涼宮ハルヒのパラレルワールド   作:AK74

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涼宮ハルヒの改竄 Version K

俺はどうやら平凡な生活とやらが割と気に入っているようだ。

ドラマの様な出会いもアニメの様な事件も起こらない生活は気楽でいい。

しかしながら毎日毎日同じ事の繰り返しではどんなに気に入っていても飽きてくるわけさ。

 

 

涼宮ハルヒの改竄 Version K

 

 

いつもと同じ教室。

いつもと同じクラスメイト。

いつもと同じ授業。

いつもと同じ俺。

あぁ、退屈だ。

隕石の一つでも校庭に落ちてくりゃおもしれーのにな。

って、漫画じゃあるまいしんなことある訳ないか。

 

 

 

あぁ、このリピートしていると錯覚する様な生活を変える手段はないものか?

いくら考えたところでそんな手段の1つも思い付く訳も無く時間だけが過ぎていく。

こういう時に自分のユーモアの無さがとことん恨めしいね。

俺は「やれやれ」と溜息混じりに呟くと机に突っ伏した・・・

 

 

 

目が覚めたのは6限目の終了3分前だった。

どうやらマジで寝ちまってたらしいな。

前で教師が何を喋ってるのかさっぱり分からん。

そんな事を考えてるとチャイムが鳴り授業が終了した。

未だに脳が覚醒しておらずSHRが始まったのにも気づかなかった。

担任教師がなにやら喋っているが右の耳から入って左の耳から抜けていった。

唯一脳に留まったのは「明日は2限目までしか授業がない」ということだ。

だったら休みにすればいいのにと思ったのは俺だけじゃないはずさ。

 

 

 

ようやく脳が正常に活動するようになった様で鞄を取って教室を出る。

廊下に出ると見知った顔が話し掛けてきた。

「相変わらずダルそうだねぇ?キョン」

 

 

 

「あぁ、今日は気分の体調が良くないんだ」

国木田はそれを聞いてプッと吹くと「それはマズイねぇ」と笑いながら言っってきた。

あぁ、ちなみに「キョン」ってのは俺のあだ名だ。

最近では俺を本名で呼ぶのは両親だけになっちまったのはどうにも頂けないね。

くれぐれも言うが断じて本名ではない。

 

 

 

その日は国木田とバカ話をしながら帰宅した。

自宅に着き玄関の戸を開けると「キョンく~ん、おかえり~」と妹が出迎えた。

そう、俺は自宅でも「キョン」というあだ名から開放される事はないのである。

俺はまた「やれやれ」と呟きながら溜息をつくのだ。

その後、夕食を摂りながら母親に明日は下校が早いという旨を伝えた。

今は、風呂から上がりベッドに転がっているところだ。

野郎のこんなところなんて見たくもないと思うだろうがそこは我慢してもらいたい。

ゴロゴロし始めてから10分もしない内に睡魔が襲ってきた。

「睡眠」という機能を身に付けた祖先に感謝しながら俺の意識は遠のいていった。

 

 

 

翌日、いつもの妹のボディプレスによって起こされた。

目覚めは、まぁ良くも無く悪くも無くいつも通りだな。

そこからいつものように身支度、朝食を終えて家を出る。

いつもの道を通って学校に到着する。

ぼけーっとしていると二時間なんてあっという間だなぁ。

ナイス短縮日課。

そのまま家に帰ってもする事が無かったので俺は一人街中をぶらぶらする事にした。

 

 

 

本屋に行って立ち読みしたり、ゲーセンに行ってピコピコとゲームしたり、コンビニに行って買い食いしたりと校則違反をしまくってぶらつく事1時間。

流石にする事も無く飽きてきたので帰宅する事にした。

今は家に向かってダラダラと歩いている最中だ。

住宅街に大きめの自然公園がありそこを突っ切ると近道になる。

俺と同じ学校の奴らはここを頻繁に利用していて、俺もその一人だ。

公園の風景を見渡し今日も変わり映えしないねぇと哀愁に浸りながら歩いていると道の真ん中に何かがうずくまってた。

 

 

 

なんだありゃ?と思って近づいてみた。

そこにはセーラー服を着た女の子がうずくまって泣いていた。

え~と、この制服は確か東中だったっけ?等と現実逃避している場合じゃないのは分かっている。

分かっているのだがこういう場合、どういう風に声を掛けたらいいかなんて俺マニュアルには残念な事に載っていない。

あぁ、もう、こうなったら勢いでいくしかないっ!!

