「おお!声が聞こえた!」
思わず声を出してしまった。
ちゃんとISの声が聞こえたよ!?
「うそ!?な、なんて言ってるのよ!」
凰さんも驚いてる。
「えーと、私に話しかける貴方は誰?って言われたー」
「……ISの声を聞く……まさかホントに……」
ぶつぶつ呟く凰さんをひとまず置いといて、僕は凰さんのISと話しを進めた。
(我が主より先に貴方と話しをするとは思わなかったわ。とにかくはじめまして、私は『甲龍(シェンロン)』よろしく百瀬凱)
(……甲龍って書いてなんでシェンロンなの?)
(……さあ?わたしは中国の風俗や文化を理解していませんので、なんとも言えません)
(ふーん……で、なんで僕を知ってるの?)
(ISにはコアネットワークがあるから他のISと情報共有し合ってるのよ)
(なるへそー)
「へー、凰さんのISは甲龍って言うのかー。かっこいいねー」
「……あんた、本当にISと会話できるのね……」
だんだん凰さんの視線が厳しいものになってきた。
僕を危険視してるのかな?
まあ、あとできっちり説明すればいいかな。
(それで……ああ、我が主の怒ってる理由だったかしら?わかったわ、話します。実は……)
……
………
………うーん……
甲龍から話しを聞き終えた僕は複雑だった。
ようするに、凰さんは昔一夏にプロポーズしたのだそうだ。
『料理がうまくなったら、私の酢豚毎日食べてくれる?』と。
それを凰さんは覚えているか聞いてみたところ、なんと一夏は『ただ飯を食わせてくれる』と間違えて覚えていたのだとか。
あながち間違えてはいないと思うのだけど、凰さんはコレに激怒し、一夏をひっぱたきドアを蹴破って飛び出し、イヅナちゃんに殴られたというわけだ。
しかし……これは……
凰さんは、僕が首を傾げて考えているのが不安なのか、ソワソワしてる。
「凰さん」
「な、なによ」
僕の呼びかけにビクッと肩を震わせる凰さん。
そんなにビビらないでよ。
「男の観点から言うよ」
「……サッサと言いなさいよ」
クイズ番組で質題者が解答を出し惜しみするかのような待ちに、凰さんはイライラし始めた。
彼女は短気のようだ。
「……あの言い回しはわかりづらいと思うよ」
「えっ!?」
僕の答えが意外だったようだ。
すごくビックリしてる。
「ちゃんと約束を覚えてない一夏が悪いのはたしかだけど……一夏は日本人だから、『みそ汁』って単語を使えば察してたと思うよ?一夏みそ汁好きだし。でも……『酢豚』は……」
「う、うるさい!あの時ちょうど酢豚の練習してたのよ!!」
凰さんはガーッと吠えるように反論、もとい言い訳する。
そして、イヅナちゃんは僕と凰さんのそれだけの会話で大体理解したようだ。
イヅナちゃんすげー!
「ほほう?つまり、小娘は一夏に『料理が上手くなったら、私の酢豚食べてくれる?』とかほざいたのだな?」
「ぐっ!な、なんで一言一句間違ってないのよ!?」
イヅナちゃんの推理に驚愕する凰さん。
凰さん……あなたは犯人にはなれない性格だ。
だって、核心つかれたら自分で白状しちゃうから。
「小娘はなけなしの勇気を振り絞ったんだな~。そうか~酢豚か~けけけけけけ!」
「わ、笑うなチンチクリン!!」
「けけけけけけ!聞こえんな~!けけけけけけ!」
……悪そうな笑い方するな……イヅナちゃん。
「まあ、それはともかく、凰さんは一夏と何年か一緒にいたんだから、一夏が超鈍感で、ストレートに言わないとわからない人間だって知ってたんじゃないの?」
「うっ!?そ、それは……」
怒ってた凰さんは、途端にモジモジし始めた。
言いにくいことか?
「小娘はその薄っぺらい胸板ほどの勇気しか出せんかったんだよ!けけけけけけ!」
「ぐうっ!あ、あんたねえ……いい加減に……」
笑い続けるイヅナちゃんに、とうとう凰さんの堪忍袋の尾が切れそうだ。
ふむ、イヅナちゃんも調子に乗りすぎかな?
「イヅナちゃん、言い過ぎ。メッ!」
僕はイヅナちゃんを叱った。
腰に手を当て、人差し指を立てて注意する。
それを受けてイヅナちゃんは、ガーン!とショックを受けたように固まってしまった。
「そんな悪い子はもういなり寿司作ってあげない!メッ!」
「ガーン!!」
今度は口でガーンと言ったイヅナちゃん。
「ゆ、許してくれ~ガイ~!我が悪かったから、どうか!どうかいなり寿司だけは~!!」
泣いて僕に懇願するイヅナちゃん。
ううむ、かわいい……
「じゃあ、凰さんに謝って、ね?」
「う、うむ。すまなかった凰鈴音。我が調子に乗りすぎた。許してくれ」
イヅナちゃんはペこりと頭を下げ凰さんに謝る。
「い、いいわよもう。私も大人気なかったわ」
(うう……なんなのあの叱り方は!?メッて!?めちゃくちゃかわいいじゃない!!)
「まあ、僕からも一夏に注意しとくよ。約束はしっかり覚えておくようにってね」
あえて、言葉の裏を汲み取れとは言わない。
そこを諭しても意味はないからね。
自力で理解しないと。
おっと、これも言っておかないと。
「あと、甲龍に第二次形態移行しないか言ったんだけどー」
「えっ!?ど、どうだったの!?」
凰さんは体を乗り出し聞く。
一次移行と二次形態移行はかなりポテンシャルに差があるから、気になるのも仕方ないかな。
でも残念なことに、凰さんにより良い答えは言えないのだ。
「甲龍に断られちゃった」
「え!?なんでよ!?」
僕に怒らないでください。
「うーん、甲龍が言うには、凰さんはまだ第二次形態移行に耐えられないからだって」
「………」
「それに、僕に頼らなくても、凰さんは自分で第二次形態移行できるからって」
「ふむ、甲龍に愛されとるな凰鈴音」
にやにや顔で凰さんを見るイヅナちゃん。
まあ愛されてるというのはその通りだと思う。
甲龍から話をきいてみても、すごく凰さんを気遣ってるのがわかったからだ。
「……っ!?ふ、ふん!当たり前よ!!アンタに頼らなくても第二次形態移行なんてすぐになってやるわよ!!」
照れ隠しでぷいっと顔をそらす凰さん。
ほほう、これがあの噂のツンデレですか……
というわけで、落ち着いたのを見計らい、凰さんは自分の部屋に帰った。
帰り際に「その……ありがと」とごにょごにょお礼を言ってきたのにときめいてしまった。
ううむ、おそるべしツンデレ!
あれ、でもツンデレって惚れた人に対してのものだよね?
凰さんが僕に好意を持っているなんて思えないし、ということはこの場合何になるんだ?
まあいいか、とりあえず明日一夏に注意することにしよう。
”人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死ね”ならぬ、”人の好意を悟れない奴は、馬に蹴られて死ね”とか言われかねないものね!
そこが一夏らしいっちゃあらしいんだけど。