○右京の自宅
目覚まし時計が鳴る。
ベッドの布団から手が伸びて、目覚まし時計の音を止める。
ゆっくりとベッドから起き上がる青年。
名は、薄葉右京(うすば・うきょう)、二十五才。
右京は、中肉中背で短めの髪、優しげなその顔がどこか人なつっこい。
右京「あぁぁぁぁぁっ!」
大きく伸びをする右京。
ベッドから降りて、机の上にあったオーボエに手を当て、
右京「(オーボエに向かって、笑顔で)おはよう!」
部屋は賃貸マンションの一室で、洋間一部屋と小さなキッチンがあるばかり。
ここで一人暮らしの右京は、東星音大を卒業後、プロの演奏者を目指してバイト暮らしの身。
頭を掻きながら、小さなキッチンへと移動する右京。
しゃがんで冷蔵庫を開け、牛乳のパックを取り出すが、中身はカラッポ。
右京「(しかめっ面で)ええ?」
右京、流し台の下に無造作に置いてある黒いビニールのゴミ袋にその牛乳パックをポイッと捨てると、再び冷蔵庫の中を見渡して、缶ビールを手に取る。
右京「……と、これはやっぱり、ダメね」
右京、缶ビールを元の場所に戻し、冷蔵庫を閉める。
立ち上がってコップを手に取り、流し台で水を汲む。
一口飲んで、そのコップを持ったまま玄関の方へと移動。
ドアから新聞を取り出して部屋に戻り、机の上で新聞を広げる。
右京「さーて、本日の国際情勢はと……」
水を飲みながら新聞を眺める右京。
と、ある小さな記事が目に入ってギョッとする。
右京「……え!?」
コップをを机に置き、記事に食い入る右京。
そこには、『フルート奏者・不動明芙美(ふどうみょう・ふみ 三十二才)が引退を表明』という記事が。
右京「な……、何だって~~~~!?」
○オープニング曲
○サブタイトル
一之巻『吹雪く鬼』
○とある山中 & 右京の部屋
魔化魍探索のために、ベースキャンプを張っているフブキ。
関東十一人鬼の中では唯一の女性鬼であるフブキ。
その素顔は長身に背中まで伸びた髪が艶やかで、端整クールな美女。
立て掛けられた地図に取り付けたポイントを、一つ一つはずしていく。
と、ふいに携帯電話が鳴る。
フブキ「来たわね」
苦笑いしながら携帯電話を手に取るフブキ、『薄葉右京』の着信通知を見て、
フブキ「あら(意外、という感じで)」
電話に出るフブキ。
フブキ「はい、もしもし」
× × ×
画面、交互に右京、フブキ。
右京「どーいう事なんですか!?」
× × ×
フブキ「何よ、朝っぱらから」
× × ×
右京「何よじゃないでしょ! 音楽辞めるって、一体どういう
事なんですか!?」
× × ×
フブキ「フッ。辞めたいから辞めただけよ。あなたには関係な
いでしょ」
そう言いながら、地図を片付け始めるフブキ。
× × ×
右京「そんな……、関係ないってことはないじゃないですか!
俺はねぇ……」
× × ×
フブキ、鬱陶しそうに携帯電話を耳から少し遠ざける。
そこから漏れ聞こえる右京の声。
右京「フブキさん! 聞いてるんですか!? フブキさん!」
フブキ、面倒そうに、
フブキ「ハイハイ、またゆっくり説明してあげるから、大人しく待ってなさい。じゃあね」
そう言って一方的に電話を切るフブキ。
× × ×
右京「……あ、ちょっと! フブキさん!」
切られた電話を恨めし気な表情で見つめる右京。
右京「ああ、もう!」
右京、腕組みして部屋の中を歩き回る。
右京「……ったく、どういうつもりなんだろ、辞めちゃうなんて。そんなのないって」
ふと時計を見る右京。
右京「いけね! 遅刻だ!!」
大慌てで着替え始める右京。
○とある山中
携帯電話で話しているフブキ。
フブキ「……はい。……いえいえ、ありがたいお言葉ですね。……はい、また近い内に楽団の方へご挨拶に参ります。……はい。では失礼いたします」
電話を切るフブキ。
フブキ「ふぅ……」
キャンプ用の簡易テーブルや椅子を片付けるフブキ。
と、またしてもトランクの上に置いていた携帯電話が鳴る。
フブキ「(鳴り続ける携帯電話を見ながら)……今日は電源切っておいた方がよさそうね」
○たちばな
開店準備中の香須実と日菜佳。
二人でテーブルの上に乗った客椅子を、順々に下ろしていく。
日菜佳「新聞に出てましたねぇ、フブキさんのこと」
香須実「うん。ちょっと寂しいような気もするけどねぇ……」
日菜佳「あ、寂しいと言えば姉上」
香須実「え?」
