IS - M・od   作:阪本葵

49 / 59
第49話 ボーイズトーク

 

 

「よーし、到着!」

 

いつも通り圧縮空気が抜ける音を響かせ、ドアが斜めにスライドして開く。

第二アリーナ更衣室、無事到着というところだ。

 

「大丈夫か? えーっと、デュノア」

 

「走り疲れた?」

 

なにやらボーっと僕と握っていた手を見ている金髪の貴公子に、一夏と僕が声をかける。

 

「…あ、うん、なんとか。あ、僕のことはシャルルでいいよ。織斑君、百瀬君」

 

「あー、俺たちの名前は知ってるんだな。俺のことは一夏でいいぜ。今日からよろしくな、シャルル」

 

「僕もモモンガーでいいよ、よろしくねーシャルル君」

 

「うん。よろしくね、一夏。それとモモンガー…って、そういえば一夏はさっきから百瀬君をモモンガーって言ってるけど、なんでモモンガー?」

 

「ああ、モモンガーはあだ名だな。百瀬(ももせ)(がい)だからモモンガーだぜ」

 

一夏が誇らしげに僕のあだ名を説明する。

うう、一夏だけだよ、僕のあだ名にそこまで関心があるのは!

 

「そ、そうなんだ。う、うーん…頑張って呼ぶようにするけど、とりあえず、凱でいいかな?」

 

ニッコリ笑うシャルル君。

そんなにモモンガーというあだ名はおかしいだろうか?

しかし、うーむ…その笑顔…僕とキャラ被ってないかな?

いや、別に僕の笑い顔がシャルル君ほどキラキラしてると思ってないよ?

これはもしかして僕の存在のピンチなんじゃないだろうか?

 

「うわ!時間ヤバイな!すぐに着替えちまおうぜ!」

 

「そうだねー」

 

時計を見るとかなりギリギリだったので、僕と一夏は急い制服のボタンをはずす。

上着とTシャツを脱いで上半身をあらわにした。

 

「わあっ!?」

 

「?」

 

奇怪な声を出したシャルル君を見るとまだ着替えてなかった。

 

「荷物でも忘れたか?って、なんで着替えないんだ?早く着替えないと遅れるぞ。シャルルは知らないかもしれないが、うちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で―――」

 

「う、うんっ?き、着替えるよ?でも、その、あっち向いてて…ね?」

 

「???まぁ、別に着替えをジロジロ見る気はないが…って、シャルルはジロジロ見てるな」

 

「見てない!別に見てないよ!?」

 

両手を突き出して慌てて顔を床に向けるシャルル君。

なんでこんな反応するんだろうか?

 

ちなみにイヅナちゃんは僕たちが着替えてる時は少し離れた場所で待ってくれている。

 

「我はガイ以外に興味ない。一夏の裸なんぞ見たくもないわ」

 

とか以前言ってた。

 

 

僕はそんなシャルル君の反応に対し、まあいいかと思い、スーツを着込む。

正直僕はこれ着る必要ないんだよなー、これ結構きついんだよなーとか、引っかかるんだよなーとかぼやきながらジッパーをあげた。

…なんだろう、視線を感じる。

一夏は僕の隣で着替えてるし…ということは…

 

「シャルル君?」

 

「な、何かな!?」

 

気になって視線を向けると、シャルル君はこっちに向けていた顔を慌てて壁のほうにやって、ISスーツのジッパーをあげた。

 

「へー、シャルル君着替えるの早いねー。ていうか、それ着やすそうだねー。どこのやつ?」

 

僕はシャルル君のスーツを見た。

うん、なんかスベスベして着心地良さそうだ。

 

「あ、うん、デュノア社製のオリジナルだよ。ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品」

 

「へー…ん、デュノア?あれ、デュノアって…」

 

「うん、僕の家だよ。父がね、社長をしてるんだ。一応フランスで一番大きいIS関連企業だと思う」

 

「へえ、じゃあシャルルって社長の息子なのか。道理でなあ」

 

着替え途中の一夏が話に入る。

入るのはいいけど、着替える手は動かそうね、一夏。

 

「うん?道理って?」

 

「いや、なんつうか気品っていうか、いいところの育ち!って感じがするじゃん。納得したわ」

 

「いいところ…ね」

 

ふとシャルル君は視線を逸らす。

それは、なにか触れられたくないところだったんだろうか。

複雑な表情を浮かべている。

 

「気品っていうより、ジェントルマンって感じはするよねー。フランスでは女の子にモテモテだったんじゃないの?」

 

「い、いや、そんなことは…って、一夏まだ着てないの?」

 

シャルル君は僕が紳士と言っても微妙な表情をしていた。

そしてチラリと一夏を見ると、驚いた。

僕は着替え終わってるけど、一夏はまだISスーツを腰まで通したところで止まってたからだ。

 

「これ、着るとき裸っていうのがなんか着づらいんだよなぁ。引っかかって」

 

「ひ、引っかかる!?」

 

「おう」

 

気のせいか、シャルル君の顔がカーッと赤くなっている。

 

