IS - M・od   作:阪本葵

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第15話 どうやら僕の立ち位置は愛玩動物のようです

 

 

 

IS学園入学二日目、僕とイヅナちゃん、一夏と篠ノ之箒さんは揃って朝食を採っていた。

 

席は横一列で、一夏・篠ノ之箒さん・イヅナちゃん・僕の順番だ。

 

ちなみに全員和朝食である。

 

このIS学園、世界各地から生徒が来るので食事も生徒の要望に応えるために多国籍料理が網羅されている。

しかも、調理はどこぞの有名ホテルなんかを凌駕する美味さだそうだ。

 

でも、食事を受けとった時の人はどう見てもパートのおばちゃんだったんだけど…

 

うん、鮭の塩味がご飯をそそるね。

 

周囲からの視線は相変わらずだ。

 

昨日からの彼女達の視線や行動、イヅナちゃんの言うことでわかったのだが、どうやら僕や一夏に話しかけたいがどうやってきっかけを作るか、勇気がないなど様々な理由で僕達に近付かないようである。

彼女達の大半は、日本限定であるが小・中と女子校出身であるらしい。

 

『ISの授業は女性は必須であるけど、男には必要ない』

 

これが日本政府、教育施策を担う教育組織の基本方針である。

間違えないでほしいのは、別にすべての事を男が出来ないというわけではない。

あまり世論で取り沙汰されていないが、ISの整備や設計、IS関連企業などISに関わる人口というのは、逆に男の方が多いくらいである。

表舞台である操縦者という”花形”に脚光が当たりすぎて裏方の存在が見えなくなっているのだ。

本来、操縦できるとかそういうことは関係なく男女分け隔てなく全員に教育させなければ、正しい知識を得ることが出来ず、最悪捻じ曲がった思想に陥る可能性だってあるのだ。

そういう意味では日本の教育施策は間違っていると言わざるを得ないだろう。

しかし、別に共学校でISの授業をしていないわけではないが、それでも女子校のほうがIS授業に力を入れている。

それは、小さいころからISの英才教育を施す学校が女子校が多かったためであるのだけど、そのせいか男への免疫が低いそうだ。

つまり、箱入り娘、お嬢様達なのだ。

 

女尊男卑の世の中で、この学園で僕と一夏がある程度尊重されている(まだ一日しか経ってないが)のはそういうところからきている、と思う。

 

それでも監視されてるみたいで、あまり良い気分ではない。

 

 

 

「…なあ、百瀬?」

 

篠ノ之箒さんが僕とイヅナちゃんをチラチラ見ながら声をかけてきた。

 

「なんですかー?篠ノ之箒さん?」

 

「…いちいちフルネームで言わなくていい。その…質問があるのだが…」

 

篠ノ之箒さん、もとい篠ノ之さんは苦笑しながら質問があると言ってきた。

 

「その、昨日も疑問に思っていたんだが、イヅナはISなのだろう?ISが食事を採るなど聞いたことがないのだが…」

 

そう言いながら、みそ汁を飲んでいるイヅナちゃんを見る。

篠ノ之さんは昨日イヅナちゃんと仲良くなった。

お互いどこか通じるものがあったらしい。

で、お互いを『箒』『イヅナ』と呼び合うようになったのだ。

 

「おお、そういえばそうだな」

 

一夏も篠ノ之さんの言葉にポンと手を叩く。

 

 

イヅナちゃんは体が小さい。

 

僕の頭ほどのサイズだ。

だけどイヅナちゃんはテーブルに正座して器用に僕達と同じ食器を使って食事する。

 

イヅナちゃんのテーブルマナーは、すごく綺麗だ。

 

大和撫子って感じの奥ゆかしさを感じる。

 

 

静かに食事を採っていたイヅナちゃんが手に持っていた湯呑をテーブルに置き、篠ノ之さんの方を見てこう言った。

 

「箒よ、気にするな」

 

「…は?」

 

篠ノ之さんは目が点になる。

 

「我は生まれた時からこれが普通だ。他のISなんぞ知らんし、他がどうだろうと我は気にしない。だからお前も気にするな」

 

イヅナちゃんはそう言うとまた黙々と食事を採りはじめた。

 

「…そうか、そうだな。イヅナはイヅナ…私は私というわけか」

 

篠ノ之さんはどこか嬉しそうだった。

 

 

 

「織斑君、隣いいかなっ?」

 

声の主を見れば女の子が三人立っていた。

ううむ、モテるなぁ…一夏

 

「へ?…いいけど?」

 

話しかけた女の子は安堵のため息をもらして、後ろの2人はガッツポーズを取っていた…そして周りの女子からざわめきが聞こえる。

 

「………ふんっ」

 

