IS - M・od   作:阪本葵

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第32話 禁句

 

 

あれから凰さんと一夏は話しをしていない。

 

一方的に凰さんが一夏を避け、不機嫌オーラを撒き散らしているのだ。

 

一夏も、自分は悪くないと意固地になっている。

 

 

そして、ついに事件は起こった。

 

 

 

 

 

今日も一夏は訓練のため第3アリーナへ向かう。

いつものメンバー、箒さん、セシリアさん、僕と共に。

 

クラスメイト達のテンションは落ち着いてきたようで、一夏に質問攻めするのは少なくなってきた。

それでも学園全体ではまだまだ持ちきりな話題だから、今日もアリーナの観客席は満員御礼だろう。

 

僕はあまり多くの人に見られて練習とか恥ずかしいから嫌なんだよなあ……

 

そういえば、その観客席を『指定席』として売り出していた二年生がいたのだけど、織斑先生が制裁を下していた。

 

「IS操縦もようやく様になってきたな。今度こそ―――」

 

「まあ、わたくしが訓練に付き合っているんですもの。このくらいは出来て当然、出来ないほうが不自然というものですわ」

 

「ふん。中距離射撃型の戦闘方法(メソッド)が役に立つものか。第一、一夏のISには射撃装備がない」

 

実際一夏のIS『白式』には射撃武器がない。

『雪片二型』だけである。

ふつうISというものは機体ごとに専用武器を持っているものだ。

でも、その『初期装備』だけでは不十分なので『後付装備』というものがある。

セシリアさんのISでは初期装備はブルー・ティアーズ、後付装備はライフルと近接ナイフという感じだ。

そしてISは後付装備のために『拡張領域』が設けられている。

装備できる量は各機のスペックによるが、最低でも二つは後付けできるようになっているものが一般的なISだ。

でも一夏のIS白式は違う。

拡張領域ゼロ。

しかも初期装備は書き換えられないので、結局近接ブレード一本というのが一夏のISのスペックなのだ。

 

逆に考えれば、雪片二型はそれだけ容量を食う装備であり、イコール強力な武装であるということだ。

事実、雪片二型はISの武装の中では最強に部類されるほどの攻撃力を有している。

 

詳しい話は飛ばすが、雪片二型には特殊能力『バリア無効化攻撃』というものがある。

相手のバリア残量に関係なく切り裂いて直接ダメージを与えられるという反則紛いな能力だ。

そうするとISの『絶対防御』が働きシールドバリアを大幅に削ぐことが出来る。

なんでも織斑先生がモンドグロッソとかいう世界大会で優勝したときに使用していた武器『雪片』にもその能力が備えられていたとか。

姉弟で同じ装備とは、仲良しな姉弟だなあ。

 

ただ、これは欠点があり、相手のシールドバリアを削ぐだけのエネルギーを確保するために、自身のシールドエネルギーも攻撃に転化してしまう。

よって、多用してしまうと相手より先に一夏のシールドエネルギーがゼロになってしまうのだ。

これが原因で先日のクラス代表決定戦で一夏はセシリアさんに後一歩というところでエネルギーがゼロになり負けてしまったのだ。

 

ようは使いどころなんだけど、一夏は直線型で一発大博打を打つ性格だから、すぐエネルギーをゼロにしてまうのだ。

最近は考えて行動するようになってすぐに落とされることはなくなったけど、まだヤケクソというか、一か八かの特攻をかける癖が直らない。

無意識の性格だから直すの難しいなあ……

 

普段はそんな博打を打つようなことはしないのに、何故かIS戦闘では博打を打ちたがる……難儀な性格だなあ……

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

箒さんとセシリアさんが言い合いをしながらアリーナのピットへ入ると何故か凰さんがいた。

不敵な笑みでふふんと鼻を鳴らし、腕を組んで立っている。

 

「貴様、どうやってここに―――」

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ!」

 

がるる唸るようにと箒さんとセシリアさんは凰さんを敵視していると、「はんっ」と挑発的な笑いと共に自信満々に言い切った。

 

「あたしは関係者よ。一夏関係者。だから問題無しね」

 

……まあ、そうなんだけど、なんか違うような……

 

「ほほう、どういう関係かじっくり聞きたいものだな……」

 

「盗人猛々しいとはまさにこのことですわね!」

 

うう……セシリアさんがキレた……怖い……

でもそれ以上に箒さんのぴくぴくと引きつった口元がさらに恐ろしい……

この静かな怒りはもう怖いの一言しかない。

 

 

超怖い。

 

 

と、僕がびくびくと震えだしたのを見た箒さんとセシリアさんは、ハッとしてコホンとひとつ咳払いをし怒りを納めてくれた。

 

 

「……で、一夏。反省した?」

 

「へ?なにが?」

 

「だ、か、らっ!あたしを怒らせて申し訳なかったなーとか、仲直りしたいなーとか、あるでしょうが!」

 

「いや、そう言われても……鈴が避けてたんじゃねえか」

 

「……」

 

百瀬!あんた一夏を諭すって言ってたでしょうが!!なんで変わってないのよ!?