「まあ、一夏のは大きいから、ポジショニングも大変だよねー。ファウルカップのサイズ変えたら?収まらないでしょ?」

 

「ポ、ポポポポジショニング!?ファウルカップのサイズ!?」

 

「まあ、なあ…って何言ってんだ、モモンガーもでかいだろ?それに、ファウルカップはこれ以上でかいのがISスーツに対応してないんだよ」

 

ファウルカップとは、本来格闘技などの競技を行う人が試合をするとき、金的などの急所攻撃防止のために装着するものなんだけど、このISスーツにそんな金的防止など意味はない。

ならば、何故付いているのかと言うと、ISスーツとは体にぴっちりとフィットするもので、それを下着を着けずに着込む。

男の場合、ここで問題が発生する。

普通に着ると、股間の”三本目の足”の形がくっきりわかってしまうのである。

水着のようなインナーを穿けば解決するんだけど、インナー穿くなら下着穿いたままでいいんじゃない?

つまり、インナーもダメ。

したがって、三本目の足のシルエットを隠すには、スーツに準拠したファウルカップで局部カバーするしかない。

だからと言って、ファウルカップもどうかと思うけど、試作品だから仕方ないのだろう、と思っておく。

そして、ただでさえ周囲は女性ばかりで、しかも皆ISスーツを纏っている。

そんなもの十代の健全な男子が我慢できるだろうか?いや、できない!!

つまり、”三本目の足が元気になる”のだ!

これはいただけない。

非常にまずい。

下手したら猥褻物で逮捕されかねない。

そこで、苦肉の策でファウルカップを取り付け、本来の使用途と異なる”三本目の足のカモフラージュ”を行うということで落ち着いた。

もし三本目の足が元気になったとしても、ファウルカップの中で元気になるのでなんとかごまかせるのだ。

そんなこんなで大活躍のファウルカップなのだけど、一夏のISスーツに対応しているファウルカップでは、一夏の三本目の足はおさまりきらないようなのだ。

しかし、ファウルカップも大きすぎれば、それは股間の見た目がはっきりと”もっこり”してしまうのだから難しい問題だ。

けど、サイズが合わないと窮屈だろうに。

 

「そっかー、じゃあ我慢するしかないねー。ていうか、一夏の”ビッグマグナム”には負けるよー。僕は標準サイズだよ、たぶん」

 

他の人のは見たことないからねー、一夏の以外は。

 

「いや、少なくとも弾よりはでかいぜ」

 

「………」

 

僕と一夏のボーイズトークはノリノリにはずむ!

こんな会話、教室では出来ない。

したら、まあドン引きされることうけあい。

そしてシャルル君は、僕たちのテンションに反比例して俯き無言になる。

なんかモジモジしてるし。

やっぱりトイレ我慢してるんじゃないかな?

僕はどうしたんだろうとシャルル君を全身を見た。

 

華奢だなあ…

 

………

 

………あ。

 

僕はシャルル君の股間を見て悟った。

 

「…シャルル君、男はサイズじゃないよ、そんなに落ち込まなくてもテクニックを磨けば、君ならモテモテだよ!!」

 

シャルル君の股間は、明らかに僕と一夏よりふくらみがなかった。

つまり…スモールなのだ。

 

一夏が”デザートイーグル”

僕が”コルトガバメント”とするなら、

シャルル君は”ニューナンブ”だ。

 

正直、外国人男性のアレはでかいというイメージがある。

なのに、シャルル君のアレはニューナンブだ。

これは母国で虐められてたかもしれない。

ここは、彼に自信をつけさせないと!!

大丈夫!ここに君をいじめる人はいないよ!

だから、心の傷を癒そう!!

 

「そうだぜ、シャルル、長所を伸ばそうぜ!今夜から勉強だ!!」

 

事情を汲み取った一夏もグッと力を込めて腕を振り上げる。

その空気を読む能力を異性にも発揮してもらいたものだ。

 

「………っ!?えぇぇぇっ!?い、いいいいいいいよ!!ぼ、僕はき、きき気にしてないからっ!!」

 

「隠さなくてもいいよ!大丈夫!ここには君をいじめる人間はいないよ!ゆっくりでいいから、心の傷を癒そう!」

 

「凱が何を言っているのかわからないよ!?何!?僕はいつからそんな変な設定でトラウマ持ちになったの!?」

 

「遠慮するな!よし、まずはこの前家に帰ったついでに持ってきた俺の秘蔵コレクションで…」

 

シャルル君は何故か顔を真っ赤にして慌てる。

 

君達勘違いしてるよ!僕は別にサイズを気にてるわけじゃないよー!!

ていうかサイズ以前の問題なんだよー!!

それになんだよトラウマってー!!

 

そんな心の声が聞こえた気がした。

 

 

 

…うん、気のせいだな!

 

 

 

「…こやつ…」

 

そんな僕たちのやり取りを、イヅナちゃんは目を細め静かに見ていた。

 

 

結局、話し込んでしまった僕たちはグラウンドに向かって全力疾走した。

 

「遅い!」

 

第二グラウンドに到着したけど、織斑先生が腕を組んで待っていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。