日菜佳「明日夢君にヒビキさん取られちゃってぇ、ちょーっぴり寂しいんじゃないですかぁ?」
香須実、手を止めて、
香須実「(ちょっと怒ったような表情で)あのねぇ、明日夢君はもうヒビキさんの弟子になったんだから、当然でしょ?」
日菜佳「アリャリャ、こりゃ失礼」
いそいそと、台所へ引っ込んでいく日菜佳。
香須実、微笑を浮かべて溜め息一つ。
香須実「……まあ、寂しいっちゃあ、寂しいわよねぇ」
ちょっと物悲しい表情で机を拭き始める香須実。
と、奥から日菜佳が、店の電話の受話器の通話口を手で押さえながら顔を出す。
日菜佳「姉上! ヒビキさん、無事屋久島に着きましたって!」
香須実「(明るい表情に戻って)あ、そう! ……明日夢君に、頑張ってって!」
日菜佳「りょーかい!」
敬礼して顔をひっこめる日菜佳。
微笑む香須実。
○とある百貨店の会議室
厳かな空気が漂う中、新卒の新入社員数十名が縦横に列を作って、整然と立っている。
正面中央には、キリッとしたスーツ姿の男が二人。
その内の一人(若い方)が、持っている紙を読み上げる。
男「……工藤すずめさん」
すずめ「はい!」
列の中ほどから一人の女性(くどう・すずめ 二十三才)が歩き出し、正面中央に立っているもう一人の初老の男の前に立つ。
すずめは、この春に米系のキャピトラ大学を卒業し、まだまだ大学生気分が抜けない雰囲気。
スタイルのいい体型にスーツがよくマッチし、セミロングの茶髪が映える。
すずめ、初老の男が真っ直ぐに差し出す発令書を受け取り、一礼して振り向く。
そしてまた、列に戻っていく。
すずめ、発令書を見て目を丸くする。
すずめ「ご……、呉服売場ぁ~~?」
マジマジと発令書を見つめて暗い表情になっていくすずめ。
周りでは、他の者も次々と呼ばれて辞令を受けていく……。
○同・会議室に面した廊下
廊下には、十人ほどの男女が立ち並ぶ。
会議室のドアが開き、新入社員たちがゾロゾロと出てくる。
その中、暗い顔で出てきたすずめに、三十才くらいの男が声をかける。
男「……工藤さん、だね?」
すずめ「あ……、はい!」
男「僕は、呉服売場主任の筑波といいます。よろしく」
すずめ「よ、よろしくお願いします!」
筑波「じゃ、売場へ案内しようか」
そう言って筑波は、エレベーターホールの方へすずめを促し、歩き始める。
周囲でも、同じように各売場の主任が新入社員と挨拶を交わしている。
すずめ、その様子を横目で見ながら、筑波の後についてエレベーターホールへと歩を進める。
○同・店員用エレベーターホール
エレベーターの扉が開き、そこに乗り込んでいく筑波とすずめ。
他にも何組かが同様に乗り込む。
○同・店員用エレベーターの中
降下するエレベーター。
沈黙が続く。
少し緊張した様子のすずめ。
○同・売場へと続く店員通路
通路を歩く筑波とすずめ。
筑波「呉服売場だなんて言われて、びっくりしただろ?」
すずめ「え!? ……あ、はい」
筑波「まあそうだろうね。僕も、入社した時はそんな売場あったのか、なんて思ってたもんね」
すずめ「はあ……」
通路の角を曲がり、歩き続ける二人。
筑波「工藤さんは、どこの売場を希望してたのかな?」
すずめ「え? あのぅ……、(言いにくそうに)アクセサリー売場です」
筑波「そっか。まあ、なかなか希望通りにはいかないもんだからねぇ」
すずめ「そうなんでしょうねぇ。でも、まさか……」
筑波「え?」
すずめ「(バタバタと手を振って)いえ! 何でもないです!」
思わず冷や汗をかくすずめ。
筑波「さ、ここだよ」
店員通路の扉を開けて、売場へと入っていく二人。
目の前には、客もまばらで年配の販売員が立ち並ぶ、もう何年も時間が止まっているかのような空間が広がっていた。
それは、すずめが思い描いていた、華やかなデパートの世界とはかけ離れたものであった……。
○とある山道
木々に囲まれた暗い山道。
ハイキング帰りの男が一人歩く。
と、突然前に立ちはだかった、黒いローブのような衣裳に身を包んだ童子。
童子「帰るのかい?」
男、その姿を不気味に感じ、二、三歩後ずさりして後ろを振り返ると、そこには同じような黒衣の姫の姿が。
姫「帰るのかい?」
焦る男。
童子「帰るのなら……」
姫「こっちへおいでよ~」
男に近付く童子と姫、真っ黒な腕を前に出すと、それが双方から男の方へ伸びていく!
