桜が咲き、リリーホワイトが元気に春を告げるようになったこの頃。雪羽は紅魔館にいた。しかもいつもとは違い、白いタキシードを着てだ。吸血鬼のいる館で結婚式って訳わかんねえよ。まあ、早苗の要望なら仕方ないけどさあ。咲夜の部屋で緊張しながら待ち続ける。まだ始まるまでは30分ある。その間に緊張を解せないことは無いが人生の節目の為、簡単には緊張は解せない。固まりながら座っていると突然ノックの音が聞こえた。驚き、椅子から転げ落ちてしまう。痛ってえ・・・こんな日に怪我したら洒落にならねえぞ。
「入りますよ?」
「あ・・・ああ。」
ドアの方を見るとカメラを持った絆が立っていた。なんだ、絆か。なんだじゃねえけど。こけた体勢のままでは恥ずかしい為椅子を直しながら立ち上がる。そして絆に用件を聞いた。まあ大方予想はつくが一応な?
「どうしたんだ?」
「ゆかりんがお兄ちゃんの写真を撮ってこいって言ってまして。」
「なるほどな。どうぞ?」
椅子から立ち上がり写真を撮れる様にする。座ってても良かったかもな。そう考えているとフラッシュが光り写真が撮れた事を合図した。絆がOKとサインを出したのを確認すると椅子に座る。写真を確認すると絆はドアを開いた後一礼し、雪羽に話しかけた。
「では、僕は用意をしにいってきます。・・・ご結婚おめでとうございます。ビョウちゃんの事幸せにしてあげてください。」
「ありがとう。お前も葉ーちゃんと仲良くな。」
絆ははい!と元気よく言い部屋を出ていった。あ〜恥ずかしい・・・。俺本当に結婚すんだな。実感ねえわ。だが絆のお陰で緊張が解れた様でさっきまで固まっていた表情や体がいつも通りの感じになった。そのままぼーっとしているとノックも無しに優と幽香が入ってきた。
「オイオイ。ノックも無しかよ。」
「したわ。あなたが聞いてなかっただけよ。」
「ぼーっとしてんじゃねえよ。」
「悪かったな。そんな事より結婚式まで来てくれてありがとう。」
「まあ一応弟子の結婚式だしな。行ってやらねえと駄目だろ?」
「誰も来いとは言ってない。」
頭を小突かれる雪羽。そしてそのまま何分か話す。なんで普通の事言ったのに頭を殴られなきゃいけないんだ?そう言おうとした瞬間何やら優の方から不穏なオーラを感じた為言わない様にしておく。絶対言ったら殺されるじゃん。結婚式が命日って訳わかんねえよ。原因不明の殺気にあてられた後、優と幽香は出ていく際に一言だけ言い残して出ていった。
「『あの子』の事決着付けてやれよ?」
「まあ、あなたの答えは決まってるでしょうけどね。」
あの子って言うと・・・誰だ?言われた人物の予想がつかない為しばらく考え込む。するとドアが丁寧にノックされ、紫髪の女性が中に入ってきた。・・・え?衣玖?接点とか無いはずだけど・・・。何故か来た衣玖に驚きながらも話を聞こうとする。すると衣玖が話し始めた。
「ご結婚おめでとうございます雪羽さん。」
「ありがとう。どうしたんだ急に?」
「総領娘様が雪羽さんを中庭に連れてこいと申しまして。」
「なるほど。じゃあ行ってくるよ。」
「あ、風の事宜しくお願いします。」
「ああ、任せとけ。」
ついでのように言われた風の事を不憫に思いながら、言われた通り紅魔館の中庭まで歩いていく。衣玖も大変だなあ・・・天子に振り回されてたら俺は数日も耐えられないぞ多分。天子が聞いたら悪口にしか聞こえない様な事を考えながら中庭のドアを開く。見当たらなかった為、辺りを見回すと少し端の方にあるベンチに座っていた。天子と話すために近づく。天子も雪羽に気づいたらしく雪羽の方を向いた。
「どうしたんだ?」
「いえ・・・。結婚おめでとう。」
「ありがとう。お前が来てくれるなんてどういう風の吹き回しだ?」
「・・・別に良いじゃない。」
「何いじけてんだよ。」
怒ってるのか天子がワナワナと震える。俺悪い事言ったか?少し逃げる準備をしながら座っていると天子が口を開いた。
「あんたが鈍感なのが悪いんでしょ!何回も私が思いを伝えようとしてもあんたが見てんのは早苗だけ!私の事も少しは考えてよ・・・!」
言いたい事を全てぶちまけた後天子は泣き出してしまった。・・・悪い事しちまったな俺。無理だと分かっていながらも思いを伝えた天子。彼女が雪羽の事を思っていたのは紛れも無い事実。だが彼女の思いは早苗の思いに負けてしまった。雪羽は一度目を閉じると天子を抱きしめた。そして謝罪の言葉を何回か唱える。天子の顔は驚いていた。そして涙を残したまま笑うと話しかけた。
「やっと何かしてくれた。」
「ごめん。お前が俺の事を思ってくれてたのは嬉しいけど・・・。」
