東方境壊伝 【完結】   作:翠月茉弥

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今回のタイトルが今までの中で一番おかしい気がする翠月茉弥です。今回はタイトル通り夏といえばという物のお話となります。では本編の方をどうぞ〜


第32話 夏といえば?

もう完全に夏と化した幻想郷。いつもスーツを着ている雪羽もシャツの袖をまくり半袖になっている。幻想郷の夏は暑い。海も無ければ冷房も無い。外の世界に慣れていた雪羽にとっては地獄のような暑さなのだ。寺子屋で仕事しようにも今は夏休み、生徒は誰もいない。人里に行っても最近何故か騒がしく、人の群れが出来ているので行っても更に暑くなるだけなのである。

 

「・・・暑い。」

 

守矢神社にある自分の部屋の床に突っ伏せながら雪羽はやる気の無い声を出す。ちなみに神奈子も夏の暑さにやられている。今元気なのは早苗と諏訪子だけだ。(にとりに助けてもらおうかね?)雪羽は倒れながら考えたが流石に頼りすぎるのもいけないと思いやめた。そんな暑さにやられながらも他人に遠慮している雪羽の頭上から久しぶりに聞く声が聞こえた。

 

「若いのが暑さにやられて部屋に篭っているなんて。」

「久しぶりだな。母さんはなんで暑くねえんだよ?」

「スキマの中は涼しいのよ。」

「それ先に教えてくれよ。」

 

何故そんな得な情報を早く教えてくれなかったのかと雪羽は思ったが紫だからと納得しその事は放置した。

 

「で?何用だ?」

「いや今日人里で祭りがあるの知ってる?」

「人里が騒がしかったのはそれが原因か。」

「そうね。でね、贈り物を持ってきたの。」

「贈り物?」

 

そう言うと紫はスキマから四角形の箱を出した。それを雪羽に渡すとすぐにこの場から消えた。消えた紫に呆れつつも貰った箱を開けると、その中には藍色の着物が入っていた。

 

「これ着て祭りに行けって事か?」

 

雪羽に着物が渡された時、早苗は相変わらず庭の掃除をしていた。それを縁側で諏訪子が見ている。早苗は額についた汗を拭うと、箒を片付け始めた。その横で刀華が片付けの手伝いをしていた。片付け終えた後、早苗が洗濯物を干そうと洗濯物を取りに行った時、諏訪子が笑みを浮かべた。

 

「早苗。」

「はい。どうしたんですか諏訪子様?」

「いつも頑張ってるからプレゼントをあげようと思ってね。」

「いえいえ。そんなプレゼントなんていいですよ。」

「いいから受け取りなって。」

 

諏訪子が半ば強引に早苗に袋を渡す。早苗が刀華の方を見ると刀華は「後は私がやっておきますよ。」と言った。早苗はまあいいかという顔をすると袋の中身を見た。その中には紫陽花があしらわれた浴衣が入っていた。

 

「浴衣ですか?」

「そう。これで雪羽と祭りににでも行ってきな。」

「でも夕飯などは・・・」

「私が今日一日代わりに仕事をしておきますから、雪羽さんと楽しんできてください。」

「でも・・・。」

「刀華もこう言ってる事だしさ行ってきなよ。」

「じゃあお言葉に甘えて・・・。」

 

早苗は諦めたようにこう言った。祭りまで後5時間。待っている間何をしようかと早苗は考えていた。人間の里。ここでは寺子屋の教師達が揃って祭りの用意をしていた。その場に雪羽の姿は無い。雪羽は妖怪の山に住んでいる。なので伝えに行こうにも伝えに行きづらいのだ。

 

「まったく・・・なんでお兄ちゃん連絡取りづらい所にいるのかな・・・。」

「まあいいじゃないか。どうせ雪羽は早苗と来るんじゃないか?」

「そうでしょうね。私達も回りましょうか?」

「たまにはいいな。」

「でしょう?」

「とりあえず今は口より手を動かそうか。」

「はーい。」

 

そして5時間後。祭りが始まった。雪羽と早苗は既に着替えてある。後はどちらかが誘うだけだ。ばったり玄関で出会う。先に口を開いたのは雪羽だった。

 

「祭り一緒に行くか?」

「奇遇ですね。私もちょうど誘おうと思っていたんです。」

 

