IS - M・od   作:阪本葵

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第34話 招かれざる異物

 

 

「な、何だアレは!?」

 

「一体どういうことですの!?」

 

箒さんとセシリアさんはパニックになっているけど、山田先生は冷静に状況分析して報告する。

 

「システム破損、何かがアリーナの遮断シールドを貫通してきたようです!」

 

「試合中止!織斑、凰直ちに退避しろ!」

 

織斑先生がすぐに一夏達に退避するように指示を出したのだけど、一夏と凰さんは退避しようとしないで何か話し合っている。

そしてそんなそんな話し合いの合間にも全身装甲(フルスキン)のISは攻撃を凰さん目掛けて仕掛ける。

けど一夏が凰さんを抱きかかえて回避し、何とか無事だった。

 

「今の光線兵器は……”遮断しいるど”を破るほどの威力の……いや、しかしまだ覚醒はしていないのか?完全覚醒していたならばここら一帯は一瞬で無くなるはずだ……」

 

イヅナちゃんはあの全身装甲のISを見て驚きとんでもなく物騒なことを呟いている。

 

……あのISに驚いているのか?

 

いや違う。

 

あの黄金の竜の仮面に驚いているんだ。

 

それに、僕にもわかる。

 

 

 

アレはこの世界にあってはならないモノだって。

 

そして、アレは現状僕とイヅナちゃんにしか倒せないということを。

 

 

 

 

「千冬よ。我とガイが出てあの正体不明機を殲滅する」

 

「わ、わたくしもご一緒しますわ!織斑先生、ISの使用許可を!」

 

イヅナちゃんが織斑先生に殲滅すると言い放ち、それに続きセシリアさんも出ると言う。

 

 

 

「もしもし!?織斑君!?聞いてます!?凰さんも!聞いてますー!?」

 

山田先生が先ほどまでの落ち着きを忘れたかのように、めちゃくちゃ焦っている。

プライベート・チャネルでは声を出す必要がないのだけど、それを忘れてしまうほど焦っているのだ。

おそらく一夏が生徒の避難が完了するまで全身装甲のISを引き付けるとでも言ったのだろう。

 

「落ち着け、山田先生。これを見ろ」

 

「へ?」

 

ブック型端末の画面を数回叩き、表示される情報を切り替える。

全員がそれを覗き込み情報を確認する。

 

「遮断シールドがレベル4に設定……?しかも、扉が全てロックされて―――まさか、あのISの仕業ですの!?」

 

「そのようだ。これでは避難することも救援に向かうこともできないな」

 

実に落ち着いた調子で話す織斑先生だけど、よく見るとその手は苛立ちを抑えきれないとばかりに忙しなくモニタを叩いている。

 

「救援できないって……では、一夏達はどうなるのですか!?」

 

「落ち着け、篠ノ之。今、三年の精鋭がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドを解除できれば、すぐに部隊を突入させる」

 

「し、しかし―――」

 

 

 

「遮断れべる四?はっ、こんなものこうすればいいのだ」

 

イヅナちゃんはそう言うと、山田先生が座っていた管制室のコンピューターに触る。

 

「 鎮まれ  我に屈服せよ 」

 

イヅナちゃんは一言そう言うと、掌を中心にドクンと波紋のような緑の光が見えたかと思うと、今までアラームばかり鳴っていた管制室が一気に正常に戻った。

ロックされていた扉がみるみる開放されていく。

 

「こんな電子制御なんぞ、”屈服”させれば良いんだぞ。それ、今なら生徒を避難誘導出来るぞ」

 

「…………」

 

あまりにも無茶苦茶な言い分、理屈に山田先生はポカーンと口を開けていた。

 

「さて、では行くぞガイ!」

 

「うん」

 

「おい待て百瀬!」

 

織斑先生が止めるのを聞かず、僕は頷きイヅナちゃんと共に管制室を出ていこうとすると、セシリアさんも付いて来ようとしたので僕はそれを止めた。

 

「セシリアさん、申し訳ないけど貴女はダメだ」

 

「な、何故ですの!?」

 

セシリアさんは怒るというより、悲しそうな表情をした。

一夏を助けたいという気持ちはありがたい。

横では箒さんも”力があれば行く”といった表情をしている。

そんなセシリアさんに、イヅナちゃんは子供を諭すように、優しく言った。

 

