東方境壊伝 【完結】   作:翠月茉弥

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やっと夏期講習が終わった翠月茉弥です。今回は雪羽の過去の話です。では本編の方をどうぞ~(注)知っている方は知っているかもしれませんが以前削除した外伝との共通点があります。


第49話 荒みきった過去

夏休み中にプールに行こうとし梨花が暴走車に引かれた。3年後の今でも未だに犯人は捕まってないらしい。引かれた現場を見ていた雪羽と春香は当時雪羽は中学2年生、春香は小学6年生。雪羽はともかく春香にはかなりの精神的負荷がかかっているだろう。夏休みが明け始業式の日行き道、雪羽はいつもと同じ様に振る舞いながら学校へと行った。春香は今日は休むらしい。まあ自分の姉が死ねばそうなるのは当然だろう。校門の中に入ると後ろから声がした。

 

「おーい!雪羽!」

「はあ・・・久々にめんどくさい奴に会うな・・・。」

 

後ろから走ってきたのは真田 遼河(さなだ りょうが)雪羽の友達であり雪羽曰くめんどくさい奴。梨花に好意を抱いておりちょくちょく雪羽に梨花と遊ぶ為にどうにかしてくれと頼んでいた。雪羽は遼河が梨花に好意を抱いているのには気がついており応援はしていたがそれを言葉にはしていない。当の梨花本人は気がついていなかったが。

 

「なあ。梨花は今日一緒じゃねえの?」

「ん?姉さんは寝坊してな。まったく・・・夏休み気分で何時までいるつもりなんだか・・・。」

「ふーん。まあそんな所が可愛いんだけどな(ボソッ)」

「ん?なんか言ったか?」

「いや。なんでもない。」

 

まあ大方梨花の事を言っていたのだろうがそこら辺に触れても遼河に悪い為触れない様にする。すると後ろから元気な声が聞こえてきた。

 

「雪羽く~ん!おはよっ!」

「おはよう。相変わらず元気だな来衣は。」

 

彼女は望月 来衣(もちづき らい)雪羽の友達で雪羽に好意を抱いている。雪羽自身はその事に気づいていないが雪羽以外の殆どは気づいている。変な所であの姉弟は似ているのだ。今その姉はこの世にいないが。

 

「あれ?梨花ちゃんはどうしたの?」

「寝坊だ。起こしても起きなかった。」

 

雪羽はポケットに手を入れ教室まで歩く。今から始業式が始まる。いつもの始業式より少し長くなるだろう。なぜなら梨花がこの世からいなくなった事を伝えなければならないのだから。その発表をされた自分以外の全員の反応はもう雪羽には分かっていた。学年中で人気者だった姉。その姉が死んだ事が分かれば大抵の人間は泣き出すだろう。そして始業式が終われば自分は質問攻めに遭うだろう。それ程までに梨花は多くの人々に愛されていたのだ。求愛する人もいれば友情を築こうとする人もいた。梨花の性格や顔に惚れている人は多くいた。遼河もその一人だ。確かにシスコンな点を除けば人気の出やすい性格だろう。始業式は予想通りの展開になった。雪羽は始業式が終わると誰とも話そうとはしなかった。隣の席に座っている来衣も泣き疲れて話す気にはなれなかった。遼河はこの世の終わりの様な顔をして放心状態になっていた。雪羽が寝ようとすると来衣が話しかけた。

 

「ねえ・・・。雪羽君も梨花ちゃんが亡くなった時こんな感じだったの?」

「・・・言うまでも無いだろ。」

「そうだね・・・。」

「・・・言い過ぎたごめん。」

 

雪羽は謝った後俯いた。来衣は水分が足りなくなっているらしくペットボトルのお茶を口に含んだ。遼河は知らぬ間に教室からいなくなっていた。クラスの一人が雪羽に焦って話しかけてきた。

 

「隣のクラスの人が雪羽を呼んでこいって!」

「分かった。行ってくる。」

 

雪羽はめんどくさがりながら隣のクラスまで歩く。どうせ姉の事だろう。話にあった奴は確か理不尽な奴で俺に人殺しの罪でも擦り付けようとしているのだろう。そう言えば隣に姉さんの事が嫌いな奴もいたな。それに便乗してそいつも俺になんか言ってくるんだろうな。そう思っていると隣のクラスの目の前まで来ていた。扉に手をかけ開く。案の定その人物がいた。

