IS - M・od   作:阪本葵

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第41話 凱呼び出される

 

凱は朝から落ち込んでいた。

 

「はあ~……」

 

それはもう、”この世の終わり”と言わんばかりに肩を落とし、さらに顔を真っ青にし、これでもかという重く盛大なため息吐いた。

 

今日は休日で、外出許可がでている。

本当ならば、凱は一夏と共にほったらかしの織斑家の掃除をして、その後五反田食堂で食事を取る予定だった。

五反田食堂とは、一夏の男友達の『五反田弾』とその妹『五反田蘭』がいる、つまり友達の家だ。

祖父の『五反田厳』が老人とは思えない筋骨隆々の肉体で、未だ現役で切り盛りしている、いまどき珍しい昔ながらの大衆食堂である。

ちなみに、凱は厳の作るカボチャの煮付けが好きだった。

 

「この甘さは病み付きになるねー」

 

と、ニコニコ笑いながら食べていた。

それを見た弾と蘭は「おふぅ!」や「ひゃぁっ」などと変な声を出して身悶えたり、厳はおいしそうにカボチャの煮付けを食べる凱を気に入ったりと、まあ凱も五反田一家とは仲が良かった。

しかし、今日凱は一夏と外出せず、部屋で落ち込みため息をつくばかりである。

 

「はあ~……」

 

「ガイよ、そんなにため息ばかりついてると幸せが逃げるぞ。それに、悪い方にばかり考えるな。もし何かあれば、我が助ける」

 

イヅナはガックリと肩を落としている凱の肩をポンポンと叩く。

 

「だがなガイ、我はこの文がガイの新たな仲間を作るきっかけになると思うぞ」

 

「……なんでそう言えるの?」

 

凱は涙目でイヅナを上目遣いで見る。

思わずイヅナも「うっ」とうめき声を上げたが、コホンと咳ばらいをした。

 

「……まあ、確証はない。とりあえず、時間になったら指定された場所に行こう」

 

「……うん………はあ~……」

 

凱は手に持つ手紙をチラリと見てため息をついた。

そのため息はそれはそれは、とてつもなく大きく、凱の体が風船のように萎んでしまうのではないかと思うほどだった。

 

手紙にはこう書かれていた。

 

『今日の午後一時、第5アリーナ前で待ってます。

 

必ず来るように。

友達などは連れて来てはダメ。

君一人で、ISを持って誰にも話さず来てね。

 

熾天烈火の三年より』

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ところ変わり、生徒会室

 

部屋には二人しかいなかった。

 

一人は水色の髪を肩で切り揃え、人懐っこい笑顔だが口元を扇子で隠す。

全体的に余裕を感じさせる態度だ。

しかし嫌味ではなく、どこか人を落ち着かせるような雰囲気を持っている。

そんな仕種が愛らしい人物が、足を組んで椅子にもたれ座り、扇子をパタンと畳む。

 

「先輩の言う通り、ラブレターをゼクスファクター君の部屋に置いときましたよ」

 

「そう」

 

応えたもう一人の女性は、その少女を見ず、短く返答し窓の外を見ていた。

 

「あと、第5アリーナも貸し切り、封鎖しましたよ。もちろんカメラなんかの撮影機器も切りました」

 

「ありがとう、更識」

 

謝辞を送るも、赤髪の女生徒は更識と呼んだ少女を見ない。

パンと音を立てて開きなおした扇子には『計画順調』と書かれていた。

 

「あん、楯無って呼んでくださいよ、先輩。もしくは、たっちゃんでも可ですよ」

 

「わかったわ、更識」

 

「ああん、いけずぅ」

 

そんな、なんとも言えないやり取りを続ける二人。

その女性はIS学園の制服を着ながらも、妖艶な雰囲気を纏っていた。

長い赤髪をポニーテールにし、生徒会室に設置されている机に座り方膝を立て、その膝に頬を当て窓の外を見ているのだ。

 

「……パンツ見えますよ、先輩」

 

水色の髪の少女―――更識(さらしき)楯無(たてなし)は、行儀の悪い座り方をしている赤髪の女性に注意する。

再び扇子を畳み、開くと『淑女必須』と書かれていた。

 

「女ばかりなんだからそんなもの……ああ、まあそうね。気をつけるわ」

 

