IS - M・od   作:阪本葵

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第8話 高校デビューで胃痛が…

 

やあ、僕は百瀬凱!

あだ名はモモンガーだよ!

 

今日めでたく僕と一夏はIS学園に入学しましたよ。

千冬さんのはからいで、僕と一夏は同じクラスに。

しかも席も隣だ。

 

とはいえ、僕と一夏の席は一番前だから、迂闊に居眠りできないよ。

 

 

ん?

入学式?

出ていないよ。

入学式には生徒の父兄や国や企業の偉い人が出席するの。

今年は僕と一夏が入学するから、ソレ目的の人も多数いただろう。

だけど、そんなところに僕と一夏が参加すれば、どんなことになるかわかったものじゃない。

主に僕と一夏の心労が。

僕達を楽しみにしていた父兄やお偉いさんはさぞご不満だろうが、そんなこと僕と一夏は知ったこっちゃない。

無用な混乱は避けるべきである、と僕が千冬さんに進言すると、すんなり通ったというわけだ。

もうしばらく日にちが経てば鎮静化していろいろ自由に行動できるだろうけど、しばらくは我慢だ。

 

ところで、一夏は千冬さんがIS学園で教鞭を執っていることを知らない。

今までは、別に内緒にするつもりもなかったそうだが、なんとなくズルズルと話す機会を逃したそうだ。

 

じゃあ僕が一夏に言っておきましょうか?と千冬さんに言うと、言わなくていいと言われた。

 

「入学初日に驚かせるのも面白い」(ニヤリ)

 

とのことだ。

千冬さん、意外とお茶目さんですね。

 

 

ああ、イヅナちゃんはまた姿を消してもらってる。

千冬さんに、むやみやたらにイヅナちゃんを人前に晒してはいけないと言われたからだ。

僕は不満だったけど、イヅナちゃんが了承したので姿を消しているのだ。

消しているといっても、見えないだけなんだけど。

ちなみにこの姿を消す術だが、聞いたところ僕以外がイヅナちゃんを認識できないようにする術なのだそうだ。

術ですよ、術。

忍者みたいだよね。

正確な名称は『認識阻害術』というらしい。

 

これ、男が覚えれば女風呂とか着替えを堂々と覗けるんじゃないか?

つまり、透明人間になれるわけだ。

男のロマンだね!

 

とか考えてたらイヅナちゃんにポカポカ無言で叩かれた。

イヅナちゃん、君はエスパーですか?

 

 

 

話を戻すが、やっぱりこの世界ではイヅナちゃんの存在はかなり特殊なようだ。

千冬さんや束さんも言っていたが、ISとは本来無機物なのだ。

機械だから当たり前か。

 

姿を消すとか、なんか悲しいから、本当なら家で留守番してくれるのが助かるのだけど、イヅナちゃんは僕から離れたくないの一点張り。

ISと操縦者は一心同体だバカモノ、と千冬さんにも怒られちゃった。

で、仕方なく姿を消してもらって一緒にいるわけだ。

今は僕の膝の上で教室内をキョロキョロ見ている。

 

 

 

 

そして今、この教室には僕と一夏以外は全員同年代の女性ばかりだ。

皆キチンと席に座り大人しくしている、というか、僕と一夏を無言でガン見している。

 

隣では一夏が顔を青くして脂汗を流している。

 

「これは……想像以上にキツイ……」

 

そう呟く一夏に、僕は苦笑しかできなかった。

ハンパない注目度に精神がやられてる一夏だけど、まあ仕方ないないだろう。

 

かくいう僕もつらい。

 

背中にビシビシ突き刺さる視線に、僕の背中は汗でぐっしょりだ。

ああ、胃がキリキリする。

 

「俺…モモンガーがいてくれて本当によかったと心から思ってるよ。この空間に男一人は…地獄だ…」

 

「……お役に立ててなによりー」

 

一夏と僕はお互い引き攣った笑みを浮かべた。

 

まあ僕が願うのは一つ、”平穏な学園生活”だ。

つまり、当たり障りなく、皆仲良く、イジメなどなく(これ重要!)、平凡無事に毎日を過ごしたいという事だ。

 

……うん、無理だね。

わかってるよ。

 

この学園に入学した時点で無理確定だよね。

 

 

自分で選んだ道だから、後悔はない。

でも願わくば、少しでも多くの安息の時間を!

