IS - M・od   作:阪本葵

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第33話 クラス対抗戦

 

 

試合当日、第二アリーナ第一試合。

組み合わせは一夏と凰さん。

 

 

僕はイヅナちゃんに言われ、織斑先生達がいる管制室で試合観戦をすることになった。

何故かセシリアさんや箒さんも一緒にいるが。

 

「お前達生徒はスタンドで観戦しろ、邪魔だ」

 

織斑先生は僕達を邪魔物扱いしてシッシッと手をやるが、イヅナちゃんはすごく真面目な顔で織斑先生に言った。

 

「千冬、ここに居させてくれ。なにやら嫌な予感がするのだ」

 

織斑先生とイヅナちゃんはお互い真剣な眼差しで視線を交差させた。

ううむ、多くは語らず、わかり合う……カッコイイ……

 

「……わかった」

 

織斑先生は一呼吸置いて了承してくれた。

 

「イヅナちゃん嫌な予感って、この試合で何か起こるの?」

 

僕は終始真剣な、厳しい表情のイヅナちゃんに聞く。

 

「我も杞憂だと思いたいのだが、何かこの学園に邪悪な意思が渦巻いておるのだ。仕掛けるのは……試合中か試合後か……しかしここまでの邪悪な気配……人間に出せるものなのか……?」

 

最後の方はボソボソと言ってよく聞き取れなかったけど、とにかく何か良くない事が起こるのは間違いないようだ。

 

 

一夏……大丈夫かな……

 

 

 

 

 

凰さん専用IS『甲龍』を纏い試合開始のときを静かに待っている。

セシリアさんのブルー・ティアーズ同様、非固定浮遊部位(アンロックユニット)が特徴的だ。

肩の横に浮いた棘つき装甲(スパイク・アーマー)が、やたら攻撃的な自己主張をしている。

……あれで殴られたら、すごく痛そうだなあ……

 

 

『それでは両者、規定の位置まで移動してください』

 

アナウンスに促され、一夏と凰さんが空中で向き合う。

その距離五メートル。

一夏と凰さんは開放回線(オープン・チャネル)で言葉を交わす。

 

「一夏、今謝るなら少しくらい痛めつけるレベルを下げてあげるわよ」

 

「雀の涙くらいだろ。そんなのいらねえよ。全力で来い」

 

「一応言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる」

 

凰さんの言っていることは事実だ。

噂では、IS操縦者に直接ダメージを与える”ためだけ”の装備も存在するらしい。

もちろん、それは競技規定違反だし、何より人命に危険が及ぶ。

けれど、『殺さない程度にいたぶることは可能である』という現実は変わりようがない。

代表候補生クラスはそれがおそらく可能なんだろう。

 

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

ビーッと鳴り響くブザー、それが切れる瞬間に一夏と凰さんは動いた。

 

ガギィンッ!!

 

瞬時に展開した<雪片二型>が物理的な衝撃ではじき返される。

セシリアさんに習った三次元躍動旋回(クロス・グリッド・ターン)をどうにかこなして凰さんを正面に捉える。

 

「ふうん。初撃を防ぐなんてやるじゃない。けど―――」

 

凰さんが手にした異形の青龍刀―――と呼ぶにはあまりにもかけ離れた形状―――をバトンでも扱うように回す。

両端に刃の付いた、というより刃に持ち手がついているそれは、縦横斜めを凰さんの手によって自在に角度を変えながら斬り込んでくる。

しかも、高速回転している分、一夏は刃をぶつけて裁くのに苦労している。

 

 

 

 

「……まずいね。このままじゃ消耗戦になる」

 

ピットの管制室でリアルタイムモニターを見て僕はポツリと呟く。

そうなったら一夏に勝ち目はない。

ただでさえ燃費が悪い白式だ。

それに雪片二型が余計に燃費を悪くしている。

 

 

 

 

一夏は一度距離を取って体勢を立て直そうとした。

 

「―――甘いっ!!」

 

ぱかっと凰さんの肩アーマーがスライドして開く。

中心の球体が光った瞬間、一夏は見えない衝撃に『殴り』飛ばされた。

一瞬ぐらりとしたが、すぐに落ちかけた体勢を戻し、凰さんを見据える。

 

「今のはジャブだからね」

 

にやりと不適な笑みを浮かべる凰さん。

牽制(ジャブ)の後は、本命(ストレート)と相場が決まっている。

 

 

ドンッ!!

