今回は、4Gで(個人的に)苦戦したモンスターの登場です。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
学園中に警報が鳴り響く。そのけたたましい音は、普通なら生徒達を不安にさせるものだろう。だが、今は不安になる生徒はいない。そもそも生徒達が、夏休みのために帰省しているからだ。
では学園に残っている俺たちはどうか? 不安になる奴はいなかった。俺たちからモンスターの事をあらかじめ聞いていた一夏たちは、「とうとう来たか」と言いそうな顔つきだった。
「山田先生。敵は?」
「アリーナに、強力なエネルギー反応があります。さらに、学園周辺に複数のIS反応!」
「聞いたな? アリーナはモンスターが侵入した可能性がある。複数のISも恐らくモンスターが使用しているのだろう。学園周辺は織斑、更識姉妹、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰が迎撃に当たれ! 東風谷と十六夜はアリーナへ! 篠ノ之と布仏姉妹は山田先生を補佐しろ!」
「了解! 行くぞ相棒!」
「えぇ!」
織斑先生の指示のもと、俺と相棒はアリーナへ走ろうとする。だが、そんな俺の服の裾を、本音が掴んだ。
「っとと……。どうした、本音?」
「東風やん……あのね……」
「ん?」
「…………頑張って!」
「……おう! お前も、サポート頑張れよ! だけど危なくなったら逃げるんだぞ!」
本音の激励を受けて、俺は手を振りながら走っていった。
「ミツル……。死ぬな」
「分かっていますよ。ラウラさんこそ、お気をつけて」
相棒も、ラウラから激励を受けて来たようだ。俺の後を追うように走ってくる。
「さてさて、敵さんも大胆に攻めて来たな」
「アリーナのシールドを破ってきましたか……。強大なモンスターか、それとも複数のモンスターか……」
「どちらにせよ、ぶちのめすだけだ!」
飛び込むようにアリーナへ入ると、侵入者と思われる奴らが二人いた。一人は藍色の髪をリーゼントにしたような男だ。上半身は裸だが、下は学校の制服のズボンのような物を履いている。
もう一人は、ボサボサした橙色の髪をしている男だ。額からはナイフのような角が、腕には金色のような鱗が生えている。既に戦う準備は出来てるってことか……。
「お出ましだぜ」
「迅竜の方をやる。……抜かるなよ」
「へっ、分かってらぁ」
リーゼント男が肩をゴキゴキ鳴らしながら、ゆっくりと歩いてくる。
「よぉ、東風谷真さんよぉ。俺の名はティーレン。ブラキディオスって呼ばれてんだ。早速で申し訳ないが……死ねやオラァ!」
「あっぶねぇな、この野郎!」
拳を緑色の粘液で覆うと、ジャンプしながら殴りかかってきやがった! 何とか避けれたが、地面に粘液が広がる。
「私はラム。千刃竜セルレギオス……。主の遺志のために!」
「くっ! こいつ、鱗が武器か!」
橙髪の奴は相棒に攻撃を仕掛けたか……! 俺がティーレンの攻撃を避けていくうちに、相棒との距離を離されちまう。
ティーレンの攻撃方法は、見た感じは俺と同じ、拳で戦うタイプか……。だが俺には、熱線って武器がある! まずは奴から距離を取って……
「オラァ!」
「っ!?」
ば、馬鹿な!? 鎧化して腹を守ったってのに、殴られただけで凄い衝撃だ! こいつ……強い!
「だがこんなの、父さんの拳骨に比べりゃあ!」
「どうかねえ?」
「あ?」
その瞬間、ボガン!という音と共に腹に衝撃が走り、遅れて痛みが襲ってくる。思わず腹を押さえてのたうち回る。
「ご、が、あぁぁぁぁぁぁ!?」
「へっへっへ……。流石の岩竜も、俺様の『爆破』には耐えきれねえか!」
「ばく……は……!?」
奴の言葉が確かなら、俺の甲殻を爆発させたってことだ。だが俺に爆弾を仕掛ける様子なんて見せなかったぞ? まさか……あいつの能力は、触れたものを爆発させるのか!? なんだその、どっかの漫画に出てくる殺人鬼のスタンドみたいな能力はよぉ!?
と、とにかく今の状況はヤバい! 俺は既に、ティーレンの得意な間合いに入っちまってる! 体は痛むが、気合いでどうにかなる。避けながら対策を考えねえと!
