流星のロックマン プレアデスの絆   作:UMA_SS

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 15秒で分かる前回までのあらすじ。
 キザマロが作者に忘れ去られて、委員長が恋に盲目して、ウォーロックはウイルスへの殺戮を楽しんで、ロックマンが英雄の顔をしました。めでたし、めでたし。じゃあ始まるよ!

 あ、ハーメルンのユーザーでない人でも感想書けるようにしました。なんか設定を間違ってたみたいです。

(6167文字)


6、はいしゃはさるのみ

 ロックマンの活躍によってウイルスの脅威が去って数分後。スバルたちと施設の子供たちは難を乗り越えた。

 そんな中で安堵の空気に一行が包まれるのかと思いきや、2人の子供が地べたに正座させられ、その前では青いウィザードが怒筋を立てて腕を組み仁王立ちするという、奇妙な()がそこにはあった。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 地べたに正座した子供のうちの少年の方が泣きそうになりながら頭を垂れ、その赤茶の髪が揺れた。地に手は付けていないが、ほぼ土下座に近い。それを見てむしろ目の前のウィザードは声を荒げた。

 

『……バカヤロウが! なんでじっとしてなかったんだ! 危なかったの分かってんだろ!?』

 

 ウォーロックがどなり声を上げ、子供は肩をびくりと震わせた。さきほど、安全な場所にいなかったせいでメットリオの攻撃を喰らいかけた少女と少年にウォーロックは説教しているわけだが、どうも怒る勢いが強すぎるのが玉に(きず)だった。

 

「う……ぐす、ごめんなさい」

「不注意でご迷惑をおかけしました、申し訳ありません!」

 

 少年の方はもはや半分泣いている。紅の髪の少女の方は年齢を疑うほどの礼義正しさでぺこりと頭を下げていた。そんな2人を見やってか、ロックマンもウォーロックをなだめた。

 

「ウォーロック、もうその辺にしておきなよ。この子も反省してるみたいだし、怪我もなかったんだしいいじゃないか」

『だ、だけどよ、スバル……』

 

 スバルに言われて言い淀んだウォーロックの前に、ずいっとルナが乗り出した。

 

「それに、この子泣いてるじゃない。ここまで追い詰めちゃかわいそうでしょ」

『そ、それはっ……コ、コイツが勝手に泣いただけで……』

 

 と、いいつつも自分が泣かせたことを気にかけていたらしく、ウォーロックはたじろいだ。普段はウォーロックを苦手にしているルナであるが、いつもとは立場が逆転していた。

 

「大体、途中からこの子たちを守ることよりもウイルスバスティングを楽しんでたくせに、『守れきれなくなりそうで危なかった』、なんて言えたものじゃないわよね?」

『ぐっ……でも、オレだってお前らが来るまでは必死に戦ったじゃんかよ……』

「そうね、それには感謝してるわ。でも、それとこれは別だと思わない?」

『う……』

 

 ルナはそういいながら、にっこりとほほ笑んだ。笑顔のまま、殺意に近い威圧感を放っている。むしろ怒り顔の方が、まだマシだったかもしれない。ウォーロックはその圧倒的プレッシャーに、完全に委縮してしまった。泣くな、ウォーロック。

 

「い、委員長もその辺で……」

「あらスバルくん、わたしが何か間違ったこと言った?」

「なんでもないです……」

 

 世界を3度救った英雄も、その女帝(●●)の殺気には勝てなかったらしい。小さくなって、すでに怒りという災害から「避難」していたゴン太の隣におさまった。

 

「なぁスバル……委員長、生徒会長になってから怖さに磨きがかかってねぇか?」

「うん……ボクたち、このままで生きていけるのかな……」

 

 ゴン太とロックマンは、陰でそんな会話をすることしかできなかった。こうして、ウォーロックのありがたい説教タイムは委員長に粛清されて鎮静化した。

 

 

 ウォーロックがいじけてハンターVGに戻ったところで、ロックマンは先ほどの2人も含めた施設の子供たちに呼びかけた。

 

「みんな怪我はない?」

「…………」

 

 返事がない。ただのしかばねではないようだが、どうも様子がおかしかった。

 

「えーっと、みんな?」

「わ……」

「『わ』?」

 

