IS - M・od   作:阪本葵

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第47話 新たなクラスメイト

 

「やっぱりハズキ社製のがいいなぁ」

 

「え? そう? ハズキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

 

月曜日の朝。

クラス中の女子がわいわいと賑やかに談笑をしていた。

みんな手にカタログを持って、あれやこれやと意見を交換している。

 

「そういえば織斑君とモモンガーのISスーツって同じだけど、どこの奴なの?見たことない型だけど」

 

「あー、特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしい。えーと元は…なんだっけ?」

 

「元はイングリッド社のストレートアームモデルだよ、一夏」

 

「おお、そうだそうだ。よく覚えてたなモモンガー」

 

一夏は手をポンと叩く。

僕と一夏のISスーツはサイズが違うだけで一緒だ。

つまり、おそろい、ペアルックなのだ!

ISスーツというのは文字通りIS展開時に体に着ている特殊なフィットスーツのこと。

このスーツなしでもISを動かすこと自体は可能なんだが、反応速度がどうしても鈍ってしまうらしい。

僕の場合、イヅナちゃんと融合するのにISスーツはあまり意味がない。

融合すると、何故かISスーツが消えてしまうのだ。

融合解除すると、再びISスーツは復活している…謎だ。

スーツはいりませんという旨のことをメーカーさんに話したらすごい絶望的な顔をされたので、体操服代わりに着ることにした。

メーカーも、男性操縦者が着用しているスーツを作成しているというネームバリューが惜しいらしい。

大人の世界は世知辛い。

そんなことを以前カリン先輩にも聞いたところ、カリン先輩も同じく魂獣武装時にISスーツは消えるらしい。

つまり、僕は融合しているときはノーパン、というか全裸なのだ!!

…カリン先輩もノーパンになるのかな…?

あのミニスカートでノーパン…そしてノーブラ…

あ…あの狂暴なわがままボディがノーブラノーパン…

 

ゴクリ…

 

そんなことを想像してたら、カリン先輩に「やっぱり男の子だね」と苦笑してた。

むむ、そんなに顔に出てたかな?

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

すらすらと説明をしながら現れたのは山田先生だった。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから。…って、や、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへん。…って、や、山ぴー?」

 

入学から大体二ヶ月。山田先生には8つくらい愛称がついていた。

慕われている証拠だと思う。

これも人徳のなせる業か。

ちなみに僕のモモンガーも着々と浸透してきている。

だけど、何故かモモンガー以外のあだ名が最近増えてきた。

のほほんさんオンリーの『がっきー』

カリン先輩と更識先輩の『モモ君』だ。

モモ君てなんだ?と聞いたところ、「凱って名前は似合わない」「モモンガーってのちょっと…」と僕の名前とアイデンティティーを全否定された!

そこで、苗字の百瀬からモモ君だそうだ。

…全生徒モモンガー計画の道のりは遠い…

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと…」

 

「えー、いいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「まーやんって…」

 

「あれ? マヤマヤの方が良かった? マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと…」

 

「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!」

 

珍しく語尾を強くして山田先生が拒絶の意志を示す。

なんだろう、前の時もこんな感じだったけど、何かトラウマがあるんだろうか。

ヤマヤってあだ名に。

よし、ならば、僕がすばらしいあだ名を考えようじゃないか!

 

「じゃあ、ヤママヤーはどうですかー?」

 

僕が山田先生に提案する。

 

「ヤママヤー?それただ”だ”を抜いただけじゃん」

 

「ノンノン、ヤママヤーとは、イリオモテヤマネコの別称なのですよ」

 

「…猫…ですか」

 

山田先生、わりと嫌そうじゃないみたいだ。

猫カワイイですよね!!

