○たちばな・居間
朝食を摂っている勢地郎と香須実。
と、二階からバタバタと日菜佳が駆け下りてくる。
日菜佳「あわわわわ……、遅刻遅刻~!」
香須実、廊下を横切る日菜佳に声をかける。
香須実「日菜佳何してんの! ゴハン食べてかないの!?」
日菜佳「そんなヒマないってば!」
日菜佳、慌しく靴を履いて立ち上がる。
居間から出てきた香須実が、日菜佳の後ろから、
香須実「もう。夜更かししてるからよ!」
日菜佳「何言ってんスか! 魔化魍のデータ分析するソフトの操作が分かんないからって、さんざん質問責めにしといて!」
香須実「あれ? そ、そうだったかな……」
ちょっと気まずい表情の香須実。
日菜佳「じゃ、行ってきます!」
そう言いながら鞄を小脇に抱え、店を出ていく日菜佳。
香須実「……あ、行ってらっしゃい!」
日菜佳を見送り、居間に戻る香須実。
勢地郎「(新聞を眺めながら)何だ、日菜佳の夜更かしの原因は、香須実なのかい?」
香須実、座り直しながら、
香須実「あ、いやその、ちょっと分かんないところがあったんで……。オーバーなのよ、あのコ!」
ごまかすように味噌汁をかけ込んでいく香須実。
クスッと笑う勢地郎。
勢地郎「……しかし、日菜佳はアレだね。本部から来るデータを、いつもうまく処理してるねぇ」
香須実「うん。本部の人もビックリしてた。いいオペレーターになれそうだって。……まあ、本部の人は、普段のあのコのオッチョコチョイぶりを知らないもんね~」
勢地郎「そりゃそうだ。ハハハハッ」
笑い合う二人。
○通学路
走る日菜佳。
日菜佳「……ハーーーックショイ!!」
大きなクシャミをして、鼻をこする日菜佳。
日菜佳「(真剣な顔つきで)これは……、悪い噂ですね」
友人「おっはよー、日菜佳!」
走りながら、日菜佳の背中をポーンと叩く友人。
日菜佳、前のめりになりながら、
日菜佳「おお……、おっはよう!」
友人「急がなきゃ、遅刻よ!」
日菜佳「ガッテンだ!」
勢いよく走り去っていく二人。
○オープニング曲
○サブタイトル
四之巻『開かれる道』
○東星音大・入口の門付近
ツカツカと、早足で歩いている芙美(=フブキ)。
大学の門を出て、駅へと向かって歩き続ける。
と、同じく大学の門から出てきた右京が走り寄ってくる。
右京「フブキさん!」
フブキに駆け寄る右京。
その呼ばれ方に、怪訝な表情になるフブキ。
右京「誰もいませんって」
フブキ「……甘いわよ、そういう考えは」
並んで歩くフブキと右京。
右京「フブキさん。俺を弟子に取ってくれる気になりました?」
フブキ「その話は、もう済んでるはずよ」
冷たく返すフブキ。
右京「……俺も、フブキさんのように何でも出来るようになりたいんです! 音楽も、鬼の活動も、必ず両立できるように頑張ります! だから……」
フブキ、ピタッと立ち止まって右京の方を向く。
フブキ「右京君。悪いんだけど、何でも出来るっていうのは、私のように選ばれた人間だけなの。凡人には無理なのよ」
右京「それは、頑張れば……」
フブキ「頑張れば? ……君は、とにかく今は音楽を頑張りなさい。中途半端な覚悟では大怪我するだけよ」
右京を冷たくあしらい、その場を去るフブキ。
立ち尽くす右京……。
○とある海岸
バケガニにベース型音撃弦・刀弦響を突き刺す蛮鬼。
蛮鬼「音撃斬・冥府魔道!」
刀弦響をかき鳴らす蛮鬼。
重々しいベース音撃が、バケガニの体全体に響き渡る!
そして……、爆発!!
