IS - M・od   作:阪本葵

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第14話 まったく、少しは妥協とか状況把握とかしようよ…

 

「部屋に入ったら、俺の覚えのない荷物が床にあったんだ」

 

「うん」

 

「で、耳を澄ませてみれば、シャワーの音がしてるんだ」

 

「うん」

 

「それで、シャワールームからバスタオル一枚だけの箒が現れたんだ」

 

「ふーん」

 

「で、言い合いになって、箒が木刀振り回してきて追い出された」

 

「……」

 

 

 

僕はとりあえず一夏を部屋に入れ、ベッドに腰掛け事情を聞いていた。

 

で、聞いてみたけど…

 

 

 

うらやましい…

あのわがままボディをバスタオル1枚という姿で生拝見したのか…

どうやら一夏はラッキースケベの持ち主のようだ。

 

くそ、こんなことなら僕もあの自称神様にラッキースケベのスキルをなんとかねじ込んででも付けてもらうんだった…!

 

ちなみにイヅナちゃんは現在、寮生活の注意事項が書かれている紙を眺めており、会話に参加していない。

 

「モモンガーはこの部屋一人なんだろ?なんで俺と相部屋じゃないんだ?そしてなんで箒なんだ!?」

 

一夏は叫ぶ。

 

そんなに嫌なのか?

あのわがままボディがいつも生拝見できる環境が?

ラッキースケベスキルが!?

それは全男子を敵に回す発言だぞ!!

 

コンコン

 

その時、ドアをノックする音がした。

 

「はいはーい」

 

僕はドアに近付き、覗き穴から確認をとった。

 

 

そこには気まずそうな顔をした篠ノ之箒さんがいた。

でもなんで胴着着てるの?

なんで木刀握ってるの?

 

まあいいや、用件はわかってるからね。

 

僕はドアを開け、篠ノ之箒さんを招き入れた。

 

 

 

「とりあえず挨拶をば。はじめまして篠ノ之箒さん、僕は百瀬凱、あだ名はモモンガーですー。これからクラスメイトとして仲良くしてねー」

 

「ぁぅ…あ、ああ…よろしく」

 

にぱーっと笑い挨拶する僕に対し、何故か言い淀み目線を反らす篠ノ之箒さんに、それを見てニヤニヤする一夏。

 

(うっ、な、なんだこの小動物の笑顔は!?すごくドキドキする…)

 

(ふっ…箒よ、お前もやられたな?モモンガーのプラチナイオンに!)

 

 

「とにかく、落ち着いて話し合いましょう。頭に血が昇ってしまってはまともな議論もできません。お互い冷静に意見を聞き、話し解決しましょうよ」

 

戦争反対!

 

まずは話し合いからね!

 

「わかった」

 

「ああ、いいだろう」

 

一夏と篠ノ之箒さんも頷いてくれた。

 

一夏と篠ノ之箒さんを座らせ、僕が間に立って仲介する…

 

いつの間にかこの部屋が会談の場になってしまったのだった。

 

 

 

 

10分ほどお互いの意見を出し合ってもらったが、ぶっちゃけどちらにも非があるし、どちらも正当である。

 

「まず一夏は、自分が正しいと曲げずに、それを無理矢理に押し通そうとするのがダメだね」

 

「なんでだよ、俺は悪くないだろ?」

 

「信念を曲げない、間違った事はしていないと信じる一夏の真っ直ぐな性格は美点ではあるけどねー。まあ、たしかに篠ノ之箒さんが部屋にいるなんて知らなかっただろうし、たまたま風呂上がりに出くわしたのは不可抗力だよ?でも男なら、自分から折れるくらいの度量がないとねー。なんでもかんでも正論を真っ直ぐ突き付けて押し通せるような事態の方が、少ないんだから」

 

「うっ…モモンガーが強い…言い返せない…」

 

「そうだぞ一夏!全部お前が悪い!」

 

僕の注意にへこむ一夏、そしてそれを勝機と見て畳み掛けるように怒鳴る篠ノ之箒さん。

 

「篠ノ之箒さん、あなたにも非がありますよ」

 

「なに?」

 

「一夏は篠ノ之箒さんから見れば不法侵入者であり、危うく肌を晒すところという不運は心中お察ししますが、それでもいきなり木刀で殴りかかるのはやり過ぎではありませんか?」

 

「ぐっ…し、しかし、暴漢に容赦などしては……」

 

「一夏は暴漢じゃなくて幼なじみでしょう?顔確認してから攻撃したんでしょ?」

 

「うっ」

 

「生身で木刀が当たれば、下手すれば怪我だけじゃ済まない事態になってたかもしれないんですよ?篠ノ之箒さんは、一夏が一生の傷を負って責任とれますか?」

 

「ううっ」

 

篠ノ之箒さんがぐぬぬと顔を歪めながらも、縮こまっていく。

自分のしでかした事の重大さを理解して、反省しているようだ。

 

「今回はいろいろ食い違いがあったようだけど、これでお互いを理解出来たでしょ?とにかく、これからしばらくお二人はルームメイトになるのだから、仲良くしなくちゃ。落ち着いて話し合って、お互いを尊重すれば、きっといい答えがでるし、楽しい学園生活が待ってるよー」

 

二人共反省しているようなので、僕は締めくくりの言葉をかけ、にぱーっと笑った。

 

「うぉっ」

 

「あぅっ」

 

急に一夏と篠ノ之箒さんの顔が赤くなり、変な声をあげた。

 

空調が暖房でも入ってて暑いのかな?