イリオモテヤマネコは沖縄の西表島に生息する猫だ。

沖縄の方言では通常はヤママヤーと呼び、大型のものをヤマピカリャーと呼ぶことがある。

 

「しかも!日本の特別天然記念物に指定されてるんです!!」

 

「おおー!特別天然記念物!!」

 

「へー…って、あだ名に特別天然記念物関係ないですよー!」

 

あら、山田先生怒っちゃった。

 

「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。わかりましたか? わかりましたね?」

 

はーいとクラス中から返事が来るが、ぶっちゃけ言ってるだけの返事なのは間違いなかった。

山田先生は今後もあだ名が増えていくのだろう。

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

それまでざわざわしていた教室が一瞬でぴっと礼儀正しい整列にと変わる。

よく訓練されたものだなあ。

一組担任織斑千冬先生の登場だ。

 

おや、スーツが夏用に変わってる?

ああ、昨日一夏が家に帰ったときに出しておいたんだな。

気の利く男だなあ、一夏は。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着でも構わんだろう」

 

いや、構うだろう!と言いたげな顔の一夏。

水着はともかく、下着…

 

「はい、織斑先生」

 

僕は挙手した。

これは言っておかないといけない。

とても大事なことだから!

 

「なんだ、百瀬」

 

「それはすばらしい提案だと思います」

 

是非誰か忘れて下着姿で授業を受けていただきたい!

 

「…あ、ああ、そうか…」

 

「………」

 

あれ、織斑先生が戸惑っている?

女子も微妙な顔してる。

 

何故だ?

 

ちなみにIS学園の指定水着はスクール水着である。

紺色のアレで前に『旧』と付く。

現在は絶滅危惧種だそうだ。

そんなに貴重な水着を全女子生徒に支給するとは、IS学園は太っ腹だ!

更に体操服もこれまた絶滅危惧種と言われる伝説の一品『ブルマー』だった。

五反田君が聞いたら泣いて喜ぶかなあ…

ちなみに僕と一夏は短パン。

一夏の短パン姿はともかく、僕が体操服に着替え短パンを履くと「ショタっ子キタコレ!」「はうぅ~ん」などという意味不明の言葉や奇声が上がる。

そして、学校指定のISスーツはタンクトップとスパッツをくっつけたような感じの、至ってシンプル&エロい(健全)ものだ。

なんでわざわざ学校指定のものがあるのに各人で用意するかというと、ISは百人百通りの仕様へと変化するものなので、早い内から自分のスタイルを確立しておくおが大事なんだそうだ。

もちろん全員が専用機をもらえる訳じゃないのでどこまで個別のスーツが役に立つのかは難しい線引きだけど、そこはそれ花も恥らう十代の乙女の感性を優先させているんだろう。

女はおしゃれの生き物ですからって誰かが言ってた。

えーと、たしかセシリアさんだ。

僕はおしゃれとか全くわからないから、全然理解できない領域だ。

あと、専用機持ちの特権である『パーソナライズ』を行うと、IS展開時にスーツも同時に展開される。

着替える手間が省けてすごい楽なんだけど、このISスーツを含むダイレクトフォームチェンジはエネルギーを消費する。

そのため、緊急時以外は普通に着て、普通にISを展開する。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

連絡事項を言い終えた千冬さんが山田先生にバトンタッチする。

ちょうど眼鏡を拭いていたらしく、慌てて直す姿がわたわたとしている子犬のようだった。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも二名です!」

 

「え…」

 

「「「えええええっ!?」」」

 

いきなりの転校生紹介にクラス中がざわつく。

そりゃそうだろう、この噂好きの十代乙女の集団に対して、その情報網をかいくぐっていきなり転校生が現れたんだから驚きもする。

しかもふたり。

 

(ていうか、普通分散させるんじゃないの?なんで二人もこのクラスに?まさか、他のクラスにも二人ずつ転入生がいるなんていうこと…あるわけないよな…)

 

そんな至極まっとうなことを考えていると、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

「………」

 

クラスに入ってきたふたりの転校生を見て、ざわめきがぴたりと止まる。

そりゃそうだ。

僕も、一夏も驚いている。

 

だって、そのうちのひとりが―――男子だったのだから。

 

 

 

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