そして、クルクルッと男の体に巻きつく黒い腕!
男「う、うわああああ!!」
黒い腕に覆われた男は、そのまま絞られるように地面に吸い込まれていく。
男の体を吸い込んだ地面が、直径一メートルほどに丸く浮かび上がる。
童子と姫、そこに近寄って、
童子「もういいかな~?」
丸く浮かび上がった部分に亀裂が入り、パン!と破裂すると上空に黒い影が飛び出した!
姫「あわわ!」
思わずその場にへたり込む童子と姫。
上空には、巨大なカラスのような生き物が、その翼をはためかせていた……。
《CM》
○屋久島の山中
ヒビキと明日夢が、山道を登る。
ヒビキ「……思い出すなあ」
明日夢「え?」
ヒビキ「いやね、明日夢と初めて会ったあの日も、この道を歩いたな~と思って」
明日夢「そ、そうですね……」
早足のヒビキに、必死で追いつきながら答える明日夢。
ヒビキ、そんな明日夢を横目でチラッと見て微笑み、丘を一つ登ったところで立ち止まる。
明日夢が追いつくと、そこは部分的に周囲の木々が開けて、青空を広く見渡せる場所だった。
ヒビキ「実はね、明日夢が、もし俺の弟子になったら、修行はこの場所から始めようって決めてたんだよね」
明日夢「(ニッコリ笑って)あ、ありがとうございます」
ヒビキ「ヘヘッ」
その場に胡坐をかくヒビキ。
それを見て、同じように明日夢もその場に座り込む。
ヒビキ「(空を眺めながら)明日夢……」
明日夢「はい」
ヒビキ「鬼になるってことは、どういうことだと思う?」
明日夢「……前に、勢地郎おじさんが、人を愛し、自然を愛することが大事だって言ってましたが……」
ヒビキ「なるほどな。……その意味が分かるか?」
明日夢「いえ……」
ヒビキ「鬼の役目ってのは、自然を自然に還すってことなんだよね」
明日夢「自然を、自然に……」
ヒビキ「うん。そしてその第一歩が、自然を全身で浴びるってことだ」
ヒビキの方を見ていた明日夢、真剣な表情で青空へと視線を移す。
ヒビキ「体を鍛えなきゃいけないのはもちろんなんだけど、その前に自然の力を感じ取り、自然と仲間にならなくっちゃダメなんだ」
明日夢「自然と仲間に……」
明日夢、ふとヒビキの方を見ると、目を瞑って精神統一している様子。
明日夢もこれを見習い、目を瞑って、自然を感じ取るべく心を澄ませる。
木々のざわめき、小鳥のさえずり、鼻をつく土の匂い。
大自然に身を任せていく二人……。
○吉野本部・玄関口
建物から出てくるイブキとあきら。
振り返ると、そこには見送りに出てきた医療チーフの姿が。
あきら「お世話になりました」
医療チーフ「仕切り直し、だね」
あきら「はい。頑張ります」
イブキ「先生、本当にありがとうございました」
頷く医療チーフ。
一礼して振り返り、イブキの専用バイク・竜巻に乗り込まんとするイブキとあきら。
あきら「(ヘルメットを被りながら)ヒビキさん達は、今頃屋久島ですね」
イブキ「明日夢君とは、競争ってことになるのかな?」
あきら「(イブキの方を向いて微笑み)負けませんよ、私は」
イブキ「お、強気のあきらが戻ってきたな」
微笑み合う二人。
イブキもヘルメットを被ってエンジンをかけ、竜巻を勢い良く発車させる。
青空の下、輝く未来に向けて、あきらを乗せたイブキの竜巻が疾走していく。
○たちばな
扉を開けて入ってくるフブキ。
店内には、香須実と日菜佳。
フブキ「こんにちは」
日菜佳「あ、フブキさん! こんにちは~」
フブキ「みどりさん、いる?」
日菜佳「下でお待ちですよ~」
フブキ「そう」
フブキ、ツカツカと店内を歩き、奥へと入っていく。
日菜佳、姿勢良く歩くフブキの姿を目で追って、
日菜佳「フブキさんとみどりさんって、どうして仲良しなんでしょーねぇ?」
香須実「さあ? 年も近いしね」
日菜佳「でも、性格は正反対のように思うのデスガ……」
香須実「だから合うのかもね。……最初は、仲悪かったんだけどね」
日菜佳「え! そうなんスか!?」
○同・地下研究室
お菓子を食べながら、ディスクアニマルの整備をしているみどり。
そこへ現れるフブキ。
フブキ「よっ」
みどり「(振り返り)ああ、来た来た」
フブキ「(小さな紙袋を目の前で揺らせて)はい、お土産」