 

「おい一夏、この小動物…いや、百瀬の癒しの笑顔はなんだ!?すごくドキドキするぞ!」

 

「箒、あれがモモンガーのプラチナイオンスマイルなんだぜ!」

 

そんな事をヒソヒソと話していた一夏と箒だった。

 

 

 

そして一夏が「あっ」と何かを思い出したような声を出す。

 

「そうそう、モモンガーはこの部屋で一人だろ?おかしいじゃないか!なんで俺が箒と同じ部屋なんだよ!?」

 

一夏の言い方が気に入らなかったのか、眉をピクピク動かす篠ノ之箒さん。

おいおい、木刀握り締めたよこの人!

 

「ほう、お前は私との同部屋がそんなに嫌か?」

 

「篠ノ之箒さん、落ち着いてください。一夏は、『僕と一夏が同部屋になればこんな混乱はなかったんじゃないか?』といってるんです。そもそも年頃の異性が同じ部屋で生活なんて、普通は非常識ですよ」

 

「あ…ああ、そうだな」

 

…どうも篠ノ之箒さんはすぐに頭に血が昇るタイプのようだ。

言葉を額面通り受け止め、それに対し感情に身をまかせる…ようするに直情型である。

なんとか落ち着かせる為に詳細を説明する僕。

もしかしてこれから僕の役割ってこんなめんどくさい立ち位置なのか?

 

とにかく僕の説明が理解出来たのか、落ち着きを取り戻した篠ノ之箒さん。

 

「しかし、では誰がこんな無茶苦茶な部屋割をしたんだ?」

 

「千冬姉と山田先生が俺とモモンガーに部屋の鍵渡してくれたよな?」

 

「先生方がこんな部屋割をするとは思えないが…」

 

一夏と篠ノ之箒さんは考え込んでいたが、そこに今まで黙っていたイヅナちゃんが言った。

 

「ふん、大体察しはつく。大方、あの獣人族がこの部屋割を裏で指示、もしくは改竄したんだろうさ」

 

「獣人族?」

 

「ああ、獣人族っていうのは束さんの事だよー。イヅナちゃんは束さんの事獣人族って言うんだよねー」

 

「うさぎ耳を生やしとるからな。それに我は奴が好かん!獣人族で十分だ」

 

イヅナちゃんはぷりぷり怒って言う。

 

そしてそれを聞いた一夏は苦笑し、篠ノ之箒さんは頭を抱え盛大なため息をついた。

 

「………姉さん…」

 

うん、束さんならやりそうだ。

 

おもしろそうだよねー☆

 

とか言ってね。

 

「なあ、今からでも変更してもらおうぜ!」

 

一夏はまだ引き下がるつもりがないらしく、そう言うのだが、イヅナちゃんがそれに対し首を横に振った。

 

「無理だな。それが出来るならば、千冬か山田が事前に行っていたはずだ。獣人族のいたずらだとしても、お上の決定だからな、宮仕えの千冬達には何も出来ないのだろう。それに、出来なかったから今の現状になるのだろうよ」

 

「ぐっ…じ、じゃあ無理矢理にでも俺がモモンガーの部屋に移動すれば…」

 

「『寮生活の規則』とかいうこの紙には『生徒の決められた部屋以外での寝食を発見した場合、厳しい処罰を双方に与える』と書かれている。我がガイに危機が及ぶような事を容認すると思うか?」

 

イヅナちゃんは山田先生からもらった寮生活の規則が書かれた紙をピラピラと揺らす。

 

「まあ良いのではないか?お主等幼なじみなのだろう?気心が知れてるし、暮らしやすいだろうて」

 

イヅナちゃん、すごい悪そうな笑みですよ?

ニヤニヤって感じですよ?

 

「ま、まあ箒となら、他の女子と同じ部屋になるよりは…」

 

一夏が八方塞がりな状況で、なんとか納得しようとしている。

 

それを聞いた篠ノ之箒さんはパアッと笑顔になった。

 

「そうか、私は他の女といるよりいいか、そうかそうか」

 

うんうん頷きながら一夏の言葉を反芻する篠ノ之箒さん。

 

 

 

「なあガイ、我はもうお腹が空いて仕方ない。早く晩御飯を食べよう」

 

イヅナちゃんが若干涙目でクイクイと僕の服を引っ張りながら言ってきたので、壁にかけられた時計を見た。

 

結構時間が経っていたようだ。

 

窓から見える景色も、夕暮れだったのがもう真っ暗である。

 

「そうだね、ご飯食べようか」

 

「よし箒、俺達もモモンガー達と一緒に行こうぜ」

 

「ああ」

 

そうして、僕達は一緒に食堂へ行き、食事を採ったのだった。

 

 

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