 

一人心の中で願っていると、ガラッと音をたてて教室のドアが開いた。

 

そこには、緑のショートヘアの年下に見える童顔の女性がいた。

ツカツカと教壇に向かって歩きだすが、なんとも頼りない歩き方だ。

緊張でもしているのだろう。

 

「皆さん入学おめでとう。私はこのクラスの副担任の山田真耶です」

 

 黒板の前でにっこりと微笑む女性副担任こと山田真耶先生。

生徒達とそう変わらない小柄な体系なのに服と眼鏡のサイズが合っていないのか『子供が無理して大人の服を着た』か『子供が背伸びしている』といった印象を与えている。

しきりにズレるメガネを直す仕種は癒されますよ。

 

それにしても巨乳ですね!

童顔巨乳女教師、ファンタジーですよね!

でもそんなファンタジー大好物です!

 

ビバ、おっぱい!

 

しかし、どこかで見たことがあると思ったら、入学試験の時に相手してくれた人じゃないか。

 

ああ、そういえば山田さんだったな、名前。

おっぱい見るまで思い出せなかった。

 

 

「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

 

「………」

 

 山田先生の挨拶に帰って来たのは沈黙、教室の中は変な緊張感に包まれている所為か誰からも反応がない。

 

僕のとなりにいる一夏は未だ顔を青くしている。

 

僕は山田先生の登場で若干気持ちがほぐれました。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

 

 涙目になりながらちょっとうろたえる副担任がかわいそうだったがこれも経験ですよ。

かわいいからもっとやれ。

 

自己紹介は『あ』から始まった。

 

しかし、この席の配置はどういった意図があるのだろうか?

 

普通最初は名前の順に席を並べると思うのだけど、見事にバラバラだ。

 

だって今自己紹介している出席番号一番の『相川』さんは全然出席番号一番の『あ』とは関係ない場所に席があるのだから。

 

「織斑君?織斑一夏君!」

 

「は、はい!?」

 

僕が思考の海に潜っていると、山田先生が大声で一夏を呼んでいた。

一夏は緊張しすぎて周囲に気を配る事ができないくらいテンパっているのだろう。

 

「ごめんね、大声出して。でも、『あ』から始まって、今『お』なんだよね?自己紹介してくれるかな?ダメかな?」

 

手を合わせ一夏にお願いする山田先生。

 

おお、体を前のめりにするから、教卓に巨乳が乗っかってる!

素晴らしい角度だ!

 

ごっつぁんです!

僕は心の中でありがたや〜と山田先生の巨乳を拝んでいたら、膝に座っているイヅナちゃんに太ももをおもいっきりつねられた。

 

痛いよイヅナちゃん。

 

 

「え、えーと……織斑一夏です……」

 

一夏はそう言うと黙ってしまった。

緊張した空間ではソレが精一杯だろうが、周囲の女子はソレを良しとしない。

 

え?それで終わり?

 

もっと喋ってよ!

 

そんな心の声が聞こえるようだ。

 

「………」

 

無言の圧力を一夏にぶつける女子達。

30人近くのプレッシャーが一夏の背中に突き刺さる。

 

そんなプレッシャーに耐えられないのか、一夏は情けない顔で僕に助けを求めるように目で訴える。

 

しかし、人の自己紹介を助ける方法など僕は知らない。

下手に助け舟をしたら、一夏には頼りない奴などのレッテルを貼られ、その後の学園生活に支障をきたす恐れが大いにある。

 

ここは心を鬼にしなければならない。

 

僕は一夏に大袈裟に肩を竦め見せた。

 

 

おお、『この薄情者!』という目で睨んでくる一夏。

 

これも君のお気楽学園ライフのためだよ。

 

すると、一夏は僕と反対側の席に目を向けた。

 

そこには、長い黒髪をポニーテールにした女の子がいた。

 

なんか抜き身の刀みたいな空気を纏う子だな。

 

……?