そして途端に機嫌が悪くなる篠ノ之さん。

 

「ああ~っ私も早く声をかけておけばよかった…」

 

「まだ二日目。大丈夫、まだ焦る段階じゃないわ」

 

「昨日のうちに部屋に押しかけた子もいるって話だよ~」

 

「なんですって!?」

 

皆さんアグレッシブなことで。

そういえば夜も一夏達の部屋が騒がしかったな。

それでイヅナちゃんが「近所迷惑だぞ!」とか言って一夏達の部屋に怒鳴りに行ったんだったな。

で、すぐに人払いの結界を施して、それを聞いた篠ノ之さんがかなり喜んでいたのが印象的だった。

 

「あ、じゃ私は百瀬君のとなりね~」

 

ガッツポーズを取っていた2人のうちの1人が隣に座ってきた。

…たしかこの人は同じクラスの『布仏本音』さん…だったかな?

ううむ、かなりのんびりした人だなあ…

ていうか、その服装はパジャマというより着ぐるみなのでは?

しかもサイズが大きいのか袖が長すぎて手が見えない。

しかし僕の目はごまかされないぞ!

布仏本音さん………かなりの武器(胸)をお持ちですね!!

これはもしかしたら篠ノ之箒さんより……ゴクリ…

 

…ちょっとイヅナちゃん、そんなに睨まないでよ…

 

「うわ、織斑君って朝すっごい食べるんだねー!」

 

「お、男の子だねっ」

 

「俺は夜少なめに取るタイプだから、朝食べとかないと色々キツいんだよ」

 

…そういえば織斑家に居候していたときそんなこと言われたな。

健康管理に良いんだろうか?

たしかに、朝は一日の始まりで、多く体を動かす。

そして夜は動くことも少なくなる。

運動量やカロリー消費の面を考えれば、夜多く食事を採ると消費しにくく脂肪になってしまうのだ。

 

つまり、朝、昼は多く摂取し、夜は少なくというのは理にかなっているのである。

 

「ていうか、女子って朝それだけしか食べないで平気なのか?」

 

それは僕も思った。

すごく少ないな…篠ノ之さんは僕達と同じ量なのに…

 

「わ、私たちは…ねぇ?」

 

「う、うん…平気かなっ?」

 

「お菓子よく食べるし!」

 

隣で布仏本音さんが長い袖をぶんぶん振り回して断言する。

ううむ、間食というか、お菓子ばかりなのは感心しませんな。

成長の時期にカロリーや栄養が偏ると身体に影響が出るんですよ?

 

「…私は先に行くぞ」

 

いつの間にか篠ノ之さんが食べ終わっていた。

おや、イヅナちゃんもですか?

 

これは早く食べなければ。

 

 

 

「お前達、いつまでチンタラ食べている!食事は迅速に、効率良くだ!遅れた者はグランドを10周させるぞ!」

 

突然怒号が飛ぶ。

 

見れば、千冬さんが白いジャージに身を包み仁王立ちしていた。

 

和やかに食事を採っていた生徒達は、千冬さんの登場で慌てて食事を流し込む。

 

 

「千冬姉、寮長なんかしてたのか…道理で月に一、二回くらいしか家に帰ってこないわけだ」

 

そう呟く一夏の顔は、先ほどの篠ノ之さんと同じくどこか嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

「織斑、お前のISだが、予備がないため学園が専用機を用意することになった。到着するまでしばし待て」

 

HRでの織斑先生のこの言葉に、クラスはざわついた。

 

「一年こんな時期に専用機?」

 

「ていうことは、国から支援が出たってこと?」

 

「いいなー、私も早く専用機欲しいなー」

 

ヒソヒソと話すクラスメイトを尻目に、一夏は首を傾げる。

 

「なんで俺に専用機が?」

 

一夏は自分がどれだけ貴重な存在なのか理解していないようだ。

しかし、僕はもうひとつの可能性を危惧した。

 

「アレじゃない?『男の子と同じISを共有するなんて、臭くてイヤです!不潔です!妊娠します!』とかいう…」

 

「そんなわけあるか、馬鹿者」

 

パコンと出席簿で僕の頭を叩く呆れ顔の織斑先生。

やっぱり一夏を叩く時より威力が小さい。

 

「織斑、教科書六ページだ。音読しろ」

 

いきなり織斑先生は一夏に教科書を音読させた。

 

 

「あ、はい。えーと…『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるISは467機、そのすべてのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引きすることはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』」

 

「昨日も話したが、つまりそういうことだ。本来ならIS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか?」

 

「つまり実験動物(モルモット)ですね?」

 

「…百瀬、もう少しオブラートに包んだ発言をしろ」

 

気が付くと、先程までざわついていたクラスがシーンと静かになり、重苦しい空気になっていた。

 

「安心しましたわ」

 

そんな空気をものともしない高飛車な声が響く。

ミスオルコットだ。

 

「わたくしと同じく専用機持ちならば、容赦はいりませんわね?」

 

相変わらず自信満々な態度である。

まあ、一夏や僕を見下してあんな大きな態度になるのだろうけど。

 

しかし、堂々と胸を張る人だ。

まったく、いいおっぱいをお持ちで…

 

僕にとってのご褒美ですね!

