「大切・・・ふふふっ。私が知らない間にそれほどの男を見つけたのね」
幽香の宣言を聞くや否や、雪乃はとても良い笑顔でデュエルディスクを構えた。
これから何を行おうとしているのかが丸分かりである。
「あ~・・・すいません。九条 聡と「構えなさい」・・・」
「お、お母様!?」
有無を言わせない口調で構えるように促す雪乃に幽香は困惑している。
久しぶりの再開に喜んでいた彼女は気づいていなかったようであるが、周りにいる者達は気づいていた。
愛する愛娘の口から知らない男の名前が出てくることが、母親としてどんな行動をもたらすのかを。
「九条 聡と言ったかしら?私の幽香がここまで言うほどの男ならばどうすべきか。わからないとは言わせないわよ?」
「・・・こればかりは仕方ないですよね」
聡はTFの知識はあまり知らない。
赤帽子を被ったコナミ君が主人公であり、ギャルゲーと言わしめたヒロイン達の中でも代表格しか知らなかった。
だがそのヒロインの中でもザ・ツンデレのツァン・ディレ、歩く18禁の藤原 雪乃がよく印象に残っていた。
ツァン・ディレは言わずもがなの性格と六武衆を扱い、多くのデュエリスト達を絶望に叩き落していたこと。
藤原 雪乃はとにかくエロいということと、フィアンセを得るために本人の許可無く巻き込み婚約記者会見を開くことで逃がさないようにしたということだ。
そんな薄っぺらい知識を持っている人物が目の前に存在し、況しては自分を慕ってくれる女性の母親ときた。
デュエルで事が済むのなら聡からすれば願ったりだ。口論で勝てるとは思えないし、何よりもデュエルをしなければおっかない方法であらゆる手を用いて来そうな勢いを醸し出している。
「貴方という男の価値・・・見極めさせてもらうわよ」
「お手柔らかにお願いします」
「「デュエル!!」」
聡 LP4000
VS
雪乃 LP4000
「先行は譲ってあげる。早くなさい」
「えっ。どっちかと言えば後攻のほうがいいんですが」
「(無言の笑顔)」
「はい。すいませんでした。俺のターン!」
先行を譲ってくれたとても優しい雪乃の笑顔から逃げるように聡はターンを進める。
これ以上彼女の気を悪くするとよからぬことを絶対させる自信がある。
「俺は《ローンファイア・ブロッサム》を召喚!《ローンファイア・ブロッサム》は自分の場の植物1体をリリースすることでデッキから植物モンスターを特殊召喚することが出来る。この効果は同名カードを出しても問題ない。効果を発動「私は手札の《増殖するG》の効果を発動」ッ!」
ローンファイアの効果の発動に合わせ、雪乃は手札のモンスター効果を発動した。
エフェクトヴェーラーなどであればあまり痛くは無かったのだが、よりにもよってGだった。
「始めから手札に増Gを持ってましたか」
「ふふっ。どうしたの?効果処理をしなさい?」
「こりゃまずい。俺はデッキから《
聡
手札:5→4
《紅姫チルビメ》
星8 地 効果
DEF:2800
雪乃
手札:5→4→5
「《増殖するG》・・・確か相手が特殊召喚を成功させるたびにデッキからカードを1枚ドローする効果・・・でしたか」
「流石ゆきのん・・・ある程度実体化するデュエルでも躊躇なく使っていくね。でも今のは最善のタイミングか」
「ゴキブリ、嫌い・・・」
リアルソリッドビジョンシステムを用いてはいないとはいえ、デュエルディスクを用いたデュエルだ。質量は持たずとも、映像はしっかりと現れる。
雪乃が《増殖するG》を使い、聡が特殊召喚を成功させたことでGの数が少しずつ増え始めた。
Gが苦手な人からすればこれだけでサレンダーしてしまいそうな光景だ。
目の前でGが増えていく光景なんで衝撃映像どころの騒ぎではない。
「1ターン目から手札消費1枚で最上級モンスターを召喚するなんて、なかなかやるのねボウヤ」
「G使って牽制している貴方が言うと皮肉に聞こえますけどね。《桜姫タレイア》をコストに《トレード・イン》を発動して、2枚ドロー。俺はカードを2枚セットしてターンエンド」
聡
手札:4→4→2
モンスター:紅姫チルビメ
魔法・罠 :セット2
「私のターン、ドロー」
雪乃
手札:5→6
正直なところこれは痛い。
デッキ圧縮も兼ねてもっと展開するはずであったが、増Gを使われたとなるとそういうわけにもいかない。
引きの強さが異常なこの世界の住人とのデュエルなら尚更だ。手札を減らすことはやっても増やすようなことはさせたくなかった。
「私はフィールド魔法をセットするわ。」
Aフィールドを使用していないこのデュエルではフィールド魔法をちゃんと使うことができる。しかしそれでも発動ではなくセット・・・それで活躍するフィールド魔法はあっただろうか・・・?
