番外編 射命丸 文の起源
この物語は雪羽たちのいる幻想郷の1190年前の物話である。まだスペルカードルールの無かった時代妖怪の山に変わった鴉天狗が住んでいた、名は翠月 茉弥と言った。彼女は黒髪のロングヘアーに着物、そして右目に眼帯をしていた。彼女は5年前の戦いで唯一無二の親友を失い何にも興味を示さない悲しい人生を送っていたがとある冬、ある少女との出会いで彼女の人生は変わった。
「すいませ~ん。一夜だけでも泊めさせて貰いませんか?」
見たところ10歳くらいだろうか、自分の子供と言っても差し支えないほどの自分に良く似た少女が体を震えさせながら頼む。
「ええ。別に構わないけど貴女お母さんとお父さんは?」
「私はお父さんとお母さんに家を追い出されたんです。」
その言葉に茉弥は怒りを覚えた。このような寒空に薄着で子供を追い出すような両親がいるのかと。
「そう…じゃあ一夜だけと言わずもうここに住みなさい。」
「え?いいんですか?」
「いいよ。私も一人でいるのにもそろそろ飽きてきたしね。」
「ありがとうございます!所でお名前は何と言うのですか?」
「私?私は翠月 茉弥って言うのよ。貴女は?」
「私は射命丸 文と言います。」
その名を聞き茉弥は驚いた。鴉天狗の中でも優秀と言われる射命丸家の跡取り娘と言う事に。
「文ちゃんかいい名前ねそうだお腹空いてない?ちょうど夕飯を食べる所だったのよ。」
「頂いてもいいのですか?」
「文ちゃんは家族よ。家族にご飯を食べさせない人がいるかしら?」
「…ありがとうございます。」
「畏まらなくてもいいのよ。」
久々に茉弥は他人と話しながら食事をした。そういえば何時ぶりだろうこうやって他人と話して笑顔を見せたのは。そんな事を考えていた茉弥だったが文の笑顔を見てそんな事も馬鹿らしくなっていた。
こうして200年が経った文は黒髪の美しい鴉天狗へと成長していた。
「美人さんに育ったね~。」
「さすがに茉弥さんには負けますよ。」
文と茉弥は縁側でお茶を啜っていた。
「そういえば茉弥さんの眼帯の下ってどうなっているんですか?」
「…やっぱり気になる?」
「ええ。気になります。」
茉弥は溜め息をついて文に話しかける。
「…まさか文ちゃんが私の右目の事を知りたいなんて思ってもいなかったな~。」
そう言って茉弥は眼帯を外し始める。眼帯の下は火傷の後と刀の切り傷がついていた。
「驚いた?」
「…ええ。」
「この傷はね私の親友をね助けようとして負った傷なの。助けようと敵陣に飛び込んだら右目が松明で焼かれるわ小刀で刺されるわで大変だったのよ?」
「そんな事が…。」
二人の間に重々しい空気が流れる。それはいけないと思った茉弥は眼帯を付けながら話を変えた。
「そう言えば文ちゃん今日誕生日だったでしょ?」
「えっ…?はいそうですけど…?」
文は不思議そうに首を傾げる。
「じゃーん!これ誕生日プレゼント。文ちゃん新聞記者になりたいって言ってたでしょ?」
そう言って茉弥は文に黒くレンズが赤いカメラを渡した。
「カメラ?そんな物何処から手にいれたんですか?」
「河童に頼んで作ってもらったのよ。」
「ありがとうございます。大切に扱います。」
「うん。新聞記者になるなら一番を目指しなよ?」
「勿論です!」
「文ーいるー?」
上空から能天気な声が聞こえる。文の親友の姫海棠 はたてだ。
「おやはたてが呼んでいますね。すいません茉弥さん行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
茉弥は笑顔で返し文ははたての元へと飛んでいった。
「…どういう事かしらね。だんだん文ちゃんが一人立ちするのが寂しくなってきたわ。ごく普通の事なのに。」
茉弥は右手から酒瓶を出した。茉弥の能力『物を造り出す程度の能力』だ。
そして更に500年後。
「そろそろ行くの?」
「はい。いつまでも親元を離れられないなんて恥ずかしいですからね。」
文は涙を堪えて言う。
「そうよね…。じゃあいってらっしゃい。」
「…行ってきます!」
そうして茉弥はまた一人になったがその一人の時間は10ヵ月で終わった。茉弥は死んだのだ。茉弥が死んだとき一番最初に茉弥の所に来たのは文だった。その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。その首に茉弥からプレゼントされたレンズが赤いカメラを下げて。それから文は元住んでいた家を引き払い、茉弥の家に住み始めた。
─そして現在。
「文は自分の子供が産まれたらどんな名前にするの?」
そんな質問をするのは姫海棠 はたて。文の親友でありライバルである。
「んー…。恩人の名前を取って『茉弥』とでも名付けましょうかね?」
寂しそうな笑顔を浮かべてそう言うのは射命丸 文。茉弥に拾われていなかったら今頃ここにはいなかった少女だ。
「恩人の名前か~…。貴女らしいわね。」
「貴女らしいとはなんですか!」
危ないと思ったはたては空へと逃げたが、それを文は逃さなかった。文もすぐに空へと飛び立つ。その顔には一辺の曇りすら無い満面の笑みを浮かべていた。そしてその首に掛かったカメラは赤いレンズが綺麗に輝いていた。
はいというわけで番外編どうでしたか?こちらの世界の私は女ですが本当の私は男ですからね?いやー何故かねこんなお話を書きたくなったんですよ~この話はこの小説の最後の方で重要になると言いましたこの言葉に嘘偽りはありませんじゃないとこんなの書きませんからね謎だけ作っておいて本編の方の次回も良ければ見ていってくださいね