「鋼殺しの魔王」を一旦削除し、ある程度書き直して投稿しました。
考えが膨らむにつれ、このままでは駄目だ! と思い。書き直しました。
リメイク前の物語と内容の流れは大きくは変わりませんが、敵となる神が増えました。
最初のほうは主人公の名前を変えただけなので、もしかしたら誤字脱字が多いかもしれません。
とある山中。
科学が発展し、自然を遠ざけた現代では珍しいほど、自然が濃い山。
しかし、遭難するということはない。あまり人が立ち入らないからだ。
道案内や整備はされておらず、何百年もの月日の中で限られた人だけしか山中に入らない。
この山は武術の修業をする者が知っている。現代では数少ない、完全なる自然を使った修行場である。
神村家はある古武術家の家系だ。古くは天皇、公家、武家などの子息を守護してきた家系。
最後には日本そのものに仕え、裏切られ、今は衰退し、一民間人となっている。
祖父は神村流古武術の継承者、父は強かったが生まれつき体が弱く、長時間は運動できない身体だった。故に神村流を継承できなかった。
武は中学を卒業したと同時に神村流古武術継承者となった。
祖父は継承したことに安心しきったのか先月この世を去ってしまった。
特に思うことはなかった。思い残すことなく逝ったのだから満足なのだろう。
山中を歩き続け、山小屋を見つけた。修行者が使う唯一の安息場。ここを拠点に修業をする。
中に入り、着替える。山歩き用ではなく、修業用の袴。
まずは食料。
人間以前に動物として必要な能力。餌を採ること、山での最初の修行。
山小屋から歩いて数分。川をと向かった。冷たい川の中に入る。入った当初は魚は驚き逃げてしまったが三分ほど動かなければただの障害物として認識される。近づいた魚を素手で捕まえる。
3匹採ると、川からあがり、石じゃりの地面を気にせず座る。
「炎」
一言、それだけで枯れ木も枯葉もない状態で火が現れる。
呪術。神村家は呪術を使える。といっても高度なことはできない。あくまで武術の補助という思想で呪術を扱っている。呪術師とは真逆の思想である。
それに、戦後以降、他の呪術師とは滅多に合わない。
魚の内臓を取り、串で刺して火に近づけて置いておく。
この修行は武術の修行をすることではない。基本的には自然の中で生きるための修業である。
無駄に体力を減らすことはないので、夕日が見える時間帯に武は眠りについた。
小屋の隙間から朝日がこぼれる。気持ちの良い新鮮な風が隙間から吹く。
目が覚めた。
家とは違うからろくに寝れないのではと思っていたが、熟睡できた。
顔を洗いに川に向かう。
川に到着すると、驚いてしまった。
ひどく美しい女性がいた。今まで生きていた中でも一番美しい女性。艶やかな黒髪。穏やかな表情。
人間ではない。
直感的にそう思った。
弥生時代の服装みたいに、白い貫頭衣を纏っている。
そして……水面に立っている。
それだけで、人間以前に、生物を超越した存在だと理解した。
女性は景色を見ていたが武の気配に気づいて振り返った。横顔で綺麗だと思ったが、正面から見るとさらに綺麗だ。
漆黒の髪にひどく白い肌。儚げな女性だった。
「あなたは・・・だぁれ?」
「神村……武」
穏やかな口調ではあるが、何故か、拒否できない。絶対にこの女性の問いに答えなければならない。そう感じた。
「……そう。武……勇ましい名前ですね」
薄く儚げに女性は笑った。ひどく綺麗だ。
「あなたは一体……なんだ?」
武は女性に問う。
女性は少し困ったような顔になった。
「私が何であるか……その問いに答えるのは難しい。いえ、答えたくないの。言えば私は君たち人々を困らせてしまう」
武はこれ以上、問うのを止める。
この女性には逆らえない。神々に逆らえても、この女性だけには逆らえない。それだけは理解した。
数日の間、女性は武の修業風景を眺めていた。
武は拳で突き、脚で蹴り、木刀で薙ぐ。
ただ一連の動作の繰り返しの修業。体に無理をしない。武術の修業ではないからだ。
自然の中で生きる。動物たちが当たり前にしていることを、武はするつもりだった。しかし、女性は武の近くにいてずっと観察しているので気恥ずかしく、無心のまま武術の動作をしていた。
一時間、一連の動作をしていただろう。さすがに疲れてきて、その場に座り込んだ。
「ハァ―――――」
荒く深呼吸した。
