インフィニット・ストラトス~竜の血を継ぐ者~   作:G大佐

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お待たせしました。書きたいことを出来るだけ書いたつもりです。

それでは、どうぞ!


49話 IS学園防衛戦(中編)

清き情熱(クリアパッション)!」

 

 楯無が指を鳴らすと、彼女の周りを囲んでいた小型の無人機が爆発した。しかし、煙が晴れない内に同じ無人機が襲いかかってくる。

 

「お姉ちゃん!」

 

 楯無の背中を襲おうとしていた機体が、簪の手に持つ薙刀によって斬られる。

 

「数が多い……!」

「私たちには数で攻めようとしてるみたいね……。」

 

 鋭い爪で襲いかかる小型無人機を、蛇腹剣でズタズタにした。

 

 楯無たちが相手をしているのは、セシリア達が戦っている機体とは異なり、小型で、武装も鋭い爪のみというシンプルな相手だった。

 しかし問題は、その数が異常に多いこと。先ほどのように広範囲の爆発で数を減らしても、ウジャウジャと出てくるのだ。いくら強力な武装を積んでいるミステリアス・レイディや打鉄弐式でも、疲労やシールドエネルギーの消耗によって動きが鈍くなるのは時間の問題だ。

 

「お姉ちゃん、下がって!」

「っ!」

「『山嵐』で怯ませる!」

 

 目の前に表示された複数のポインターが、ロックオン完了の合図に変色した。それと同時に小型ミサイルを発射させた。

 目の前が炎と土煙に包まれるが、それでも無人機はザッザッと音を立てて歩いてくる。

 

「東風谷くん達に向けられる戦力にしては、多すぎるわね……」

「それに、これってISなのか分からなくなってきた……」

「ISに似せた何かってことかしら?」

 

 ISコアには限りがある。だからこそ希少で、無駄に破損させることは出来ない。にも関わらず、相手はまるで捨て駒にするかのように襲ってくる。

 では、ISではなく別のロボットかというと、これほどの数を同時に遠隔操作するというのはとても困難だ。

 

「相手が何であれ、学園を襲うなら容赦しないわ」

「来るよ!」

「っ!」

 

 再び、爪を鋭くした無人機が襲ってきた。すぐにガトリングランスで蜂の巣にする。簪もすぐに薙刀で斬り伏せた。

 

 

 相手が襲ってきては迎撃し、どちらかが危険になれば援護する。その戦いを繰り返すが、相手は止まることを知らなかった。

 

「どれだけいるのよ!?」

「弾薬も、エネルギーももう僅か……」

 

 2人とも、長時間による戦いで疲労していた。そこへ追い討ちをかけるように、今まで相手してきた無人機を大型化した機体が現れる。

 

「嘘…………」

「私たちを疲労させてから仕留める気ね……!」

 

 大型無人機が猛スピードで迫ってくる。狙いは……簪だ。だが、疲労の蓄積によって反応するのが遅れた。簪が気付いた時には、タックルによって吹き飛ばされていた。

 

「簪ちゃん!!」

 

 急いで駆けつける。気を失っているだけだったが、先ほどの攻撃でエネルギーが尽きてしまったようだ。

 だが、無人機は冷酷な狩人。2人まとめて始末しようと、2人のもとへ迫ってくる。楯無は迎撃しようにも、近くに生身の状態である妹がいるため、迂闊に武器を振るえない。

 万事休すか……。そう思った時だった。

 

 

「だらっしゃあぁぁぁ!!」

 

 

 大声と共に、青白い球が無人機を貫いた。無人機は悲鳴を上げることもなく地に伏せる。

 

「嬢ちゃんたち、大丈夫かい?」

 

 2人に声をかけたのは、茶髪に茶色い瞳をしていて、トカゲのような鱗を頬に浮かべている男だった。

 

 

 

 

 

 

 

「お見事です。人間でありながら、無人機軍団を倒してしまうとは」

「お前が、無人機を操っていた親玉か!」

 

