久しぶりに外の世界へと帰ってきた二人。何故外の世界に急に来たかと言うと結婚報告と残月家へ春香が死んだという訃報を知らせるためである。先に早苗の家に行った時に旧友が出てきて諏訪弁全開で話したり早苗の父親が酔った勢いで急に雪羽の事を悪く言い、それに怒った早苗が父親と口喧嘩をしたりと色々な事があったがなんとか東京にある残月家へとその日の内に行く事が出来た。
「本当にお父さんが余計な事を言ってごめんなさい!」
「別に気にしてないからもう良いよ。面白いお父さんじゃないか。」
笑いながら残月家まで歩いていく。時刻は午後7時になろうとしていた。辺りはほぼ明かりが無いと見えないほど暗くなり少しだけ早苗が怖がっていた。正直雪羽も少し怖いがここは東京だ。出てきて怖いのはひったくりか痴漢ぐらいだろう。雪羽はもうお化けとかそういう類に仲間入りした訳だし。・・・本当に変なのが出てこないと良いが。そう思っていると突然何かが前から走ってきた。
「雪羽君〜!」
「「うわああああ!?」」
思わず叫んでしまう二人。近所迷惑とかそういう事は驚いてしまい完全に二人の頭からはすっぽ抜けていた。とりあえずなんとか落ち着いてきた為突如現れた女性の顔を改めて見る。
「なんだ浅葱叔母さんか。」
「叔母さん?」
「・・・浅葱お姉さん。」
「お久しぶりです浅葱さん。」
彼女は
「玲は藍や紫様と仲良くやってる?」
「大丈夫だ。・・・殺されかけたけどな。」
「ん?何だって?」
「聞こえてるだろ絶対。」
九尾としての見た目に戻っている為確実に聞こえてる。雪羽は適当に話を切り上げるとさっさと早苗と残月家へと歩いていった。・・・実際春香が死んだ事を報告すると思うと気が重いな。何分か歩きようやく残月家に着いたところで玄関先のインターホンを鳴らす。すると母親が出てきた。
「あら。雪羽と早苗ちゃんじゃない!久しぶりね〜上がって上がって!」
「あ・・・ああ。テンション高えな・・・。」
「お邪魔します。」
苦笑いしながら中へと入っていく。中は家を出た時と何も変わっていなかった。多分雪羽と春香が帰ってきた時のための配慮なのだろう。だが春香はもう・・・。丁度夕飯を食べ終えた頃らしく食べ終えた跡が所々に残っていた。
「お、雪羽と早苗ちゃんか久しぶり。」
「お久しぶりです。」
「ただいま。」
「そういえばどうしたの?二人で薬指にお揃いの指輪を付けちゃって。」
え?何故気づかないの?まあ報告に来たんだけどさあ。とりあえず椅子に座り二人と話し始めた。
「まあ・・・なんというか。俺と早苗はつい最近結婚したんだよ。」
「「・・・え?」」
「だから、結婚したんだよ。」
フリーズする二人。雪羽と早苗はそのまま黙っていたが突然二人が食ってかかるように話し始めた。
「いつの間に式なんて挙げたんだ!?」
「呼んでくれれば良かったじゃない!春香も来たんでしょ!?」
「春香は・・・来たよ。」
「雪羽さん・・・。ちゃんと伝えましょ?」
「ああ、そうだな。」
雪羽は真剣な表情になると二人に少し暗い口調で話し始めた。釣られて早苗も暗い顔になってしまう。
「春香は・・・死んだ。」
「え?」
「本当か?」
「ああ。人里で流行ってた流行り病に罹ってな。」
それから二人に病気はギリギリで治ったが衰弱死してしまった事、苦しまずに死んだ事がせめてもの救いだったという事。その他色々を話した。父親は泣くと雪羽の胸倉を掴んだ。抵抗せずそのまま父親の顔を見る。そして雪羽の顔を何故か殴り始めた。多分その怒りと悲しみの行き場が無いのだろう。それを雪羽にぶつけてしまったのだ。急いで止めに入る早苗と母親。だが雪羽はそのまま殴られ続けた。
「・・・いい加減にしろ。俺を殴った所で春香は帰ってこない。それでも信じられないって言うならあんたの脳と心臓以外を撃ってでも信じさせるぞ?」
コートの内ポケットからブルーローズを抜くと父親の左肩に突きつけた。だがそれでも父親は雪羽を離さない。信じられないのは分かっているんだ・・・!でもあんたが殴ったりして逃げたら駄目だろ・・・!雪羽は更に父親に言う。
「あんたがこのまま殴り続けて逃げるのは勝手だ。だがそのままこの先も春香の死から逃げ続けるのか?あんたは逃げたら駄目だろうが!」
雪羽の体が地面へと離された衝撃で崩れ落ちる。少しむせると父親を睨んだ。傍から見れば怒っているように見えるだろう。だがそうではない。雪羽はスキマを開くと早苗と一緒にその中へと消えていった。父親はそれを見送ると密かにこう言った。
「僕達の子供はもういないんだね。」
「雪羽がいるじゃない。血は繋がってなくてもれっきとした家族よ。」
「・・・そうだね。」
今書いてみると残月家のお二人というより母親の方からどこか冷たい印象を個人的に受けました。まあ、いいや。久しぶりに春香が亡くなったという話が出てきましたが雪羽はそれを忘れたりそれから逃げたりした事は今の所はまだありません。彼はそれを受け止めもう二度と同じ事を起こさないように生きています。ではまた。