僕が束さんの所に来て二週間ほど経った。
その間にこの世界の一般常識や、ISの知識を覚えていった。
そのお礼として、というか役割というか、家事は僕が担当した。
束さんは家事能力が皆無というか無頓着のようで、部屋にあるのは機械とゴミ、洗濯していない服や下着、台所で異臭を放つ何日放置されたのかわからない多数のインスタント食品の残骸……
そういえば初めて会ったときも、身なりはきれいだったけど、若干臭ったなあ……
後で聞いてみれば、1週間風呂に入っていなかったとか。
変態寄りの天才は、いわゆる『片付けられない女』だったのだ。
そして幸いにも僕には家事能力が備わっていた。
テキパキと動く体に自分で驚く。
綺麗になっていく部屋を見て、僕は楽しくなってくる。
さらに料理の腕も中々のものだった。
自分で作った料理が美味い。
イヅナちゃんもホクホク顔で僕の料理を食べてくれるし、束さんも喜んでくれた。
僕の料理で喜んでいる顔を見るのは嬉しい。
因みにイヅナちゃんが好きな料理は『いなり寿司!というか油揚げ料理全般!』、束さんは『がーくんの作ったもの全部!』だった。
そんななか、僕とイヅナちゃんの間にもちょっとした変化が。
「なあガイよ」
「なに?イヅナちゃん?」
「……その、我は紲晶石の魂獣だ。紲晶石はガイと契約した。つまり、ガイは我の主だ」
紲晶石とは、『神羅万象の神が管理する世界』つまりイヅナちゃんのいた世界の秘宝らしく、まあとにかくすごい力を秘めた石なのだそうだ。
それこそ神の領域を侵すような力を秘めているらしい。
神の領域とか恥ずかしいな……
ともあれ、それがこの世界ではISのコアのカテゴリに当て嵌まるという。
厳密に言うとところどころ違うらしいのだが、まあそこはあの変態寄りの天才束さんが作ったもの、『わりと似ているからISでいいんじゃない?』とのこと。
事実、僕がこちらの世界にあるISに触れたらしっかり反応したから、似ているといえるだろう。
この時、束さんは「ホントに起動した……」と呟きながら驚いていたのが印象的だった。
じゃあ、この世界のISもそんな物騒な物なのかといえば、そうでもない。
軍事利用しようと思えばいくらでもできるが、なんたら条約とやらのおかげでISはスーパーテクノロジーを積みながらも、スポーツとして昇華している。
さらにいうなら、イヅナちゃんの力はとんでもなく強大らしい。
「ふん、あんな獣人族が作った物ごとき、我の足元にも及ばん」
とはイヅナちゃん談。
実際、僕とイヅナちゃんが融合、こちらの世界でいうIS装備をした時の力を束さんに計測してもらったら、あまりの規格外の力に計測不能だった。
「これが机上の空論の……」
そうつぶやきつつ、イヅナちゃんと僕の融合に驚き、束さんの研究魂に火を点けたのか、イヅナちゃんのドヤ顔がショックだったのか、部屋に篭って研究を始めてしまい四日間不眠不休、飲まず食わずで干からびて死ぬ手前だったのはいい思い出だろう。
話しを戻そう。
「ああ、そうなの?」
「そうなのって……相変わらず軽いなガイは……まあ、それでだ!主であるガイが我をちゃん付けで名前を呼ぶのは些かまずくないだろうか?」
そうかな?
人それぞれだと思うけどなー
「別にまずくないんじゃない?イヅナちゃんでいいと思うよ僕は。イヅナちゃんかわいいし」
「か、かわ……!?ええい、いいからこれからは我をイヅナと呼び捨てにするのだ!!」
「えー?難しい注文するなー。まあ善処するよ」
「う、うむ、頑張れよ我が主ガイ!」
……で、頑張ってはいるが未だに呼び捨てできない僕。
だってイヅナちゃんかわいいから呼び捨てとかしたくないっていうかー、まあ最近はイヅナちゃんも諦めつつあるようだけど。
そんなこんなで僕は束さんからISについて学び、イヅナちゃんと融合して訓練したり、家事をこなしたり、イヅナちゃんと束さんの鬼ごっこを止めたりと、わりと毎日忙しくしていた。
因みに、僕とイヅナちゃんの融合した姿はこちらのIS装備の姿とは一線を画していた。
IS装備とは基本的に武装だ。
機械を纏い、空を駆け、武器を駆使する。
今世間では第二世代から第三世代へのシフトチェンジをしようという動きがあるが、それでも基本的な姿は変わらない。
でも僕とイヅナちゃんの融合は違う。
機械などは装備しないし、武器も刀一振りだけだ。
融合した姿は、簡単に言えば、僕とイヅナちゃんの特徴が合体したような感じだ。
九尾とケモノ耳が僕に生えたときは、そりゃもう驚いたよ!
そんな姿になった僕を、イヅナちゃん曰く、
終極因使 [ZX-F](ゼクスファクター)
というらしい。
カッコイイなあ……
余談だが、束さんが(何故か)持っていたIS『打鉄(うちがね)』を試しに装着したら、イヅナちゃんに「浮気者ー!!」と泣かれた。