 辺りに無人機の残骸が散らばる、木々が生えた学園の庭の中でも開けた場所。そこで一夏は、無人機を操っていたであろう人物と対面した。

 その人物は、いかにも魔法使いという姿をしていた。声の高さと顔つきからして、女性だろう。

 

「半分正解ですね。正確には、竜玉や鳥竜玉と呼ばれるものをコアにした機械です。コアにはモンスターの動きを封じ込めています。相手を見つければ、それこそ本物のモンスターのように動いてくれるのですよ」

 

 竜玉というのがどういうものか分からなかったが、ISのコアの代わりになると言うのならば、かなりのエネルギーを持つのだろう。

 

「つまりお前は、人化モンスターと言うことで良いんだな」

「そうですね。申し遅れました。私、霞龍ことオオナズチと申します。ナズチとお呼びください」

「霞龍…………」

「私に戦闘の意思はありません。どうか、その機体をしまっていただけませんか」

「ここまで攻撃しておいて、はいそうですかって従える訳ないだろ!」

「……やはり、そうですか。分かりました。そのままで構いません」

 

 一夏にとってキツい言葉で突っぱねたというのに、ナズチは怒ることもなく、むしろ少し悲しげに受け入れていた。その様子に、一夏は少し罪悪感を覚えてしまった。

 地面に静かに正座し、一夏を見るナズチ。どちらも口を開くことなく、ただ風が吹く音と戦闘の音が聞こえるだけだった。

 どれほど時間が経ったのか。最初に話したのはナズチだった。

 

「遥か昔、とある世界にて平和な時代がありました。竜と人間が過ごす世界です。竜は人間を食べ、人間に狩られてその恩恵を与える。人間は竜を狩ることで食物を得て、時に竜に襲われる。そのような関係にありました」

「竜と、人間が……」

「しかし、突如その関係は終わりを告げました。人間はいつしか、竜を簡単に葬ることが出来る武器を次々と作り上げていきました。街も見る見るうちに発展していきました。いわゆる、産業革命という時代です」

「ま、待ってくれ! 確かに産業革命という時代はあった。だけど竜がいたというのは伝説で……」

「言ったでしょう、『とある世界』と。あなたならば、私たちがどのような存在か分かるはずです」

 

 そう言われて、理解した。目の前にいる女性は……いや、モンスター達は、並行世界と呼ばれる場所から来たのだ。

 

「人間はどんどん数を増やし、その胃袋を満たすために竜を狩り続けました。しかし、それも最初の話。やがてその狩りは、食糧を得るためのものでは無くなっていきました」

「どういう……ことなんだ」

「人間はモンスターを虐殺し、人工の龍を作り上げたのです。いわば、人工生命体。クローンでなく、死肉をつなぎ合わせ、その器に命を宿した存在。それを用いて……更にモンスターを駆逐しようと企んでいました」

 

 一夏の頭はパニックになっていた。死体をつなぎ合わせて命を宿らせる? フランケンシュタインじゃあるまいし。ふざけてるのだろうか。だが、本当だとしたら、その世界の人間の文明は高度な物だったことになる。

 

「これに、我が主は激怒しました。モンスターを殺し、その死を侮辱するように扱う人間に」

「だから、お前たちは人間を滅ぼすって言うのか!」

「……この話には、まだ続きがあります。もうしばらく、付き合ってください」

「…………分かったよ」

 

 一夏は、気付けば機体を解除して胡座をかいていた。続けますと彼女が言うと、再び語り始める。

 

「我々はその時、飢えに苦しんでいました。住処を追われ、食糧もなく、たださまよい歩く日々……。しかし、その時に手を差し伸べてくださったのが、我が主ミラボレアス様なのです」

 

 ナズチは思い出す。体力が減り、歩くことも困難になりつつあった時に現れた主を。

 

『我は、このような世界にした人間を、竜たちの死を侮辱する人間に戦いを挑む。どうだ? 我の配下にならぬか? そして、再び繁栄を取り戻さないか?』

 