 と、ここでようやく、ロックマンは思い出した。突然のウイルス戦で忘れていたが、この子供たちの元気がいかに凄まじいものであったのかを。現在の静寂が「嵐の前の静けさ」だという予感を感じて後ずさりした。……しかし。

 

「「わぁい、ロックマンだぁっ!!」」

「や、やっぱりぃぃっ!!」

 

 子供たちが一斉にロックマンへと殺到し、瞬時に彼は子供たちの集団へと呑み込まれて消えた。

 

「み、みんなちょっと待って落ちついて、カボモガフガ……」

「すごい、本物!?」

「握手して! サインして!」

「またボクたちを助けてくれたんだね!」

「ありがとう、ロックマン!」

「そ、それはいいからひとまずどいて アボガボ……」

『水以外のモノに溺れてるヤツ、初めて見たぜオレ……』

「ツッコミはいいから助けて ゴボガボ……」

『……ったくしょうがねーなぁ……オラ、お前ら いい加減離れやがれ! 遊び相手ならこっちにいるぜ!』

 

 ウイルスに襲われる前は子供の相手をしていたウォーロックだが、いつの間にか彼らの遊び役を受け入れていたようだ。そんなウォーロックに子供たちは一言、

 

「えー、今はロックマンがいいー!」

『…………』

 

 ウォーロックが絶句している間に、子供たちの関心は再びロックマンに移っていった。

 

『……なんだ、この敗北感……』

「同情するぜ、ウォーロック……」

『いや、敗者は去るのみ、だ。同情はいらねぇ』

 

 ウォーロックはやせ我慢なのか、キリッとした顔を作った。しかし、あまりゴン太には通じなかったようだ。

 

「なに? 『歯医者は猿のみ』? ヤバくないかそれ?」

「なんの話なのよこれ? それとゴン太はもっと勉強しなさい」

 

 そんな実りの無い会話が外野で繰り広げられ、ロックマンは救出されないまま放置されるのであった。

 

「あれ? そういえば、スバルお兄ちゃんは?」

「ぎくっ!」

 

 子供たちのうちの1人が何気なく放った、言葉という名の槍がロックマンの胸に突き刺さった。

 

「そういえば、なんでウォーロックはロックマンと一緒にいるの?」

「それにさっき、ロックマンのことスバルって……」

「うぐぐ……」

 

 ロックマンの胸はもはや槍だらけである。精神的な意味で。

 ロックマンの正体が星河スバルであることは、メテオGの破壊直後の、大吾による全世界のハンターVGへの通信の内容によりもはや周知の事実になっていた。しかし知られたのは名前のみで顔までは知られていないため、同姓同名だと言い張ることで正体は一応バレずに済んでいた。かなり苦し紛れの言い訳であるが、それでも目立ちたくないスバルは正体がバレたくないらしい。

 サテラポリスも、報道規制などでロックマンの正体は明るみに出ないように(はか)らっていた。サテラポリス遊撃隊に所属し、メテオG破壊チームである「シューティングスター」のリーダーでもあったスバルは、曲りなりにもサテラポリスの一員同然と見なされ、情報保護の対象になっていた。ここまで有名になると、サテラポリスとしてもロックマンの正体は隠しておかないと危ない、というのが彼らの見解である。

 この施設に来た時も、名前がスバル、ということでロックマンなのかと囁かれたが、やはり同姓同名だと言って隠していたのだ。

 

『んあ? スバルならここに ムグググ……』

「す、スバルくんならトイレに行ったみたいだよ」

 

 ウォーロックの口を強引に左手で塞ぎながら、またも苦し紛れのウソを重ねるスバルくん。

 

「なんでロックマンがそれを知ってるの?」

「ぐはっ!?」

 

 さらに追い打ちをかけられる。ロックマンの顔は真っ青である。青いのはボディだけでは足りなくなったようだ。

 

「ろ、ロックマンはヒーローだから、なんでも知ってるんだよ!」

「わー、さすがロックマン、すごーい!」

 

 ほとんど自分のことをヒーローと言わず、思ったことも無かったスバルがヒーローを自称するくらい、今の彼は子供たちに追い詰められていた。そこまで下手なウソでバレないのが不思議なくらいだ。

