流星のロックマン プレアデスの絆   作:UMA_SS

6 / 14
 本来は1話とこの2話全部で1つの話として投稿しようとしていたものを文字数の関係で切ったので、いきなり本題に入ってます。
 委員長とか育田先生とかのキャラがこれで良いのか微妙です。どう書いてもなんか違うような気がしてくる……

(7333文字)


3、Ride On

 養護施設の少年少女たちとの鬼畜鬼ごっこから一時解放され休憩をとるスバルたちのもとに、1人の男が近づいてきた。

 

「あ、育田先生!」

「やぁ、どうだい、ここの施設の子たちは?」

 

 首からフラスコを2本下げた白衣姿の担任教師、育田道徳(みちのり)が気さくに話しかけて来る。

 

「良い子たちですね、元気すぎますが……」

 

 ルナが率直な感想を述べると、育田は大きな声で笑った。

 

「はっはっは! そうだろう! ま、やんちゃなのは大目に見てやってくれ。あの子たちは今までかなり苦労してきたんだから」

「え、そうなんですか?」

 

 育田の意味深な言葉に反応を見せる4人を、育田は神妙な面持ちで見つめ返し頷いた。

 

「彼らはね、元々はキング財団の施設に居た子供たちなんだよ」

「えっ!?」

 

 キング財団。世界中の子供たちへの支援を惜しまず、世界の身寄りの無い子供たちを引き取り新たな生活を与えていた組織だが、実は電波犯罪集団「ディーラー」の使える手駒を探すための手段に過ぎなかったことが知られたのはつい数か月前のことである。今はミスター・キングの死により解体されている。

 

「あの子たちが……!?」

「元々家族たちを失ったりして、それだけでも十分苦しんでいるのに、キング財団が無くなって再び居場所を失ったんだ。今いるこの施設だって、新たな引き取り手を探すための一時的な場所でしかない」

 

 そう言う育田自身も辛そうだ。彼は何人もの子供を持つ父親ということもあり、かなりの子供好きだ。好きな子供たちの中にこんな不遇な運命をたどる子たちがいることがどうしてもやるせないのだろう。

 

「でも、そうならなんで最初に言ってくれなかったんですか?」

「出会う前から彼らの事情を聞かせてしまえば、キミたちの彼らへの態度も慎重なものになってしまうだろう。それじゃダメなんだよ。今の彼らに必要なのは、彼らを正しい方へと導く優しさと、そこへ向かうだけの元気だからな。傷つけまいという姿勢は大事だが、遠慮してしまってはキミたちを彼らに逢わせた意味が無いからね。……どうだい、今見た彼らは、キミらの目から見て希望を失っているように見えるかい?」

 

 スバルたちは顔を見合わせ、そして彼らの言動を思い返した。 ――いや、思い返すまでもない。スバルたちは共に遊ぶことで、彼らのパワフルな希望の力を身をもって体感した。

 

「……見えません!」

「みんな元気な奴らだぜ!」

「良い子ばかりよね」

「逆にこっちが元気をもらったくらいです!」

 

 真っ直ぐに答えた4人に、育田は満足げに頷く。

 

「今、他の6-A の生徒にも同じことを伝えて回ってるところだよ。みんなならきっと子供たちの力になってくれるだろうってね。キミたちも力になってやってくれ」

 

 そう言い残すと、育田は立ち去った。他の生徒に同じことを伝えに行ったのだろう。

 

「……あの子たち、そんな事情を持っていたのね……とてもそうは見えなかったけど……」

 

 ぽつり、とルナが呟く。今考えても、伝えられた事実は意外だったようだ。

 

「今思えば、子供たちが鬼ごっこを得意としている理由もなんとなく分かりましたね」

「え、なんでだよ?」

 

 キザマロの放った言葉にゴン太が聞いた。対してキザマロはやれやれ、と言うような仕草で首を振った。

 

「いいですか、ゴン太くん。キング財団はディーラーとして使える人材を集めるために優秀な子供たちを集めていたんですよ? 『優秀』と判断する条件が『頭が良いから』なのか『運動神経が良いから』なのか、もしくはまた別の理由からなのかはわかりませんが、そんな子供たちを優先して集めていたわけです。そんな集団に鬼ごっこをさせたらどうなると思います?」