呼吸を数回繰り返すと女性が話しかけてきた。
「生きていた時間の大半を武に捧げてきたのですね」
「……あー、そうだな」
「辛いとか休みたいとか、思ったりしないのですか?」
武は少しの間逡巡する。
「思ったりもするさ。けど、途中でやめると今までしてきたことが無意味になるからな。それに武術の修業は楽しいしな」
女性は少しだけ眉をひそめた。
「何故、神々や人々は戦うのでしょうね?」
「戦う……理由か?」
武は目を閉じて考える。
「護るために戦うのは理解できます。けれど、理由なく暴れ、欲しいから略奪し、欲望のままに戦うのは理解できない。人は皆、偉大なる大神の下で平穏に生きていけばよいのに、逆らい、凄惨な戦争を仕掛ける。悲しいことです」
それは……
「それは神の傲慢だろう。神というよりは支配者か……そんなわけのわからない奴らに強制的に従うのは俺は嫌だ」
「平穏に生きられるのにですか?」
「支配者の傲慢だな。誇りのある人間なら作られた平穏より、戦いを選ぶ」
女性は悲しそうに俯く。
「それは強者の考え方。世の人の大半は平穏を選びます。人は皆、弱い。神の加護なくしては人は迷います」
二人は互いに見つめ合った。
「あなたが何かの神であることはなんとなく察してはいた。だから一つ言っておく。人はあなたが考えるほど弱くはない。現代じゃ、科学があるし、無神論者だっているんだ。神なんて必要ない人の方が多くなっているさ」
女性は表情を暗くした。悲しそうに、それでいて大和を憐れんでいるようにも見えた。
その憐みは、当然のことだった。
自然の力そのものが神。人は神に勝てない。どれだけ科学を発展させようとも神を超えることはできない。
武は近いうちにそのことを知る。
山小屋の中。
武は山を下りる準備をしていた。
「行ってしまわれるのですか」
女性は寂しそうに尋ねてきた。
「あぁ」
武は物をかたずけながら答える。
「結局あなたが何なのかはわからなかったな。幽霊なのか神なのか、もっと別の何かなのか……」
着替えを始める。
修行用ではなく登山用の衣服。修行用の袴で人里に下りたら不審がられてしまうから。
「では、私も還るべき場所に戻りましょう」
武が着替え終わると女性が近づいてきた。
「太古の昔から私は人に加護を与えてきた。これも何かの縁。君にも加護を……」
指先がおでこに触れる直前、指を止めた。
「……いや、止めておきましょう」
女性は寂しそうな表情になった。女性は武から離れる。
「さぁ、行きなさい」
女性は武の背中を押して外へ出した。
「それじゃぁ、また、いつか」
よくわからない存在ではあったが、彼女と過ごした数日は心安らかだった。
夕方ごろ、山を下りていく途中、嫌な予感がした。
半分ほど下ったあと、元の道を戻った。予感が当たったのか尋常ではない呪力の気配がした。
しかし武は躊躇せず突き進んでいく。理由は二つある。一つは武が怖いもの知らずであること、一つは一般的な呪力の量を知らなかったこと。
武が漠然と感じていた呪力の量が異常な量であることに、武は気付かなかった。
山小屋があった場所は完全に破壊されていた。
大和は木刀を取りだし、辺りを見回す。
呪力の大きな場所を感知し、向かう。
そこには……
闇がそこにあった。
闇夜よりも純粋な闇。
星や月さえも飲み込む闇の塊があった。
その隣には獣。黒い狼。
その隣には巨漢の武士。
3人の人外なる存在がいた。
「私を殺しに来たのですか?」
女性の問いに闇が笑った。
女の声、ひどく、負の念がこもった声。
「うん、殺しに来たよ」
女性はひどく悲しそうな表情だった。
「私はこの地で争うつもりはありません。すぐにでも不死の領域へと旅立ちます」
「そんなことはさせないよ」
闇は笑う。
「そんな幸せな終わり方なんて認めない。私はあんたが憎い。絶対に消滅させる」
「……そう」
女性は諦めて、その代り一言。
「動くな」
言霊が闇を縛った。
「くッ!」
闇の家来たちも言霊に縛られる。
「私が旅立つまで君たちはそうしていなさい」
女性は踵を返し、歩いていく。その油断に……闇は笑った。
女性の腕は喰いちぎられた。
家来の一匹、黒い狼は縛られたふりをして女性が隙を見せるのを待っていたのだ。
「グルルルルルルルルッ」
黒い狼はやったと言わんばかりに大きな口を歪ませる。
「君は、異国の神か」
女性は体のバランスを崩し、木に寄り添った。