 ロックマンは、これ以上何かを聞かれてボロが出そうになる前に、話題を切り変えた。

 

「それにしても……なんで急にノイズウェーブが開いたんだろう?」

 

 未だ開いているノイズウェーブへの入り口を見つめて呟く。今更な話ではあるが、やはり気になった。今はノイズウェーブからウイルスが出て来る気配はなかった。

 自然とノイズウェーブが開くことはあまり無い。全くないわけではないが、人為的に開かれる場合が多い。あまり一般には知られていないが、ハンターVGにはノイズウェーブを感知し、アクセスすることで入口を開く機能がある。それを使って開いたり閉じたりする場合がほとんどだ。

 

「だれかが開いた、ってことかな……」

「あの、それなんですけど……」

 

 急に声が聞こえて振り返ると、先ほどウォーロックに怒られた赤茶の髪の少年が両の手のひらに1機のハンターVGを乗せて、ロックマンに差し出していた。

 

「これ、どうしたの?」

 

 ロックマンは立ち膝になって目線を合わせて聞いた。すると少年は遠慮がちに口を開いた。

 

「あっちに落ちてて……それを拾おうとしたらウイルスの攻撃が飛んできて……」

「なるほど、それであんなところにいたんだ」

 

 ロックマンが優しく語りかけたからか、少年は少し安心したようにこくりと頷いた。

 ロックマンは少年からハンターVGを右手で受け取り、少し観察してみる。

 

「うーん、特に変わったところはなさそうだけど……ロックから見てなんか分かる?」

 

 と言いつつ、ロックマンは振り返ってウォーロックに聞いた。長い時間をハンターVGで過ごすウィザードなら分かることがあるかもしれない。

 

『ムグムグ……』

「あ、ごめん、まだやってた」

 

 ロックマンは先ほどの口封じを左手で続行したままだった。ウォーロックはなんとかロックマンの手を払いのけようとじたばたと手と首を動かしていた。ぱっと手を離すと、

 

『ゲホゴホガホ!!』

 

 ウォーロックは一気にせき込んだ。そして恨めしげにロックマンを睨む。

 

『な、何すんだスバル!』

「ごめんごめん。それで、これについて分かること、ない?」

 

 と言いつつ、ロックマンは改めて右手の手のひらに乗せた問題のハンターVGを差し出した。

 

『ったく、口を塞ぐにしてももう少し手加減ってものをだな……』

 

 文句を言いつつも差し出されたそれを観察するウォーロック。見つめてすぐに、怪しむように目を細めた。

 

『分かること、っていうか……なんでこのハンター、ウィザードアダプターの差し込み口がねぇんだ?』

「え?」

 

 言われてロックマンも観察してみると確かに、本来はそこにウィザードアダプターが接続されるはずの場所に、それを差し込めるような穴やくぼみといった構造が存在しなかった。これでは、ハンターVGにウィザードを取り込むことができない。

 

「今の事件と関係あるのかは分からないけど、確かに気になるね……」

 

 そもそもこのハンターVGが、ノイズウェーブが開いたことと関係があるのかも確証はない、けど……

 

『ノイズウェーブが突然開いて、その現場の近くにはノイズウェーブを開く機能があるハンターVGがあった……こりゃなんかあるな』

「そ、そうだね……」

 

 ロックマンはウォーロックがここまで冷静に事件について考えていることに違和感を覚えながらも、彼の言い分に同意した。ウォーロックはじっと考え込むよりすぐに斬り込む性格であり、頭で考えるより先に身体が動くタイプで、あまり深く考えることはないのかとロックマンは思っていた。

 

『よし、これはキキコミソウサだ、ライザー刑事!』

「まだハマってたの、それ!?」

 

 先ほどのウォーロックらしからぬ考察は、数か月前に終ったばかりの刑事ドラマのノリをやるためのものだったらしい。第一、ウォーロック自身と襲われた施設の子供たちが事件の被害者であり事態の第一発見者なのだから、聞きこみ捜査も何もあったものではない。

 

「何か分かったの、スバルくん」

 