「行くわよ。私は手札から《
「げっ!」
彼女が発動したカードを見て聡は彼女が扱うデッキを理解した。
TFにおいて雪乃は儀式を主体としたデッキを使い、デュエルを行っている。
そのデッキが【リチュア】であり、もう一つは【デミスドーザー】だ。
どちらも当時の環境を荒らしていき、キーカードが禁止指定及び制限指定を受けたこともあるのだ。
9期パワーには流石に地負けするであろうが、それでもかつての環境デッキ。
そのなかでもフィールド魔法を使っても問題ないデッキは――後者であり、デミスの効果を遺憾なく使えるフィールドは限られてくる。
「私はデッキからレベル4の通常モンスター《
世界を見据える古の王よ!その力を以て終焉へ導け!
儀式召喚!レベル8《終焉の王デミス》!!」
雪乃
手札6→5→3
《終焉の王デミス》
星8 闇 儀式/効果
ATK:2400
「いくわよボウヤ!私はライフを2000支払い《終焉の王デミス》の効果を発動!このカードを除く全てのカードを破壊するわ。“
「トラップオープン《
「ただ装備しただけ?まぁいいわ。デミスの効果で破壊よ」
先ほどセットしたフィールド魔法ごとカードを全て破壊するデミスはやはり強力なカードだ。
だが聡自身、このデュエルはそう簡単に負けれるものでもない。
「私はこの瞬間破壊されたフィールド魔法《
「やはりか!」
「知ってたの。ならわかるわね?《歯車街》が破壊されたことで自分の手札、墓地、デッキから〔アンティーク・ギア〕と名のつくモンスターを1体特殊召喚することができるわ。来なさい《
雪乃
LP4000→2000
《古代の機械巨竜》
星8 地 効果
ATK:3000
「相手のフィールドを荒らしながら自身はパワーカードを展開していく・・・流石プロデュエリスト。油断など微塵もないということか」
「でもゆきのんと戦っている彼もなかなかやるね」
「破壊を・・・利用している・・・」
ツァンと恵は聡の盤面を見て関心していた。
聡
手札:2→3
《紅姫チルビメ》
DEF:2800
《
ATK:2800
「・・・どうして破壊したはずの《紅姫チルビメ》がフィールドに存在しているのかを聞いてもいいかしら?」
デミスの効果で破壊したはずのチルビメに疑問の声を投げかける。
破壊から守るようなカードを発動していなかったはずだ。
それなのに聡の場には破壊したはずの《紅姫チルビメ》だけでなく、さらにもう1体モンスターが存在しているのだ。疑問に思わないはずがない。
「雪乃さんが《歯車街》の効果を発動したように、俺も相手によって破壊された《紅姫チルビメ》《植物連鎖》そしてセットしていた《リ・バウンド》の効果を発動していました。《紅姫チルビメ》は相手によって墓地に送られた場合、装備カードとなった《植物連鎖》は他のカードによって破壊された場合、そして《リ・バウンド》は相手によって破壊されて墓地に送られた時にそれぞれ効果を発動できる」
雪乃がデミスの破壊効果を利用して《古代の機械巨竜》を召喚したのに合わせて、聡もそれに合わせて3枚のカード効果を発動していた。
これが相手ターンで展開できた理由。
これがなければすぐに負けていただろう。
「チルビメの効果はデッキから自身以外の植物族モンスターを、そして《植物連鎖》は墓地に存在する植物族モンスターをそれぞれ1体特殊召喚することができる。これの効果でデッキから《姫葵マリーナ》を、墓地から《紅姫チルビメ》を特殊召喚しました。そして《リ・バウンド》の破壊された効果でカードを1枚ドローしたんです」
「まさか私のデミスの効果を逆手に取るなんて・・・ふふふっ。なかなか魅せてくれるじゃない」
聡のプレイングを聞き、笑みを一層鋭くさせた雪乃は展開を続ける。
「ボウヤがそうくるならば、私は墓地の《甲虫装甲騎士》2体を除外して手札の《デビルドーザー》を特殊召喚!」
雪乃
手札:3→2
《デビルドーザー》
星8 地 効果
ATK:2800