そう言って、紙袋をみどりの前に置くフブキ。
みどり「おお、芋羊羹! 好きなのよね~、コレ!」
そう言いながら、袋から芋羊羹を取り出して、早速包装紙を解き始めるみどり。
フブキ、みどりの正面の椅子に座る。
みどり「電話とか、バンバンかかってきてんじゃないの~?」
フブキ「まあね」
みどり「結構思い切ったわよねぇ……。で、どういう心境の変化なのよぉ?」
みどり、芋羊羹の箱を開けて、爪楊枝で刺しながらフブキに問いかける。
フブキ「ま、単純に反省したってことよ。両立できてたと思ってたけど、それは私が思い上がってただけってことね」
みどり「あなららしくない、セリフね……」
芋羊羹を頬張りながら話すみどり。
フブキ「……で、出来たの?」
みどり「(口をモグモグしながら)あ~、アレね。ちょっと待ってね~」
みどり、席を立って部屋の端にある棚から小さなケースを取り、それをフブキに渡す。
みどり「はい。なかなかの出来よぉ」
フブキ「(渡されたケースを眺めながら)ありがと。……こないだのオンモラキみたいなのが増えてきちゃうと、今までの鬼針ではちょっとキツいのよねぇ」
○ファミリーレストラン
右京とすずめが、二人で食事中。
すずめ「……でさ、周りはオバチャンばっかだし、お客さんもあんまり来ないし、商品もワケ分かんないし、……もう一日でウンザリって感じよ。……ちょっと、ねえ! 聞いてんの?」
右京「(ハッとしたように)え!? ああ、ゴメンゴメン」
すずめ「で、右京君の方はどうなのよ。受験する楽団決めたの?」
右京「……なかなか理想に合うところがなくてねぇ」
すずめ、手に持ったフォークをブンブン振り回して、
すずめ「あのさ、そろそろそんな事言ってる場合じゃなくなってない? ……そりゃあ、こだわり持つのは大事だと思うけどさあ」
ふと、時計を見るすずめ。
すずめ「あ! もうこんな時間じゃん! 明日、早速早出なのよ早出! 悪いけど先行くわね!」
右京「あ、ああ」
すずめ、財布から自分の勘定分のお金を出してテーブルに置き、席を立つ。
すずめ「じゃあね、バイバイ!」
にこやかに手を振って、店を出ていくすずめ。
右京、すずめに手を振り、テーブルに肘をついて大きく溜め息一つ。
○フブキの自宅前
時間は夜十時。
深夜の魔化魍探索に向かうべく、専用バン・結晶のバックラックに荷物を積み込んでいるフブキ。
と、そこへポケットに両手をつっこんだ右京が現れる。
フブキ「(右京をチラッと見て)何か用?」
右京「何か用じゃないでしょ! 急に音楽辞めるだなんて、ひどいじゃないですか!」
フブキ「(作業をやめることなく)あなたには関係ないって言ったでしょ」
右京「関係あります! ……俺は、音楽と鬼と、両方が一流のフブキさんを尊敬してたんです」
フブキ、右京をキッと睨んで、
フブキ「声が大きいわよ」
右京、ハッと口を押さえ、それでも恐縮気味に、
右京「……音楽が、嫌になったんですか?」
フブキ「それは違うわ。今でも音楽は私の体の一部よ」
右京「じゃあ、何で!?」
フブキ、バックラックの扉をバタンと閉めて、
フブキ「……人は、神様じゃないわ。両立にもそれぞれ種類があって、限界もあるってことね」
右京「だから、鬼の仕事に専念ってことですか? ……でも、今まで完璧にやってきたわけでしょう? フブキさん、前に俺に言いましたよね、私のように何でも出来るようになりなさいよ、って……」
フブキ「(苦笑いを浮かべながら)そうね」
右京「俺は、何も捨てませんよ。音楽やりながら、いつかはフブキさんのように……」
フブキ、口元をわずかに上げながら踵を返し、運転席へと向かう。
右京「フブキさん!」
フブキ、運転席のドアを開けながら振り向き、
フブキ「右京君、……鍛えなさい」
右京「え?」
フブキ、運転席にサッと乗り込み、ドアを閉める。
そして、静かに発車する結晶。
右京、納得いかない様子でその場に立ち尽くす……。
○とある山中
生い茂る木と木の間を、ディスクアニマル・浅葱鷲たちが飛び交う。
と、廃屋と化した山小屋の前に、大きな黒い塊を発見。
塊の周りを飛び回る浅葱鷲たち。
突如、その黒い塊が動いたかと思うと、それは空中へと翼をはためかせて、飛び上がった!
