アテナの出現により一柱が生まれ、アテナの日本襲来に一柱が生まれた。
神村武は喫茶店にいた。
武の席の前には一人の男性と女性がいた。
男性の方はひどく緊張していて、女性の方は興味深そうに大和を見ていた。
昨晩、神村家に電話がかかってきて、呪術関係で話があると言ってきた。書物には神殺しは大変珍しいものだと書かれていたので、まぁ、当然だと思い。武は言われた通り喫茶店にやってきた。武の方が言われた時間の30分先に喫茶店についており、15分後に着いた彼らはひどく青ざめていた。
「お初にお目にかかります。私、正史編纂委員会所属、甘粕冬馬と申します」
「神村武さまですね。はじめまして、清秋院恵那と申します」
つややかな黒髪の大和撫子風の少女は言った。
「どうも、はじめまして」
武も無難返事をした。
「「………」」
甘粕と恵那は無言だった。なぜなら神村武はすでにサンドイッチを頼んでおり、食べていた。食べ終えてから、店員さんを呼んだ。
「ケーキ3つを頼む」
「「ええッ!!!」」
二人は驚愕した。店員は二人の反応にぎょっとしたが、すぐ気を取り直し店の奥へと言った。
「そんな悪いですよ」
「いや、甘粕さんが金を払うでしょ? 俺はともかく、そっちの方は」
甘粕は茫然とした顔になり、恵那は可笑しそうに笑う。
「ねぇ、武さまって本当に神様倒して王様になったの?」
あっけらかんと聞いてきた。
甘粕は不味いと表情に出たが武もあっけらかんと言う。
「王様? 羅刹王のことか? それなら、はい、だ」
その答えに甘粕はひどく緊張する。
「ちなみに何の神様を倒したの?」
恵那のこの問いは本来自殺行為である。カンピオーネにとって権能の詳細を知られることは身の危険につながる。故に詳細を明らかにするべきではない……のが一般人の考えだ。
武の場合はそもそも呪術関係のことに対して疎いということもあるが、ほぼ全てのカンピオーネは知られたところで身の危険になることはないという王としての豪快な思想ゆえ特に気にする者はいない。
だからこの時も、横では甘粕は青ざめたが、武は普通に答えた。
「殺したのは日本神話の天手力男神だ」
甘粕は少しの間をおいて、驚いた様子で興味深そうにした。
「やはりそうでしたか」
一ヶ月前、神が現れたと思われる呪力を感じたかと思うと急に消えさったのだ。
「我ら正史編纂委員会はカンピオーネたる貴方に敬意を表します」
甘粕は深々とお辞儀をする。
「俺からも聞こう。神村家はどこかの呪術師だったらしいが祖父の代で終わっていてな。詳しい呪術関係はわからないんだ」
「そうでしたか」
甘粕の緊張は解れた。あまり、呪術関係を知らないと見える。
「あー、日本政府が裏切ったのは知っているがな」
絶望の淵に叩き落された。
「大変申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!」
甘粕は深々と頭を下げた。
その様子に武は驚き、恵那は引いた。
「え? あ、何?」
武はひどく困惑する。
「そこまでしなくていいから」
武は言ったが甘粕は頭を下げたまま。
「どうか、怒りを鎮めてください」
「だから、大丈夫だ」
武は静かに言う。甘粕はゆっくりと顔を上げた。
「……お見苦しいところを見せて申し訳ありません」
冷静になって、恥ずかしいと気づいたのだろう。
「祖父のことは俺には関係ないね。それに祖父自身も気にはしていなかった」
武の脳裏に思い出がよみがえる。祖父と武術の稽古をしていたことを。
「そうでしたか」
甘粕は安心した。
「ところで王様はこれからどうするの?」
恵那は人懐っこい笑顔で聞いてくる。
「新たなアレク王子みたいに魔術結社でも作るの? それとも剣の王様みたいに神様を見つける旅に出るの? 恵那的にはアメリカの王様みたく国を守ることをしてもらいたいなぁ」
「どうするって……」
一応学生である武は卒業はする気である。しかも俺と同じように神を倒した奴らはそんなことをしているのか?