 

 

「ぐあっ!」

 

目に見えない拳に殴られたような衝撃に、一夏は地表に打ち付けられる。

 

 

 

 

 

「なんだあれは……?」

 

モニターを見ている箒さんがつぶやいた。

それに答えたのは同じくモニターを見ていたセシリアさんだ。

 

「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す―――」

 

ブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器ですわと続いた言葉を、しかし箒さんは聞いていなかった。

 

「ふふん、やるではないか。なかなか面白いな」

 

イヅナちゃんはニヤリと不敵な笑みを浮かべていった。

イヅナちゃんもなんだかんだで好戦的だよなあ・・・

 

 

 

 

 

「よくかわすじゃない。衝撃砲<龍咆(りゅうほう)>は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに」

 

砲弾が見えないならまだしも、砲身が見えないのはかなりきつい。

しかもどうやらこの衝撃砲、砲身射角はほぼ制限なしで、撃てるようだった。

真上真下はもちろん、真後ろまで展開して撃っている。

射線はあくまで直線だけど、操縦者の凰さんの能力がかなり高い。

無制限機動と全方位への軸反転、基礎の全てを高いレベルで習得してるのだ。

 

ハイパーセンサーで空間の歪み値と大気の流れを探らせてなんとかかわしているけど、ジリ貧なのは変わりない。

 

状況を打破するにはなんとか先手を打ち、流れを変えなければならない。

 

 

―――そして、その手段が一夏にはある―――

 

 

一夏はぎゅっときつく雪片二型を握った。

 

「鈴」

 

「なによ?」

 

 

「本気で行くからな」

 

 

ふと一夏がそんなことを言った。

一夏の気概に押されたのか、凰さんはなんだか曖昧な表情を浮かべた。

 

「な、なによ……そんなこと、当たり前じゃない……。とっ、とにかくっ、格の違いってのを見せてあげるわよ!」

 

凰さんはバトンのように両刃青龍刀を一回転させて構えなおす。

 

一夏は衝撃砲がその放火を吹く前に距離を詰めるように、織斑先生直伝の瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使い奇襲する。

 

「うおおおおっ!!」

 

この奇襲は一回しか使えない。

だからこそ、<雪片二型>のバリアー無効化攻撃を同時に放つ。

これで半分以上削れなけれな、あの衝撃砲でじわじわとすり減らされていくのがオチだからだ。

だから、一夏の英断は間違っていない。

使いどころも、ココしかないだろう。

 

 

 

ズドォォォォォンッ!!

 

 

 

一夏の雪平弐型の刃が鳳さんに届きそうになった瞬間、突然アリーナ全体に走った。

 

凰さんの衝撃砲―――ではない。

範囲も威力も桁違いだ。

 

しかもステージ中央からもくもくと煙が上がっている。

どうやらさっきのは『それ』がアリーナの遮断シールドを貫通して入ってきた衝撃波らしい。

 

そして、煙が晴れると、そこには人型の黒いシルエットがあり、徐々に明確になってくるその現れた姿に、皆息を飲んだ。

 

「な、なんだ……あれは……」

 

箒さんが呟く。

織斑先生も目を見開き侵入者を見ていた。

 

 

 

 

「……なぜ、ヤツがココにいる……!?」

 

 

 

イヅナちゃんは信じられないという衝撃の表情をしていた。

 

 

 

アリーナの遮断シールドを貫通して侵入してきたのは全身装甲(フルスキン)のISだった。

 

 

 

 

そして、その顔には『黄金の竜』の仮面がはめられていた。

 

 

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