「みなまで言わなくて良いわ。ちゃんと伝えられて良かった。」
「そうか。」
「あ〜あ、フラレちゃったな。」
「そんなもんさ。でも案外近くに運命の相手がいたりしてな。」
「どういう意味よ?」
「それはお前次第だ。」
天子に手を振りながら中へと戻っていく。そして柱の影に隠れていたらしい風にウインクする。盗み聞きとは感心しないな。・・・後はお前次第だ。頑張れよ。柱の影から天子の方まで歩いていく。そして隣に座るとハンカチを出した。
「これで涙を拭いてください。」
「・・・ん。ありがと。」
「泣きたいなら好きなだけ泣いてください。僕がちゃんと受け止めてあげます。」
「・・・風の癖に生意気ね。」
風の横でもう一度泣き始める。早苗に負けたのは癪だけど雪羽の選んだ事だしね。・・・本当におめでとう。咲夜の部屋に戻ってきた雪羽は座りながら開式の時を待っていた。本番前となると再び緊張するようでまた雪羽の表情と体は固まっていた。ノックの音が聞こえ立ち上がる雪羽。ドアの先には咲希が立っていた。
「お時間です。」
「分かった。」
咲希に誘導されながら式場まで向かう。今回はドジやらかさなかったな。別に良いけど。拍手を受けながら敷かれたレッドカーペットの上を歩いていると純白のウェディングドレスに身を包んだ早苗が立っていた。段々周りが騒がしくなっていく。いつもとは違う白い服を着た霊夢の前に立つと霊夢が口を開いた。
「本来なら聖書なんて私には縁が無いけど今回だけ特別に読んであげるわ。」
「ハハッ、ありがとう。」
「汝、この者を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか?」
「誓います!」
「汝、この者を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか?」
「誓います。」
桜が舞い散る中二人の結婚式は進んでいく。早苗の薬指に指輪がはまる。その瞬間紅魔館の周りが歓声で溢れた。紫と桜花は笑顔を浮かべながら拍手をしていた。刀華と冬華も笑いながら祝福の拍手を送る。神奈子と諏訪子は神奈子が泣き出してしまいどうやらそれどころでは無いようだった。
「雪羽さん?今までちゃんとしたキスはした事ありませんでしたね。」
「そうだったな。じゃあ、今やるか?」
「今ですか!?」
「今だろ!!」
「ほら、魔理沙にも言われてるぞ?」
「良いからさっさとしなさい。」
「霊夢さんまで!?」
まあ、大勢に見られるのが嫌なのは分かるけどさ。二人は肩をすくめながら笑うとお互いの唇を重ねた。再び歓声が上がる。二人は桜舞い散る青空の中、今までと変わらない笑顔を浮かべる。これから始まる強大な力を持つが使わないスキマ妖怪と少し変わった現人神の新たな物語。二人がこれから歩む道はどうなるか分からない。だが幸せに溢れた生活が始まる事はここにいる誰もが分かっている事だろう。満面の笑みを浮かべ雪羽の方を向く早苗。 すると予想外の言葉が聞こえた。
「天子さんの事どう責任取ってくれるんですかね?」
「おっと。今まで以上にお前を愛するんじゃ駄目か?」
「そんなの当たり前じゃないですか。」
「・・・じゃあもう一度キスするか?」
「それでも駄目です。」
やれやれ、いきなり大変だな。まあそこらへんも含めて好きなんだがな。どうしたら許してもらえるか考え直す。考えていると早苗が耳元で囁いた。
「別に浮気じゃないようですし許してあげますよ。」
「最初から言えよそういう事は。」
呆れながら早苗と皆の方へ歩いていく。天子と風の姿が見え少し気まずく感じてしまうが天子が風にお姫様抱っこされながら寝ている所を見て微笑んだ。まあ、これで良いんだよな。再び笑い早苗の方を向く。早苗がきょとんとした様子で雪羽の方を向くと再び囁いた。
「これからずーっと宜しくお願いしますね。」
最後話どうでしたか?去年の五月から始まった東方境壊伝もこれで一旦完結です。十ヶ月間も書いてたんですねえ。初めての作品という事もありお見づらい部分も多々ありました。それでもここまで書いてこられたのはもう外した方もいますが今までお気に入り登録して頂いた方やコラボして頂いた方。そしてもうこのハーメルンからいなくなってしまったお二人、ハーメルン運営のお陰です。本当にありがとうございます!最終話なのに安定の低クオリティでなんとも言えませんが本当に皆様と最終話を迎えられて良かったです!結婚エンドという名のベタなハッピーエンドな訳ですが結局これに落ち着いちゃうんですよね。これからあの二人はどのような人生を歩んでいくのか。それは皆様次第です。では今まで読んでいただきありがとうございました!