「ほれほれぇ! ジャブ、ジャブ、ジャブ、ジャブぅ!!」
「ふっ、クッ……ソがぁ!」
チクショウ、完全に調子が狂っちまった! 今までの俺だったらお構いなしに相手を殴ってたってのに……。今は避けるので精いっぱいだ。
完全に俺の油断だ。殴ってくるなら殴り返すだけだと、調子に乗ってたんだ。相手は、俺に対して強力な武器を拳に秘めてやがった。いくら頑丈な俺の甲殻でも、爆発を何発も受け続けたら……。
「右ストレートぉ!」
「ぐっ、はぁ……! なめんなよクソがぁ!」
顔面に鋭いパンチを受けたが、腕を鎧化し、さらに炎を纏わせて殴りつける! ティーレンの右腕を殴ってやると、効いたのか少し顔をしかめた。
「っ、とと……。良いパンチしてんじゃん」
「爆発は厄介だがなぁ、俺だって伊達に傷だらけじゃねえんだよ!」
「だが、爆発無しでも俺の拳は痛いぜぇ!」
「ぶぐぅっ!?」
お返しと言わんばかりに、顔面にパンチを受けた。物凄い衝撃で、グラグラするような感覚に陥る。だが、地面を転げまわることは無く、俺は頭をブルブルと振ってティーレンを睨みつける。
奴は、そんな俺の様子に少しだけ驚くような表情をした。
「ふうん? 伊達に傷だらけじゃないってのは本当のようだなぁ。能力を使ってないのに、俺のパンチに耐えてるたぁな」
「ようやく認めやがったか」
「だなぁ。俺は自分勝手に奪うだけ奪ってく人間は大嫌いだが、テメェのようにしぶとく俺に挑もうとする人間は大好きだ」
すると、ティーレンの奴は自分の手に唾を付け、手入れをするかのようにリーゼントに塗りたくる。
「敬意を表して、俺も本気出すとするか」
「っ!」
「らぁっ!」
「うおぉ!?……なんてなぁ!」
「ぐっ、ぬう!?」
目つきが鋭くなった瞬間、拳が打ち込まれそうになる。何とか姿勢を低くすることで回避することが出来た。俺はその隙を逃さず、手の平に炎の塊を作って奴の腹に押し込む!
その瞬間、爆発の音と共に炎が噴き出し、ティーレンの体を燃やす。霊力で炎を球状に作り、押し込むことで破裂させたんだ。爆発のお返しって奴だ。
「このまま……!」
奴の腹に拳をめり込ませた瞬間……殴った場所が爆発する。
「がっ、ぐっ!? またか!?」
「へっへっへっ……。俺が殴っても爆発、お前が殴っても爆発。俺の全身が爆弾よ!」
マ、マジかよ……。鎧化で攻撃しようにも、ティーレンの方がスピードは上。どうすりゃ良いんだよ……。
俺が一瞬動揺したのが、奴に悟られた。
「吹き飛びやがれぇ! そしてぇ!」
「っ! しまっ――――――」
ティーレンは地面を殴る。すると地面が一瞬光り……大きな爆発と共に俺は吹き飛ばされた。そして、そのまま地面へ叩きつけてくれれば良いものを、奴はアッパーカットで再び俺を打ち上げる。そのまま俺よりも高くジャンプし、俺の鳩尾に拳を叩き込んだ。
「そのまま死ねぇ!」
感じたのは、吐くんじゃないかと思う程の腹への圧迫感と、ドゴォン!という凄まじい音。遅れて背中と腹の痛みがやって来た。
「ご……ほ……」
起き上がろうにも起き上がれない。痛みで叫ぶことも出来ない。周りに少しだけ土が見えるってことはクレーターでも出来たのか。
動くことのできない俺に、ティーレンは近づいてくる。当たり前だ。俺を殺しに来たんだから。
逃げろ 逃げろ 逃げろ 逃げろ 逃げろ!
動け 動け 動け 動け 動け!
体がぞわぞわとした感覚に包まれ、俺の本能は危険信号を送り続ける。だが現実は非情だ。俺がそう思っていても、体は動いてくれない。それどころか、ゆっくりと目の前の景色が暗くなる。
「クソっ……たれ……」
そしてついに、目の前が真っ暗になった。
倒れてしまった真、一体どうなる!?
次回は、セルレギオスとミツルの戦いを予定しています。
それでは、次回もお楽しみに!