ハイスクールD×D 邪神に拉致された元普通の高校生 作:真庭猟犬
セバスチャン視点
「皆さん、無事ですか?!!」
「セバスチャン。僕達は大丈夫だよ。お嬢様もね」
「セバスチャン!! 無事でよかった…」
「それはこちらもです。あれ、翔悟様は?」
「わからない。あのフランケンを倒したのは確実だと思うけど……」
「そう言えば翔悟が縛っていた女の子もいないにゃ」
「まさか、【マスター・ブー】が……!」
「お嬢様。翔悟様は問題ありません。彼は強さと優しさを持った頼もしいお方ですから」
「……兄さんはそこらの悪党には負けません。むしろ返り討ちにします」
「多分今頃キレてるんじゃないかにゃ? 翔悟って命をただの道具扱いするのが一番嫌いだって言ってたことがあるし」
キレた翔悟様は【マスター・ブー】にはトラウマとして魂に刻まれますね。
分体の方達でも相当の実力を持っていましたので、本体である翔悟様の実力はとんでもないでしょう。
……【マスター・ブー】が憐れに思えてきました。
「私達は兄さんが帰ってくるのを待つだけです」
「オン」
「………ふふっ、そうですね」
お嬢様は私達の翔悟様を信じている態度を見て安心したようで、笑顔になりました。
翔悟様、後はお願いします。
◇
『アアアアアァァァァァァ』
「チィッ! 『
端も天井も見えない屋敷の部屋を模した空間内で俺は黒幕の【マスター・ブー】と対峙していた。
【マスター・ブー】が召喚する這いつくばってくる人ならざるものどもを特殊な咆哮で吹き飛ばす。
ただ、何度も行っている攻撃は【マスター・ブー】には一切届かない。
「げひゃ、いくら力を持ったとしても当たらなければどうってことはない。それに、貴様はドラゴンとしては一級ものだけどよぉ、人としての肉体は追いついているかなぁ。げひゃひゃひゃひゃ!」
【マスター・ブー】の言い分はもっともだ。
ただでさえリネットを傷つけないように戦うというハンデを背負っている上に人間としての肉体年齢はまだ8歳。体力は結構厳しい状態になっている。
「それでも……俺はテメエみたいなクズには負けるつもりはねえんだよ!! グォォォ、ガアアアア!!!(ゴオオオオッ!!!)」
「何っ!?(ジュウッ)イッ、ギャアアアアアアアアア!!!! 腕がっ!! 腕があぁぁぁ!!!」
ブレスで化物諸共アイツの左腕を蒸発してやった。
左腕があった部分は焼け爛れていて再生することはないと思う。
「どうだ……一発ぶちかましてやったぜ」
「この、ガキガアアアアアァァァァアアアッ!!!!!(ブオン!)」
「(ドゴッ)ガッ…ハッ!!(ドゴシャアアア!!)」
何だ今のは?
リネットは尻尾を変化させて作った特殊なドームで傷はつかなかったが、アバラを数本持ってかれたみたいだな。
「クキ、クケケケケケケ!!! これだ。この力があればオレはグヒャヒャヒャヒャ!!」
起き上がり正面を見ると、【マスター・ブー】はさっきまでの人に近いゴーストのような姿ではなく、常人ならSAN値が消し飛んで狂うような異形の怪物に成り果てていた。
大きさは50m強。体全体が泡が集まったかのように凸凹になっていて一部には人や動物等の顔や胴体等が浮き上がっていて時々変な液体や臓器らしきものを吐いている。
口も顔だけでなくあちこちにできており、声色もバラバラだ。
さっきのブレスをくらった時にどうにか取り込んだらしいが、体は対応しきれなかったと思う。
リネットが気を失っている状態でほんとよかった。
「欲と禁忌に溺れた結果が醜すぎる化物なんて笑えるな」
「だmArえ。ごのじからsaeあればKisaMaなd」
「人語すらまともに喋れなくなったのか。なんとうか憐れに見えるぜ」
映画とかで自分の欲・殺意とかで変貌した人間が色々とでたけど、こいつだけはゴーストになってもそれに対する執念か何かがありすぎた。
ほっとけば狂気に思考も魂も飲まれて自我のない怪物に成り果てる……。が、それだけは何の解決にはならない。