先輩と呼ばれた赤髪の女性は、立てていた膝を直し、机から下りる。

ここはIS学園、女性ばかりの学校……だったのだが、最近この学園に異物が混入した。

それは、男という異物

今まで学園の生徒は、常識の範囲内ならば、下着だなんだと気にする事はなかったが、さすがに男がいるとなると身なりを気にする。

赤髪の女性も、好きこのんで異性に下着を見せるような痴女ではない。

赤髪の女性は別に女尊男卑の思想を持っているわけではない。

むしろ、男女平等、対等を重んじる考えだ。

 

「先輩くらいですよ?生徒会長である私を小間使いに使う人なんて」

 

更識はヨヨヨと泣きマネをしながら、口元を隠す扇子もプルプルと震わせる。

扇子には『可憐奴隷』と書かれている。

なんとも芸が細かい。

そう、更識楯無はこのIS学園の生徒会長なのだ。

IS学園での生徒会長とは、最強の称号

つまり、更識楯無はこのIS学園で最強のIS操縦者なのだ。

 

「生徒会長には相応の権限があるでしょう?いち生徒の私にはそれがない。だから、利用させてもらってるだけ」

 

赤髪の女性徒はそんな泣きマネをする学園最強の生徒会長更識を見てフッと笑った。

 

「なら先輩が生徒会長になればいいんですよ」

 

「権力に興味ないわ」

 

「うわ~、矛盾してる~」

 

更識は苦笑し赤髪の女性を非難する。

それを赤髪の女性は軽く笑って流す。

 

「それに、あなたにもメリットが無いわけじゃないでしょう、更識?」

 

「ん~、まあ噂の”終極因使君”の実力を間近で見れるんですから、無いとは言えないですけど……それよりも」

 

「それよりも?」

 

更識はニンマリと笑い扇子で口元を隠しこう言った。

 

「私は、『学園最強』のあなたの実力を見れる方が楽しみですよ、紅炎寺先輩」

 

扇子には『興味深々』と書かれていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

凱の足どりは重い。

 

昼食も全く味がしなかった。

作ってくれた料理人には申し訳ないが、あまりのストレスに吐きそうになったほどだ。

凱がこの学園に入学する際、最も恐怖したこと

 

それは”イジメ”だ。

 

幸い、同じクラスでは皆が優しく接してくれるし、周囲の別クラスの人も友好的だった。

だから油断していた。

それは、上級生のイジメだ。

凱は終極因使であり、学園最強だと千冬が公言した。

これがいけない。

上級生はまがりなりにも経験者だ。

一年のハナタレに負けるような学園生活は送っていない。

そこに、ポッと出の一年坊主が上級生を差し置いて最強と名乗ったのだ。

まあ、言ったのは千冬であり世間であり、つまり凱は一言も最強などと言った覚えはない。

しかし、それは言い訳にしかならず、また当然、上級生も面白くない。

だから、危惧していたのだ。

 

”上級生からの呼び出し”を

 

それが、ついに来てしまった。

いじめられる

女のいじめは半端ない陰湿さだという。

 

もしかしたら、自転車のチェーンを持って鞭みたいに武器にしてるかも……

カミソリを仕込んで切り刻んでくるかも……

バットに釘を一杯刺して素振りしてるかも……

タバコを押し付けられたり……

上履きに画鋲が入ってたり……

いや、上履きがゴミ箱に捨てられたり……

机に誹謗中傷の落書きが……

裸に剥かれて恥ずかしい写真撮られたり……

変なビデオ録られたり……

 

ああ……

 

もう……

 

「……死のう」

 

「ガ、ガイ!?何さらっととんでもないこと言ってる!?」

 

凱の爆弾発言に、さすがに驚き慌てるイヅナ。

 

「一生いじめられるんなら、死んだ方がマシだよー!」

 

「逃げるなー!というか、深みにはまりすぎだー!?ガイの脳内ではどんな惨事が!?」

 

凱がパニックになり、イヅナもつられてパニックに陥る。

 

「ふうん……なかなか元気な子ね」

 

透き通るような声がして、凱はビタッと硬直した。

 

「時間通りに来たね、エライエライ」

 

凱は油の切れた機械のように、ギギギと首を動かす。

 

そこには、赤髪の女生徒がいた

長い髪をポニーテールにし、IS学園の制服を身に纏いながらも、どこか妖艶な雰囲気を漂わせる。

そしてそのスタイルは、制服では隠しきれないグラビアアイドルのようなメリハリのある豊満な肢体だ。

胸など箒より大きいだろう。

 

リボンの色は赤色、つまり三年生、上級生だ。

 

そして、赤髪の女生徒は長い髪をふわりとかきあげ、ニコリと笑い言った。

 

「私は三年の紅炎寺カリン、よろしくね終極因使の百瀬凱君」

 

 

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