「え……えと……?」

 

 小学生にしては理論立った言い回しで説明するキザマロに、ゴン太の頭は付いていけない。代わりと言わんばかりに成績ではキザマロを(しの)ぐルナが答えた。

 

「頭のいい子が作戦を立てて、足の速い子がそれをやるってことでしょ?」

「そうです、委員長! 仮にも我々の中で一番足が速いであろう、ゴン太くんを優先して捕まえた手際といい、待ち伏せと誘導を使った作戦を立てたり、なんというか人の使い方が上手いんです、彼らは!」

「人の使い方、か……」

 

 キザマロの言い方に、スバルは苦笑した。彼本人に悪気はないのだろうが、スバルにはそれで思わされることがあった。

 元々、ディーラーもキング財団に集った子供たちを「使おうと」していたわけだ。それも、ボードゲームの盤上の駒のように、何の情もなくいつでも捨てられる存在として。その駒にされかけた子供たちが、人を使うことに長けている、というのは皮肉なものである。

 もう1つ言えば。どんな形であれ、いくら善行であったとはいえ、彼らの居場所を失わせたのは、スバルたちやサテラポリスである。自分たちがディーラーを壊滅させ、キングを倒した結果が、彼らを苦しませる結果に導かせたのだから。

 ディーラーを倒したことは間違いではない。でも、果たしてそれが地球上全ての人間に対して幸せをもたらしたと言えるのだろうか。彼ら施設の子供たちの前で胸を張って「キングを倒してキング財団が無くなって世界は平和になった」と言えるのか?

 

「……スバルくん」

「ひゃい!?」

 

 考えにふけっていたスバルは急に名前を呼ばれて声が裏返ってしまった。顔を上げてみると、いつの間にかルナがスバルを見つめていた。

 

「今、何を考えてたの?」

「え?」

「ディーラーを倒して良かったのかとか、悩んでたんじゃないでしょうね?」

「ギクッ!」

 

 分かりやすい子であるスバルは、図星とばかりに顔を強張(こわば)らせた。それを見たルナは、ため息をついた。

 

「やっぱり……。いいこと、スバルくん。さっき育田先生も言っていたでしょう? あの子たちにそんな遠慮した考えはしちゃダメよ。それに、ディーラーがあのまま地球を我が物にしてたらどうなっていたと思う? あの子たちを道具程度にしか思ってなかったキングが地球を支配したら? 絶対、今より酷いことになっていたに決まってる。あなたは本当に地球のみんなを救ったの。みんながあなたに感謝してる。じゃなきゃ、地球にあなたは帰って来れてないでしょう?」

 

 メテオGでの死闘の後、メテオGは崩壊し、スバルは宇宙を彷徨(さまよ)うことになった。彼を救ったのは、地球の人類が作り出した1つのレゾン、「スバルを地球に」によるものだ。そのレゾンウェーブが無ければ、スバルは地球に帰っては来れなかった。スバルが地球の人々を救い、人々がスバルを救った結果、今の平和があるのだ。

 

「……そうだね、委員長。ありがとう」

「ふ、ふん! 分かったらよろしい! そろそろウォーロックも遊ばれてバテるころでしょ、つきあってあげないと」

 

 スバルに礼を言われたのが恥ずかしかったのか、ルナは顔をぷいっと背けた。

 

「うん、そうだね。それにしても、ウォーロックもみんなも、どこに行っ――

 

 

「きゃぁぁああああああああああ!!」

 

 

 それまでの雰囲気を全て吹き飛ばして、その叫び声は聞こえてきた。

 

「――ッ!?」

「な、なんだぁ!?」

「あの林の方から聞こえましたよ!」

 

 キザマロが指差した方角は、さきほどスバルが鬼ごっこで捕まった方だ。4人が突然のことに頭の整理が追いつかない。急に訪れた張りつめた空気に割り込むように、ピピピピ、と電子音が響く。電話の着信音のようだ。

 

「僕のハンターVGだ! 相手は……ウォーロックだ!」

 

 ほとんどの場合、ウィザードはハンターVGに入っているためにあまり使われない機能ではあるが、ハンターVGとウィザードはいわゆる一心同体の関係だ。離れたウィザードと、そのウィザードに連動するハンターVGで交信するのは簡単なことである。

 

