東方境壊伝 【完結】   作:翠月茉弥

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第76話 月光

玲と戦い決着がついてからしばらく経ち朝となった。気絶したままの二人は一向に気がつく気配が無い。すると人影が雪羽の方に向かった。雪羽の所に着くなり雪羽の体を揺する少女。

 

「起きてください!朝ですよ!こんな所で寝てたら風邪引きますよ!」

「・・・ん。刀華かおはよう。」

 

いつもと変わらない笑顔で刀華の方を向く。・・・終わったんだよな。これで春香も無事だろう。体に付いた枯葉等を払い起き上がる。そして刀華の方を再度向くとこう言った。

 

「さて帰るか。玲も連れてな。」

「はい!」

 

玲を背負い一旦永遠亭へと向かう。そろそろ全員起きている頃だろう。きっと春香も元気になって。数分歩いて永遠亭に到着した。そしてそのまま中へと入る。だが入った瞬間永遠亭の空気がいつもと違っていた。不審に思いそのまま春香の病室へと向かう。するとそこには寝たままの春香がいた。皆が黙って下を向いている中雪羽は呆気に取られていた。

 

「・・・嘘だろ。」

 

雪羽の体から力が抜け背負っていた玲の体が地面へと落ちる。それを何とか刀華が抱えると下を向いた。少しの間静寂が続く。すると永琳は雪羽に向かって話し始めた。

 

「残念だけど・・・春香は1時間前に心肺停止で亡くなってしまったわ。」

「心肺停止・・・?じゃあ満月病は・・・。」

「確かに満月病は治った。だけど衰弱していた彼女の体はもう・・・。」

 

言葉を上手く発せないまま春香の方へ歩く。凉は下を向いたまま刀華から玲を預かり病室の外へと出ていってしまった。動かない春香の手を握る。その手はただ冷たく動かなかった。雪羽の目から涙が零れる。そして行き場のない叫びが病室に木霊した。まただ。また俺は人を殺した。これで四人目だ。なんでだよ。なんで俺の家族や友人は死ぬんだよ・・・!

 

「・・・皆出ていって。色々用意しなくちゃならないから。」

 

全員が黙っている中永琳が口を開いた。その言葉を聞き全員外に出る。雪羽は泣いたまま壁に背を付け座っていた。その横に刀華と早苗が座る。悲しげな顔をする二人。だが誰も雪羽に声をかける事は出来なかった。

 

「なあ・・・なんで俺は死なないんだ?」

「雪羽さん・・・。」

 

すると急に早苗が立ち上がり雪羽の首元を掴むと雪羽を叩いた。驚く皆。早苗の顔は泣きながら怒っていた。

 

「ふざけないでください!何が俺は死なないんだ?ですか!雪羽さんが死んだ所で春香さんは帰ってきませんし逆に悲しむだけです!自分が死ねば償えると思っているならかなりお門違いですよ!」

「何がお門違いだ!お前に俺のせいで死んだ四人の気持ちが分かるのか!?全員俺に関わったから死んだ!なのに俺だけ死なないのも虫がいい話だろうが!」

 

お互いに首元を掴みながら怒鳴り合う。珍しく早苗がかなり言っているがそんな事はどうでもいい。刀華が何とか止めようとするが間に入れずにいた。

 

「確かに虫がいい話かも知れませんけどそのまま死んだらその四人はどうなるんですか!?皆さん雪羽さんのせいだとは誰も思ってません!春香ちゃんだってお兄ちゃんにありがとうって伝えてと言ってこの世を去りました!なのに当の本人であるあなたは死にたいってその気持ちを馬鹿にしてるんですか!?」

「なっ・・・!」

 

そのまま二人共黙り込む。皆が呆気に取られながら二人を引き剥がす。霊夢はやれやれといった様子で二人の前に座るとこう言った。

 

「はい!これで終わり。あんたらが喧嘩してちゃ春香が泣くでしょうが。」

「珍しいな霊夢。お前がそんな喋り方をするなんて。」

「魔理沙は黙ってて。愚痴ぐらいなら聞いてあげるから後にしなさい。もちろんお酒は奢ってもらうわよ?」

「はあ・・・悪かったな皆。」

 

雪羽が立ち上がり外へと歩いていく。すると入れ替わりに玲が起きた。

 

「・・・あら?凉さんに早苗ちゃん。どうしたの皆勢揃いで?」

 

今凉に抱えられている事は気にしない様子の玲。するとハッとしたのかこの場にいる全員に頭を下げた。

 

「ごめんなさいね。この様子だと多分春香ちゃんはもう・・・。」

「・・・まあいいわ。首謀者が謝ったなら許してあげるけどあんたは春香の葬式が終わってから人間の里の皆に謝罪しなさい。勿論あの部下と一緒にね。」

 

黙ったまま頷く玲。一旦今日はこれで解散する事にした。皆何かと思う所があるのだろう。

 

―数日後―

 

雪羽はいつものスーツに黒ネクタイを着けて葬式に参加した。全員の服装が黒い服装なのは当たり前なのだが何か違和感があった。今玲と占姫は謝罪をしに行っているためこの場にはいない。外にいる為煙草に火をつける雪羽。・・・ごめん春香。馬鹿なお兄ちゃんで。雪羽の頬には再び涙が伝っていた。その肩に手を置く紫。

 

「春香ちゃんの事は残念だったわね。」

「ああ。姉さんは?」

「桜花は人間が怖いからって来てないわよ。」

 

そういや姉さんは人間恐怖症だったな。煙草をスキマの中に捨てその場を立ち去る。命はとても尊い。雪羽が目を瞑ると春香との思い出が浮かんだ。

 

『お兄ちゃんはどうして早苗さんの事が好きになったの?』

『ん?まあ色々あるけど何より俺が好きだからだ。』

『何それ?変なの。まあお兄ちゃんらしいっちゃあらしいけどね。』

 

はは。あいつこんな事言ってたなそういえば。強く手を握りしめる。春香に別れを告げ雪羽はその場を去った。




はいというわけで第76話どうでしたか?
「春香・・・。」
残念だったね。
「あいつがくれた物は意外と多くてな。全部返せなかったよ。兄より先に死にやがって。」
「そんな物です人生は。」
刀華が結構酷いことを言った気がするけど良いのかな?
「返せないことの方が多いのが当たり前なんです。私もかつて守ってくれた子に恩返し出来ませんでしたから。」
まあそんな物だね。では次回も良ければ見ていってくださいね(見ていってくれ)
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