 

「おう。来たか。」

「何用だ?さっさと帰らせて欲しいんだが。」

「分かった。なら単刀直入に言う。お前が梨花を殺したんだろ!」

「違う。そもそも人の話を聞いてなかったのか・・・?」

「ああ。」

「はあ・・・まあいい。今日は帰らせてもらう。」

 

そう言って雪羽はクラスから出た。それから一週間雪羽は同じ事を続けられた。来衣もその度に心配そうな顔をしていたが雪羽は笑って来衣に心配をかけないようにした。根本的に雪羽は優しい。気を使わせない様にするのは雪羽のささやかな優しさだろう。そこに来衣が惚れるのもうなずける。だがそんな雪羽だからこそ内心は一番傷ついている。雪羽の心は既に崩壊寸前だった。周りの人間は同情の目を向けてくるが雪羽は一番それが嫌だった。自分をおもちゃを見るような目で見られるのが苦痛でしかなかった。今の雪羽が心を許せるのは遼河と来衣だけになっていた。そしていつしか来衣は雪羽の心の拠り所となっていた。恋人未満友達以上。その関係が長く続いた。そして雪羽はまた呼び出された。屋上に呼ばれた雪羽。この場には梨花を嫌っていた女と散々呼び出してきた男とその取り巻きがいた。

 

「いい加減にしろよ・・・お前のせいで梨花は死んだんだろうが!」

(またこれか・・・。これで何回目だ?姉さんが死んでから毎日だから7回目か?)

「梨花を殺したのが本当にあんただったら死んで詫びないとねえ?」

「何か言ったらどうなんだ!」

「・・・もううんざりだよ。何回も同じ事を繰り返すお前らにもこの世界にも。」

 

雪羽はそう言ってこの場にいた全員を殴り倒した。雪羽の心はもう既に壊れていた。自分が汚れるかわりに来衣にこれ以上心配をかけさせないようにしたのだ。思えばこの頃から狂気が現れてきたのかもしれない。それから7ヶ月後来衣がこの街から離れる事になった。行き先は来衣の実家のある田舎。雪羽の心の拠り所は消える事となった。来衣が旅たつ前日雪羽は来衣の家に呼ばれた。来衣と遊び夜になった。帰る間際に雪羽は呼び止められ来衣はこう言った。

 

「ずっと前から雪羽君の事が好きでした。・・・だからまた会おう?」

「ありがとう。また会おうな。」

 

雪羽は自分の家まで歩く。そうすると急に玲が横に出てきた。

 

「あら?良かったの?来衣ちゃんの好意を無駄にして。」

「無駄にはしてない。というより聞いてたのか?」

「ええ。塾の帰りだったから。」

 

そう言って玲は笑った。雪羽は無視してさっさと家に帰る。その後来衣は転校しその2年後転校先でいじめられ近くのダムに飛び降り自殺してしまった。この出来事により雪羽は完全に人を信じられなくなってしまった。そして雪羽はいつしか人との関わりを自ら避けるようになった。高校生になってから学校の使われていない学習室に引きこもる日々。その日々を壊したのは常識の通用しない少女だった。そして知らぬ間に雪羽はその少女に恋心を抱いていた。そしてその恋は自分の真の故郷で決着が着く事となった。

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「とこんな感じだ。」

「へえーなんかお兄ちゃん私と似てるね。」

「そうか。」

「私は人の心が怖くなって目を閉じちゃったから。」

 

雪羽は驚いた。悟り妖怪が目を閉じると誰も気づかなくなるという事に。それはこいしだけなのだろうが悟り妖怪全員がそうなるとして聞いていた。人など信じられない。昔の雪羽には色々な事が重なりすぎたのだろう。だから他人を信じられなくなってしまった。雪羽はこいしに昔の自分を重ねながら部屋を出た。少しだけこの話をした事で梨花の目覚めは早まってしまっていた。持って後2週間と言った所か。雪羽は早まる鼓動を押さえつけて地霊殿の中を歩いた。




はいというわけで第49話どうでしたか?
「はあ・・・思い出したくない事思い出しちまった。」
・・・まあ仕方ないよ。残酷な話だけど。
「・・・何も言えませんね。」
そうだね。では次回も良ければ見ていってくださいね(見ていってくれ)
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