雪羽と早苗は一緒に階段を降りる。もう既に祭りは始まっている。急がなければ間に合わない。飛んですぐに珍しく浴衣を着た文と同棲している男性を見つけたがあえて雪羽達はスルーした。どうせ祭りで会うのだから変わらないと思ったからである。そして人間の里に着いた。着いてすぐに早苗は一目散に金魚すくいの屋台に走っていった。

 

「雪羽さん!雪羽さん!金魚すくいですよ!行きましょう!」

「え!?ちょっ・・・待てよ!」

 

想像以上の早苗の金魚すくいへの食いつきに驚きを隠せず少し遅れて早苗を追いかけて金魚すくいの屋台の所に行く。早苗はもう既にお金を払い金魚すくいを始めていた。始めて1分後早苗の手には5.6匹の金魚が入った袋があった。雪羽の手にはりんご飴がある。ぼちぼち屋台を巡りながら歩いていると文達にばったり出くわした。

 

「おや雪羽さん達じゃないですか。」

「おう文。同棲している男性ってどんな人なんだ?」

「そういえば今日一緒に来てるんでした。」

「そこ普通忘れないですよね!?」

 

忘れないであろう事を普通に忘れている文に思わずツッコミを入れる早苗。雑談をしているとその話の男性が来た。

 

「どこに行ってたんだよ。文」

「あれ?凉兄?なんでここに?」

「誰かと思えば雪羽じゃないか。大学の帰り道に何かに落ちてここに来ちゃってね。」

 

雪羽は何かに落ちてという言葉に何か思い当たる節があったのか、少しぎこちない笑いを浮かべた。これの犯人は考えるまでもなく紫である。文はそんなぎこちない笑いを浮かべている雪羽のりんご飴を普通に奪っていた。

 

「あっ!ちょっ!それ俺のりんご飴!」

「放っておくのが悪いんですよ〜。」

「返しなよ。僕が後で買ってあげるからさ。」

「じゃあ返します。」

「ちゃっかりしてんなあ。」

「そういえば凉さんと文さんってお付き合いしているんですか?」

「「何を言ってるんですか!?(言ってるの!?)」」

 

(あ。こいつら絶対付き合ってるわ。)雪羽は完全に確証を持っていた。早苗は素直に付き合っていないという言葉を信じていた。文はバツが悪そうな顔をすると凉を連れてりんご飴を買いに行った。突如花火が上がる。それを見て雪羽は何かを思い出した顔をした。

 

「そういえば・・・魔理沙が祭りの日に花火を打ち上げるって言ってたな。」

「言われてみれば星とかがあって魔理沙さんらしいですよね。」

「そうだな。」

 

この幻想郷で後どれくらい早苗と祭りに行って花火を見る事が出来るのか。雪羽は何故か花火を見てそう思っていた。確かに雪羽は妖怪、早苗は人間という種族差がある。奇跡でも起こらないかぎり1年に一回とすると少なく見積もってせいぜい後64回という所だろう。人間から見れば多いが雪羽にして見れば人生のたかが0.2ぐらいの時間なのだ。早苗は花火に見とれている。花火の光で雪羽の顔から涙が出ているのが見えた。




はいというわけで第32話どうでしたか?
「最後に話を少し重くすんなよ・・・。」
でも人間と妖怪の恋にとって避けては通れない壁じゃないですか。恋ではありませんが咲夜さんとレミリアさんだっていずれは永遠の別れが来るのです。凉と文さんも一緒です。一緒に住んでいる存在が少なく見積もって後51年で居なくなるのです。悠久の時を生きる妖怪としてはごく短い時間なんです。だからこの小説ではこういう種族差の寿命の違いもテーマの一つとして使っていきたいんです。
「私も妖獣ですが何人も死んだ人間を見てきました。雪羽さんの死ぬ時には私はまだ存在するんですかね?」
そういえば刀華と雪羽って184歳差があったね。でも私にもどこまで君達が生きるかは分かりません。読者が死んだと思えば君達は死んでいるかもしれない。私が生きていると思ってもすぐに死んでしまうかも知れない。結局の所君達がどこまで生きるかなんて誰にも分からないんですよ。
「なにさり気にいい事言った風にしてんだよ。」
ごめんごめん。なんか、最後少し湿っぽくなってしまいましたが良ければ次回も見ていってくださいね(見ていってくれ)
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