまったのか?

 

「俺たちの弟子になりたんだろ? 俺たちは武術をやってるわけじゃないから、何かを教えるってのは難しい。だが、お前の模擬戦の相手にはなれるし、体力づくりなら任せとけ!」

「能力が無くても戦えるように、私たちは敢えて厳しいトレーニングをしていますよ。それでも構いませんね?」

「……もちろん!」

 

 その時の簪の笑顔は、とても良いものだった。

 

 

 

 

 目の前では、簪と会長の機体がぶつかり合っている。今いる場所はアリーナ。えーっと……。

 

「何でこうなった?」

「簪さんが生徒会に行って、単刀直入に言われた言葉の意味を聞きましたね」

「かいちょーは、その意味を教えたね~。でもその事にかんちゃんが怒っちゃって~……」

「会長も言い返して、今に至るというわけか」

 

 会長の言葉の意味は、『あなたにはあなたの良いところがあるのだから、私の真似をしなくても良い』という意味だった。会長というか姉がコンプレックスだった簪にとって、それは嫌味に聞こえたのかもしれない。

 真実も知って、めでためでたしなら良かったんだ。だが簪はこれまでの不満が爆発して、どうして距離を取るようなことをしてくるのか、ストーカー紛いな事をするのかと、それはもうマシンガンのように言い放った。もちろん言われっ放しの会長じゃない。自分の家柄の事、その当主になることで生じる責任の重さなどを教える。お互いに不満に思っている事を言い合っていくうちに『ISで決着をつける』みたいな流れになって……今に至るわけだ。

 

「しっかし、会長と簪の家が対暗部用暗部で、本音と虚さんの家はそこに代々仕えてるとはなぁ」

「かんちゃんも凄いけど、私も凄いのだ~」

「転んでお茶をぶちまけたりしてそうだけどな」

「こ~ち~や~ん?」

「イデデデ! 耳引っ張るな!」

 

 本音って力が無いイメージなのに、滅茶苦茶痛いぞ!? どうなってんだ!?

 

「すごい喧嘩だな」

「おや、ラウラさん。どうしました?」

「実はドイツからレーゲンが返されてな! 改めて異常が無いかをチェックしてたのだ!」

 

 フンス―!と胸を張るラウラ。本音に謝った俺は、相棒とラウラの会話に混ざる。耳が左耳がヒリヒリする……。

 

「そういや、お前の扱いはどうなったんだよ?」

「うむ。まず私自身についてだが、精神が不安定状態にあったこと、強制的にISを使わされたという事で処罰は軽くなった」

「ほう、それはそれは……」

「教か……織斑先生の証言が無かったら、どうなっていたことか……。感謝してもしきれないくらいだ」

「『私自身は』ってことは、他にも何かあったのかい?」

「うむ。それは、我が軍と祖国にも非があったのだ」

「ドイツにも?」

 

 話を聞くと、ラウラの機体にはもともとVTシステムというものが組み込まれていたらしい。ブリュンヒルデ、すなわち織斑先生の動きを真似させるという代物だ。だが、パイロットの人権を無視したものであるから、アラスカ条約でも研究・開発が禁止されてるという。

 

 ではなぜあの時、モンスターの姿になったのか? 簡単だ。狂竜ウイルスと反応したんだ。

 

 VTシステムってのは、パイロットの精神が不安定な時に強制発動するそうだ。だからあの時、狂竜症に侵されていたラウラの精神にシステムが反応した。だが、それをウイルス自体がシステムを飲み込んでしまった。その結果があの姿だ。

 ……まあ、これは相棒が立てた仮説なんだけどな。

 

「研究をしていた軍の一部も、それも黙認していた政治家も、裁判にかけられたよ。どれだけ批判が殺到したかは……分かるだろう?」

「えぇ。暴言を投げかける民衆に頭を下げる姿まで想像できました」

 

 あ、相棒の奴いつにも増して毒の威力が強いな。ラウラが酷い目に遭ったからか?

 

「(ラウラさんの眼に関することも浮き彫りになるでしょう。人体実験というのはこの世界ではいい目で見られない。ましてや彼女の人生を捻じ曲げるような結果になった挙句、改善もせずに放置させていたのです。……永遠に周りから責められ続けるが良い、裁かれてる者たちよ……)」

「どうした、ミツル? 顔が怖いぞ?」

「おっとすいません。しかし……なるほど。ラウラさんも戦えるというわけですね?」

「うむ! まあ階級は大尉になり、定期的にレーゲンの報告書を書かないといけなくなったがな。それでもこうしてミツルたちと学園に居れるのは嬉しいぞ!」

 

 その時、ラウラがにっこりと笑った。

 

「っ! え、えぇ。私も嬉しい限りですよ」

 

 少し相棒の顔が赤くなった。はっはーん? 惚れ始めたか?

 ……俺も、いつか……。

 

「みんな~! そろそろ決着決着~!」

 

 本音が俺の肩を揺すりながら、簪と会長の方を見る。

 簪の機体は、打鉄の後継機かつ発展型の『打鉄弐式』。量産機の打鉄と違って機動性が高く、武装も中々だ。何せ荷電粒子砲だけでなく、マルチロックオンシステムで48発もの小型ミサイルを発射できる。射撃特化かというとそうでもなく、薙刀で会長の蛇腹剣と刃をぶつからせていた。

 

「『山嵐』、いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「『清き情熱(クリア・パッション)』!」

 

 小型ミサイルの群れと、霧状に散布したナノマシンの爆発が、お互いの相手を襲う。父さんがグラビモスの能力でガス爆発を起こしたのと同等かそれ以上の爆発が起こり、二人の姿は土煙で見えなくなった。

 

「どうなった!?」

「土煙が晴れれば分かるのですが……」

「う~、どっちが勝ったの~?」

 

 土煙が晴れてきた。ゆっくりと姿を現したが、二人の機体はボロボロだった。そして……。

 

「お姉ちゃんの勝ち、だね……」

「ここまで削られるなんて……過小評価しすぎてたみたいね……。ゴメンね、簪ちゃん……」

「私も……ゴメンなさい……」

 

 簪の機体が解除されて、遅れて会長の機体が解除された。ふらついてる簪を会長が支えて、アリーナを出ていく。

 

「……本当に一件落着、だな」

「そうだね~」

「どうなるかと思いましたが、仲直り出来て良かったです」

「これぞ、日本の言葉で『喧嘩するほど仲が良い』というやつだな!」

 

 俺たちは、観客席で笑いあった。

 

 

 

 

 

 ……爆発のクレーターがたくさん出来たアリーナを、見ないようにしながら。




ISの最新刊、買って読みました。ネタバレ回避のためあまり言いませんが、色々と謎が明かされる回だったと思います。

次回どのような話にしようかは、まだ決めていません。戦闘の話にしようか、真たちと原作キャラとの話にしようか迷っています。

まだ迷っていますが、次回もお楽しみに!
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