放課後
いきなり放課後だけど気にしない。
さて、今日の授業も終わった。
本来なら箒さんやセシリアさん達と共に一夏の特訓を手伝ったり、自分の訓練をしたりするのだけど、今日はお休み。
なぜなら、今日は料理を作るから。
いやー、そういえば学園に入ってから作ってないなー。
ものすごく久しぶりな気分だ。
そして食堂のおばちゃん達の厚意によって、食堂の厨房を間借りさせてもらえることになった!
すげーでかい!
ピカピカ!
いろんな調理器具が取り揃えられている!
すごく立派なもんで、イヅナちゃんもポカーンとしている。
なんか楽しくなってきたぞー!
僕は昼休みに外出して買い出ししてきた材料を広げる。
油揚げ、牛ミンチ、豚ミンチ、玉葱、じゃがいも、ニンジン、糸コンニャク、アスパラなどなど。
ご飯は厨房のを使用して良いと許可をもらった。
ありがとうございます。
「よし、がんばるぞー!」
フンスと鼻から息を吐き、腕まくりする。
「おー!」
イヅナちゃんも襷(たすき)で袖をまくり、やる気満々だ!
「じゃあ最初はいなり寿司の下ごしらえからねー」
「うおおおーーっ!!」
……イヅナちゃん、テンション高すぎ。
「織斑君、クラス代表就任おめでとー!」
それが合図となってクラッカーがパンッパンッと渇いた音を出す。
一夏の隣には箒さんが陣取り、さらにそのまわりを他の女子が囲んでいる。
今は夕食後の自由時間、場所は食堂。
一組のメンバーは全員揃っていて、それぞれ飲み物を手に盛り上がっていた。
壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書かれたデカイ紙が。
実際のところ、皆パーティという名目で騒ぎたいんだと思う。
「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」
「ほんとほんと」
「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」
「ほんとほんと」
さっきから「ほんとほんと』とだけ言ってる人、たしか二組だったはず。
何でここに居るんだ?
皆騒ぐのが好きなんだなー。
テーブルの上にはお菓子の山と、ジュース。
皆の部屋から持参したものばかりだ。
そんな中で異色を放つテーブルがひとつ。
それが僕の座っているところだ。
テーブルの上にはスナック菓子などは無く、代わりにあるのはいなり寿司の山と鍋に入った肉じゃがである。
同じテーブルにいる女の子達も、僕の料理に興味津々だ。
ちなみに、セシリアさんは僕の隣にいる。
セシリアさんも、和食がめずらしいのかテーブルの上の料理をまじまじと見ている。
「これがジャパニーズフードですか……香ばしい匂いですわね……」
鼻を可愛らしくひくひくとさせ匂いを嗅ぐ姿は、淑女ではないよね。
「ガ、ガイ~、まだだめなのか~?」
涎を垂らし、涙目のイヅナちゃんはいなり寿司を食べるのに今か今かと待ちわびている。
「まだダメ。一夏が来てからね」
「ぬぐ~!おい一夏、早く来い!!」
イヅナちゃんは大声で一夏を呼ぶが、当の一夏はきゃいきゃいと騒ぐ女の子達に囲まれ聞こえていない。
どうやら新聞部の二年の先輩が一夏に取材を持ちかけているようだ。
しかし、おあずけを食らったイヅナちゃんの顔も……いい……
「ねえモモンガー、私達もコレ食べていいの?」
鷹月さんが遠慮がちに聞いてきた。
「うん、ぜひ食べてよー!沢山作ったからねー。でも一夏が来てからねー」
「よーし、私おりむー連れて来るー!」
袖が長く手が見えないが、右手を頭に持って行き敬礼する布仏本音(のほとけほんね)さん、あだ名は”のほほんさん”。
ぽわぽわな雰囲気の女の子だ。
何故か最近僕の近くにいる事が多いんだけど、まあ友達が増えたってことでいいか。
それにより、何故かセシリアさんがすごい勢いでのほほんさんを睨むのだけど、勘弁して欲しい。
みんなクラスメイトなんだから、仲良くいこうよ。
「がっきーの料理が私を強くするのだー!」
トテトテと歩き両手をブンブン振るのほほんさん。
ううむ、動きがスローだ……
よくあんなスローな動作でIS学園に入学できたものだ。
……はっ、もしかして、これがあの有名な『裏口入学』か!?
