IS - M・od   作:阪本葵

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第5話 学園たずねて3000里

「えーと、ここを左に……」

 

『ガイ、そっちは右だ。お茶碗を持つ方へ歩くのだぞ』

 

「ああ、そうか、コッチはお箸か。いやー、都会はごみごみしてて迷うなー」

 

『……ガイはそれ以前の話だぞ』

 

今僕はIS学園というところへ向かっている途中である。

 

束さんの幼なじみで大親友の織斑千冬という人がその学園で働いているらしく、束さんはその人に連絡を取り、僕とイヅナちゃんのこれからの事を世話してくれるそうだ。

 

いやはや、何から何まで束さんにお世話になって申し訳ない。

感謝の気持ちでいっぱいですよ。

 

そんな風に感激していると、イヅナちゃんが真面目な顔でこう言った。

 

「ガイよ、あまりあの獣人族の言葉を信じるな。裏を嗅ぎ取れ」

 

と注意された。

 

女の勘というやつだろうか、イヅナちゃんは最初から束さんにはあまり好意的ではなかった。

 

 

 

 

まあとにかく、僕はそういう経緯でイヅナちゃんと二人でIS学園へ向かっている。

ちなみにイヅナちゃんは、今の姿は目立つという理由で姿を消している。

 

そういう術があるとは、イヅナちゃんはすごいなー。

 

たしかに、人形のようなサイズのイヅナちゃんが飛んだりしゃべったりしてたら周囲の人は驚くだろうから、その対処は正解だといえる。

 

 

そんなこんなで、僕はイヅナちゃんという頼もしいナビに従ってIS学園へと向かう。

 

 

そしてしばらく歩いていると、ようやく目的地であるIS学園の入口にたどり着いた。

 

「はー……」

 

僕は、IS学園を見てため息をついた。

 

なんというか、広い、でかい、綺麗だった。

 

 

あー、束さんが言ってたっけ?

 

世界で唯一のIS育成機関だって。

だから、世界各地から優秀なIS操縦者になるべく、エリート達が集まって切磋琢磨してるとか。

しかも生徒は全員女性。

ISは女性しか扱えないのが世の常識だから当然といえば当然か。

 

……こわいなあ

 

イジメられないかなあ……

 

女の子のイジメはハンパなく陰湿で恐ろしいっていうしなあ……

 

まあ考えていても仕方ないか。

 

とりあえず織斑千冬さんに会わないと。

 

「すいませーん」

 

僕は門にいる守衛さんに、織斑千冬さんを呼んでもらった。

 

 

 

 

守衛さんに織斑千冬さんを呼んでもらって5分程経過したとき、ツカツカとヒールの音が近づいてきた。

 

黒いスーツにタイトスカートを着こなし、長い黒髪を背中で束ね、鍛え上げたであろう美しいボディラインに背筋をピンと伸ばして歩いて来る女性。

意志の強そうな、狼のような鋭い瞳に刃物のような空気を纏った人物が、僕に近づいて来る。

 

そして僕との距離が5メートル程になるとピタリと止まり、僕を見下ろす。

 

 

「私が織斑千冬だ。お前があのバカの話していた奴か」

 

虚偽などは許さんといわんばかりの威圧ある声だ。

 

なんか嫌われてるのかな?

 

「はいー。僕が変態寄りの天才束さんの紹介でこちらに来た百瀬凱ですー」

 

よろしくお願いしますー、と僕はにぱーっと笑いペコリと頭を下げた。

 

すると織斑千冬さんは小さくうっと声を詰まらせ、少し驚いたように目を見開いたがすぐに元に戻り、ついて来いと別の場所へ案内された。

 

 

 

その案内中、織斑千冬さんと他愛ない話をした。

 

「あのバカが寄越す奴だからどんな変態かと危惧していたが……ふむ、普通のようで安心した」

 

「それはよかったですー」

 

「ところで君……百瀬は男だな?」

 

「そうですねー」

 

「百瀬はココがどんな場所かわかっているか?」

 

「わかってますよー。ISを操縦するための訓練施設ですよねー」

 

「大体の事はバカから聞いている。記憶喪失で以前の記憶が全くないそうだな。そして”男なのにISを扱える”ということも、な」

 

「そうですねー。おそらく近いうちに束ねさんがマスコミに僕のことを公表すると思いますよー」

 

「……君はそれでいいのか?今の世の中、君や一夏のような存在はイレギュラーだ。この学園に入学してしまえば日常とはかけ離れた生活を送ることになり、もう戻れなくなるぞ?」

 

「そうですねー。でも僕は、束さんに”織斑一夏君を助けてあげてくれ”と、”友達になってあげてくれ”と頼まれましたー」

 

「……そうか」

 

「そうなんですよー」

 

「……そうか」

 

「はいー」

 

