IS - M・od   作:阪本葵

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第11話 いじめ?勃発

 

 

「決闘で決めませんこと?」

 

 

 

……なんでこんなことになったんだろう?

 

僕の横ではムスッとしている一夏、そして離れた後ろの席ではミスオルコットが怒り言い合いをしているのだ。

 

よし、時系列を辿っていこう。

 

「ガイよ、それを人は現実逃避というのだぞ」

 

イヅナちゃん!

それ言っちゃダメ!

 

 

 

 

たしか、次の休み時間に再びミスオルコットが僕達のところに来たんだ。

 

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

また胸を張って声をかけてくるミスオルコット。

 

「ああ、ごきげんようミスオルコット」

 

一応社交辞令として挨拶する。

その返事に満足したのか、ミスオルコットはニコリと笑ってくれた。

 

でも、一夏の態度でそれは霧散してしまった。

 

「あ?」

 

…一夏、いくらなんでもそれはダメだよ…

 

 

まあ、そこからは二人の言い合いが始まるわけだ。

 

 

やれ、代表候補生であるエリートのわたくしが同じクラスなんだから幸運に思いなさい!

 

ああそうか、それはラッキーだ。

 

あなた、バカにしてますの?

入学試験で唯一教師を倒したこのわたくしを!

 

ああ?教師なら俺も倒したぞ?

 

な!?

わたくしだけと聞きましたが・・・

 

女子の中では、てオチじゃないのか?

 

などなどである。

 

ミスオルコットはどうしても自分が優位に立ちたいのだろうけど、一夏がそれを難無くかわしていく。

ミスオルコットがだんだんかわいそうに見えてきた・・・

 

「ところでモモンガーは入学試験どうだったんだ?」

 

徐に話題を僕に振ってくる一夏。

僕は、自分の入学試験を思いだした。

 

「うーん…僕は『入試は合格にするが、模擬判定は無効』って言われたなあー」

 

「無効?」

 

「なんですの、その判定は?」

 

一夏とミスオルコットが揃って訝しむが、事実なのだから仕方がない。

 

「理由はわからないけど、試験判定を担当してくれた織斑先生がそう言ったんだよねー。ああ、対戦相手は山田先生だったよー」

 

「おお、俺と同じだなモモンガー!俺も山田先生だったぜ」

 

「…あのブリュンヒルデが…何があったのかしら…」

 

考え込むミスオルコット。

 

ブリュンヒルデとは織斑先生のことである。

 

超強いIS操縦者に与えられる称号だそうだ。

 

つまり、織斑先生は超強いのだ。

うん、強そうだ。

 

おや、いつの間にか険悪な空気が霧散してますよ?

 

いやあ、やっぱり皆仲良くいかないとね!

 

そしてまた大した話の進展もなく、鳴る予鈴。

 

また悔しそうに席に戻るミスオルコットが不憫だった。

 

 

 

問題はここからだ。

授業が始まり、山田先生が教卓に立ったのだが、織斑先生が思い出したように『クラス代表』について話しだした。

 

クラス代表とは、イベントを仕切り、委員会などに参加する、つまり学級委員だ。

 

僕はそんな目立つ事は御免こうむりたい。

隣では一夏も嫌そうな顔をしていた。

 

「自薦他薦は問わない。誰かいるか?」

 

織斑先生はそう言って生徒を見渡す。

僕と一夏は揃って織斑先生から目線を反らした。

 

「はい、織斑君を推薦します!」

 

「私は百瀬君を推薦します!」

 

「私も織斑君を!」

 

自分の耳を疑った。

 

僕はミスオルコットとしか会話したことないのに、なにその他薦の嵐!?

 

一夏は混乱しているが、僕はそれ以上にパニックと絶望に陥っていた。

 

イジメ!?

 

もうイジメ勃発!?

 

早いよ!

まだ入学初日だよ!?

 

僕は泣きそうになった。

いや、実際半泣きである。

 

僕は無言の叫びを、織斑先生と山田先生に目で訴えた!

 

「…っ!………」

 

プイッ

 

なんと、そんな僕の顔を見た織斑先生と山田先生が僕から目を背けたのだ!

 

あーっ!!

 

クラスのイジメを無視するんですか先生!?

 

 

(くっ…そんなつぶらな瞳を潤ませてこちらを見るな!私が悪いみたいではないか!?ものすごい罪悪感だ…)

 

(はぅっ!?も、百瀬君!?そ、そんなチワワみたいにうるうるな瞳で私を見ないで!今の私は教師なんですから、百瀬君だけ贔屓できないんですー!)

