IS - M・od   作:阪本葵

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第23話 崩壊する学級

 

 

「明日は織斑君のクラス代表就任パーティーするから、モモンガーも絶対来てね!」

 

相変わらず元気な相沢さんは、僕にそう言って自分の部屋に戻って行った。

 

パタンと扉を閉め、ベッドに寝転ぶ。

 

「パーティーかー……」

 

大人数でパーティーなんか初めてだ。

 

そもそもパーティー自体初めてなんだけどね。

 

「”ぱあちい”とは、ようするに宴(うたげ)の事だろう?おいしい料理がでるのかな?」

 

イヅナちゃんは尻尾をブンブン振っている。

そして、あっと何か思い出したように声をあげた。

 

「ガイも料理をつくろう!」

 

 

 

 

 

翌日の朝、僕とイヅナちゃんは一夏と篠ノ之さん、セシリアさん達と朝食を採っていた。

 

セシリアさんは、あの試合後からすごく変わった。

今まではつんけんとして自分を相手より上に見るような態度を取ってクラスから浮いていたけど、あれ以来物腰が柔らかくなりクラスにも馴染んでいた。

うん、その柔和な笑みや物腰は未亡人を彷彿とさせるね。

 

喪服着てる未亡人てエロいよね!

 

つまり、セシリアさんはエロい!

 

まあそれはさておき、その試合の一件でセシリアさんは一夏を認めたようで、なにやらライバルのような関係になっている。

で、そんなライバルを育てようとセシリアさんは一夏にあれこれ口出ししたりしてる。

最近は、放課後にほぼ毎日行われている一夏の訓練にも参加しだし、篠ノ之さんとギャーギャーと言い合いする始末。

篠ノ之さんはどうやらセシリアさんが一夏に惚れてると勘違いしてセシリアさんに突っかかるんだけど、セシリアさんはそんな感情など一切なく、でも篠ノ之さんに否定するでもなく、意味深な発言や行動をワザと繰り返したりして篠ノ之さんをからかっているのだ。

 

「箒さんを見ていると初々しくて面白くて、ついついからかってしまうのですわ」

 

とは、セシリアさん談。

……セシリアさんや、あんた篠ノ之さんと同い年でしょう?

なんでそんな達観した、年上が年下をからかうような行動とるのかね?

ますます未亡人にしか見えませんよ?

 

あのクラス代表決定戦以降、何故か僕を神格化しており、最初は本当に「凱様」とか「我が主」とか言ってたのだ。

マジで勘弁してほしいと土下座したらやめてくれたけど。

その土下座の時、密かにスカートの中を見たのは僕とみんなの内緒だぞ!

 

で、そんなセシリアさんは、毎日一夏の特訓を終えると僕と軽く模擬戦を行うのが日課となっている。

セシリアさんはものすごく努力家で、いつもの優雅な姿とは真逆の、泥だらけの姿で地面に這いつくばり、立てなくなるまで僕に向かってくる。

結果、いつもセシリアさんの気絶で模擬戦が終わるのだけど、はっきり言ってこんなギリギリなことを毎日していて、セシリアさんの体が心配になってくるのだけど、セシリアさん曰く「体は人より丈夫」だそうだ。

……本人がそう言うならそうなんだろうけど、僕が気が気ではないので、イヅナちゃんに頼んでセシリアさんの疲労回復、新陳代謝促進の術をかけてもらっているし、ついでに僕がマッサージもしている。

決してセシリアさんの体を触りたいからとか、あわよくばおっぱい触ったりとかそんな下心なんか一片もなく、純粋に疲労回復のためだぞ!

 

そのおかげか、最近のセシリアさんは凄くお肌のつやが良く、毎日機嫌が良い。

 

「ねえ一夏、今日の夜はクラス代表就任パーティーだよね」

 

「え?ああ、そうだな」

 

なんとも覇気のない返事。

あまりうれしくないのかな?

 

まあいいや。

 

「それでなんだけど、僕もお祝いとして料理を作ろうかと思ってるんだー。何食べたい?」

 

言うや、ガタンと席を立ち上がる一夏。

なんでそんなに真剣な顔になってるの?

