「おまえのせいだ!」
「なんでだよ……」
昼休みに入るなり、箒さんは開口一番一夏に文句を言った。
一夏もその理不尽さに呆れていた。
というのも箒さんは授業中に山田先生と織斑先生に教育的指導として出席簿を数度食らっていたからだ。
イヅナちゃんも呆れてため息ついてたよ。
「まあ、話なら飯食いながらでも聞くから。モモンガーも学食行こうぜ」
「りょーかいー」
「うむ!」
「む……ま、まあお前がそう言うのなら、いいだろう」
「そうですわね」
イヅナちゃんはご飯になると返事がいいな。
そして箒さんも若干機嫌が良くなった。
セシリアさんは一夏と箒さんのやり取りを見てクスリと笑い、着いてくる。
一夏、箒さん、セシリアさん、イヅナちゃん、僕と、いつもの5人とクラスメイト数名をぞろぞろ引き連れ食堂へ移動。
一夏と僕、イヅナちゃんは券売機で日替わりランチを購入した。
リーズナブルで毎日違うものが食べられる。
ありがたいことこの上ない。
ふむ、今日はカレイの煮付けですか……
いいですね!!
箒さんはきつねうどんでセシリアさんは洋食ランチ。
二人はしょっちゅうそれだ。
いろんなメニュー試したほうがいいと思うよ?
「待ってたわよ一夏!」
どーんと、僕たちの前に立ちふさがったのは件の転校生、凰鈴音さん。
「とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」
「う、うるさいわね。わかってるわよ」
一夏が凰さんを注意すると、凰さんはバツが悪そうに目をそらす。
そして手にはラーメンが鎮座しているトレイを持っていた。
「伸びるぞ?」
「う、うるさいわね。あんたを待ってたんでしょうが!何で早く来ないのよ!」
無茶言うなあ……
一夏もため息ついた。
「にしても久しぶりだな。ちょうど丸一年ぶりになるのか。元気にしてたか?」
「げ、元気にしてたわよ。あんたこ、たまには怪我病気しなさいよ」
「どういう希望だよ、そりゃ……」
一夏の周りにはどうしてこうアグレッシブな女の子が多いのだろうか?
ああ、一夏が情けないからか。
「あー、ゴホンゴホン!」
「一夏さん、注文の品が出来ましてよ?」
箒さんが不機嫌に咳き込み、セシリアさんも注意するが、一夏は凰さんとの話に夢中で気付いてなかったようだ。
「向こうの席が空いてるな。行こうぜ」
食堂のおばちゃんから料理を受け取り、空いていた席に座る。
「鈴、いつ帰ってきたんだ?おばさん元気か?いつ代表候補生になったんだ?」
「質問ばっかしないでよ。あんたこそ、何IS使ってるのよ。びっくりしたじゃない」
一夏と凰さんはお互いに自然といくつも質問を投げ掛けていた。
まあ、一年ぶりの再会のようなので、その空白期間が気になるのだろう。
「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」
「そうですわね、一夏さん、まさかこちらの方とは付き合ってらっしゃるのですか?」
箒さんはトゲのある声で、セシリアさんは興味津々といった感じで一夏に聞いてくる。
他のクラスメイトも興味津々とばかりに頷いていた。
僕とイヅナちゃんは特に詰め寄るほど興味もないので、聞き耳を立てながら黙々とカレイの身をほぐし、黙々と食べていた。
「べ、べべ、別に付き合ってる訳じゃ……」
「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼なじみだよ」
「………」
「?何睨んでるんだ?」
「なんでもないわよっ!」
一夏の鈍感スキルに、起こる凰さん。
食事は静かに採りましょうよ。
「幼なじみ…?」
怪訝な顔で箒さんが一夏に質問しそれに答える。
「あー、えっとだな。箒が引っ越したのが小四の終わりだっただろ?鈴はその後の小五の頭に転校してきたんだ。で、中二の終わりに国に帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな」
ほほう、そういう知り合いですか。
だから箒さんとは面識がなかったのか。
「んで、こっちが箒。ほら、前に話したろ?小学校からの幼なじみで、俺の通っていた道場の娘」
「ふうん、そうなんだ。初めまして、これからよろしく」
「ああ。こちらこそ」
そう言って挨拶を交わす二人の間に火花が散ったように見えた。
IS学園に入ってから、僕はついに幻覚を見るようになってしまったのだろうか?
一夏にもみえているようで、ごしごし目をこすっている。
だとしたら今日は早く寝よう。
日本人は働き過ぎで休み方を知らないとフランス人社長がテレビで言っていた。
「ンンンッ!わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん?」
「……誰?」
「なっ!?わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!?まさか、ご存じないの?」
「うん、あたし、他の国には興味無いし」
「なっ、なっ、なっ……!?」
言葉に詰まりながら顔を真っ赤にするセシリアさん。
ううむ、血圧が上がるとよろしくありませんよ。
僕はセシリアさんを宥めるためにポンポンと背中を叩く。
それに気が付いたのか、セシリアさんも落ち着き、一息吐いた。
「……言っておきますけど、わたくしはあなたのような方には負けませんわよ!」
「そ。でも戦ったらあたし勝つよ。悪いけど強いもん」
ふふんと言った調子の鳳さん。
妙に確信じみていて、しかも嫌味のない言い方をするなあ。
ああいう素でできたらかっこいいだろうなあ。
「言ってくれますわね……」
「………」
箒さんは箸を止め、セシリアさんは拳をわなわなと震わせている。
どうどう、落ち着きなさいってば。
セシリアさんはなんかプライドが高いのか、沸点が低いのか、すぐ怒るなあ……
これからの訓練にはそういう精神面も鍛えていこうかなあ?