「そして私は手札から装備魔法《巨大化》を《デビルドーザー》に装備!私のライフのほうが少ないため、攻撃力を2倍にするわ」
雪乃
手札:2→1
《デビルドーザー》
ATK:2800→5600
「攻撃力5600・・・!」
「認められたければこの状況を乗り切ってみなさい?バトルよ」
「《紅姫チルビメ》のモンスター効果!このカードがフィールド上に存在する限り、相手はこのカード以外の植物モンスターに攻撃することが出来ない」
「あら・・・そうなの?ならば《古代の機械巨竜》で《紅姫チルビメ》に攻撃!」
聡の効果宣言により出鼻を挫かれたのか、落ち着いた声音で宣言する。
歯車の巨竜の息吹を受け止めきれずに紅姫チルビメがその場から消滅した。
「自分の場の植物族モンスターが破壊されたことで《姫葵マリーナ》、そして破壊された《紅姫チルビメ》のモンスター効果をそれぞれ発動!」
「私からはなにもないから安心なさい?」
「わかりました。先にチルビメの効果により、デッキから《椿姫ティタニアル》を特殊召喚。そしてマリーナの効果で《デビルドーザー》を破壊する」
マリーナの誘発破壊によって巨大化していたデビルドーザーを破壊する。
こちらに来てからというもの、チルビメとマリーナの効果にはお世話になりっぱなしだ。
「ッ・・・デミスの攻撃力ではボウヤのモンスターを破壊することはできないわね」
ふぅ。なんとか乗り切った。そう思っていたのだが・・・
「私は速攻魔法《ご隠居の猛毒薬》を発動。私はライフを1200ポイント回復するわ」
「ッ!?」
雪乃
手札:1→0
LP2000→3200
「デミスの効果はターン制限はない。よって再び私は2000のライフを支払ってフィールド上のカードを全て破壊するわ」
「ぐっ!」
後続のために展開していた姫達はデミスの二度目の効果によって破壊されてしまった。
この場面でタレイアをコスト扱いで墓地に送っていたことが仇となるとは・・・
チルビメのようなリクルート効果もないため、今度こそ場が更地になってしまう。
「私はこれでターンエンドよ。さぁボウヤ・・・魅せてみなさい。貴方の可能性を」
「・・・俺の・・・ターン!!」
雪乃
手札:0
LP3200→1200
フィールド:終焉の王デミス
聡
手札:3→4
LP4000
フィールド:なし
自分フィールドにカードは存在しせず、手札は魔法・罠の3枚と確認してはいないドローカードが1枚。
相手は攻撃力2400のデミスがいるが、向こうのライフはあと1200。
ドローしたカードは・・・
「・・・来た。俺は手札から《切り盛り隊長》を召喚!」
聡
手札4→3
《切り盛り隊長》
星3 地 効果
ATK:1200
「このカードが召喚に成功した時、手札を1枚デッキに戻してシャッフルすることが出来る」
「?それだけのために召喚をしたのかしら?」
確かにそれだけの効果だったのならば《エア・サーキュレーター》のような破壊されても効果を使えるカードを使えばいい。
しかし今はそのカードではなく、このカードでなければいけない理由がある。
それはこの勝負に、このターンで勝つという目的があるからだ。
「勿論それだけじゃありませんよ。この効果でシャッフルした後、自分はカードを1枚ドローします。そのカードがモンスターだった場合、自分の場に特殊召喚することができます」
「なるほど、手札交換も兼ねての展開手段ね。でももしモンスターが出なければどうするのかしら?」
「そのときはそのときですよ。だけどこの戦いは俺が自分で作り上げたデッキを信じれるかが大切なんです」
「・・・・・・それは精神論じゃないのかしら?」
「自分が時間をかけて作り上げたデッキを信用できずに、一体誰がそのデッキを信じれるのか。信じることが出来ないデッキを使って勝てる人なんて存在しない。少なくとも自分はそう思っています」
それはこちらに来てから確信したこと。
「デュエルってのはそういうものでしょう?