女性が傷ついたことにより言霊が解かれ、闇は自由になった。
「私が勝機もなしにあんたの目の前に現れるわけないでしょう?」
闇は笑う。
そして巨漢の武士に命ずる。
「殺しなさい」
武士は無言のまま槍を構えた。
槍は女性の胸を貫くはずだった。
しかし、槍の軌道を変えられた。
武が女性の前に立ち、木刀で槍の軌道を逸らしたのだ。
武士は「ほう」と感心したように呟く。
狼は口を歪ませ。
女性は驚愕し、闇は苛立たしげに言った。
「人間ごときが我ら神の前に立つか?」
闇は人間に憎悪を振りまく。
「何しているの!? 早く逃げなさい」
女性は焦りながら武に言った。
「人の身で神々の前に立つなど愚の骨頂。早く逃げなさい」
武は何も言わない。
ただ全力でこの場から逃げる。それだけを考えていた。
「炎ッ!」
全力で呪力を開放する。
神々にとっては無害に等しい炎だが、炎として目の前にある以上、目隠しとしては機能する。
炎が闇たちの周りから消えた後、武も女性もいなくなっていた。
闇は薄く、凄惨に笑った。
「早く置いて逃げなさい」
武は女性を背に抱えながら逃げていた。女性は武に諦めるよう促す。それでも武は女性の言葉に耳を貸さない。
助ける。その衝動だけで行動していた。
猿飛の術で走る。
しかし、背後から闇が近づいてくるのを感じた。
逃げても追いつかれる。そう悟った武は走るのを止めた。
迎撃する。女性を木に寄り添わせ、木刀を構える。
巨漢の武士が来た。
戦国時代の鎧武者。時代錯誤の格好だが違和感を感じなかった。
巨漢の武士は槍を構える。
武は木刀で護りの構えとなる。
武士は一時の遊びをするように武は全力で集中する。
この二人の力量には絶対の差があった。
武は武士に勝てない。それは絶対。
槍が突く、木刀がずれる。
それだけのことで生き延びた。
槍の突きが当たる前に槍の軌道をずらす。理屈としては簡単だ。しかし、それを人間の達人以上の速さの槍に対して行う異常性。
武士は目を細めた。
期待するように槍を引き戻し、構える。
巨漢の武士にとって武を殺すこと自体は容易い。武は槍の突きに対して全力で木刀を構えている。
素早さで翻弄しても良いし、槍の軌道をずらされた時点で槍を横に薙げばいい。それで殺せる。
しかし、武士はそんな無粋なことはしない。
武の覚悟の闘いに武士は正々堂々と戦わなければならない。そう思ったのだ。
故に一歩も動かずに槍の突きだけにする。
一度、二度、三度。武の身体が悲鳴を上げた。
四度、五度、六度。突きの速さに耐えきれず、風圧だけで服が破れ、皮膚を裂けた。
いつのまにか闇たちがいて、その光景を見ていた。
七度、八度、九度。木刀が耐え切れず、壊れてしまった。
九度目で木刀が壊れると同時に武は吹き飛ばされた。
頭を打ち、意識が混濁した。それでも立ち上がろうとした。
「もう止めて、意味がないのよ。人の身で神に立ち向かえるわけないでしょ! 君たちも私だけが目当てなのでしょう。なら人間だけは見逃しなさい」
女性は叫んだ。
しかし、この場に武を生かして返す気のあるものは女性しかいない。
武士は戦士の誇りある戦いのために。
闇は憎悪のために。
黒い狼は生かす理由がないために。
黒い狼は大和を喰らおうと飛びかかる。
しかし、遮られた。
女性は暖かな光の結界を発動させ、狼から武を護ったのだ。
闇は忌々しそうに光を見る。
「なんで人なんか護っているの?」
闇は女性を睨む。
「もしかして、地上に顕現しておいて、また神話に縛られていたいの? こんな存在のために」
「黙りなさい」
「まだ。人を護るの? まつろうの? ねぇ、ねぇ、ねぇ?」
「黙りなさい!」
光が周囲を照らした。
狼と闇は光から逃げるように後ずさる。
あらゆる邪悪から人を護る聖なる光。
だが、傷ついた身では限界があった。
徐々に光が薄まる。
あぁ、これまでか。
女性は諦めた。しかし、諦めない者がいた。
神村武。
彼は立ち上がり、女性の前に立つ。
意識は混濁しながらも、ただただ、女性を護る。それだけのために立ち上がった。
異常だった。普通ではなかった。女性は焦り、大声で叫んだ。
「何しているの、立ち上がらないで!」
目の前の愚者に言った。しかし、武の耳には響かなかった。
闇は忌々しく思い武を睨んでいたが、はっ、と気づいたことがあった。
「はははははは、滑稽ね」