魔化魍・ヤタガラスだ!
全長三メートルほどの大きさに成長しているヤタガラス、
飛び回る浅葱鷲らに向かって、口から青い液体を吐き出す。
液体が命中した浅葱鷲は、ドロドロと溶けて地面に落ちていく。
なんとか逃げ延びた一体の浅葱鷲が飛んだ先に、人影一つ。
フブキだ!
フブキの肩にとまる浅葱鷲。
フブキ、空中のヤタガラスを見上げて、
フブキ「大きくなっちゃって」
ふと下を見ると、先程ヤタガラスがうずくまっていた地面に、ドロドロに溶けた童子と姫の亡骸が……。
フブキ「残酷だこと」
フブキ、一歩前へ出るとともに腰から音笛を抜いて吹き、額へと持っていく。
額に鬼の紋章が浮き上がり、フブキの体が真っ白な吹雪に包まれる!
吹雪鬼「ハッ!」
体を包む吹雪を手刀で断ち切る吹雪鬼、その勇姿を表す!
仮面ライダー吹雪鬼、見参!
白ベースに、ブルーグリーンとパープルを織り交ぜたその身体には、フルートを象ったような管戦士特有の装飾が輝いている。
○右京の部屋
ベッドに腰を下ろし、楽譜をパラパラとめくる右京。
と、携帯電話のメール着信音が鳴る。
机の上の携帯電話を取って、メールを開く右京。
「とりあえず頑張ってみるから、右京君も頑張れ! すずめ」
メールを見て、呟く右京。
右京「俺だって……、頑張ってるさ」
胸元で携帯電話を握り締める右京……。
○とある山中
真っ暗な空を飛び回りながら、地上の吹雪鬼めがけて青い液体を次々と吐き出していくヤタガラス。
吹雪鬼、これを素早い動きでかわしていき、フルート型音撃管・烈雪を縦に構えて口元に当てる。
そして、ヤタガラスめがけて、吹き矢の如く鬼針を吹射!
大きな体の割にすばしっこいヤタガラスは、吹雪鬼の吹き出した鬼針を巧みにかわす。
吹雪鬼「……仕方ない、か」
吹雪鬼、ベルトの右腰辺りの収納ケースから、新型の鬼針を取り出して烈雪に込める。
素早い動きで飛び回るヤタガラス。
吹雪鬼、それを狙って再び鬼針を吹射!
やはり、ヤタガラスの動きの方が若干早く、吹射された鬼針はわずかに外れる。
が、しかし! 空中でフワッと軌道を変えた鬼針は、横っ面からヤタガラスに突き刺さる!
続けて鬼針を吹射する吹雪鬼。
次々と軌道を変えながら命中していく鬼針!
吹雪鬼、烈雪を横に持ち替えて、バックルの音撃鳴・さざれを烈雪の先に取り付ける。
吹雪鬼「音撃射・寒波誘撃」
吹雪鬼、烈雪を吹き鳴らす。
華麗なフルートの音色が辺り一面に響き渡り、ヤタガラスに食い込んだ鬼針がその音色に共鳴!
全身に音撃の威力が伝道!
そして……、爆発!!
吹雪鬼「フッ」
一息ついて、顔の変身を解くフブキ。
夜空を見上げて、
フブキ「……まだまだね」
山間から覗く満天の星空。
しばらく空を見上げていたフブキ、険しい表情のまま、結晶の駐車場所へと戻っていく……。
○一之巻 完
○エンディング曲
○次回予告
東星音大キャンパスで話す学生達。
学生「あの不動明芙美が、臨時講師にやってくるんだってよ」
教壇に立つ芙美。
芙美「音楽とは、エネルギーの源です」
湖で童子と姫に襲われる右京。
右京「うわっ! 何なんだ!? コイツら」
二之巻『遡る刻』