 

織斑先生と山田先生がそんな葛藤をしていたとは、僕は全く気付いていなかった。

 

 

 

 

「納得いきませんわ!」

 

突然、バンと机を叩き立ち上がるミスオルコット。

 

皆ビックリして騒がしかった教室が一気にシーンとしてしまった。

そして言葉を続ける。

 

「そのような選出は認められません。男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!」

 

ミスオルコット、貴女は女神か!?

言っていることはなんかキツイが、この際関係ない!

 

僕は両手を上げて喜んだ!

 

「このセシリア・オルコットに一年間そのような屈辱を味わえとおっしゃるのですか? 大体、文化としても後進的な国で暮らさなければいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛ですのに!」

 

そうかー。

ミスオルコットは外国の人だから異文化に馴染めなくて大変なんだなー。

 

そう思うと、ミスオルコットは日本語上手だなー。

頑張り屋さんなんだね!

 

「イギリス代表候補生であるわたくしこそが、クラス代表にふさわしいのではなくて!?」

 

うん、そうそう!

強くてリーダーシップ取れる人じゃないとね!

僕はボケーッとそんな事を考えていると、一夏が反論した。

 

「なんだよ、イギリスだってたいしてお国自慢無いじゃないか。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

はー、なにやら一夏はこの国『日本』を馬鹿にされて怒っているようだ。

しかし、世界一不味い料理の覇者って言い方悪くないかな?

イギリスって国よくわからないけど。

いや、日本もよくわからないんですけどね。

 

「あなた、イギリスを侮辱してますの!?……ミスタ百瀬、あなた、なに他人事みたいな顔してますの?」

 

あら、ミスオルコットに怒られちゃった。

横では一夏も睨んでくる。

 

「そうだぞ、モモンガー。日本が馬鹿にされたんだぞ?おまえも日本人だろ!反論しろよ!」

 

うーん、とは言ってもなー。

まあ隠す必要も無いし、この際だから皆に知ってもらうために言っておくか。

 

「ああいや、申し訳ないんだけど僕は国とかよくわからないんだよねー。記憶無いからー」

 

あははー、と笑いながら言うと一夏が途端に申し訳ない表情をしだした。

 

「ご、ごめんモモンガー。俺…」

 

「いやいや、気にしなくていいよー」

 

「ミスタ百瀬、記憶が無いとは、どういうことですの?」

 

ミスオルコットも怒りを収め静かに語りかけてきた。

 

「いやー、たいした事じゃないんだよー。僕は篠ノ之束博士に拾われるまでの記憶が全く無いんだよねー。だから自分が何処の生まれか知らないし、この名前も本当の名前じゃないかもしれない。そういう国の事とか常識とかもよくわからないんだー」

 

あははーと笑いながら軽く言ってみる。

 

……

 

………

 

………あれ?

 

シーンとした教室の空気が重くなってきたぞ?

 

なんで皆そんなに俯いてるの?

 

「申し訳ありません、ミスタ百瀬。わたくしはなんと失礼な事を…」

 

苦しそうな表情で謝るミスオルコット。

僕は別に記憶が無くて困ることはないから気にしてないんだけどな……

 

「いやー、お気になさらずー。僕は気にしてませんからー」

 

そう、本当に気にしていない。

だから謝られるとこちらが申し訳ない気持ちになってしまう。

 

気にしてないという気持ちを、にぱーっと笑顔で表現してみた。

 

「はうっ!」

 

ミスオルコットが変な声を出して顔を赤くした。

他の女生徒も皆さん一様に顔を赤くしてモジモジしたり、ぽわわんと惚けたりしだした。

一夏や山田先生、織斑先生まで顔が赤い。

 

なんだ、風邪か?

集団感染か!?

 

「あー、とにかく話をもどしましょう。クラス代表で他薦が一夏と僕、自薦でミスオルコットということですね?」

 

「あ…オホン、その通りですわ!したがって誰が一番クラス代表に相応しいか、決闘で決めませんこと?」

 

 

 

 

…とまあ、長くなったがこういう経緯なのだ。

 

あまり率先して目立ちたくないからクラス代表なんて嫌だな…

 

でも一夏はやる気満々だ!

 

「いいぜ、じゃあハンデはどうする?」

 

「あら、早速お願いですの?」

 

「いや、俺がハンデをつけるためなんだが…」

 

大まじめな一夏。

うん、かっこいいなー。

 

しかし、その発言にクラスは笑い声に包まれた。

 

「織斑君本気?」

 

「女が男より弱いなんてもう昔の事だよ」

 

「女が男と戦争になったら3日で女が勝つって言われてるんだよー」

 

笑い声と共になにやら解説じみた声がした。

 

へー、束さんから聞いてはいたけど、こう大多数が言うと本当なんだな、としみじみ思う。

それほどISという兵器の威力が凄まじいのだろう。

 

「あ、じゃあ僕ハンデより辞退したいです。戦争反対、会話で解決万歳。僕弱いですからー」

 

挙手して言うと、パシンと軽く頭を叩かれた。

織斑先生の持つ出席簿で叩かれたようだ。

それでも一夏を叩いた時より軽かったのは何故だろう?