どこかで見たことがある子だな?

どこだったかな?

 

あ、一夏から顔を逸らした。

 

どうやら一夏はあのポニーテールの子と知り合いのようだ。

 

周囲に味方がいない一夏は、開き直ったのか、カッと目を開きいた。

腹を括ったようだ。

 

「……以上です!」

 

……男前だよ、一夏!

 

「…くくくっ…くひひ…我慢できん…!」

 

膝の上のイヅナちゃんが声を殺しながら腹を抱えて笑っている。

 

笑っちゃダメだよイヅナちゃん。

ていうか、僕には笑えないよ。

だって僕も一夏と同じことになる可能性大だから!

 

そんな、自分に置き換えて恐れ戦いていると、突如黒い物体が一夏の頭に落ちてきた。

 

パコーン!

 

いい音だ。

中身がなんにも詰まってない、木魚のようないい音だ。

 

僕は一夏の頭に黒い物体を落とした人物を見てニコリと笑い、逆に一夏はその人物を見て驚いていた。

 

「げぇっ、関羽!?」

 

パコーン!

 

「誰が三国志の英傑か、馬鹿者」

 

「織斑先生!」

 

山田先生が嬉しそうに現れた人物の名前を呼ぶ。

 

そう、現れたのは織斑千冬さん、一夏のお姉さんだ。

僕は事前に千冬さんがクラスの担任になると聞いていたから別段驚かなかったが、一夏はそうはいかなかった。

 

一夏にとって千冬さんとは、唯一の肉親だが、職業不明で月に1、2回しか家に帰ってこないとても謎が多い女性であるからだ。

 

「もう会議はよろしいんですか?」

 

「ああ、クラスの挨拶を押し付けてすまないな山田君」

 

「い、いえ、私副担任ですから…」

 

凛々しい千冬さんが登場すると、途端顔を赤くしてクネクネしだす山田先生。

 

千冬さんは、そんな山田先生を一瞥すると一夏を睨んだ。

 

「で?貴様はまともに自己紹介もできんのか?」

 

「い、いや、千冬姉それは……」

 

パコーン!

 

「学校では『織斑先生』と呼ばんか馬鹿者が」

 

「は……はい」

 

ショボンとする一夏に対し、呆れた顔で黒い出席簿という武器を片手に持つ千冬さん、もとい織斑先生。

 

「自己紹介の続きを始めろ」

 

 

織斑先生の一言で、一夏の後の人が自己紹介を始めた。

 

 

 

そして順調に自己紹介が済み、ついに『も』が来た。

 

僕は緊張しつつゆっくりと席を立ち、皆の顔が見えるように体を180度回転する。

 

うっ

 

やめて!

 

そんな期待に満ちた目で僕を見ないで!

 

(ファイトだぞ、ガイ!)

 

ふんすと鼻息荒くガッツポーズするイヅナちゃん。

イヅナちゃん、今の僕にはその声援は苦痛です!

 

そうだ、確か観客をカボチャだと思えというありがたい言葉を聞いたことがある!

 

よし、カボチャ…カボチャ……ここにいるのは皆カボチャ……

 

……

 

………

 

…………無理。

 

全員美少女なのに、そんな顔をカボチャだなんて置き換えられない。

 

しかし何故皆さん美少女なんだろう?

 

この学園の選定基準にあるのだろうか?

 

まあいい。

 

もう開き直れ!

 

もうどーにでもなれー!

 

「……えーと、百瀬凱といいますー。ISについては素人なんで、皆さんよろしくお願いしますー」

 

僕はぺこりと頭を下げる。

 

パチパチパチパチ

 

おお、拍手がおこったぞ!

いやいや、照れますなー。

 

だけどなんとか第一関門は突破したな!

 

 

 

あ、

 

忘れてた。

 

これは言っておかないと。

 

 

 

「ああ、あだ名はモモンガーですー」

 

 

 

パチパチ…パチ…

 

 

『………モモンガー?』

 

クラスメイトが全員ハモったよ。

 

 

あれ?

織斑先生も呆れてるよ?

 

 

 

なんで?

 

 

 

 

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