闇が笑う。
「神が地上に顕現した時点で地上に…人に災厄をもたらす。あんたも例外じゃない」
闇の言葉に女性は青ざめた。
「あんたはこの国の最高神、絶対の支配者。あんたが不死の領域に行こうと思っていても知らず知らずのうちに人間を支配し、操る。そこの人間も同じ、あんたの威光に魅了され、本能的に護ろうとしている」
闇の言葉に女性は愕然とした。女性の頬に一筋の涙が流れた。
人と触れ合えば、その人は平穏な人生から外れてしまう。だから加護を与えなかった。けれど、意味がなかった。出会った時点で武の人生を狂わせてしまった。
武士は武の異常な行動の意味を知り、少しだけ消沈したが考え直した。実力だけは本物。人としては強者。
「名を名乗れ。小僧」
巨漢の武士は武に問う。
武は意識が混濁し、闇と女性の話を聞いていなかったが、それでも目の前の武士の言葉だけは届いた。
「……神村……武」
なんとか、言葉を紡いだ。
「武か、良い名だ……誇るがいい。人の身にて、神の一撃を捌いたことを」
槍を構える。槍に爆発的な呪力が巻き起こる。
これで最後、死体も残らない。
最強の一撃が武を襲った。
……武は躱し切れた。
偶然か必然か。
木刀の時と同じように槍の軌道を右腕でずらした。
だらんとしていた腕を神業のごとき速さで動かし、槍の穂先が胸を貫く前に、槍の柄を横に押した。
軌道がずれて武の背後は爆発する。武の右腕も槍に触れた時点で吹き飛んだ。
それでもなお、武は生き残った。
武士は本当に驚いた表情を浮かべた。
そして。
「お主と会えたことを誇りに思うぞ」
武士は真剣な表情で、武を倒すべき存在と認めた。
「はい、茶番はここまで」
闇の塊の女はイラついた声で武の心の臓を抉り取った。
動かず、指先を向けただけで。
「……あ?」
倒れる。所詮は人の子。神とは対等ではない。その現実を思い知らせるように。倒れた。
武士はひどく残念そうにして、顔をそむけた。
「じゃあ、それと一緒に死んで逝きなさい」
闇の塊とそれに従うものは消えた。
まるでそこにいなかったかのように。
女性はひどく悲しそうに泣いた。生きるべき、光ある穏やかな世界で生きるべき人の子が死んでしまった。
そうならないためにも、元の場所に還ろうと決めた矢先に。
自分が自由だったころを捨てて。また「まつろう神」になろうと思ったのに。
生気が失われていく武を見ながら悲しみに打ち震える。このまま共に死んでしまう。
ひとつ、最悪の生き延び方を思いついてしまった。この方法で生き延びたら最後。死ぬまで神々の憎悪を受け止めなければならない。
しかし、それでも・・・生きてほしかった。
「私の命を君に捧げます」
秘儀が始まった。
神を贄して初めて成功する簒奪の秘儀。
愚者と魔女の落とし子を生む暗黒の生誕祭。
「まさか、このような形で新しい息子が生まれるなんて」
「ふふふ、あなたがパンドラ?」
「はい。天照大御神様」
子供の用でありながら艶めかしい女を感じさせるパンドラ。
「別にいいじゃない。神の一撃を防いだもの。充分素質はあります」
「貴女様が言うのなら確かなんですね。期待できるわ」
天照大御神は武を優しいまなざしを向けながら祝福を、パンドラは逃れられぬ宿命を。
「さあ天照大御神様、祝福をこの子に与えて頂戴! 八人目の神殺し―――若き魔王となる運命を得た子に、聖なる言霊を奉げて頂戴!」
「神殺しの宿命を背負わせてしまう私を許して頂戴、神村武。転生する君の人生は栄光と苦難の道に彩られるでしょう。けれど、けれど、それでも生きて欲しい」
だから―――
「生きなさい」
お読みいただきありがとうございました。
前作と同様にヒロインは清秋院恵那と考えていますが、物語が進むにつれヒロインが増えたり、草薙護堂のようにハーレム化するかもしれません。ハーレム化するとしたら神村武が日本勢で草薙護堂が外国勢になるかもしれません。
前作との違いは主人公の名前とタグを増やしたことです。他には敵となる神を増やそうと思っています。
削除した、リメイク前の「鋼殺しの魔王」を読んでいただいていた方たちが、もし、また、リメイク後の「鋼殺しの魔王」を読んでいただけたら幸いです。リメイク前より面白い内容になるように努力いたします。
感想等があったらお待ちしております。
追加……ルビが失敗していたので直しました。
では、また近いうちに……