 

「マジか」

 

「うん、イヅナちゃんも久々に食べたいって言ってるしねー」

 

「うむ、品目の一つは我の大好物、いなり寿司が決定してるんだぞ!」

 

「俺は肉じゃがが食べたい!やべー、めちゃくちゃ楽しみになってきた!」

 

先程とは一転、ニコニコ顔の一夏は「お、この沢庵うめー!」とがつがつご飯を食べだした。

 

肉じゃがね、ふむふむ。

 

その変わりように、篠ノ之さんとセシリアさんはポカーンとしていた。

 

「なあ一夏?百瀬の料理は、その、美味いのか?」

 

おずおずと一夏に聞く篠ノ之さんに、ピクリと耳を動かすセシリアさん。

 

「当然だ!モモンガーの料理には『愛』が詰まってるんだぜ!」

 

「……?」

 

声高らかに絶賛する一夏だけど、その答えがよくわからなかった篠ノ之さんとセシリアさんは首を傾げていた。

 

楽しく話をしながら朝食を採っていると、寮長の織斑先生が食堂に見回りに来た。

 

今日も上下白のジャージという出で立ちだ。

相変わらず凛々しくお美しいですね。

 

いつもいつも大変だなー。

 

 

 

 

ああ、ついでに聞いてみるか?

 

「織斑先生おはようございますー」

 

「ああ、おはよう」

 

少し微笑む織斑先生。

 

「えーと、今日の夜一夏のクラス代表就任パーティーを行うんですがー」

 

「ああ、聞いている。私は参加しないぞ。お前達だけで楽しめばいい。だが、あまりハメをはずすなよ」

 

ううむ、家ではだらしない姿が嘘のようなキッチリした返答だ。

 

「それでですねー、僕も料理を作って一夏をお祝いしようかと思いましてー」

 

「……なに?」

 

ピクリ眉を動かす織斑先生。

ちょっと睨まないでください。

 

「織斑先生は何か食べたい料理ありますかー?何なら作ってお持ちしますけどー?」

 

「本当か?」

 

……織斑先生、今度は打って変わって目がキラキラしてますよ。

 

「ふむ……」

 

真剣に考え込む織斑先生。

そんなに食べたい料理がいっぱいあるのか?

 

「昼までには考えておく。それでいいか?」

 

「あ、はい、いいですよー。仕込みなんかも昼休みからなら十分間に合いますしー」

 

そう言うと、ぶつぶつ呟きながら歩きだす織斑先生。

あれ、見回りは?

 

「うーん……ニンジンが……いやしかし……ピーマンも……ううむ……」

 

聞こえてますよ織斑先生。

 

 

 

 

 

 

四月も下旬、まだ朝は肌寒い。

 

僕達一年一組は、アリーナに整列していた。

ISの実践訓練の授業だからだ。

 

ううむ、しかしこのISスーツのけしからん具合はなんとかならないだろうか?

女の子全員がスクール水着みたいなぴっちり体にフィットしたスーツを着ているのだけど、性質が悪いのが全員美少女と言っても過言ではないということだ。

そんな水着みたいな姿の美少女集団が恥ずかしげもなく、僕達に惜しげもなく鍛え上げた肉体を曝す……

 

彼女達のお尻が!

 

発育途上の胸が!!

 

腰のくびれが!!

 

青少年の僕達には劇薬ですよ!!

一夏、頑張ろう!

頑張って煩悩退散だ!!

下半身に集まりつつある血液をなんとか発散させないと、とんでもないことになるぞ!!

 

僕達の前に立つジャージ姿の織斑先生が全員に聞こえるように言う。

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、そして百瀬。試しに飛んでみせろ」

 

「じゃあいこうか、イヅナちゃん」

 

「うむ!」

 

僕とイヅナちゃんは融合した。

 

 

 

そしてその姿を見てきゃーきゃー騒ぎ出すクラスメイト達。

 

 

「相変わらず反則的な可愛らしさね!」

 

親指をぐっと立てるクラスメイト達。

 

ああ、鼻血鼻血、垂れてるよー。

 

篠ノ之さん、その捕食者のような目が怖いです。

 

セシリアさん、また「ああ……キュートな我が主……」とか言いながら首輪を持ち出してハアハア言うのやめてください。

この人首輪を量子変換化して、いつでも出せるようにしてるよ!

なんつー無駄なことを……

 

 

 

気を取り直して、セシリアさんはすぐにISを装着した。

本当に一瞬だ、すごい!