俺は出来るだけ平静を装って聞いた。

「おい、どうしたんだ?」

って、もうちょっと気の利いた事が言えんのかっ!?俺。

「・・・ひっく・・・・っく・・・・・」

ヤバイ。

心なしかさっきより泣いてる気がする・・・

これは・・・俺が泣かした様なもんだな。

頭の方もすっかりクールダウンしていたので、

「あー、その、なんだ。とりあえずベンチに座って落ち着かないか?」

俺はそう言ってそいつの肩に自分の上着を掛けてやった。

 

 

 

そいつはどうやら自分から動きそうになかったので俺はそいつの肩を抱いてベンチへ連れてってやった。

そいつの涙でびしょびしょになった顔を見て

「まぁ、これ使え。」

と俺はそいつにシワくちゃのハンカチを差し出した。

おいおい、流石にこんなの渡す奴はいないだろ。

「いらない」とか「何これ?」とか言われるかと思ったがそいつは黙って俺のシワシワハンカチを受け取った。

 

 

 

そいつはハンカチで拭いても拭いても拭いきれない程の涙を流していた。

こいつが何が理由で泣いているのか分からない以上、俺にはこいつを慰めてやる事さえ出来ない。

今の俺に出来る事っていえばこいつが泣き止むまで傍に居てやる位しか出来ないもんな。

いや、もう一つ出来ることがあるな。

こいつが泣き止んだ頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

俺はこいつが泣き止んだのを確認すると「帰れるか?送ってってやるぞ」って言ってやった。

するとそいつは眉毛を吊り上げて「一人で帰れるからいい」と言って立ち上がろうとした。が足に力が入らなかったらしく前のめりに倒れそうになる。

転びそうになったそいつを俺は慌てて抱き留めてやる。

何が起こったのか分らないというそいつの顔を見て俺は「やれやれ」と言いながら溜息をついた。

こいつ、結構意地っ張りなのかもな。さて、どう説得したものか?

そんなことを悩んでいたら、ふとそいつの足元が目に入った。

そいつは公園のド真ん中だというのに上履きを履いていた。

かなりベタだがこれしかないだろうと考えた。

そして俺は言った。

「上履きでの土足は校則違反じゃないのか?残念な事に今日だけ校則違反する奴が許せないんだ」

散々、校則違反やらかした奴の台詞じゃねぇ等と考えていたら「は?だから何?」とこいつは間抜けた面で聞いてきた。

俺はその場にしゃがみ「背中に乗れ」とそいつに向かって言った。

「な、な何言ってるのよ?」

みるみる顔が赤くなるそいつの反応が可愛くて面白かったので

「なんならお姫様抱っこでもいいが?どっちがいい?」

って聞いたら「どっちも嫌よっ!!」って言われた。ちょっとへこむな・・・

この調子だと匍匐前進で帰りそうな勢いなので、ちょっと強引だが「よし!お姫様抱っこだな」と言ってそいつを抱きかかえようとした。

するとそいつは顔を真っ赤にして「ちょ、ふざけないでよっ!!だったらおんぶの方がマシよっ!!」と叫んだ。

それを聞いた俺は俺はしてやったりな顔をしながら「そうか、よし乗れっ!!」と言った。

そいつは観念したらしく俺におんぶされることにした様だ。

そいつが両腕を俺の首に回してしっかり掴まると俺も顔が真っ赤になった。

ヤバイ、実際おんぶしてみるとかなり緊張する。

 

