前のネルスキュラとの戦いのように、途中でミツルの口調が変わります。ご了承ください。
私の目の前に居る男……。名前をラム。私が投げナイフを扱うように、奴は刃状の鱗を投げてきます。
「だが、その程度!」
手持ちのナイフで弾きます。しかし、それは満足のいく弾き方ではありませんでした。
「っ! どれほどの切れ味を……!」
私のナイフは、奴の鱗に当たった部分が欠けていました。これはつまり、鱗の切れ味は私の武器よりも上だという事です。予備はまだ大量にありますが、これが尽きることも考慮しなくては……!
「ふっ!」
「うおっとっと……はあっ!」
「くっ!」
鋭い爪で襲い掛かってきたのを避けて、それと同時にナルガクルガの能力を発動します。……うっし! これで少しは奴のスピードに追いつけるはずだ!
「速い……。やはりティーレンの相手がお前じゃなくて正解だ」
「誉め言葉として受け取っておくぜ」
「だからこそ、戦い甲斐がある!」
俺の腕のブレードと奴の鱗がぶつかり、音と火花を立てる。すると飛び蹴りをかまそうとしてきた。
「よっしゃ掴んだ!」
「お、おぉぉぉぉ!?」
俺を蹴るために突き出した足を掴み、ぐるぐるとハンマー投げのように振り回す。ジャイアントスイングって奴だ! 投げ飛ばして奴が無防備になったところを、すぐに腕のブレードで斬りつける。
「ぐっ、うぅっ……。ゴォォォォォォォ!!」
ラムは腹を押さえながらも目を見開き、叫び声をあげる。その瞬間、鱗が逆立ち、斬りつけたはずの大きな腹の傷が音を立てて塞がった。
モンスターは自己治癒力が強いっていうが、こうも目立つような塞ぎ方を見せられると驚いちまう。
「ま、モンスター能力者の俺たちも出来るけど」
「ウルアァァァァァァ!」
「さっきから叫んでんじゃねえよ、うるせえなぁ!」
するとラムは、さっきの倍以上の鱗を飛ばしてきた。怒り狂ってるせいか、広範囲の攻撃で俺を攻撃するつもりらしい。避けると逆に大ダメージを食らいそうなので、腕を交差させてガードする。
すると、頬や腕が痛み出し、血が流れるのを感じた。真と違って甲殻を持たない俺は、攻撃を受けると普通に出血する。唯一硬いのは、腕のブレードだけだ。
「だらっしゃぁ!」
「ぎ、い、ででででで! 痛い痛い!」
「痛いか!? 痛いだろう!? 痛いよなぁ!?」
ガードして動けなくなったところへ、ラムの奴は俺の傷口に爪をねじ込んできやがった! しかもグリグリと動かしてくるもんだから、その痛みは尋常じゃない。
「このっ、このっ、このっ!」
「が、ぐ、ごほっ!?」
「お返しだ!」
「ぐっ、うぅ!」
ラムは俺の腹を何回か殴ったあと、腕を掴んで俺ごと振り回し、投げ飛ばす。されるがままの俺は、地面を転げまわる。
「がっ、あ、あぁ……」
少しだけふらつく体を起こそうとしたとき、『それ』が視界に入った。
それほど深くはないクレーターに倒れる、真の姿を…………。
「まこ、と……? ぐああぁっ!」
「よそ見してんじゃねえぞぉ!」
「このっ!」
すぐにナイフで蹴りを防ぎ、応戦する。
まさか、真がやられたってのか? まさか、そんな……。あいつは、今までどれだけナイフで傷つけようが倒れなかった男だぞ。嘘だ……嘘だ……。
「嘘だぁぁぁぁぁぁ!!」
俺の専用機『夜影』に収納されてるマシンガンを展開し、引き金を引く。
「ぐっ、ぬぅ! ISとやらの武器か!」
「真ぉ! いつまで寝てやがんだぁ! 起きろぉ!」
ラムは、弾丸が掠ることも構わずに突っ込んでくる。それでも俺は、弾切れになるまで撃ち続けた。
そして、弾切れになったと同時に、マシンガンが切り刻まれた。
「お前は俺が『参った』って言わせるんだからよぉ……。あんな奴に負けんなよ!」
俺にはまだ予備のマシンガンがある! 少しでもダメージを……!
「甘いんだよぉ!」
「まだ、まだぁ!」
予備のマシンガンも切られて爆発する。しかし、すぐにブレードを両手に展開して切り刻む。鱗は硬いようだが、傷が全く通らないわけではない。右手にあるブレードで腹を斬り、その後すかさず左手のブレードで胸部を斬り上げる。
「このまま……ぐぅっ!?」
「調子が……出てきたようだな……」
片手でブレードを押さえただと!? だが、まだ尻尾がある!
「ふっ!」
「ぬぅんっ!」
俺の尻尾の棘とラムの鱗が飛び交い、お互いに刺さってしまった。痛みを感じた俺とラムは、瞬時に距離を取る。
尻尾がジンジン痛みやがる……。だがラムも、さっきブレードで斬った部分にとげが刺さったからか、苦痛の表情を浮かべていた。その隙を逃さず、一度は取った距離をもう一度詰める。走り、ジャンプして――――尻尾で薙ぎ払うように振るう!
「だらぁっ!」
「ゴボォッ!」
対応が遅れたラムは尻尾の一撃を頭に受け、地面を転がる。奴はすぐに起き上がり、俺がさっきやったように尻尾を振るって、広範囲に鱗を飛ばしてくる。飛ばしてきたうちの数枚が太ももや脇腹に刺さるが、俺は走る。
「クキィィィィ!」
今度は腕を振るって鱗を飛ばしてきた。それと同時に、俺は右目を隠していた前髪をかき分ける。
他の者が見たら、右目は赤、左目は黒のオッドアイに見える事だろう。だが、これは生まれてからのものではない。かつて父のように強くなりたいと願った俺が犯した、過ちの証……。悪魔とモンスター、二つの視力が合わさり、常に暴走状態にある右目だ。普段は視力のバランスを取るために、そして他の人に気味悪がられないように隠していたが、解放したことでよりハッキリと、奴が飛ばしてきた鱗が見える。
「っ! ぐぅぅっ!」
頭に痛みが走る。大量の視覚情報を脳が処理してるため、その負担はとんでもない。早めにケリを着けなければ。足の動きを速め、腕のブレードを振るう。
「がっ……ホゴッ……ギ、ガァァァ!」
「うっ……!」
首を斬るが、完全に切断したわけではなかった。だが、ラムは雄たけびを上げながら、鋭い爪を腹に突き刺してきた。
「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ……」
そして、奴はそのまま崩れ落ち、息絶えた。
「最後の抵抗……てか」
幸い、刺し貫かれるというようなことは無かったが、それでも痛い。さて、敵も倒した。早く真を助けないと―――――――
「ゴォォォォォアァァァァァァァァ!!!」
「なっ!? この声……真、なのか?」
空気が震えるような咆哮が聞こえて来た。俺が何度も共に戦ってきて、そして何度も聞いた声……。だが、あれはあまりにもおかしすぎる。何というか、まるで全てのことに怒っているかのような咆哮だ。
俺がそう思っていると、今度は大砲や戦車とは比べ物にならない爆発音が聞こえた。み、耳がおかしくなる……!
「まさか、本当の本当にブチ切れしたんじゃないだろうな……!」
俺は痛む体に鞭を打って、真の元へ向かった。
次回は、一夏たちの戦いの予定です。
それでは、次回もお楽しみに!