 

一夏はなにやらもたついていたが、なんとかISを装着できた。

 

「よし、飛べ」

 

織斑先生に言われた瞬間、僕とセシリアさんはほぼ同時に急上昇し始める、少し遅れて一夏も上昇するけど、速度は僕達二人よりもかなり遅くて若干ふらふらしてる。

スペックというか、リミッターがかけられているとはいえ終極因使の僕の方が基本能力は上なのでセシリアさんより先に行く。

そしてある程度の高さに到達すると停止して、セシリアさんと一夏を待つ。

 

「やはり、お速いですわね。さすが凱さん」

 

セシリアさんが尊敬の眼差しで僕に話しかけてきた。

 

「イヅナちゃんのおかげだよー。セシリアさん」

 

「いいえ、ゼクスファクターというのもありますけれど、結局は使う人間の腕、センスです。自信をお持ちください、凱さん」

 

「ありがとー」

 

「い、いえ……」

 

照れとる照れとる。

 

「モ、モモンガー……早すぎだ!」

 

遅れて来た一夏は僕に文句を言う。

まだふらふらしてる。

 

「何をやっている。スペック上の出力では白式はブルー・ティアーズよりも上なのだぞ」

 

一夏は織斑先生にお叱りを受ける。

急上昇と急降下は基礎だから入学前に勉強したんだけど、一夏はまだ飛ぶというイメージがつかめていないようだ。

 

「う~ん、やっぱ飛ぶって感覚がいまいちだな、角錐を前面にイメージって……。二人共、なんかコツみたいのはないのか?つーか、大体これなんで飛んでるんだ?」

 

「なんでって……ISってそういうものでしょ?」

 

『我は飛べて当たり前だから、何故飛べるかという疑問がそもそもわからないぞ。お前は何故息をしているのかという質問と同じだな』

 

「―――と、イヅナちゃんも言ってるけど?」

 

イヅナちゃんがプライベート・チャネルを使って一夏に言う。

ん?念話とどう違うんだ?

 

イヅナちゃんは僕と融合すると、意識が溶け合うというか、共有するというか、まあお互いの考えが大体わかるようになる。

”大体”だから、表面的な思考だけである。

深層まで読まれたらプライバシーもへったくれもないからね。

だからなのか、融合するとイヅナちゃんは無口になる。

セシリアさんとの試合のときなんて一言もしゃべらなかったしね。

 

「身も蓋も無いな……」

 

がっくり落ち込む一夏。

 

「そうですわね……。やはり所詮イメージはイメージ、自分が一番やりやすい方法を模索する方が建設的だと思いますわよ、一夏さん」

 

「ん~……、と、いわれてもな~」

 

一夏は眉をひそめてポリポリと頬を掻く。

ISの手で頬をかいて、痛くないのかな?

あんな尖った指先で……突き刺さるよ?

 

「そもそも何で浮くのかよく分からないんだよなー、俺。モーターの音とかしないし、風とかないし……」

 

白式の翼状パーツを見て呟く一夏。

翼も言ってみれば飛行には関係ない、言うなれば飾りだからね。

 

「説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

「わかった、結構です」

 

「まあ、否が応にも覚えるよ。なにせ基礎中の基礎だからねー」

 

「……まじか」

 

聞くや顔を青くする一夏。

これからの苦難を想像したのだろう。

がんばれ一夏、出来るだけ手伝うから!

 

「一夏さん?よろしければわたくしが教えてさしあげますわよ?」

 

『一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りて来い!』

 

セシリアさんがにこやかになにか言おうとした時、篠ノ之さんが山田先生から奪ったと思われるインカムで通信を入れてきた。

山田先生はアウアウと慌てている。

先生なんだからもっと毅然とした態度とらないと。

そしてもっとおっぱいをどーんと張らないと!!

 

一方セシリアさんは会話を邪魔され少しムッとしたが、嫉妬に怒る篠ノ之さんを見てクスリと笑う。

 

「織斑、オルコット、百瀬、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10センチだ」

 

10センチ……また難しい指示を……

 

「了解です。では一夏さん、凱さんお先に」

 

セシリアさんはそう言って地上に向かって急降下し、キッチリ地表十センチのところ完全停止した。

すごいなー。

 

仕方ない、僕もやってみよう。

 

『大丈夫だ、我が助言する』

 

イヅナちゃんは頼もしいね!