この3流以下の劇場の幕を降ろすしかゴースト達も
「はぁ。ったく、お人よしってのはどうしようもねえな。こんなクズを救おうなんて考えちまう」
折れたアバラの部分を上手く変化させて元の状態に戻し、深呼吸する。
一発本気を出すか。
「オオオオオオオオッ!! (バサァッ)『
ドラゴンに姿を変え、羽で【マスター・ブー】を覆う。
全ての原初とも言える
今回は狂気に染まった部分を取り除き、来世に魂を送るやり方を選ぶ。
理由はこいつの魂に干渉した時、過去を見たのだからだ。
【マスター・ブー】はゴーストになる以前はごく普通の人間で平和に暮らしていた男だった。だが、戦争が勃発した後、宗教などの違いで異端者とされ、拷問された挙句、家族を目の前で殺され、復讐として禁忌の術に手をだした。
結果として復讐は果たせたが虚無に近い忘失を覚え、自分自身が何者なのか忘れてしまい、処刑される日が来るまで多くの生命を亡き者にしていた。
これが【マスター・ブー】の過去。彼を支える存在が消された故に狂ってしまった生前だ。
俺も狂気と矛盾、混沌を司る龍だから何かしらの切っ掛けでああなるかもしれないと考えると恐ろしくなる。
「来世では良い人生を歩めるといいな。『 』さんよ」
《マスター・ブー》の生前の名を言い、翼を戻す。
化物がいた場所には光る球体が浮遊していて少し経つと球体が消えた。
「チート能力持ちも楽じゃないな」
空間が歪み、フランケンを蹂躙していた場所に戻る。
そこには黒歌・白音・ランスロット・ジャック・セバスチャン・セバスチャンが仕えているお嬢様がいた。
「「翔悟(兄さん)、お帰りにゃ(お帰りなさい)」
「《マスター・ブー》を倒したみたいだね」
「オン!」
生きている3人と1匹がこっちに駆けより、セバスチャンとお嬢様は頭を下げていた。
「ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません。それと、仲間達を助けていただいた御恩は決して忘れません」
「これで、私達もあの世に逝けます」
「そういや二人は生きている者じゃなかったもんな」
「はい。皆様にはお礼とお詫びとしてこれを受け取ってください」
お嬢様は本来持っていたらしい魔力を集めて木箱を召喚して俺達に渡した。
中身は宝石なのだが、護りに特化した魔力が込められている。
「これは『守護の石』だね。普通は魔力の波長と合った者でしか効果を発揮できないけど、護りの力は
「まじか!? というか良いのか、そんな貴重な物を俺達に渡すのは」
「翔悟さんが言った通り、私達は本来この世に留まってはいけないのです。ですからこれらは貴方達が持ってくだされば安心できます」
「………ふう、そうかい。だったらありがたく受け取るぜ」
「ありがとうございます。ではさようなら」
お嬢様とセバスチャンは笑顔で消えていき、屋敷は完全な廃屋となった。
◇
「僕達はあっちだからここでお別れだね」
「だな」
屋敷から出て暫く歩き、三叉路に着いた後、俺達はランスロット、ジャックと別れることになった。
俺達は分体の出す魔力を頼りに姫島家に戻るが、エクソシストの1人と1匹は仕事があるらしい。
「リネットちゃんだっけ? 彼女はどうするの?」
「一応俺の義妹にしようと思う。両親に捨てられたかは分からんけどな」
リネットは《マスター・ブー》に魔力をごっそり持ってかれたのでまったく動けない+眠っている状態なので、俺がおんぶしてる。
彼女だけは神器を所持している人間だったので俺が引き取っているのだ。
「私と白音は姫島家に居候しようと思ってるにゃ」
「兄さんがお世話になっている人達なら安心できますし」
「そうなんだ。それじゃ、またいつか会おうね」
「「「おう(ええ)(はい)」」」
お互いに笑いあってそれぞれの道を進む。
あの屋敷での戦闘を体験した俺達の首には『守護の石』のペンダントが光っていた。
邪神龍と猫又姉妹の旅は次回で終わる予定です。