 

「何を言っている百瀬。推薦を受けたのだから辞退は認めない。腹を括れ」

 

ううむ、織斑先生厳しいです。

とか思ってると、山田先生が何か言いたそうな顔でもじもじしている。

 

あの、嫌な予感がするんですけど?

 

「あの…織斑先生、百瀬君はハンデをつけて戦わないとまずくないですか?」

 

……何言ってんのこの人!?

おい副担任!

メガネ巨乳!

お仕置きだ!

おっぱい揉ませろ!

 

いや、本当に揉ませてくれたらうれしいですけどね!

 

…ほら、ほらほら!

ミスオルコットの表情が険しくなってきましたよ!

 

「ふむ…確かにな…しかし…」

 

悩みだす織斑先生。

なんで悩むんですか!?

 

「ミスタ百瀬…わたくし、そこまで侮辱されたのは初めてですわ」

 

僕が言ったんじゃないですー!!

 

この教師二人ですよー!?

 

「ふん、侮辱か。確かに何も知らなければそう聞こえるな。では百瀬、イヅナを呼べ」

 

織斑先生がなにやら変なことを言い出した。

入学前までは、むやみやたらにイヅナちゃんを人前に出すなと言っていたのに。

 

まあいいか。

イヅナちゃんも友達沢山欲しいだろうしね。

 

「わかりました。イヅナちゃーん、もう術解いていいよー」

 

「うむ!」

 

元気よく返事をしたイヅナちゃんは、認識阻害の術を解いた。

そして僕の横でフワフワ浮いている。

 

これでみんなにもイヅナちゃんの姿が見えるだろう。

 

「皆のもの、我は『白面金剛九尾イヅナ』、ガイの専用あいえすだ!よろしく頼むぞ!」

 

元気よく挨拶するイヅナちゃんはかわいいね!

 

 

「……」

 

おや、無言。

 

皆目が点になってますよ?

 

「き……」

 

き?

 

「きゃああああぁぁぁぁーーー!」

 

「なにあれかわいいー!」

 

「見てみて、尖った獣耳!」

 

「ふわふわの尻尾が九本あるー!」

 

「お人形みたーい!」

 

 

ふむ、皆さんイヅナちゃんの可愛さにメロメロですね!

 

「な、なななんですのソレは!?」

 

ただ一人ミスオルコットだけが混乱していた。

 

「なんだ、聞いてなかったのか?我は白面金剛九尾イヅナだ。ガイの専用あいえすだ」

 

やれやれとジェスチャーしながら子供に言い聞かせるようにもう一度名前を言うイヅナちゃん。

 

「ISですって!?何を馬鹿な事を!ISが言葉を発するなど…それでは…まるで……まるで……ま、まさか……」

 

ミスオルコットは言いながら顔を青ざめさせていく。

 

「そうだ。専用機持ちのお前なら、それがどういうことか、わかるだろう?」

 

織斑先生がわずかにニヤリと笑った。

あー、そうか、この人Sだ。

ドSなんだ。

 

ミスオルコットの悔しそうな顔を見て喜んでるんだ。

 

……なんつー先生だ。

 

「ミスタ百瀬は……”ISと対話出来る”レベルである……」

 

ん?

対話出来るレベル?

 

イヅナちゃんと話してたらダメなのか?

 

「そうだ。『第一形態(ファーストシフト)』はもとより『第二形態移行(セカンドシフト)』、さらに『第三形態移行(サードシフト)』のさらに先『机上の空論』と言われた、未だかつて誰ひとりとして到達したことのない『究極』。そのひとつ、『進化融合』その領域にいるのが百瀬だ」

 

織斑先生が話すと、なにやらとんでもないことっぽい感じの内容に聞こえる……

 

イヅナちゃんは始めからあんな感じだから、別にどうってことないのにな。

 

「そうだぞ!我とガイは『終極因使』、ZX−F(ゼクスファクター)なんだぞ!」

 

イヅナちゃんがエヘンと胸を張って自慢する。

 

 

「ゼクス……ファクター……『神の領域すら侵す究極の存在』……まさか実在するなんて……」

 

ミスオルコットがつぶやく。

 

 

 

お願いやめて!

 

 

神とか究極とか恥ずかしいから!

 

 

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