「そういえば王様。この国にもう一人王様がいるの知ってる?」
「え、誰?」
「えっとね―――」
その問いは、あとで聞くことになった。
甘粕から電話があり、武の表情が険しくなる。
「え、もしもし……え、まつろわぬアテナ!?」
「え? 神様?」
「…………」
甘粕は電話を切ると大和に言った。
「申し訳ありません。王よ。この国に神が襲来しました。何卒ですが御身に神を撃退……」
「3」
「……はい?」
「三柱の神が日本に禍をもたらしに来ている」
恵那は驚いた表情で、甘粕は青ざめた表情で武を見た。
甘粕が運転する車に乗り、東京湾へ移動する。
「アテナのほかにもう一体ですか?」
「一柱はここで生まれ、もう一柱は外国から移動して来ているな」
甘粕はため息をついた。
結局、今、一番近い神を倒しに行くことになった。
アテナの方はもう一人の神殺しに任せることになった。
東京湾に着き、恵那と武は降りた。
「え、なに? 君も戦うの?」
「そうだよ王様。恵那はけっこう強いんだよ」
清秋院恵那は反りのない刀を持っていた。
武はなぜか不安を感じたが気を取り直した。
「甘粕さん。恵那は良いんですね?」
「ええ、本当は駄目なんですが、私よりは断然強いんで」
「……そうですか。じゃあ、甘粕さんは離れたところで見ていてください。もう一人の神殺しがやばくなったらそっちにいってください」
そういうと、武は、大きな呪力を感じる方向へと歩き出す。
人は誰もいない。恐らく言い知れぬ雰囲気を感じ、人が近寄らないのだろう。
「来たか。神殺しよ」
海が割れて、神が現れる。
「……百足」
「……大百足だね」
巨大な大百足だった。
「屠るべき龍の娘の元へ行く前に貴様から食い殺してやろう」
大百足は襲い掛かってくる。
大和と恵那は跳んで回避した。百足は大和だけを追う。
砂浜に上陸し、その姿形の全貌が見える。
本来の百足より多い脚。まさに神。
「我は剛力無双、その力を持って邪悪を殴殺し、聖なる光をあけ放つ」
聖句を告げる。全身に力が漲る。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
尾の方へ全力で駆けていく。
大百足は離そうとするが、遅かった。
足を抜く、足を抜く、足を抜く。片側の足を抜き続ける。
「すごい」
その様子を見て恵那は驚く。見た目は簡単そうではあるが、神の足を抜くこと自体かなりの腕力が必要だ。それが抜きやすい蟲であっても。
「うぬううううううう」
大百足は痛がる素振りは見せないが煩わしそうに呻いた。
「死ね!!!」
大百足は噛みついた。
武は回避する。
そして、大百足は連続で噛みついていく。
武は駆けながら勘で避けていく。
「恵那も頑張らなきゃ」
恵那は刀を抜いた。
「八雲立つ、出雲八重垣、妻籠みに――八重垣作る、その八重垣を……」
刀―――天叢雲剣に呪力が駆け巡る。
「はああああああああああああ」
理性を持って神と戦う。
恵那も足を切り裂いた。
「なに!? 神力の一端を操る小娘か!?」
敵と認識していなかった恵那に目を向ける。
「しかし、所詮は人の子。邪魔だ!」
攻撃する対象を恵那に変える大百足。
「よそ見をして余裕だな。百足野郎」
武は隙をついて尾の方に立つ。
「ふん!」
思いきり踏みつける。
神村流「震脚」
衝撃波を完全に伝える武芸。
百足の尾は完全に潰される。
そして―――
走る、その大百足を踏みつけるたびに震脚の衝撃を与える。踏む度に大百足の身体は潰される。
「ば、馬鹿なあああああああああああああああああ!!!」
大百足の頭を粉砕した。
武はそのまま恵那の元へ降りる。
恵那は目の前の絶技を呆然と見ていた。
「……すごい」
これがカンピオーネ。これが羅刹王。これが神殺し。
「やったね王様!」
恵那は武に感激したが、大和のは表情を引き締めた。その様子を見て恵那も身を引き締める。
武が振り返ると大百足の身体が急激に再生していく。細胞が一気に再生するように傷がぼこぼこと蠢く……。
「ふはははははははははは、我は不死身だ神殺し」
大百足は大きい牙を打ち鳴らした。
前作のリメイクなので書き溜めは結構あります。
もし、連休中に読みたいのであればあと二日間まで2回投稿しますがどうでしょうか?
神である
まぁ、ものすごくわかりやすい神? なんですがね……
なお、毎回毎回、神の来歴を暴く等をすることはあまりないと思います。
あと、タグにある通り途中から、作者の自己満足の原作崩壊の独自設定が始まります。
どうかご了承ください。
では、また近いうちに……