 

……と、目で怒られてる気がした。

凰さん、僕を睨まないでください。

これでも一夏に諭したんだよ!?

でも一夏の鈍感レベルはもう異常な数値をたたき出すくらいなんだよ!?

 

「あんたねえ……じゃあ何、女の子が放っておいてって言ったら放っておくわけ!?」

 

「おう」

 

……うわあ……

さすがに箒さんやセシリアさんも凰さんに同情の眼差しを送ってますよ。

 

「なんか変か?なあモモンガー、変か?」

 

僕に賛同を求めてくる一夏。

僕を巻き込まないでよ。

 

「……その選択は時と場合によるよね……でも、女の子に使う選択じゃないと思うよ」

 

「そうなのか?千冬姉は放っておけって言ってかまったら鉄拳が飛んでくるんだけど」

 

「織斑先生は特別だよ……」

 

「謝りなさいよ!」

 

「だから、なんでだよ!約束覚えてただろうが!」

 

「あっきれた。まだそんな寝言言ってるんの!?約束の意味が違うのよ!」

 

凰さん、もう恥も外聞もすっぱり捨てて言ったほうが言いと思うよ。

もう泥沼だよ。

 

「説明してくれたら謝るっつーの!」

 

「せ、説明したくないからこうして来てるんでしょうが!」

 

一夏に恋する女の子は大変だなあ。

箒さんとセシリアさんも横でうんうん頷いてるし。

 

おおっと、いつの間にか一夏に味方がいなくなったぞ!?

 

え、僕?

 

僕は中立です。

 

「あったまきた!どうあっても誤らない訳ね!?」

 

「だから、説明してくれりゃ謝るっつーの!」

 

「せ、説明したくないからこうして来てるんでしょうが!」

 

ああもう、意地の張り合いになって堂々巡りだ。

凰さんも引くに引けないし、一夏も頑固だし。

これは悪い流れだ……

 

もう修正は難しいなあ。

 

「じゃあこうしましょう!来週のクラス対抗戦、そこで勝った方が負けた方に何なんでも1つ言うことを聞かせられるってことでいいわね!?」

 

「おう、いいぜ。俺が勝ったら説明してもらうからな!」

 

まさに売り言葉に買い言葉だ。

 

うう……胃が痛い……

……なんで見てるこっちの胃がキリキリ痛まなきゃならないんだ……

 

「せ、説明は、その……」

 

凰さんは一夏を指差したままのポーズでポッと赤くなる。

そりゃ、改めてポロポーズする羽目になるんだから、恥ずかしいだろうなあ。

 

「なんだ?やめるならやめてもいいぞ?」

 

「誰がやめるのよ!アンタこそ、あたしに謝る練習しておきなさいよ!」

 

「なんでだよ、馬鹿」

 

「馬鹿とは何よ馬鹿とは!この朴念仁!間抜け!アホ!馬鹿はアンタよ!」

 

 

 

「うるさい、貧乳」

 

 

 

それは思っていても言っちゃいけない言葉のトップ3に入るよ!?

 

 

 

ドガァァンッ!!

 

 

 

いきなりの爆発音、そして衝撃で部屋全体がかすかに揺れた。

見ると、凰さんの右腕は指先から肩までがIS装甲化していた。

 

思いっきり壁を殴ったような―――けれど、拳は壁には全く届いていない―――そんな衝撃だった。

 

「い、言ったわね……。言ってはならないことを、言ったわね!」

 

ぴじじっとISアーマーに紫電が走る。

 

「ほほう、なかなか面白いな。凰鈴音のあいえすは」

 

イヅナちゃん、感心してないで鳳さん止めようよ!

 

「い、いや、悪い。今のは俺が悪かった。すまん」

 

「今の『は』!?今の『も』よ!いつだってアンタが悪いのよ!」

 

無茶苦茶な理屈だけど、一夏には反論の余地はない。

 

「ちょっとは手加減してあげようと思ったけど、どうやら死にたいらしいわね……。いいわよ、希望通りにしてあげる。―――全力で叩きのめしてあげる」

 

最後に、今まで見たことない鋭い視線を一夏と僕に送ってから、凰さんはピットを出て行った。

あれ?

なんで僕も睨まれるの?

 

ちらりと壁を見ると、ちょっけい30センチほどのクレータが出来ていた。

特殊合金製の壁をへこますくらいの威力は、どう考えてもあるだろう。

 

「……パワータイプですわね。それも一夏さんと同じ、近接格闘型……」

 

真剣な眼差しで壁の破壊痕を見つめるセシリアさん。

さすがは代表候補生、冷静な状況見分素晴らしい。

 

とにかく一夏は勝ち負けに関係なく凰さんに謝ることが確定した。

 

女の子に、特に凰さんみたいなタイプの人に胸の事に触れたらダメだよ。

 

 

 

 

 

そして仲違いしたまま、クラス代表トーナメントが始まった。

 

 

一年の第一試合は、一組対二組

 

つまり、一夏対凰さんだった。

 

 

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