 

「よし、じゃあ行きまーす」

 

 

 

『風神槍!』

 

 

 

風の力を使い、急加速する

 

地面がみるみる近くなってくる。

 

 

これこのまま地面にぶつかったら痛いだろうなー

 

『よし、今だ!』

 

 

 

『風神槍!』

 

 

 

イヅナちゃんの合図で、逆噴射の要領で地面に向けて風神槍を使った。

 

土煙が巻き上がり、風神槍の影響ですこし地面がえぐれたけど、なんとか出来たぞ!

 

はー、コエーよー!

 

「まだまだ甘いな。30センチは離れている。もっと精進しろ」

 

「……はいー」

 

織斑先生厳しいっす!

 

「な、なあ百瀬?」

 

いつの間にか僕の隣にいた篠ノ之さん。

 

若干顔が赤いですよ?

 

「その……お願いがあるのだが……」

 

おや、なんだろうか?

篠ノ之さんのお願いとはめずらしい。

 

「その、だな……尻尾を……触らせて欲しいんだが……」

 

俯きモジモジする篠ノ之さん。

 

「!!」

 

それを聞いてキュピーンと目を光らせるクラスメイト達と先生達。

……え、織斑先生、あなたもですか?

 

「ほ、箒さん!?そ、そそそそそそんな恐れ多いことを!なんという恐ろしく、羨ましく、そして魅惑的な提案を!?恐ろしい!わたくし、あなたが恐ろしいですわ!!」

 

ハアハア言いながらセシリアさんは再び首輪を手に持つ。

……セシリアさんの発言は無視しよう。

 

まあいいや。

とにかく、そんな事か。

それならばお安いご用だ。

 

でもいい機会だから、こちらから条件を出そう。

 

「じゃあ、僕の事をこれからはモモンガーと呼んでくれたらいいよー」

 

「わかったモモンガー!」

 

「早っ!?」

 

即答だ!

 

そんなに尻尾が触りたいのか……

 

「じゃあ、はい、どうぞー」

 

僕はお尻をクリッと篠ノ之さんに向け、尻尾をフリフリと揺らす。

 

はうっと変な声を出しながら、恐る恐る手を出し、尻尾を触る篠ノ之さん。

 

 

 

そして触れた途端、凛々しい顔が崩れた!

 

 

 

へにゃへにゃになった!

 

わっ、すげーだらしないよ篠ノ之さん!?

 

それヒロインの顔じゃない!

NGNG!!

 

 

 

「はうぅ~、もふもふ~~♪」

 

尻尾にほお擦りする篠ノ之さんはものすごく幸せそうだった。

 

でも……くすぐったいよ!

 

「~~~あっ!やんっ、く、くすぐったいよ篠ノ之さん」

 

「っ!?あ、ああ、すまん!」

 

我に返り、ハッとする篠ノ之さん。

でも尻尾は離してくれない。

 

ん?

 

クラスメイト達がまた鼻血を出しているぞ?

 

「モ、モモンガー。これからは私の事も箒と……いや、箒”お姉ちゃん”と呼んでくれ!」

 

「箒さん!?なんて恐ろしい人!!」

 

……

 

………なんでお姉ちゃん?

そしてセシリアさん、テンション高すぎ。

 

まあ、それくらいいいけどね……

 

「わかったよー、箒お姉ちゃん!」

 

 

 

ズキューーーン!!

 

 

 

「ぐはあっ!」

 

「あふうっ!」

 

「はあぁんっ!」

 

吐血してのけ反る箒お姉ちゃんとクラスメイト達。

 

「箒さん!次はわたくし!わたくしですわよ!」

 

セシリアさん、あんた本当に変わったよ……おかしな方向に。

 

織斑先生と山田先生も口を手で押さえてプルプル震えている。

山田先生、鼻血だだ漏れですよ。

 

……最近の女の子は血が有り余ってるのか?

鼻血とか吐血とか、体大丈夫なのかな?

 

すると、急に箒お姉ちゃんは涙を流しなら僕を抱きしめた。

 

顔に箒お姉ちゃんの学年屈指のおっぱいが!

 

おおう、すばらしい双丘ですね!

 

ふかふかで極上です!

でも息ができない!

 

苦しい!

 

けど本望だ!!

 

 

 

「モモンガー!お姉ちゃんが立派な侍に育ててやるからなー!」

 

 

 

……うん、意味がわからん。

 

なんだこのカオス?

 

 

 

 

そして着地に失敗してグランドに穴を空けた一夏は完全スルー。

 

 

 

一夏の空気化マジパネェ。

 

 

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