「ウォーロック、どうしたの!?」

『スバル、ノイズウェーブだ!』

「えっ、ノイズウェーブ?」

 

 ウォーロックの声と、エアディスプレイに映る彼の姿は、激しく動いているからなのか不安定にブレている。

 

『あぁ、こいつらと遊んでたら突然――ッ、ノイズウェーブが開いて中からウィルスが飛びだしてきやがった! 今闘ってるんだが、すげぇ数だ! オレ1人じゃ、コイツら全員守って戦いきれるか分かんねぇ!』

「……! 分かった、今そっちに行く!」

 

 それだけ言うと、スバルは通信を切り、駆けだした。場所は会話せずとも把握できた。ハンターVGの示す自分のウィザードの場所へと走ればいい。

 スバルの後ろから、ルナとゴン太が追いかけてきた。一昔前の電話と違って、現代の電話は空中にテレビ電話のような画面が表示される。電話の対話に参加せずとも会話は聞こえるためか、2人も状況は理解しているようだ。

 

「スバル、電波変換するんだろ? オレも闘うぜ!」

「いや、ゴン太は闘わないで!」

「な、なんでだよ!?」

 

 ゴン太は提案を断られて不満げだ。

 

「ゴン太も闘ってくれた方が心強いけど、オックス・ファイアは攻撃が派手だし、まだ手加減できないでしょ!? 子供に当たったらどうするの!?」

「ぐっ……」

 

 ゴン太は走りながら拳を悔しそうに握った。そんなゴン太をルナは心配そうに見つめる。いつも粗雑に扱いながらも心の内では大事に思っているのがルナだ。

 

「だから、ゴン太と委員長は子供たちが戦いに巻き込まれないように誘導して欲しいんだ! ……って、あれ、キザマロは?」

「キザマロは助けを呼びに行ったわ! 自分は足が短くてわたしたちほど速くは走れないから、自分にできることするって!」

 

 どうやら、スバルの見えない所でキザマロも悔しい思いをしていたようだ。少し申し訳なく思ったが、今はそんなことを考えている暇ではない。

 

「その代わり、ペディアを貸してもらったぜ!」

『逃走ルートを調べるのはまかせて!』

 

 ウィザードは「ウィザードアダプター」というハンターVGの物理的な周辺機器を抜き挿しすることで容易に他人のハンターに譲渡することが可能である。ペディアの声がルナのハンターVGから聞こえるということは、ペディアのウィザードアダプターはルナに手渡されて接続されているようだ。

 

「うん、それじゃ急ごう!」

 

 頷いたスバルは、不測の事態に対処するべく、ルナとゴン太と共に林の中を疾走するのだった。

 

 

 

 

 

 

『――ビーストスイングッ!!』

 

 ウォーロックが自慢の爪を振るい、彼の目の前でメットリオが引き裂かれて消滅する。しかし、その真上から別のメットリオがつるはしをウォーロックめがけて振りおろしていた。

 

『グッ……!』

 

 背中につるはしの直撃を喰らい、顔をゆがめるウォーロック。彼は痛みに耐えながら体を翻した。

 

『舐めんなよウィルスがっ!』

 

 自身を襲ったメットリオだけでなく、後ろに控えていた他のメットリオもまとめて一撃の元に爪で薙ぎ払う。しかし、それでも数が減る気配はない。

 

『ハァ、ハァ、ハァ……』

 

 出て来るのはどうやらメットリオばかりのようで、個々の力はウォーロックの方がはるかに上だ。だが、やはり「多勢に無勢」は効くもので、確実にウォーロックの体力は奪われていた。すでに、何体を倒したのかは分からない。何回爪を振るったのかは数える事を知らない。それでも、ウィルスは湧いて出る。

 

「ウ、ウォーロック、だいじょうぶ……?」

『うるせ、気にすんな! こんなのなんでもねぇ!』

 

 背後に控える施設の子供たちが震えてうずくまりながらも声をかけ、それにウォーロックは怒鳴るように言葉を返す。しかし、それは限りなく虚勢に近かった。

 

『もうすぐスバルたちが来る! それまでの辛抱だ!』

 