 

 

俺は気を持ち直して「よし行くぞ」と言って歩き出す。

そいつが「そっちじゃないわ。正反対よ」と言うと俺は自分の家の方角に向かって歩いている事に気付きコケそうになる。

そいつがちょっと不安げに「どうしたの?」と聞いてくる。

俺は素直に「かなり緊張してる」と答えた。

「自分でおんぶするって言ったんだからしっかりしなさいよね」

 

 

 

「仕方ないだろ、妹以外の女の子おんぶするの初めてなんだから」

 

 

 

「ふーん、初めてなんだ。あたしもあんまり踏ん張れないんだから気をつけてよね」

はぁ、俺って情けねぇ。

俺は肩をすくめながら「すまん」とだけ言った。

「まぁ、いいわ。よろしくね」

そういうとそいつは俯いた。

こいつには元気な方が似合ってると思ったので「おう、任せとけ」と明るく言ってやった。

 

 

 

おんぶしてる最中そいつは俺に聞いてきた。

「ねぇ、自分を変えるために変なことばっかりしてるクラスメイトが居たらどう思う?」

俺は少し考えてからこう言った。

「ん~、バカだと思う」

もちろんいい意味でのバカだぞ。

「そう」

また元気が無くなったな。

俺は、こいつには何故だか本音を話してもいい気がした。

そんな事を考えていたら口が勝手に言葉を紡いでいた。

「でも、羨ましいよな。そこまで自分にバカ正直になれるなんてさ。俺達ってさ、自分に何かしら嘘をついて生きてると思うんだ。

それが利口な生き方なんだって自分にいっぱい言い聞かせてさ」

そいつは黙って聞いている。

「周りから浮かないように体裁を取り繕ってさ。

嘘で自分を縛り上げて自分が本当に行きたい所じゃない所をいつの間にか目指してるんだ」

そいつは腕に少しだけ力を込めてきたように感じた。

「だから、そんな風に自分にバカ正直になれる奴がいるならさ。どれだけ周りからバカにされても自分が本当に行きたい所を目指して欲しいと思うし、応援する。」

そいつはいつの間にか泣いていた。

そいつは俺に言った。

か細い声だったけど確かに聞こえた。

「ありがとう」と。

 

 

 

 

話をしながらだとあっという間だな。

ここがこいつの家らしく、家の前にこいつの父親と母親が心配そうな面持ちで立っていた。

こいつの父親は何か誤解したらしくこいつを降ろすなりいきなり俺の胸倉を掴んできた。

あげく「お前なんぞに家の娘はやらーん!!」とか言われた。

俺は何を言われてるのか理解するのに時間が掛かった。

理解するや否や俺は顔が熱くなるのを感じた。

まぁ確かにもう外は暗いし、こいつの目は真っ赤になってるのだから誤解されたとしても仕方がないと言えば仕方がないのだが。

そいつは何やらニコニコしているが今はそれどころじゃない。

「助けて」と視線に込めたのが伝わったのかそいつは必死に誤解を解いてくれた。

誤解が解けやっとこいつの父親から開放された俺はまた「やれやれ」と溜息をついた。

そして俺がペコッと頭を下げて帰ろうとした所こいつの父親は

「娘の恩人を徒歩で帰らせたらバチが当たる」とか言い出して俺を無理矢理車の助手席に押し込んだ。

そしてそいつの父親が運転席に乗り込むなり車は発進した。

あ、別れの挨拶してねぇや・・・

 

 

 