それは自分に思い込ませるように言った言葉。
生粋のこの世界の人間でないからこそ、聡はカードの性能で戦う癖が染み付いている。
遊びやネタとして用いることはあっても、強いデッキ相手にはそれ相応のデッキで挑む。そのようにデュエルしてきた。
だが精霊達が憑いているという向こうでは理解できないような出来事も現実を目の前にして、それだけではいけないと思うようになった。
デッキを信じれば信じるほど自分のデッキが想いに応えてくれることは今までの歴代主人公達が証明してきた事実だ。そしてそれはアカデミアとの戦いでも必要になってくる要素になるだろう。
(・・・ふふっ。出会ったときの“あのひと”を思い出すわね・・・)
デッキとは己の魂
使えないカードは存在せず、使い手次第でどんなカードも最強のエースとなる
そんなことを心から言っていた男。周りのことなど目もくれず、弱いと言われて捨てられていたカード達で勝ち上がってそれを世界に証明してみせた存在。
雪乃はそんな自分の心を奪っていった
そういえば彼も似たような境遇の存在だったかと。
「・・・《切り盛り隊長》の効果で・・・ドロー!!」
聡はカードを信じ、トップを引く。
己の視界に映るようにカードを動かし、確認する。
―――――来た。
「引いたカードはレベル3の《ペロペロケルペロス》!よって特殊召喚!」
今さらであるが、聡は精霊の力は使っていない。自分の力を証明して見せろと言った雪乃にそれを示すのにフェアでないと思ったからだ。
精霊のブーストがかかっていない状況でのこのドローは正真正銘の自分の力。
自分のデッキが応えてくれたのだ。
「俺は地属性レベル3の《切り盛り隊長》と《ペロペロケルペロス》でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!
現れよ!ランク3《メリアスの
《メリアスの木霊》
ランク3 地 エクシーズ/効果
ATK:1700
「エクシーズ召喚・・・でもそのカードでは私のデミスより攻撃力が劣っているわ」
召喚したのは攻撃力では劣っているエクシーズモンスター。
それでもこのデュエルを勝つためのフィニッシャーとなる。
「勿論ただこのカードを召喚しただけではないですよ。これはこのデュエルで勝利するための、俺の意志を示すためのデュエルです。そして俺はエクシーズ素材を一つ使い、《メリアスの木霊》の効果を発動!自分の墓地から植物族モンスターを1体選択し、特殊召喚することができる。蘇れ《桜姫タレイア》!」
《桜姫タレイア》
星8 水 効果
ATK:2800
「桜姫タレイアは自分フィールド上にいる植物族の数×100ポイント攻撃力を上昇させる。俺の場には植物族モンスターが自身を含めて2体。よって攻撃力は3000になる」
「まったく・・・そんなに軽々とデミスを越えるモンスターを召喚されたら堪ったものじゃないわ」
聡が蘇らせたモンスターはコストとして落としていたモンスター。
召喚権を使っての一種の賭けに勝ち、デミスを越える聡を見て、雪乃は感嘆のため息をつく。
思い返すは夫の姿。
カードは違えど、展開は酷似。
完敗だと。
雪乃は自分の負けを素直に受け止めた。
「・・・見事だったわ」
デュエルは聡の勝利となり、雪乃と握手を交わす。
どうやら彼女の眼鏡に適う結果を示せたようだ。
「驚いた。まさかゆきのんが負けるなんて思わなかったよ」
「私も、驚いた」
プロとして活躍する自分の友人が勝利することを疑っていなかったのか、聡の勝利に驚く二人。
その二人と似たような心境であったのか零児もよい決闘だったと褒めたが、すこし表情が硬くなっていた。それもすぐに戻り、話し合いを始めると言って一番始めに動き始めたが。
零児に従うように聡たちも動くのだが、幽香には聞こえないように雪乃がこう言い残した。
「
「・・・勿論わかっています。俺も男ですから」
もし実際に泣かせてしまった暁には文字通り自分の身に何が起こるかわからない。
勿論泣かすつもりもないため、そう伝えると雪乃は満足そうに自分の席へと戻っていく。
(なんだかんだで外堀が埋まっていくな・・・)
ボウヤ呼ばわりではなくなったことでそう思いながら聡も用意された場所へ向かっていった。
デミスドーザーだとワンキル防がれたらその後がつらいですね。もっとアニメバリの展開にしたほうが良かったのだろうか?
閲覧してくださりありがとうございます。〇坊主です。
ゆきのんとのデュエルが終わり、外堀が埋められました。
使用デッキで【デミスドーザー】か【リチュア】で悩んだんですが、後者は
まぁ、どちらにせよ強力なデッキであることには変わりないのですけどね。
そんなこんなで修羅場はあっさりと終了です。
これからも楽しみにしてくださると光栄です。
それではまたお会いしましょう。
お楽しみはこれからだ!