バケガニが四散したその場に、跪いている蛮鬼。
ゆっくりと立ち上がり、顔の変身を解除する。
バンキ「ふう……」
そこへ、顔だけ変身解除したサバキが駆け寄ってくる。
サバキ「おお! そっちも済んだか!」
バンキ「(振り向いて)はい!」
サバキ「よし。今日の予定はここまでだな。時間早いし、帰りに支部へ寄ってくか」
バンキ「……あ、そうですね」
少し戸惑った様子のバンキ。
それを見て、ニヤッと笑うサバキ。
二人で歩きながら、
サバキ「もうそろそろ結論出さなきゃマズいだろ。事務局長の独断で、独立登録伸ばしてもらってんだからな」
バンキ「はい」
真剣な表情で、まっすぐ前を向いているバンキ。
サバキ、それを見てちょっとおどけた表情になり、大きく伸びをする。
サバキ「あ~~あ! 明日は久々の休みだなあ。家でゆっくり寝るか~! ハハハッ」
○たちばな・地下研究室
室内には、みどりとフブキ。
みどり、フブキの音撃鳴・さざれを入念にチェック中。
傍らで黙って見つめるフブキ。
みどり「……よし! OKよ」
みどり、フブキにさざれを渡す。
フブキ「(さざれを受け取って)どうもありがとう」
自分のバッグにさざれを入れるフブキ。
みどり、ちょっと所在なげな表情。
一瞬の沈黙……。
みどり・フブキ「(同時に)あの……」
目を見合わせて、思わず吹き出す二人。
フブキ「……この間はごめんなさい。失礼な事を言ってしまったみたいで」
みどり「ううん! 私こそごめんなさい。よく事情も知らないで……」
フブキ「言い方が冷たくなるのは、悪いけど性格なので……」
みどり「そうみたいね」
フブキ「何ですって?」
フブキ、みどりを微笑みながら睨みつける。
みどり「おっとと……」
慌てて口を押さえるみどり。
二人、軽く笑い合う。
○同・店頭
入口からサバキとバンキが入ってくる。
サバキ「よっ!」
香須実「(机を拭きながら)サバキさん! ご苦労様です!」
サバキ「おやっさん、下?」
香須実「はい!」
サバキ、奥へと歩いていく。
その後ろから、バンキが香須実に会釈しながら歩く。
香須実、いつもとちょっと違う様子のバンキに、少し不思議そうな表情。
○同・地下作戦室
階段を下りてくるサバキとバンキ。
サバキ「お疲れ様です!」
中央の机で資料を見ていた勢地郎が顔を上げる。
勢地郎「おお、お疲れさ~ん」
バンキ、勢地郎にディスクを一枚渡す。
バンキ「報告書です」
勢地郎「(ディスクを受け取りながら)ご苦労様」
サバキがドカッと椅子に座り、バンキもその隣に座る。
沈黙する二人。
勢地郎「……ん? どうかしたのかい?」
腕組みして壁の方を見ているサバキ。
バンキ、意を決した表情で口を開く。
バンキ「……事務局長。独立行動登録、よろしくお願いします!」
勢地郎「そう、決心したんだね?」
バンキ「はい。……でも、大学にも進学させていただきます」
勢地郎「そっか……。じゃ、そのように手続きをするかな」
サバキ「大丈夫なんですか? 一応、専業でやるのが原則のはずですよね?」
勢地郎「ん、まあそうなんだが……」
サバキ「あ、でもフブキのヤツも副業持ってんな」
顔をしかめるサバキ。
勢地郎「フブキ君の場合は特別に許可が下りてるんだが、基本的には副業は禁止だね。まあでも、大学は仕事じゃないから大丈夫だよ。ある意味、高校よりも自由が利くしね。何たって、自分の責任で勉強しに行くわけなんだから……」
勢地郎の言葉に、ドキッとするバンキ。
勢地郎「そう、か……。二足の草鞋に挑戦するってっわけか」
バンキ「挑戦……というほどのものでもありませんが……、僕の将来のビジョンから考えると、今どちらかを選ぶ、というわけにはいかないのです」
勢地郎「将来のビジョン、か……。若いのに考えがしっかりしてるね~」
バンキ「いえ……」
サバキ「まあ、お前なら大丈夫だろ。……途中でヘバるんじゃねーぞ?」
バンキ「はい!」
○同・地下研究室
みどり「え? 弟子……?」
座って話し込んでいるみどりとフブキ。
ちょっと驚いた様子で、みどりがフブキにそう問いかける。
フブキ「そうなの。純粋な気持ちは伝わってくるんだけどね。まだ軽さが残ってるって言うか……、自分でもどっちの道へ進めばいいか分からなくなってると思うのよね」