「いいかセシリア、よく聞け。”アレ”は”あいえすではない”」

 

「なっ!?」

 

イヅナちゃんの衝撃発言に、セシリアさんや箒さんは驚き、またそれを聞いていた織斑先生達も厳しい視線をイヅナちゃんに向ける。

 

「……どういう意味だ、イヅナ」

 

「言い方が悪かったな。アレの本体はあいえすなのだろう、それは間違いない。だが、あの仮面がクセモノなんだぞ」

 

「仮面?」

 

織斑先生達はリアルモニターに映る全身装甲のISの、黄金の仮面を見る。

 

そして、イヅナちゃんは言う。

 

「アレは『黄金竜エメリウス』、つまり『神獣』であり、その肉体の一部だ」

 

「―――!?」

 

瞬間、織斑先生と山田先生に緊張が走る。

 

「……し、神獣?お伽話ですか?こんなときに何のご冗談を……」

 

セシリアさんは、ハハハと渇いた笑いをするけど、織斑先生はさらに眉間に深い皴を刻み厳しい表情をした。

 

「……何故神獣の一部が転用されている!?しかも『黄金竜エメリウス』だと?発掘された神獣は『守護獣バルガザル』だけではないのか!?」

 

「何故エメリウスがいるのか……それは我にもわからん。だがこれだけは言える。”アレ”は我とガイにしか倒せない、とな」

 

織斑先生は一層厳しい視線を向ける。

 

―――いや、アレは自分では何も出来ない不甲斐なさに自らを怒っている目だ。

そして、ふう、と息を吐いた織斑先生は、いつもの頼もしい、自信に満ちた表情に戻っていた。

 

「……わかった。ならば凱とイヅナに頼るしかあるまい。―――頼むぞ」

 

「はいー。じゃあ行ってきますー」

 

「任せろ!神獣とて、我とガイの敵ではない!」

 

織斑先生は僕とイヅナちゃんを見る。

僕とイヅナちゃんはいつも通りの返事を返し、部屋を出ていった。

 

その時僕は気付かなかった。

 

思い詰めた表情の箒さんに―――

 

 

 

 

 

 

 

『……ガイ……』

 

 

……言わないで。

 

僕も傷ついてるんだから。

 

 

『……まさか融合してしまったら、我もガイの方向音痴が感染してしまうとは……不覚……!』

 

なに感染て!?

 

人の気にしてることをウィルスみたいに言わないでよ!

僕だって好きで方向音痴なんじゃないんだぞ!

 

とはいえ……ここは何処だろう……

 

 

 

 

さて、この会話でもお分かりだろうが、僕は絶賛迷子中だ。

 

かっこよく部屋を出て、イヅナちゃんと融合して終極因使になったんだけど、なんと道に迷ってしまった!

 

……そういえば、いつもこの辺は一夏に手を引かれて歩いてたから覚えてないんだよな……

 

そして頼みの綱である敏腕ナビゲーターイヅナちゃんは、終極因使になることで僕の方向音痴が感染ってしまい、方向感覚が麻痺、まともなナビゲーションが出来ずに二人であたふたしているのだ。

 

じゃあ、融合解除すればいいんじゃないか?

解除すればイヅナちゃんの方向感覚も戻るんじゃないか?

と言ったら、イヅナちゃんはこう言った。

 

『今ここで融合解除したら負けた感じがするから嫌だ!』

 

……イヅナちゃんは何と戦ってるんだろうか?

 

 

 

 

 

「モ、モモンガー?何をしてるんだ?お前かなり前に部屋を出て行ってただろう?」

 

僕が落ち込んでいると後ろから声がしたので振り向くと、そこには箒さんがいた。

 

「ほ、箒さん!?どうしてこんなところに?」

 

今生徒は避難してこんなところにいないはずだ。

 

……まあ、ここが何処かわからないんだけど……

 

「い、いや一夏が気になって……その、私にも何か出来ないかと思って、な」

 

箒さんはバツが悪そうに頬をポリポリかく。

ああ、避難せずに一夏を手伝いにこんなところにいたんだな……

……ん?

 

待てよ?

 

ぴこーん!

 

 

ここに女神がいた!

