「あの、篠ノ之さんて、篠ノ博士之の関係者なんですか?」
授業が始まり、ISについての説明がされている時、女子が山田先生に質問した。
女生徒の質問に、チラリと篠ノ之さんを見た織斑先生は、一呼吸おき…
「そうだ、篠ノ之はあいつの妹だ」
なんと、いとも簡単に個人情報をバラした。
「えええー!ホントなの!?このクラス有名人の身内が二人もいる!」
「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才なの!?」
「篠ノ之さんも天才だったりする!?今度ISの操縦教えてよっ」
「お姉さんて今行方不明だよね?何処にいるのか知らない?」
姦しいというか、騒がしいというか、女子はこういう噂話やゴシップネタが大好きなのだ。
授業中だというのに篠ノ之さんの元にわらわらと女子が集まる。
キャーキャー騒ぐクラスに、織斑先生はため息をついた。
「あの人は関係ない!」
途端、篠ノ之さんが大声を出した。
それによってクラスはシーンと静まり返ってしまった。
「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」
そう言って、篠ノ之さんは窓の外に顔を向けてしまう。
女子は盛り上がったところに冷水を浴びせられた気分のようで、それぞれ困惑や不快な顔をしていた。
しかし、何か思い出したのか、一人の女子が僕を見て言った。
「そういえば、百瀬君は篠ノ之博士のところで助手してたんだよね?」
そう言うと、また女子達は目をキランと輝かせた。
ターゲットを篠ノ之さんから僕に変えたようだ。
「そうだねー。まあ助手とは名ばかりの雑用、家事手伝いだったけどねー」
僕が肯定すると、またきゃいきゃい騒ぐ女子。
ああ、ホントにもう女子校のノリだ。
「じゃあ百瀬君は篠ノ之博士の所から来たんだよね?居場所知ってるんだよね?」
この質問に、何故か織斑先生と山田先生がピクッと反応した。
だけど残念、僕に教えられるような情報はありません。
「残念だが、ガイは超が付く方向音痴だ。この学園までの道程など全く当てにならんし、そもそも途中まではロケットでの移動だったから我もわからん」
イヅナちゃんが僕の代わりに説明してくれた。
でも超が付くって……イヅナちゃんしどい…
「迷子で泣きじゃくる百瀬君…」
「方向音痴…すごい萌えポイントね…」
何か女子が呟いているが僕には意味がわからない。
ミスオルコット、何故あなたもハアハア言ってるんですか?
「じゃあ連絡先とかは?携帯とかメアドとか」
どうしても束さんの情報を聞き出したいのか、女子はなおも食い下がる。
しかし、僕は根本的なところで理解していなかった。
「携帯?メアド?なにそれ?」
僕が逆に質問すると、女子達は「え?」と目を点にした。
「携帯って言ったら携帯電話だよ、携帯電話」
「メアドはメールアドレスだよ?」
「携帯電話?メールアドレス?イヅナちゃん知ってる?」
「いや、知らないぞ。めーるとは食べ物か?ラーメンの仲間か?」
僕はさらに首を傾げる。
イヅナちゃんも同じく首を傾げる。
ざわ…
クラスに変な緊張が走った。
窓の外を見ていた篠ノ之さんも驚きの表情で僕達を見ていた。
「……そういえば、モモンガーが携帯電話触ってたり持ってるところ見たことない」
隣で一夏が呟く。
「百瀬、携帯電話とはその名の通り、携帯できる電話だ。コレで様々な事が出来るし、先程言っていたメール、つまり電子手紙をやりとり出来るのだ」
織斑先生が二ツ折の黒く小さな箱をポケットから取り出し、僕に見せてくれた。
僕はそれをパカパカ開けたり閉じたり、イロイロな角度からマジマジと見たりした。
「へー、これで電話や手紙のやりとりが出来るんですかー。便利な世の中ですねー」
「本当だな!」
僕とイヅナちゃんは感心しきりだ!
「…百瀬、お前はISについては知ってるな?」
「え?はいー、束さんにレクチャーしてもらったので、教科書に載ってる程度の事ならバッチリですよー!」
「なんでISを知っていて携帯電話を知らんのだ……」
織斑先生は呆れているというより、驚愕といった表情で僕を見る。
「え?これってそんなに有名なんですか?」
僕が首を傾げると、クラスの全員がポケットや机、鞄の中から各々の携帯電話を取り出し僕に見せた。
それを見た僕とイヅナちゃんは驚いてしまった。
「すごいですねー、ごいすーですねー!皆文明の利器を使いこなして!さすがエリートの集まるIS学園ですねー!」
「うむ、我も感服したぞ!」
素直に驚き、感心している僕とイヅナちゃんを、クラスメイトや先生達の眼差しはすごく生暖かいものだった。
「…それで、この携帯電話は電話線を何処に付けて通話するんですか?」
「そこからかよ!」
すごいツッコミを一夏からいただきました。
携帯電話とはまさしく携帯できる無線の電話だとか。
ううむ、ハイテク時代の流れに付いていくのは大変だ。
ちなみに、僕の知っている電話とはどんなものかと聞かれたので、僕の知る電話を言った。
「黒くて、真ん中に穴の開いた円盤みたいのがあって、その円盤をジーコジーコと指を入れて回すんでしょ?」
「………百瀬、お前は本当に15歳か?昭和生まれの間違いではないか?」
織斑先生にまたもや呆れられた。
昭和?
なにそれ?
「モモンガー、それって黒電話だろ?博物館で見たことあるぜ」
「…百瀬、お前は記憶喪失である事はわかったが、常識や知識にかなり偏りがあるな。もうIS以前の問題だ」
なんか怒られた。
何故だろう?