車で送ってもらってる間、あいつの父親は俺にあいつの話をずっとしてきた。

どうやらあいつの名前は「はるひ」というらしい。

「はるひ」の父親は「うちのハルヒは宇宙一可愛い」やら「何をやらせても完璧にこなす」と自慢話を始めた。

かと思えば唐突に「ホントのところハルヒとはどこまでいったんだ?チューくらいはもうしたんだろぉ?」等と言い出した。

誤解、全然解けてねーじゃん・・・

と考えつつ、「いえ、本当にはるひさんとは何でもないですし何もしてません」とやんわり誤解を解いたつもりだった。

が「はるひ」の父親は更に誤解したらしく「何ぃぃい!?うちのハルヒにはチューしたくなる魅力も無いと言いたいのかぁ!?」と叫びだした。

もうだめだ・・・

この人の場合、否定すればするほど底なし沼にはまっていく・・・

俺はこの時諦める事の必要さを学んだのだ。

そこからはもう「はるひズファザーワールド」全開だった。

俺、ネーミングセンスねぇな・・・

内容は・・・割合させてもらう。

恥ずかしくて思い出したくもない・・・

そんなセクハラを受けていたらいつの間にか俺の家の前に到着していた。

俺は車から降りて「はるひ」の父親にお礼を言おうとしていた時、俺の親父が玄関から出てきて何も言わずに俺をぶん殴った。

当然だ。

こんな時間まで連絡一つしなかったのだから殴られても仕方がないと思った。

2発目がくると思って目を閉じた時、「はるひ」の父親がそれを止めた。

「はるひ」の父親は俺の親父に事情を話した。

「見ず知らずの娘を助けてくれて感謝している」と言ってくれた。

それを聞いた瞬間俺は何故だか涙が止まらなかった。

殴られたのが悲しいから、いや違う。

これは嬉しいから出る涙だ。

その様子を見ていた俺の親父は俺の頭をくしゃくしゃと撫でながら言った。

「お前は、今日最低の事と最高の事をしたんだ。分かるな?」

俺は声を出したくても出せなかったので頷くただ頷く事しか出来なかった。

「連絡しなかった事は関心せんが、普通の奴じゃまず出来ない事をしたんだ。それは誇りに思っていい事だぞ」

 

 

 

やっと俺が泣き止むと「はるひ」の父親が何も言わずに帰ろうとしていたので俺はそれを呼び止めた。

「あの、送ってくれてありがとうございました」

 

 

 

「いやいや、こちらこそ娘が世話になったね。家の娘の事で君に迷惑を掛けた。すまないと思っている。」

 

 

 

「迷惑なんて掛けられてません。俺がやりたくてした事ですから気にしないで下さい」

 

 

 

「はるひ」の父親は少し驚いた表情をしていたが次第に笑いながら「君みたいな息子が欲しいよ」と言ってくれた。

 

 

 

「それじゃ、失礼するよ。夜分遅くに申し訳ありませんでした」と俺と俺の親父に挨拶して帰っていった。

俺は親父に連れられ家の中に入った。

玄関では妹と母親が泣きそうになりながら待っていた。

 

 

 

「こんな時間まで連絡もしないで心配掛けてすいませんでした」

こんな事で許して貰えるとは思っていない。

でも、俺はこうしなくちゃいけない。

何を言われても耐えなくちゃいけない。

面目が無さ過ぎて顔を向ける事すら出来ない。

すると二つの手が俺の頭を撫でた。

「よくやったじゃない、流石はあたしの息子ね」

 

 

 

「キョンく~ん、えらいえら~い」

二人は玄関からさっきの会話を聞いていたらしい。

母さんはようやく顔を上げた俺に「お父さんが怒ったならあたしが怒る必要は無いわね。お腹空いたでしょ?何か作ってあげるから先にお風呂入っちゃいなさい」と言われ俺はそのまま風呂場へ向かった。

風呂から上がり母さんの用意してくれた夜食を食べた。

何故かいつもより美味く感じた。

夜食を食べ終わると俺は自分の部屋で制服をハンガーに掛けていた。

そこである事を思い出した。

あ、ハンカチ返してもらうの忘れた。

まぁいいか。

また、会ったときにでも返してもらおう。

それまであのハンカチはあいつに貸しといてやろう。

きっとまた会える。

これは予想でも予感でもない。

俺が生きてきた中で一番の確信。

 

 

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