一夏もさすがに不穏な空気を感じ取ったようで、これ以上空気が悪くなる前に話題を変えた。
「ま、まあ二人とも落ち着け。鈴、こいつは百瀬凱、あだ名はモモンガー。俺と同じISを扱える男子だ。」
「どうもはじめましてー。僕は百瀬凱、モモンガーって呼んでねー鳳さん」
第一印象は大事だ。
だから、僕はいつも以上の笑顔を向けた!
にぱぱーっとね!
「うおっ」
「うっ」
「はうっ」
「くっ、よ、よろしく……」
何故か一夏や箒さん、セシリアさんが顔を赤くした。
そして凰さんも声を詰まらせ挨拶してくれた。
「ちょっ、ちょっと一夏!なんなのこの小動物は!?すごく癒されるんだけど!?」
「ふふん、モモンガーはプラチナイオンを常時発生させてるんだぜ!!」
「うむ、その通りだ」
「まさしくその通りですわね」
小声でなにやら言っているが、僕には聞こえない。
「我はイヅナだ!よろしく頼むぞ、凰鈴音!」
イヅナちゃんが凰さんに挨拶をすると、今度は声もなく驚いていた。
そして、僕とイヅナちゃんの顔を交互に見て、なにやら納得していた。
「……なるほどね……あんたがZX-F・Mだったわけ……」
「ゼクスファクターエム?なにそれかっこいい」
僕は目をキラキラさせた!
でも、凰さんはそのことについて話すつもりはないようで、再び一夏に顔を向けた。
ちぇっ。
「ねえ、一夏、あんたクラス代表なんだって?」
「まあ……成り行きでな……」
「ふーん……。ね、ねえ。あたしがISの操縦訓練付き合ってあげようか?」
凰さんは一夏との接点を作るのに必死だ!
でも、代表候補生だから学ぶ点は多そうだなあ。
一夏も乗り気だ!
「そりゃ助かる……」
ダンッ!
「一夏に教えるのは私の役目だ。一夏に頼まれたからな」
「これは一組の問題ですわ。二組が出る幕はありませんわよ」
「あたしは一夏に聞いてるの。あんたたちは黙ってて」
全員が全員一夏の名前を強調する。
モテモテだね、一夏?
思わず嫉妬しちゃう!
……まあ、そこまでうらやましいとは思わないけど。
「それもだけどさ、一夏、今日は放課後予定空いてる?久しぶりにどこか行こうよ。ほら、駅前のファミレスとか」
「あそこ去年潰れたぞ。……あ、ていうか今日はモモンガーと模擬戦があるんだったな」
「そうだぞ。私との特訓もあるからな」
「そうですわ。クラス対抗戦に向けて特訓が必要ですもの。専用機持ちの私も参加させていただきますわ。……それよりも凱さん?一夏さんとの模擬戦とは?わたくし、何も聞いていませんが?」
待って一夏にセシリアさん、箒さんやセシリアさんの特訓はともかく、僕との模擬戦は初耳なんだけど?
だから、そんな口を三日月のように歪めながら笑ってない目で僕を見ないで!!
勝手に人の予定を決めたらイヅナちゃん怒るよ?
「おお、そういえばそうだったな。あの約束は今日だったか。以前一夏が我にお願いしてきたのだったな、忘れておったわ。よかろう、特別に一夏を足腰立たない、人間の原型を留めない塵芥にしてやろうではないか、なあガイ?けけけけけけけ!」
なんと犯人はイヅナちゃんだった!
でも、その笑い方……悪そう……
そして、塵芥という単語を聞いて、一夏は顔を真っ青にした。
箒さんとセシリアさんも苦笑いしてるし。
「……ごめん、モモンガーとの模擬戦はなしで……」
「ふん、自分の力量を弁えんからだ。ばかもんが」
「うう……言い返せない……」
イヅナちゃんのジョークだったようだ。
でもジョークに聞こえなかったなあ……特にあの悪そうな笑いが……
一夏が落ち込んだ。
「じゃあそれが終わったら行くから、空けといてね。じゃあね、一夏!」
食べ終わった食器を片付けて食堂を出ていってしまった凰さん。
すごく強引な女の子だなあ。
「一夏、特訓が最優先だからな」
「私たちの有意義な時間も使っていることもお忘れなく」
まさに前門の虎後門の狼、四面楚歌だね、一夏!
まあ、モテモテの有名税だと思ってあきらめなさい。