 飢えと寒さによる苦しみ、そして人間への憎悪があるナズチは、差し伸べられたその手をとって立ち上がったのだ。

 

「そして……我々は人間への報復を行いました。老若男女、平民王族関係なく殺していきました」

「………………」

「しかし、相手も竜を葬れる武器を手に反撃してきました。我々にも、人間に果敢に挑み、そして死んでいった仲間がいます。こうして戦い続け、お互いに滅亡寸前の事態になりました」

「それで、どうなったんだ。それが真たちとどう繋がる?」

「人間の抵抗が大人しくなる頃には、我々も疲弊していました。そして、傷を癒すための眠りにつきました。その眠りはとても長いものでした。人間が、そのような大規模な戦争があったことを忘れてしまうほどに」

「まさか、それでお前たちは幻想郷に……」

「その通りです。我々は涙を流しました。緑がある大地を、日の光を浴びて輝く川を再び見ることが出来たのですから」

 

 しかし、とナズチは続ける。

 

「同時に我々は、人間などの種族がいることに危機感を覚えました。また同じように破壊されるのではないか。私たちは繁栄するための場所を求めていました。我々にとって、もはや人間は憎悪と恐怖の対象であり、優先的に攻撃しなければならない生物だったのです。ですが、それ以上の脅威が幻想郷に存在していました」

 

 ゴクリと、一夏は唾を飲み込む。既に一夏は、彼女の話に聞き入っていた。

 

「モンスター能力者……。人間でありながら、我々と同等の力を持つ存在。東風谷真の父親も、十六夜ミツルの父親も、強力な力を持っていたのです。その者たちの子供も、その力を受け継いでいます」

「だから、だから二人を狙うのか!? お前たちにとって脅威だから! だからこの学園を!」

「最終的に、モンスター能力者やその協力者たちによって、我々は同志を失い、挙句の果てには主を失った。……あなた方に分かりますか! 命を救ってくださった恩人を失った悲しみを! だからこそ我々は生きねばならない! あの方のご遺志である『モンスターが繁栄できる楽園』を作り上げるためにも! だからあの二人を、そして世界中のISも破壊しなければならない!」

 

 ナズチが立ち上がると、一夏も慌てて立ち上がった。『雪片弐型』を展開して警戒する。

 

「この世界は、もはやISに依存しています。ISもどきであるこの無人機が暴れたことが公表されれば、その信用は失われる。深くなっていた男性と女性との溝も、より深くなるでしょう。最悪、戦争でしょうかね。ISが強いからと何も対抗策を考えてない訳が無い。戦争は長期化し、ついには絶滅するでしょう。依存していたISによって自らの首を絞めるのですよ」

「だったら俺たちが止めてやる! 確かに俺たち人間の歴史は、戦争や環境破壊がある。今もそうだ。だからと言って……。絶滅するのをただ見てられるかよ!」

 

 一夏がハッキリと大声で言う。その表情に、ナズチは自分たちの顔を重ねた。滅びに抗うその顔。それは、同志を倒し主をも倒した者たちと同じだった。

 

「……ふっ、そうですか。我々も滅びるわけにはいかず、あなた達も滅びるわけにはいかない。お互いに譲れないからこそ、争いは続くのかもしれません」

 

 ゆっくりと歩いてくるナズチに、一夏がブレードを向けて無言の威嚇をする。だが彼女は歩みを止めない。

 

「私の役目はここまでです。自分の命は、自分でけじめをつけます」

 

 するとナズチは、ブレードを掴み……自ら首に突き刺した。

 

「っ! なんで……」

 

 ブレードを引き抜くが、彼の顔は暗いものだった。

 

「なんで……死んでも笑ってられるんだよ!」

 

 死んでもなお笑っているその顔は、果たして安らかな笑みなのか、それとも侮蔑の笑みなのか。それは彼女しか分からない。

 

 




楯無たちを助けた人物は、前作のキャラクターになります。次回も、前作キャラを出す予定です。
ですが、「○○かな?」みたいな感想はネタバレになるので、止めてください。

それでは、次回もお楽しみに!
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