 と、言ったものの、冷静に現状を分析すれば彼らが来るまで持つかどうか分からない。ただウォーロックが闘い続けるだけなら続けることは可能だろう。が、今のウォーロックに残された体力で、子供たちまで守りきれるかどうか。傷ついた分だけ動きは機敏さを失う。素直に言えば、ウォーロックは自分の戦いをするだけで手いっぱいだった。

 

《……弱音吐いても仕方ねぇ、奴らを信じて闘うしかねぇだろ!》

 

 今やウィルス発生装置になっているノイズウェーブの出入口をにらみつけながら、ウォーロックは自分を奮い立たせた。

 

『ウォラァァアアッ!!』

 

 迫りくるメットリオを爪で薙ぎ払いながら、ウォーロックは吠えた。しかし、だんだんと囲まれていく。

 

『……クッ――!』

 

 ウォーロックが気が付いた時には、周りのメットリオが(どう統率を執っているのか)一斉につるはしを振りおろそうとしており、同時に子供たちの元にもメットリオが迫っていた。

 ウォーロックはもはや自滅覚悟で自分と子供たちの間の空間に存在するメットリオを倒そうと、メットリオの振りおろすつるはしを無視してつっこんだ。が、振りおろされるつるはしの方が早く、ウォーロックはつるはしから放たれる衝撃波に呑み込まれ――

 

 

「バトルカード、バリアッ!!」

『オックスフレイム!』

 

 ――青白い光の壁に守られていた。

 

『これは……』

 

 ウォーロックが驚いた面持ちで顔を上げる。ウォーロックの周りには青白い色をしたバリアが張られ、彼はそのバリア越しに炎に包まれていくメットリオたち見た。

 

「お待たせ、ウォーロック!」

 

 メットリオ達が炎に焼かれて消え去った後の空間に飛び出してきた、3人の少年少女。彼らは、子供たちを守るようにウィルスの前に立ちふさがり、ウォーロックを見つめていた。

 

『思ったより早かったじゃねぇか、スバル』

「うん、今回はウォーロックが早く教えてくれたからね」

『……へっ』

 

 スバルがビジライザーを目にかけたまま不敵な笑みで言い、ウォーロックは笑い返した。

 

「バトルカード、リカバリー」

 

 スバルがバトルカードを使うと、ウォーロックはみるみるうちに回復していく。

 

『ブロロロロ、ありがたく思えよ、ウォーロック……』

『ヘッ、恩に着るぜ、オックス』

 

 子供たちに迫るウィルスを倒した主であるオックスにウォーロックは言った。

 

「やっちまえ、スバル!」

「みんなはわたしたちに任せて!」

『フレーフレーロックマン!』

『ルナちゃんのためにも頑張ってください、スバルくん!』

「ちょっとモード、どういうこと!?」

 

 ゴン太、ルナ、ペディア、モードが応援する。モードはペディアのアシストとしてウィザード・オンされたようだ。スバルは仲間たちに頷きつつ、ウィルスを見据えた。メットリオたちは新手の敵に戸惑っているようだった。

 

「……それにしても、ウィルスも実体化してるんだね」

 

 ビジライザーを外しながら、スバルが呟いた。

 

『そうだな、ウィルスはノイズの塊みてぇな存在だって話だし、ノイズウェーブのノイズで奴らを形作ってる電波が濃くなってるんじゃねぇか?』

 

 思えば、かつて生徒会長選挙のために公園で演説練習をしていたルナとキザマロも実体化したウィルスに襲われている。やはりノイズウェーブはウィルスをいろんな意味で育てる空間なのかもしれない。

 

「って、今はそれどころじゃないや、急がないと」

『その通りだ、いくぜ、スバル!』

「うん!」

 

 ウォーロックに促され、スバルはハンターVGを馴れた手つきで腕に装着し、トランスコードを提示しつつ腕を天高く突きあげる。

 

「トランスコード! シューティングスターロックマン!!」

 

 光がスバルの腕から天に昇り、そのままスバルとウォーロックを包み込む。(まばゆ)いばかりの光が広がり、その眩しさにその場に居た者は皆、目を細めた。

 そして、その光が(おさ)まったとき、そこには1人の青い戦士――ロックマンが立っていた。

 

「いくよ、ウォーロック」

『おうよ、スバル!』

 

 士気を高めるように呟いたロックマンは、ウィルスたちに向けて駈け出した。

 

「ウェーブバトル、ライド・オン!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。