 気が付くと、ルナやゴン太やそのウィザード、子供たちがロックマンとウォーロックの周りに集まっていた。子供たちは元よりロックマンたちの話を興味深げに聞いていたわけだが(スバルたち以上に低年齢なため話を理解できているのかは定かではないが)、そこにルナやゴン太も合流してきていた。ロックマンが子供に襲われているのを高みの見物していた彼らであったが、何か真面目な話をしているのを見て話の輪に入ってきたようだ。

 

「うん、この子が見つけてくれたんだけど、このハンターVGが近くに落ちていたんだ。何か関係があるんじゃないかって思って」

「へぇ、ちょっと見せて」

 

 ルナはそう言って手を差し出した。ロックマンはその手に問題のハンターVGを乗せ――

 

「――ロックマン危ないッ!!」

「ッ!?」

 

 聞こえた声に反応して振り返った時には、もうそれ(●●)は目の前に迫っていた。どこからともなく放たれた黄緑の弾丸はロックマンの頭に直撃し、彼の身体ごと頭を後方へと吹き飛ばした。

「グッ――! くそっ!」

 

 後ろに吹き飛ばされたロックマンはなんとか空中で体勢を立て直し、立ち膝で着地した。ガバッと頭を上げて周囲を見渡す。頭に直撃を受けたものの、その威力はあまり無かったようでロックマンにさほど大きなダメージは見られなかった。

 

「今の攻撃は……どこから……!?」

「ノイズウェーブからです!」

 

 ロックマンの問いに答えたのは、あの紅の髪の少女だった。その声から判断するに、先ほどロックマンに危険を知らせた声もこの()のもののようだ。仮にも電波変換していたロックマンや電波体であるウォーロック、オックス、ペディア、モードの誰も気付かなかった突然の敵襲に彼女がいち早く察知したことも謎だが、それよりも優先すべき事態が目の前にはあった。

 

「くっ!」

 

 ロックマンは即座にシールドを展開し、直後にそれの表面でエネルギーが弾けた。目にもとまらぬ第二撃がロックマンを襲ったのだ。だがロックマンも幾重にも戦いを重ねた戦士だ。その攻撃をが自身に届く前にシールドを開いてこれをやり過ごしたのだ。

 

「誰だ! 出て来い!」

 

 ノイズウェーブに向けて叫ぶ。注意してみれば、ノイズウェーブの入り口の向こう側に何者かの存在を感知することができた。

 先ほど、ロックマンの周りに子供たちやルナたちが群がっていた中でロックマンに弾を命中させ、第二撃でもロックマンを攻撃してきた時点で敵はロックマンを狙い撃ちしていることが分かる。さらに言えば、そもそも1人の標的を狙い続けるだけの知能がある時点で先ほどのようなウイルスたちの攻撃ではない。飛んできた攻撃もウイルスと異なるものだ。敵がウイルスの親玉のような存在なのか、はたまた全く別の存在なのかは判断できないが、それだけの知能は持ちえた敵のはず。

 

『おい、スバル、今の攻撃……』

「……うん、でも……ありえないよ、そんなの」

 

 ロックマンもウォーロックも、動揺していた。突然の奇襲に驚いたわけではない。新手の敵が現れたことでもない。2人を動揺させたことは、

 

 

「今の攻撃……ロックバスターだ……!」

 

 

 ロックマンもウォーロックも、自身の技であるが故に、それが自分たちの技であることは分かった。しかし、自分の攻撃が自分以外の場所から飛んでくることなんて、ありえない。信じられるわけがなかった。

 数秒の静寂の後、ノイズウェーブの入口の向こうの存在は奥地に向けて駆け出すのが感じ取れた。

 

「待てっ!」

 

 ロックマンはすぐに追うためにノイズウェーブの入り口へと駆けだした。

 

「す、スバルくん!」

「委員長、ゴン太、みんなを頼んだよ!」

 

 それだけ叫ぶと、ロックマンは入口に向けて駆けながら腕のハンターVGを操作する。ハンターVGがノイズウェーブへアクセスし、それに伴ってロックマンの身体が電波の粒子になってモザイク状の入り口へと飛び込んで行った。

 




 わー、さすがロックマン、すごーい!(棒読み)
 ウォーロックがかわいそうな件。どうしてこうなった。
 ハンターVGのノイズウェーブにアクセスできる機能は、流星3内で暁さんの話でありました。たぶん印象に残ってない方が多いと思いますが。
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