時間がかかりそうな雰囲気だから、鍋の中の肉じゃがを温めなおしておこう。
ちなみに”がっきー”とは僕の事らしい。
「モモンガーもいいけどー、がっきーもいいよねー」
とか言ってた。
がっきー、凱(がい)だから”がっきー”……にんまりしてしまうネーミングだ……
とはいえ、がっきーはのほほんさんしか言わない。
一夏は”いっちー”とか呼ばれてたな。
まったく独特なネーミングセンスだ。
他の人はモモンガー、または百瀬君だ。
最近はモモンガー率が上がってきたので、モモンガー浸透が着々と進んでいる証拠である。
そんな事をひとりでニヤニヤしながら考えていると、パコーンと大きな音がした。
「早く来ないかバカモン!肉じゃがが冷めるぞ!」
イヅナちゃんは、のほほんさんが一夏を連れて来るのに時間がかかっているので、ついに我慢出来ずに一夏を呼びに行き、一夏の頭を叩いた音だったようだ。
イヅナちゃんって小さいのに意外と腕力あるんだよなー。
結構痛いんだよ、イヅナちゃんの攻撃。
叩かれた頭を押さえながらふらつきながら歩いて来る一夏。
まさか脳が揺らされたのか!?
「イテテ……悪かったって、イヅナちゃん」
「ふん!小娘共を侍(はべ)らせ鼻の下を伸ばしおってからに!小娘よりガイの料理を優先せんか!!貴様のためにガイが腕によりをかけたのだぞ!!」
「―――!……ああ!そうだな!その通りだ、俺が間違ってたぜイヅナちゃん!!」
「わかればよいのだ一夏!!」
ガシッと固く握手をする一夏とイヅナちゃん!
胃袋の友情……素晴らしい!
「あ!君がゼクスファクターの百瀬君だね!」
新聞部の先輩が、今度は僕に矛先を向けてした。
「あの織斑先生公認の『学園最強』の百瀬君にも一言もらいたいなー!」
あ、これ名刺ねー、と手渡された。
黛薫子(まゆずみかおるこ)
ううむ、小さく書いたら字がつぶれて読めなさそうな名前だな……
……しかし、どうやら織斑先生の『百瀬に勝てる者はこの学園にはいない』発言は瞬く間に学園に広まったらしい。
しかも都合よく『生徒会長も……微妙か……?』というフォローを抹消して、だ!
いや、この言葉が入ってもあまり変わらないかもしれないけど、それでも正確に伝えてほしい。
その中でも『生徒会』がなにやら僕との接触を試みているとのほほんさんが言っていた。
生徒会の長
つまり学園の生徒会長は、IS学園では『最強』の称号を持つものがなれる職なのだそうだ。
ISで最強が一番
強いものが頂点
頂点とは、つまり生徒会長
わかりやすい図式だ。
ようするに、『番長』!
IS番長だな!!
実際生徒会長を見たことはないけど、一年のひよっこがぽっと出て自分を差し置いて最強なんて言われたらそりゃあいい気はしないだろう。
……近いうちに体育館裏に呼ばれるかもしれない……
たすけてー!
だれかたすけてー!!
「じゃあ最強と言われた百瀬君、一言どうぞ!!」
ずいっとボイスレコーダーを僕に向けてくる先輩。
「……お願いしますから、『一年生意気なんだよ』とか言って体育館裏とかに呼び出さないでください」
90度腰を折り曲げて頭を下げる!
「……君は何に怯えてるの?」
黛先輩は引いていた。
黛先輩が去り、一夏が僕のいるテーブルに来たので、温めなおした鍋に入っている肉じゃがを器によそり渡す。
「はい、どうぞー」
「おお……約一週間ぶりのモモンガーの手料理……」
涙を浮かべる一夏。
え、そんなに感動するの?
「じゃあ、いただきます!」
勢いよく合掌し箸でじゃがいもを掴み口に入れた。
「~~~っ!うめぇ!」
何処かの味の王様みたいに立ち上がり咆哮する一夏。
こら、お行儀悪いよ、座って食べなさい。
「ああ……!ガイの手作りいなり寿司!我、感激!」
イヅナちゃんもうまうまといなり寿司にぱくつく。
本当においしそうに食べるなあイヅナちゃんも一夏も。
いやあ、作った甲斐があったよ!
その後、まわりで食べたそうにそれを見ていた子達にも肉じゃがを振る舞った。
いなり寿司はイヅナちゃんが分ける事を断固拒否したため無し。
「おいしい!」
「ほんと、おいしいよ!」
「特に変わった味付けとかないのに、なんでこんなにおいしいの……」
「ま……負けた……」
驚愕する女の子達。
自分達女より上手く料理ができる僕に、少なからずショックを受けたようだ。
「なんと……これは……」
「まあ……」
箒さんとセシリアさんも肉じゃがを食べて驚いてる。
「美味さの秘訣はモモンガーの”愛情”なんだぜ!!」
「……ああ~、なるほどー!」
一夏の言葉に、納得して頷く女の子達。
「新妻かお前は」
箒さんはなんか呆れたような目で僕を見ていた。
さて、そろそろ織斑先生にも料理を持っていくかな?