とまあなんか決意表明というか、そんな感じの話になっていたけど、僕は終始笑っていた。

そして、最後のほうは織斑千冬さんの口元もほころんでいた。

 

 

 

 

僕が織斑千冬さんに連れられて来たのは、グラウンドだった。

全方位客席があり、何かの競技場のようである。

 

そして、何故かそのグラウンドにはISを装着した女性がいた。

見たことがある、あのISは『ラファール・リヴァイヴ』だ。

 

詳しくは忘れたが、第二世代の量産ISで結構世界中で広く使用されているはずだ。

 

僕はISを装着した女性を見る。

 

顔に合っていないような大きなメガネに、幼く見える顔、緑色のショートヘア、そしてなにより特盛の胸だ!

 

あれは反則だろう!?

 

あれに挟まれるなら死んでもいいです!!

 

「~~~~~~~~っ!」

 

そんなことを思っていたら、姿を消しているイヅナちゃんに無言で無数のパンチをガスガス喰らった。

 

痛いよイヅナちゃん。

 

しかし、こんなところに連れてきて何をするつもりだろうか?

 

「あのー、質問よろしいですか、織斑千冬さん?」

 

「あー、しばし待て百瀬。山田君」

 

織斑千冬さんはそういいながら緑色の髪の女性(山田君というらしい)に近付きなにやら打ち合わせを始めた。

 

話が終わったのか、織斑千冬さんは僕に近付いてきた。

 

「百瀬、君は専用のISを持っているな?」

 

「え?あ、はいー。紹介しますか?」

 

「……?ああ、頼む」

 

織斑千冬さんは、紹介という言葉に眉を潜めたが、僕はイヅナちゃんを織斑千冬さんに紹介することにした。

 

「イヅナちゃん、もういいよー」

 

そう言うと、イヅナちゃんはパッと僕の横に姿を現した。

人形のような小さな体をふよふよと浮かせる。

 

「織斑千冬とやら、我は『白面金剛九尾イヅナ』、ガイの”あいえす”だ。よろしく頼むぞ!」

 

元気に手を挙げて挨拶するイヅナちゃん。

うむ、癒される。

 

しかし、イヅナちゃんを見た織斑千冬さんはポカーンと口を開けていた。

 

「……百瀬、それがお前のIS……の待機状態なのか?」

 

「待機状態?ああ、いつもはこの姿ですよ」

 

「うむ、本当は解放状態(バーストモード)もあるが、あれは燃費が悪いでな」

 

おや、織斑千冬さんが眉間を指で押さえはじめたぞ?

 

(……あのバカはなんという物を……あのIS、AIではないな……ということはゼクスファクターではないか!?まさか実在するとは……)

 

織斑千冬さん心の中で嘆き呟いている気がした。

 

「……まあいい。百瀬、君には今から入学試験を受けてもらう」

 

気を取り直した織斑千冬さんはそう言った。

 

「え?入学試験?」

 

なんで?

そんな疑問の顔をしていたのだろう、織斑千冬さんは小さくため息をつき腕を前で組んで説明してくれた。

 

「当たり前だろう、ここは学園だ。学び屋だ。しかも厳選された者のみが入学を許可された場所だぞ。選定しないでどうする?私はあのバカの言葉を全て鵜呑みにするほど愚かではないのでな」

 

「うむ、もっともだな」

 

織斑千冬さんの説明にウンウン頷くイヅナちゃん。

 

まあ、言われればその通りなのだけど。

てっきり無条件で入学できると思ってましたよ。

 

「とりあえず、あそこにいる山田君とISで模擬戦をしてもらう。裁定は私が行う。時間は10分、勝敗自体は関係ないが、あまりにもふがいなければ入学は認められない」

 

織斑千冬さんが山田さんを指すと僕と山田さんは目が合い、山田さんは僕にニコッと微笑んでくれた。

 

……和む笑顔だ……

 

「さて、私も山田君も時間がないし、ここの施設を貸りられる時間にも制限があるからな、さっさと始めてもらう」

 

「あ、はい」

 

たまに織斑千冬さんは軍人のような厳しい態度をとる。

軍人しらないけど。

 

まあ時間がないということなので、ここは速やかに始めた方がいいだろう。

 

「よし、頑張ろうな、ガイ!」

 

胸の前で拳を作り気合いを入れるイヅナちゃん。

いちいち癒されるぜ!

 

……よし、とにかく目の前に壁があるのなら、それを乗り越えるしかないな。

 

 

「いこうか、イヅナちゃん」

 

「うむ!」

 

 

 

 

これが、僕とイヅナちゃんの初めての戦い

 

緊張する

 

でも、乗り越えられるさ

 

僕と

 

イヅナちゃんなら

 

 

 

 

……でもできるなら戦わずに平和的解決がいいなあ……

 

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