みどり「道かあ……。そういう決断って、難しいのよねぇ……」
テーブルに肘をついて、遠い目になるみどり。
みどり「私も、夢はあったんだ。……見ての通り、私、お菓子が大好きじゃない? だから、子供の頃からお菓子作りの専門家になりたかったのよね。……でもね、中学の時にヒビキ君が鬼を目指すって決めて考えが変わったの。私のやらなくっちゃいけない事は、私の進むべき道はこっちだったんだ!って。……ま、ヒビキ君の影響がすっごく大きいんだけどね」
フブキ「お菓子作りしたいっていう夢は、捨てちゃったの?」
みどり「ん~、結果的にはそうなるのかなあ……。夢……って言うより、単なる憧れだったのかもしれないわね」
フブキ「夢と憧れか……。どっちも非現実的な響きね」
みどり「出た! 超・現実主義!」
微笑するフブキ。
みどり「……あなたは、鬼と音楽家を両立してるみたいだけど、どっちかに絞ろうとは考えなかったの?」
フブキ「私は……」
言いかけて、ふと下を向いてしまうフブキ。
みどり「え? 何?」
フブキ、サッと立ち上がり、
フブキ「さ、そろそろ行かなくちゃ」
みどり「あ、ズルい~! 私にだけ喋らせておいて~!」
フブキ「あなたが勝手に喋ったんじゃない」
そう言って、後ろ手でみどりにバイバイのポーズをしながら、部屋から出ていくフブキ。
みどり「……もう!」
腕組みしながら、乗り出していた上半身をドスッと椅子に降ろすみどり。
○同・地下作戦室
勢地郎、サバキ、バンキの座っている作戦室に、フブキが入ってくる。
フブキに気付く勢地郎。
勢地郎「やあ、フブキ君」
フブキ「こんにちは」
軽く頭を下げるフブキ。
自分の背後に現れたフブキに、思わず緊張するバンキ。
そして、ソッポを向いているサバキ。
勢地郎「フブキ君。このバンキ君が、今日から独立することになったんだ」
フブキ「そうですか」
すまし顔でバンキを見るフブキ。
バンキ、スクッと立ち上がりながら振り向き、
バンキ「……よ、よろしくお願いします!」
深々とフブキに頭を下げるバンキ。
サバキは、面白くない、といった表情で相変わらず横を向いている。
勢地郎「(サバキに気を使うように)バンキ君は、大学へ通いながらの鬼活動となるので、フブキ君同様、二足の草鞋にチャレンジすることになるんだ」
フブキ、顔を上げたバンキの目をジッと見つめ、わずかに口元を上げながら、階段の方へと黙って歩を進める。
サバキ「おめぇは……、相変わらず弟子も取らねーんだな」
フブキ「私は、あなたのように優秀ではございませんので」
サバキとフブキ、お互い背を向けたまま会話を交わす。
そして、そのまま階段を上がっていくフブキ。
サバキ「ケッ……」
嫌味を言われて不機嫌になるサバキ。
そしてバンキは、堂々としたフブキの姿に未来の自分を重ねていた……。
○トレーニングジム
サイクリングマシンを漕ぐ右京。
右京「(俺は、絶対諦めない!)」
○東星音大・実習室
教授の指導を受けている数人の学生達。
オーボエを吹く右京。
右京「(俺は、諦めない! 中途半端なもんか! 絶対、どっちの夢も実現させてやるんだ!!)」
右京、気合いを入れてオーボエを吹き続ける……。
《CM》
○森の中
真夜中、フブキのベースキャンプ。
画面上部に『そして、五年後』の文字。
テントから、着替えを終えたフブキが髪を後ろで括りながら出てくる。
そして、テントを片付けて、専用バン・結晶のバックラックに用具を素早く積み込んでいく。
フブキ、バックラックをバタンと閉め、運転席へと向かう。
○結晶の中
フブキ、結晶のエンジンをかけ、静かに発車させる。
運転しながら、左手でカーナビを操作するフブキ。
フブキ「あと、ヤタガラスが出そうなところは、ここと……、ここか。……今晩中には済ませときたいわね」
フブキ、一層引き締まった表情になり、結晶をかっ飛ばしていく……。
○右京の部屋
部屋の真ん中に寝っ転がっている右京。
× × ×
《回想・フブキの自宅前》
結晶の前で話すフブキと右京。
フブキ「(右京をチラッと見て)何か用?」
右京「何か用じゃないでしょ! 急に音楽辞めるだなんて、ひどいじゃないですか!」
