刀華と冬華が戦い始めて5分。両者共にダメージは与えられているが未だに決定的な一撃が入っていない。刀華は最初から決定的な一撃を入れるつもりは無いが入れなければ殺される。冬華の刃が死角から来る。それを刀華は急いで防ぐ。スペルカード有りならばまだあまり痛めつけずに冬華を止める事が出来たかも知れない。だが冬華は刀華に向かって殺意しか抱いていない。そんな状況の人物にスペルカードを使うのはただの挑発にしか見えない。ならば同じ剣士。刀で止めるしか無い。それは刀華にも痛いほどわかっている。しかし血の繋がった実の妹をこの手で斬らなければならないのは刀華には耐えられない苦痛だった。そう躊躇っている間にも冬華は自分を殺そうと斬りかかってくる。やはり斬るしかないのか。刀華は急いで考える。だが考えていたせいで顔面に飛んできた刃に反応が遅れ頬に切り傷がついた。刀華は考えるのを止め今は襲いかかってくる冬華の刀に対応する。あの時みたいにつばぜり合いになる。
「このまま攻めないで大人しく殺されるの?もうちょっと苦しんでくれないと楽しくないじゃん。」
「殺される気もありませんし、これ以上攻める気もありません!」
刀華が冬華の刀を弾く。弾かれた時冬華は刀を鞘にしまう。居合切りの構えだ。刀華はそれに気づき自分も刀を鞘にしまった。そして相手の方に向かう。居合切りは刀華の方が早かった―かの様に見えた。実は冬華の居合切りの方が2秒早く刀華に届いていた。ほぼゼロ距離でのこの一撃。刀華には避ける手段も防ぐ手段も無かった。白い服が血で赤く染まる。この勝負は冬華の勝ちの様に見えたが刀華はまだ立っていた。本当ならばもう刀華は倒れてしまってもいい。それほどの一撃を冬華は与えたのだ。だが刀華の執念がそうはさせなかった。刀華は最初から最悪の場合刺し違えてでも冬華の復讐を止める気だった。刀華に復讐するだけでは冬華の気は済まないのだ。刀華を最初に殺した後故郷にいる者全てを殺す。これが冬華の復讐だった。その事を雪羽から聞いていた刀華はずっとその覚悟をしていた。ボロボロになってなお立ち上がる刀華に冬華はたじろいでいた。何度斬っても立ち上がる刀華。刀華はもう死んでもおかしくない程の血を流していた。
「なんで!?なんでそんなに斬られても倒れないの!?」
「それは・・・あなたの復讐を止めるために決まってるでしょう!」
「なんなの・・・?今更姉のふりしたって私は復讐をやめる気は無いよ?」
フラフラと冬華の方に歩く刀華。それに対して後ずさりしていく冬華。とうとう冬華には逃げ場が無くなった。刀華が目の前まで迫る。怖くなった冬華は刀華の腹に刀を刺した。飛ぶ血しぶき。だが刀華はそれでも冬華の下まで歩いた。焦る冬華。ようやく冬華の下へ辿り着くと冬華を刀華は抱いた。
「・・・なんのつもり?」
「懐かしいですね・・・。昔はよくこうしてあげた物です。」
「そんなの覚えてる訳無いでしょ!いいから放しなさい!」
「嫌です。絶対放しません。たった一人の私の大切な家族ですから。」
刀華は口から血を吐き出す。冬華は動く事が出来なかった。事実冬華は刀華を殺すと言っていたが最後の一線をずっと超えられないでいた。確かに冬華の心には復讐心しか無い。だが同時にたった一人の家族である刀華への愛情を捨て切れないのだ。
「・・・あなたの事を放って里から逃げだしてしまって本当にごめんなさい。辛かったでしょう?」
「・・・ううん。お姉ちゃんは悪くない。悪いのは里のごく一部の人だから。」
冬華は刀を抜く。その目には涙が浮かんでいた。地面に刀華は倒れた。急いで刀華の下へ走る雪羽。
「おい!しっかりしろ!なあここに来る前にお前言ったよな!?最悪の場合は刺し違えますが必ず守矢神社に一緒に帰りましょうって!」
「ゴホッゴホッ!・・・確かに言いました。ですが・・・このままじゃ果たせそうにありません・・・。」
「うるせえ!永遠亭に連れてくからもう喋るな!」
雪羽は泣きながら刀華を抱きかかえスキマを開く。冬華は泣いたまま見送る。急いで雪羽は永遠亭の中の永琳のいる場所まで駆ける。
「あら雪羽じゃない。何用?」
「見て分からないんですか!?刀華を治療して下さい!」
「!・・・分かったわ。」
刀華は治療室まで運ばれた。それを見送るとすぐに雪羽は冬華のいる場所までスキマを開き冬華を連れてきた。連れてきた後椅子に座らせ雪羽はこう言った。
「復讐だけが頭にあったんだろうけどやっぱり自分の家族は殺せないよな。」
「・・・。お姉ちゃんを恨むのはお門違いだったんだろうね。」
「ああ・・・そうだろうな。実はな刀華が俺の式になった時お前の事をずっと心配していた。」
「やっぱり。自分はどうなってもいいから私は幸せになって欲しいっていうのがお姉ちゃんの口癖みたいな物だったしね。」
「いいお姉さんじゃないか。」
治療室のドアが開く。少しすると永琳が雪羽と冬華の下へ歩いてきた。
「一応治せる所は治せたけど・・・出血が酷かったから目覚めるのは一週間後かも知れないわね。」
「・・・分かった。一応あいつは生きているんだよな?」
「ええ。・・・もう遅いから今日は帰りなさい。あの子も回復させてあげないといけないでしょ?」
「分かった。・・・ありがとう。」
「ありがとうございます。」
雪羽と冬華は永遠亭を後にした。桜花が急いで追いついてきたがもはや2人の目には止められなかった。
「・・・刀華ちゃん大丈夫なの?」
「一週間は起きれないらしい。」
「そう・・・。」
桜花は俯く。誰が悪い訳でも無い。悪いのを決めるとするならば刀華と冬華の里のごく一部の者だろう。だが冬華も雪羽も自分を責めていた。雪羽は主でありながら刀華に無理をさせ、結果この様な事になってしまった事を。冬華は自分の軽はずみな行動で自分の姉の命を奪いかけた事を。とりあえず雪羽は心配させない為に守矢神社に急いで帰った。桜花と冬華は少しすると自分の家へと帰った。この勝負には勝ち負けなどは必要無かったらしい。ただこの勝負にあったのは悲しい姉妹と姉弟のすれ違い。関わった蓬莱人はこの事を皮肉と称した。
はいというわけで第41話どうでしたか?後前回もですが刀華さんはお休みです。
「まあ・・・あんな大怪我してしまったしな。」
出血多量ですしね。復讐を止めるにはそれしかなかったんでしょうね。
「あいつはああ見えて不器用だからな。自分の思いを伝えるのにわざわざ危ない橋を渡ったんだろう。」
無事だといいですね・・・。では次回も良ければ見ていってくださいね(見ていってくれ)