 

僕はガシッと箒さんの手を握る。

 

「お願い!アリーナのグラウンドまで連れてって!」

 

 

 

 

 

 

「……方向音痴だからといって、こんな単純なアリーナ内を迷うなんて・・・何処に迷う要素があるんだ?」

 

箒さんは僕の手を引き、走りながら呆れる。

 

「こ、こんな似たような景色ばかりだったら迷うよ!?ほら、このずーっと代わり映えしない壁とか、地面とか!ほら、目印ないじゃない!?皆迷うよ!」

 

僕は必死に弁明する!

 

「ちゃんとアリーナへの案内表示もされてるだろ?ほら、あそこに書いてるぞ『左折で観客席』とな。それに、あそこに地図も掲示してる」

 

「あうっ!?ううぅぅっ……」

 

しかし冷静に切り返され、さらに墓穴を掘ってしまった!

 

くううっ!

 

は、恥ずかしい!!

 

僕は顔を手で覆いブンブンと首を振る。

 

 

 

キューーン!

 

 

(か、かわいい……!あの耳と尻尾が……恥じらう仕種が……なんなんだこの癒し系のかわいい生き物は……こ、これが萌えというやつか……はっ!?いかんいかん、気を抜けばまた鼻から……)

 

 

箒さんは、鼻から生暖かい水分が流れ出るのを察知し、鼻を押さえた。

 

 

そして、箒さん先導により、僕達は観客席にたどり着いた。

 

中央のアリーナでは、一夏と凰さんがなんとか連携し全身装甲のISを攻撃していた。

急場のタッグとはいえ、なかなかいい動きをしている。

それに、一夏もかなり集中しているのか、練習の時よりもよく動けている。

 

『一夏め、なかなか良い動きをする。あやつは本番に強い種類の人間なのだな』

 

イヅナちゃんも感心してる。

 

 

「一夏っ!」

 

 

突然箒さんが叫ぶ。

 

キーンとハウリングが尾を引く声がアリーナに響く。

 

いつの間にやら中継室に行きマイクを使っていたのだ。

 

 

「男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!」

 

 

今箒さんができる最大限のこと

 

それは激励

 

何も出来ないのと、何もしないのとでは意味が違ってくる。

 

箒さんは、自分から動き、出来ることを実行したのだ。

 

しかし、それが場の状況を悪化させる。

 

全身装甲のISが箒さんの声に反応し、中継室にいる箒さんをロックしたのだ。

 

『ガイ!枷は解いている!一撃であの仮面を狙え!』

 

イヅナちゃんが焦り指示する。

枷を解く、つまりリミッターを解除しているのだ。

でもそれじゃあ操縦者にダメージを与えてしまうんじゃあ……

 

『安心しろ、あれは人ではない。機人族にもなれん出来損ないだ!思いっきりやれ!!』

 

 

 

それを聞いて安心した!

 

 

わかったよ、イヅナちゃん!

 

一撃で!

 

アイツをぶっつぶす!!

 

 

 

「二尾解放!『風神槍』!!」

 

 

僕の尻尾の二本が、風を纏う

 

キイイイィィン……と甲高い、風が渦巻き哭く声がする。

 

「二尾解放!『金将刃(こんじょうじん)』!!」

 

そしてさらに二本の尻尾が馬鹿でかい刀へと形を変える。

 

刃渡りは人の身長より長い。

少なくともISの近接ブレード、雪片二型の倍はある。

 

 

金将刃

 

五行の内の『金』を司る力だ。

これはつい最近覚醒した。

 

 

 

ドギュンッ!!

 

 

 

空気の破裂するような音がアリーナに響く。

 

 

 

ドゴオォォン!!

 

 

 

同時に、僕は全身装甲目掛けて攻撃を繰り出した!

僕の突進力と攻撃によって、全身装甲の立っていた地面が爆発したような炸裂音をあげ、土煙をあげた。

 

 

 

 

「うわあぁっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

 

 

突然の爆発と、その衝撃を受けて一夏と凰さんが悲鳴をあげる。

 

 

 

僕はすぐさま全身装甲から離れ、二人を庇うように間に入り構える。

 

「やったのかモモンガー!?」

 

「こ、これがゼクスファクターの力……なんつー一撃なの……全く、何も見えなかった……」

 

「……」

 

一夏と凰さんはそれぞれ驚き興奮している。

でも、僕にはそれに答えられる余裕がない。

 

 

「二人とも、すぐにここを離れて」

 

 

「え?」

 

 

 

 

「―――あいつはまだ動ける」

 

 

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