フブキ「(作業をやめることなく)あなたには関係ないって言ったでしょ」
右京「関係あります! ……俺は、音楽と鬼と、両方が一流のフブキさんを尊敬してたんです」
フブキ、右京をキッと睨んで、
フブキ「声が大きいわよ」
右京、ハッと口を押さえ、それでも恐縮気味に、
右京「……音楽が、嫌になったんですか?」
フブキ「それは違うわ。今でも音楽は私の体の一部よ」
右京「じゃあ、何で!?」
フブキ、バックラックの扉をバタンと閉めて、
フブキ「……人は、神様じゃないわ。両立にもそれぞれ種類があって、限界もあるってことね」
右京「だから、鬼の仕事に専念ってことですか? ……でも、今まで完璧にやってきたわけでしょう? ……俺は、何も捨てませんよ。音楽やりながら、いつかはフブキさんのように……」
フブキ、口元をわずかに上げながら踵を返し、運転席へと向かう。
右京「フブキさん!」
フブキ、運転席のドアを開けながら振り向き、
フブキ「右京君、……鍛えなさい」
右京「え?」
フブキ、運転席にサッと乗り込み、ドアを閉める。
そして、静かに発車する結晶。
右京、納得行かない様子でその場に立ち尽くす……。
《回想・ここまで》
× × ×
右京「鍛えなさい……って、あの人が音楽辞めんのと、俺が鍛えんのと、一体何の関係が……」
ハッとして、上半身を起こす右京。
右京「そっか。関係あるって言ってんのは俺の方だ」
机の上に置いてあったオーボエをそっと手に取る右京。
右京「(オーボエを眺めながら)……鍛えなさい……か」
考え込む右京。
○とある山中
朝日がまぶしい山の中腹。
ベースキャンプを張っているイブキとあきら。
イブキ、ディスクアニマルのケースを地面に置いて蓋を開け、音笛を吹く。
キラキラッと光って順々にアニマル形態に変わり、ケースから飛び出していく黄赤獅子たち。
後方で、あきらは黙々と腹筋運動をしている。
イブキ「あきら」
あきら「(腹筋運動を続けながら)……は、はい!」
イブキ「今日の基礎トレーニングが終わったら、これを読んでおくといいよ。知識の面で衰えはないと思うけど、この二年の間に色々新しいパターンが生まれてるからね」
あきら「(腹筋運動をしながらイブキの掲げる本に目を遣り)分かりました!」
ニコッと笑って、本をテーブルの上に置くイブキ。
○屋久島の森の中
森の中を走る響鬼!
捕獲糸を響鬼に向かって伸ばすツチグモの怪童子!
響鬼、素早くこれを避けて、木から木へと飛び移っていく。
近くの木の陰で、その様子を固唾を呑んで見守る明日夢。
と、ツチグモの妖姫が響鬼の背後から迫る!
明日夢「響鬼さん!」
響鬼、背後の妖姫に気付いて、振向きざまに回し蹴り一閃!
明日夢の近くに吹っ飛び転んでいく妖姫の体。
妖姫、起き上がって明日夢の方へジワリと近付く。
たじろぐ明日夢。
響鬼、茜鷹を妖姫に放つ!
ギューンと飛んだ茜鷹が、妖姫の顔面に命中!
顔を押さえてもがく妖姫。
その間に響鬼は怪童子に火炎噴射し、高々とジャンプ!
そして、火炎攻撃にたじろぐ怪童子に、キック一閃!
四散する怪童子!!
真剣な表情でそれを見つめる明日夢。
妖姫、響鬼に向かって走る!
と、響鬼も妖姫に向かって走る!
両者、ぶつかり合うように互いにパンチを打ち合い、クロスカウンターのような構図になるが響鬼の勝ち。
膝から崩れ落ちていく妖姫に、響鬼は腰から音撃棒・烈火をはずして止めの一打!
響鬼「ヤーーーッ!!」
四散する妖姫!!
それを見てゴクリと生唾を飲む明日夢。
と、丘の木々をなぎ倒しながら、ツチグモが出現!
響鬼、身構えて、
響鬼「明日夢、しっかり見とけ」
明日夢「は……、はい!」
ツチグモに向かっていく響鬼。
烈火を振りかざし、ツチグモの足元を攻撃していく。
バランスを崩して半身になったツチグモを、響鬼は力任せにひっくり返す!
そして、ツチグモの腹の上に飛び乗った響鬼、ベルトから音撃鼓・火炎鼓をはずしてツチグモに取り付ける。
広がる火炎鼓。
烈火を構える響鬼。
響鬼「火炎連打の型!」
力強く音撃打を放っていく響鬼。
それを凝視する明日夢。
音撃の波動がツチグモの全身に響き渡り、……爆発!!