 

僕は心の中でありがたやーとミスオルコットのおっぱいを手を合わせて拝んだ。

 

しかしミスオルコットも専用機を持っていたとは。

代表候補生だからかな?

 

「ふん、あまりいい気になるなよ小娘」

 

突然、僕の膝の上でくつろいでいたイヅナちゃんがミスオルコットを批判しだした。

 

「…小娘ですって?一体誰の事かしら、IS風情が生意気ですわね」

 

すごく冷たい視線でイヅナちゃんを見下すミスオルコット。

…ミスオルコット、そういうこと言っちゃいけないよ。

 

「ミスオルコット、ISは大切なパートナーなんだよ?そんな『IS風情』なんて言っちゃだめだよ。イヅナちゃんは僕にとって大切なパートナーなんだ。家族同然な存在だよ」

 

思わず反論してしまった。

そして言っておいてしまったと気付く。

 

こんな事言ってしまったら、クラス代表決定戦で勝たなくちゃならないじゃないか!?

 

墓穴を掘ってしまったー!

 

「ガイ…我は感激だぞ…」

 

イヅナちゃんは目をウルウルさせて僕を見てるし。

 

「はぅ…ふ、ふん、ならば代表決定戦でわたくしを負かせてみせなさいな。そうすれば謝罪でもなんでもしてさしあげますわ」

 

ミスオルコットは何故か顔を赤くして変な声を出したが、その後予想通りの返答が返ってきた。

 

(ミスタ百瀬…真面目な顔もキュートですわ…)

 

まさかミスオルコットがそんな事を思いながら言った言葉だとは、僕は知らなかった。

 

そして、何か閃いたのか、悪戯っ子のようにニヤリと笑いとんでもないことを言い出した。

 

「もしわざと負けたりあまりにも無様な戦いをしたら、織斑一夏、あなたはわたくしの小間使い…いえ奴隷にしてさしあげますわ!そ、そして、ミ、ミスタ百瀬は…わ、わたくしのペットですわよ!」

 

 

……

 

………ペットか…

 

………アリだな!

 

パカン!

 

「ガイ、お前とんでもない事を考えてただろう!?」

 

イヅナちゃんにおもいっきり頭を叩かれました。

しかも考えてることバレてるし…

 

「百瀬君をペットに…」

 

「じゅるり」

 

「ああ…かわいいペットはちゃんとご主人様の言うことを聞くように躾をしなきゃ…ハアハア」

 

何故か他の女の子達も顔を赤くし、ハアハア言い出し、目つきが猛禽類のそれになっていた。

 

…こわいよ。

新たないじめか!?

 

「ふん!ならば小娘、貴様がガイに負けたなら、貴様はガイのペットだ!」

 

「なっ!?わ、わたくしが!?」

 

イヅナちゃんの宣言にミスオルコットはまた顔を赤くした。

 

ミスオルコットをペットに…

 

つまり、あのおっぱいが僕のモノになるのか…

 

 

これは僕がペットになろうが、どっちにしてもおいしい思いをするということでは?

 

………うむ、アリだな!

 

(わ、わたくしがミスタ百瀬のペット…はぅ…なんだか、どちらにしてもおいしい思いをするのはわたくしな気もしますが…それはそれで…アリかもしれませんわね…)

 

ミスオルコットは頬に手をそえながらいやんいやんと体を動かす。

 

「何を考えとるんだ、エロガキが…こら、ガイ、お前もだぞ!」

 

イヅナちゃんがため息をつき、僕を怒る。

織斑先生もため息をついていた。

山田先生は顔を赤くしてブツブツ呟いている。

 

「その条件、飲みましたわ!」

 

ビシッと僕に指差すミスオルコット。

 

そしてキャーキャー騒ぎ出すクラス。

 

中には「いいなー!」とか「私も百瀬君のご主人様になりたーい!!」とか聞こえたけど無視。

 

 

 

よし、やる気が出てきたぞ!!

 

おっぱいのために、僕は戦う!!

 

 

 

 

 

「…なあ箒、俺って空気かな?」

 

「…私に聞くな」

 

一夏と篠ノ之さんの呟きは、騒がしいクラスメイト達のせいで僕には聞こえなかった。

 

 

 

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