烈火を腰に仕舞い、顔の変身を解くヒビキのもとへ、明日夢が近寄る。
ヒビキ「……大事なのは、呼吸と間合いだ。実戦はまだまだ先になるだろうが、俺の動きを常によく見て、自分の呼吸ってもんを少しずつ探っていくんだぞ?」
明日夢「はい!」
頼もしげに返事をする明日夢。
そこには、着実に築かれつつある師弟の絆があった……。
○百貨店の催事会場
開店前の百貨店催事会場。
今週は呉服の催しということで、すずめの売場の者たちが会場の準備をしている最中。
畳の上に赤毛氈を敷いている者。
通路を、重そうなパッキングケースを担いで歩く者。
撞木を雑巾で拭いている者。
衣桁にきものを陳列している者。
すずめ「えっ……と……」
普段はのんびりした空気を醸し出して いる年配の販売員たちがテキパキと動く様を見て、圧倒されているすずめ。
筑波「工藤さん!」
すずめ「……は、はい!」
筑波「向こうからプライス取ってって。……はい」
筑波、そう言いながらプライスカードとスタンプをすずめに渡す。
すずめ「えと……、プライスって……」
筑波「あ……、とね、陳列してあるきものの値段を調べて、このプライスカードにスタンプを押していくの。……おい、南! 手伝ってやれ!」
南「は、はい!」
南と呼ばれた長身の若い男が、二人の方へと走り寄る。
筑波、クルッと振り向いて会場全体を見渡して、
筑波「……北面、全然照明が当たってないぞ! あ、媒体掲載商品はここに飾って、そうそう。……あと二十分だぞ! ピッチ上げていけよ!」
周囲に的確に指示を飛ばす筑波。
すずめ、陳列してあるきものの値段をメモりながら、グッと唇を噛み締める。
× × ×
百貨店全体に、開店の音楽が流れる。
にこやかな表情で整列する店員たち。
前方から、数人の客が催事会場に入ってくる。
店員「いらっしゃいませ!」
口々に挨拶する店員たち。
奥のカウンター内で、その様子を眺めるすずめ。
と、その横にキリッとネクタイを結び直した筑波が立つ。
筑波「催しの準備は、慌しいだろ」
すずめ「はい……、あ、いえその、皆さんの機敏な動きにびっくりしました」
筑波「ハハ……。まあ、みんなもう慣れっこだからね」
すずめ「普段は涼しい顔で立ってらっしゃいますので、なんて言うかこう、ギャップが……」
筑波「外からは見えない仕事もたくさんあるからね。でも、お客さんにはそういう部分を感じさせたらダメなんだ。バックヤードの仕事は段取り良く進めて、お客さんにはいつも笑顔で。……分かるね?」
すずめ「はい!」
目から鱗が落ちた、といった表情のすずめ、思わず手に力が入り、カウンターの上にある包装紙をクシャッと握り曲げてしまう。
筑波「(苦笑いして横目でみながら)……工藤さん?」
すずめ「(ハッと気がついて手を放し)あ、すみませんすみません! ゴメンナサイ!!」
すずめ、焦りながらクシャクシャになった包装紙を手で均していく。
○とある山中
音笛を吹くイブキ。
そして、その音笛を額へと持っていき、突風に包まれる!
その様子をジッと見つめるあきら。
威吹鬼「ハッ!」
風を手刀で断ち切り、鬼に変化した威吹鬼!
上空には、ウブメの成体が飛び回る。
そして地上には、ウブメの怪童子と妖姫がジリジリと威吹鬼に近付く。
格闘になる威吹鬼と怪童子&妖姫。
鋭いキックの連打で、怪童子&妖姫を攻撃していく威吹鬼。
と、上空からウブメが威吹鬼に向かって急降下!
威吹鬼、ウブメの体当たりを受けて思わずのけぞる。
威吹鬼「ウッ!」
あきら「あっ!」
身構えるあきら。
怪童子&妖姫が威吹鬼に突進!
あきら、反射的に腰に手をやるが、音笛はない……。
怪童子、妖姫に両サイドから噛みつかれる威吹鬼!
苦しむ威吹鬼だが、次の瞬間、怪童子と妖姫にヒジ打ちを食らわすと、素早い水面蹴りで二人を転ばす!
そのままジャンプした威吹鬼、空中で回転してから降下し、怪童子と妖姫に連続キック!
四散する怪童子&妖姫!
しかし、威吹鬼はガクッと地面に膝をつき、噛みつかれて傷ついた肩を押さえる。
そこへ、またしても急降下してくるウブメ!!
あきら「威吹鬼さん!!」
威吹鬼、あきらの声に反応して地面を転がるようにしてウブメの体当たり攻撃を避ける。
しかし、それ以上何もフォローすることのできないあきら。
その表情には、焦りが隠せない……。
○四之巻 完
○エンディング曲
○次回予告
イブキに詰め寄るあきら。
あきら「イブキさん、私、次は六段を受けます!」
右京と話すすずめ。
すずめ「右京君、ホントにどうするつもりなの?」
童子と姫に相対するフブキ。
フブキ「ネズ……ミ?」
五之巻『舞い上がる怨念』